死屍累々の夏

5月は車で15分ほどの近在セレモニーホールで葬式、火葬は数年前に出来たばかりの海っペリのピカピカ斎場で、明るい曇天の下、沖を往く船を眺めつつ。6月は車で30分ほどの街ナカ一等地のセレモニーホールで葬式、マイクロバスで30分程掛かる豪華な市営斎場へ。7月は首都高で大都会東京の海っペリというか物流倉庫街の片隅かね、往きはトンネル還りは橋。田舎寒村に蟄居して早25年が経ち、路線や建物もすっかり様変わりして、スト高も変な分岐や合流が迷路のように入り乱れ、出口を間違えるととんでもないことになるなと思いつつ、巨大なトレーラーがトグロを巻いている巨大な倉庫街へ。8月初めは遠方で傍系の葬儀だったが、平日だったので回避、下旬に45年くらいご無沙汰している父方の菩提寺で49日と納骨。近在はどこもお通夜をやらなくなったのは良い傾向だ。9,10と飛んで11月は1回忌の会食で80代の親戚たちと会う機会があった。命の次に大事な後期高齢者被保険者証が統合されるし、ポイントも付くしで皆さん一斉にマイナンカードを作ったようで、その還元先をpay系にしたけど肝心のpayの使い方がわからないとな。息子や娘がいるんだから聞くなり教えるなりすりゃいいのに。たまたまpayで4割還元の地域だったのでこの店使えるでしょ? と教えたら目の色変わってた~(笑)。さて、来年は1回忌のオンパレに親の7回忌(3回忌は失念)と先が思い遣られるぜ。会社文化や地縁とは無縁だから形式的な葬式に関わることはないが、この歳になって喪服の使用頻度が爆上げで、もう一着用意したほうがいいのかな?

今の場所に住み始めて今夏で15年が経つ。生まれてこの方あちこちを転々としてきたが、この過疎の在所が最長になるのか。名所旧跡、名産名物は言うに及ばず、誇れるものはもちろん語れるものも何もないどころか、頭を捻っても何も思い浮かばない、何もないことが唯一の自慢のような、空家と徘徊老人と夜な夜な空中散歩のハクビシンの集落。東京で生まれ育った人が言うには夏は少し涼しくて空気が乾いて潮風が吹いて、冬はちょっと暖かいから過ごしやすいそうだ。

渋柿余り

流石に飽きてきたのと、まともな食い物屋が徒歩圏に殆どないし、静かだが不便すぎ。利便性が高くて老人福祉に手厚い補助がある裕福な自治体を探して、2拠点化を目論んでいる。血縁はほぼ絶えたし、地縁は依るべきものというよりはそんなものは最初からないから気にすることもない。地元も故郷も何もない、なんのシガラミもなく何をしてもいい自由を漸く掴めたような気もする。今年も鳥も食わないそれは見事な渋柿が400個くらいなったはいいが、腐ったデッキは踏み抜くし、48個干し柿にして、96個渋抜きしているが、残りは落ちるに任せるしかあるまい。と思ったら、完熟すると渋が抜けるみたいで尾長と目白と雀が襲来して、早暁からギャーギャー絶叫しながら食い散らかしてウルサイウルサイ。近所迷惑だろ。

渋抜き中

歳のせいか寒さが堪えるし、電気料金が例年の5割増し(それでも第3段料金でボッタクるTEPよりはマシ)ぐらいになっているのでガス・ファンヒーターを買っちまった。ガス製品は海外製品がないし、メーカー間の競争が少ないからイニシャルが割高だよな。地域的に公共建築の空調が原則GHPだからガス代は比較的安価なのかな。もっと海に近い方は自噴するガスを集めて個人で利用しているそうだが、この辺りは同じガス田の上にあっても地下水の汲み上げを伴う採掘は禁止されていて供給業者から買うしかない。なんの関係もないがJeff Beckが死んじまったか。爺になってもオー!スゲスゲと感嘆するくらい凄腕だったよな。晩年の指弾きはまさに神業だったし、ポヨンポヨンのノーブラTalちゃんの引き立て役に徹する姿勢も潔かった。『Blow by blow』の頃な、オレはどこかで実物見たんだぜ(笑)。

我が道を行く農村共同体系辺境田舎蕎麦で雨宿り

仕事先のA地点からB地点に向かう途中で昼飯。A地点を出た頃からスコールが激しくなり、周囲で最も標高が高い一級河川の堤防上を走る国道から見える遮るもののない光景はすべての色彩情報が喪われた水墨画のように煙って見えた。巨大な水門を2つ渡り、港町の北辺、かつては別の村だったが平成の大合併で吸収合併された過疎の集落。元々港町とはいえ新興、台地の上の門前町には波止場はたぶん一つもない。その北辺の川沿いにおそらく地元のJAが造ってみたよんと思われる農産物の直売所に併設された蕎麦屋。駐車場はけっこう広いが大型車が入れるようなマスはないし道もない。相変わらずタダの一度も訪ねたことがない道の駅に成れるほどの交通量もないのだろう。見渡す限りの田園の中を少し先の駅に向けて4両編成の短い電車が疾走していた。駅の先、隣県に渡る橋と旧国道の交点が街の中心部なのだろう。ここを除くと旧町内には地元チェーンの中堅スーパーが一軒あるだけ(のはず)。

直売所は開いているが、店舗は店の奥、11時の開店前に既に先客2組並んでいる。11時丁度にドアが開き、ふ~んと思いつつその後に続く。安普請ながら明るくまだ小綺麗な店内25席ほど。キャピキャピのオバちゃんが昨今珍しい普通の緑茶を出してくれた。メニューを眺め、漬物と小鉢が付いた冷たい蕎麦と炊き込み飯のセット、三種盛り本日の天麩羅に玉子と鶏しんじょうの2種を追加して注文。常陸秋蕎麦の二八蕎麦と地元産野菜の天麩羅が売りの模様。

常陸秋蕎麦というのは品種であって採れる場所は常陸じゃなくてもいいのか(笑)。ということで地元産の常陸秋蕎麦粉を使っているらしい。田舎だから大盛りにしなくても量は大都会の洒落たブランド蕎麦屋の軽く2倍はあるな。いや3倍か。呆気にとられるほど器デカイもの(笑)。機械製麺だが挽きぐるみの蕎麦は思ったよりも香りがあっておいしい。天麩羅も大都会の天麩羅種がミニチュアに思えるほどで目が点になった。普段外食で喰い切れないことはまずないが、調子に乗らないでよかった。

俺様豚汁

待っているうちにほぼ高齢者で席は埋まっていく。検索するとかつては行政庁が置かれていた中心街にはココを入れても4軒しか店がない(笑)。トラック営業系が1軒、駅前昔食堂1軒、駅裏ヨボヨボ食堂1軒と、Googleによればどこもなかなか流行っているようでおもしろい。前期高齢者と思われるBBA2名がPayは使えないの? と訊いてダメと言われて現金で支払っていたが、この辺りじゃ極めて珍しくカードは使える。カード入れてるならQR読みのPay入れるのも抵抗ないと思うんだが不思議。今や田舎蕎麦屋も古民家風プロ飲食と意識高い系の薄暗い気取った蕎麦屋ばかりでウンザリだが、ここはその逆狙いでチープであっけらかん、ファミレス風の田舎食堂。粗雑で回転最優先の街の大衆蕎麦でもない。メインの直売所は主に農産物や地元の漬物で工芸品や園芸品も並んでいる。野菜をちらっと眺めただけだが、立派な胡瓜に立派な茄子に立派な獅子唐に唐辛子と、価格と質を考えると我がカッペ村の半額だわ。ついでを作ってまた行こう。

初夏~夏の田舎鰻

鰻K別館

袋綴じにしてパコパコ押印した契約書を役所に届けてチェックを受けて、その足で徒歩10分の鰻屋へ。徒歩7分にも一軒あるので基本交互交代、共に平日も無休で助かるわ。13:30過ぎ。自動ドアをくぐって検温+手指消毒、老1名を告げるとテーブル席へ。どこでも良いらしいので騒いでるオッサンの団体からいちばん離れた4人掛けテーブルへ。すぐにお絞りと冷たい麦茶。そのまま注文しようとすると、なんだか色々システムが近代化されていて卓上には注文用タブレットだそうで。あれまとチラッと眺めるとレジにはクレカ用のセルフ・レジまで置かれれているのだが、客の行為をすべて店員が代行していて笑った。

鰻1.5尾の特上鰻重に肝吸い、小鉢、デザート付きのセット、鯉の洗いと生ビール大を注文。半身あたり200円の値上げ。1年ちょいぶりだが4500円だった特上が5100円に上がってるわ。ちなみに以前来たときは現金とPayPayのみ。5分ほどでビールと鯉の洗い。鰻以外の天麩羅や海鮮もメニューが増えていて、まぁ、繁盛してるのかな。テーブルや座敷は中庭に面して回廊状に配置され、庭の中央には怪しげな池(というか沼)がある。すぐ先を流れる川から水を引き込んでいる。かつてはそこで活き鰻を飼っていたのだろう。

別の日。たまには趣向を変えようと白焼き一尾と天重、川海老の素揚げと生ビール大。以前からメニュー写真の天重に心惹かれていたが機会がなかった。海老って適切なモノを入手するのがなかなか難しいが、さすがに見事な大きさの大海老が3本。繋いでいない一本物で中身の透き通るような、ギリギリ火が通ったような揚げ加減は料理人のセンスを感じさせる絶妙なグレードで唸った。その他キスと野菜で表面が埋め尽くされた天重は胡麻油が薫り、上掛けされたつゆもさっぱり、ベチャベチャでない白飯と相まって、非常に満足できるものだった。気に入った。

鰻S

気になっていた本店は港の東側に発見。工場併設の売店みたいな堀立小屋で昼のみの営業。ついでができたので今度行ってみるが車じゃないと行けないヨン。おおお、驚いたことに大帝都中央区の銀座と東京駅内に新規出店したらしく、店舗倍増。ダイジョブか?(笑)

カッペ老が行くのは駅から徒歩で行けるSC内の店。半年ぶりくらいかな。11時ちょい過ぎ。手指消毒と検温を済ませ、席に案内される。驚いたことに店内に4人掛けテーブルは三方隅に3か所のみで、あとはすべて2人掛け、中央アクリル板付きに改装されていたわ(笑)。一人黙々型が奨励されている模様だが、田舎だからな。田舎オヤジ勤め人風がガハガハ酒も飲まないで談笑中。席は半分ほど埋まり いつもの1.5尾蒲焼重(肝吸い、新香付き)に肝焼き2本で生ビール。

最初に生ビール、高野豆腐のお通し付き。15分で肝串。香り高い山椒を振ってちびちび食い始める。更に20分ほどでようやく鰻重。半身3枚が重箱からはみ出る盛り付けは健在だ。価格は400円ほど上がったように思えるが、Kよりは控えめ。コミコミで6000ちょいで納まった。見た目全く同じ内容なのに家賃分とは言え都内のベラボー価格には唖然呆然。あっちで儲けてこっちで還元してくれるのはとても良いことなので引き続き贔屓にします。

炊き込み飯

老境に至ると、松茸飯を筆頭に茸飯などの炊き込み飯が好みの一つになるのは味覚の変化なのだろう。春先の山菜、筍飯に始まり貝飯、豆飯、蟹飯、ヒジキ飯なども年に一度は食べたいものだ。舞茸は新潟の一正蒲鉾が工場で生産している特大品を取り寄せている。多くは天麩羅で消化するが、生姜、人参、油揚げ、蒟蒻などと炊き合わせた炊き込み飯も欠かせない。

舞茸飯

基本的に材料を揃えて研いだ米の上に放置し、調味液と水を混合し規定の水量にして炊飯釜のスイッチを入れれば1時間後には出来上がるので、その間を一服つけながら別の調理に振り向けられ手間要らず、合理的である。

舞茸飯2

鰻NT

月曜日。昼抜きで13:30に仕事を片付け、車で数分、丘を下り北沼の東岸へ。鰻街道に入っていちばん近い川魚料理店。かつては養殖もしていたのだろうが、今は普通に輸入活き鰻を使っている。メニューにもなっている鯉、鯰や蛙は養殖しているのだろうか? 錦鯉の養魚場や釣り堀が主体で飯屋はオマケなのかよくわからん。広い駐車場に車数台。引き戸をガラガラと思ったら自動ドアだった。風除室を抜けるとかなり広い店内に先客BBA2名のみ。窓際が6人掛け、屋内側が4人掛けテーブルで奥に座敷も見える。BBAが煩いので遠く離れた窓際席に。ガラスの外は一応パッとしない日本庭園風の造りになっている。店主風のおっさんが緑茶と立派なオシボリ。メニューを眺め鰻重の並と上はどう違うのか訊く。デザートが付くのと鰻の大きさも違うとのことなので、鰻重(上)、肝串、ナマズ天麩羅にノンアルを注文。田舎にしてはとても洗練された丁寧な対応で、ちょっと驚いた。

最初にノンアルで喉を潤す。15分ほどで肝串、今度は店主の妻かね? なかなか細面の着物美人。5分遅れてナマズ天麩羅。かなり大振りな肝串もさることながら、ナマズ天も大振りな切り身が5切れ、野菜天も付いて山盛りだわ。肝串はコリコリと苦味が程良い組合せでゴツい感触。ナマズは今ではすっかり珍味になってしまったが、昭和の中過ぎまでは魚屋に売っていたし、池沼で釣っている人もそれなりにいた。淡白で柔らかくとても上品な白身魚。天つゆに坊主を添えて、揚げたてを一口。ホーホーと唸っていると鰻重の到着。盆に重箱、肝吸い、小鉢、漬物にコーヒーゼリーのデザート付き。

早速蓋を開け、鰻を眺める。一尾分がほぼ飯を覆い尽くす。中央に箸を入れ長手方向に身をツーっと裂く。ウム。良い焼き加減。頭に近い左下を縦に裂き飯とともに口に。ちょっとタレが濃い目で甘めで田舎風だが、脂が乗った身が厚いワイルドな鰻だ。ゴツいと言ってよいほど。タレが濃くないと脂に負けるか。臭みは全くないので山椒は不要だ。飯は普段食うところに比べ厚みが倍くらいあるのが流石に田舎風で腹が膨れた。タレでベチャベチャになっていないのは好感した。お茶のお代わりを嗜んでいると15:00でラストオーダ。際どい間際にBBA2名が来て店員ガックリ。笑った。レジで会計すると金額がオカシイ。「ずいぶん安くない?」と言うと美人の奥さん、顔を赤らめて打ち間違いに気づく。カードに加えPayPayが使えるようだ。

鰻S本店

たまたま港を挟んで街の反対側の、たまたま仕事先の一つからの帰り道にあることに気付き、尚且つ時間が丁度ぴったり合ったので寄ってみた。偶然の積み重ねが成立したのは土用の丑の数日前。35℃超えの久々の晴れ間。店は……というより活鰻卸を営む工場(盥で泥抜きしてる)の端に店があるのだが、人っ子一人歩いていない糞田舎の間道から一本入った、場末感が漂う畑と荒地と得体の知れないヤードと人家がポツンポツンと混在するところ。11:00~14:00のみという昼のみ営業で、13:30過ぎ、まぁ激しくどうでも良さげな客用駐車場に車3台。新築だが掘っ立て小屋レベルの安普請。風除室のつもりなのか? アルミの引戸を2枚くぐり、検温+手指消毒で予約の有無を聞かれたがもちろん無し。テーブル席のみ、4人掛けが計5卓で、若くないカップル、老夫婦、オバチャン一人が在席。老おばちゃんがこちらへどうぞと空いてるテーブル席にご案内。メニューは壁を見ろと、というほど選べるものはないので鰻重(松)。おお、値上がりしとる(つい一週間ぐらい前のイオンSC内店に比べ)。お新香と肝吸いが付く。注文が通ると厨房の日焼けした茶髪のネエチャンが串をガス焼き物機に乗せる。煙が立つと表裏を数回ひっくり返し、計12、3分焼いて蒸し器へ。暇になったネエチャン、客席の片付けを始めたので空になっている麦茶を催促しようとすると、暑気にやられ茹で蛸のようになっているカッペ老にピッチャーごと冷たい麦茶をくれた。ありがとう。

蒸しは15分ほどか。串ごとドボンとタレに漬けて再びガス焼き物機へ。焦げやすいせいか小まめにタレ付けと表裏の返しを繰り返し10分ほどで焼き完了。タイミングを合わせ重箱の飯にタレが振られ、串を抜いた蒲焼が1.5尾、器の表面を覆い尽くしはみ出る感じ(蓋が閉まらないので蓋なしで提供)で完成。肝吸い、お新香と共に直ちに配膳され、グゥと唸る。朝捌いて串打ちまではしていると思われるが、40分待ちの甲斐はある。見た目の量感、立ち上る香り、身肉の表面で踊る脂、素晴らしい。ウムムともう一度圧倒される。箸で腹をツーっと裂き、一口に区切った鰻を口に入れる、熱くてハフハフだぜ。身肉はイオンSC店のもの(季節によるがたぶん国産を回してる)より厚め、脂多めでフワフワ。あっさりタレが絡んで鰻の味が際立つ。調理法の差だろうがイオンSC内よりワンランク上。というか、今まで食った鰻でBestなんでないか? 飯はコシヒカリ系、ベチャベチャでなく米の味がしっかり。タレも近辺ではあっさりめで上品な部類、辛めの薄めで東京風に最も近い良いタレだ。秘伝とはどこにも書かれていない(笑)。お新香も最近珍しい粕漬入り。肝吸いの出汁は今風だが肝は大きいし、まぁ、良しとしよう。

食事中に2名ほど、予め電話注文の弁当持ち帰り客が来店。客の来店時間に合わせて焼き上げているあたりはイマドキなかなか真似ができないよなぁ、と少し感心した。イオンの店はほぼすべての決済手段が使えたが、ここはカードのみOK。

もう地元のJFですら養殖なんてしてないし、カッペ地帯のせいか、このあたりの店は中国産を広言する店や産地なんて糞食らえの正直な店が多くて笑える。売値が同じなら環境適地で手間隙掛けられる中国産がおいしいのは自明なわけで、スーパーや弁当屋、外食産業の貧相な国産鰻とは値段も味も全くの別物。鮨と回転寿司の差に近い。

酢豚試作

天然と養殖、国産と台湾産、中国産の差異について一家言をお持ちの舌が肥えた方々が巷には溢れているが、鰻の原産国は過半の生育地であり、国内産のシラスを国内で成魚まで育て上げる養殖は極めて稀なので、49%と51%の差に拘れる人以外に産国の意味はないし、そのデータすら7割は怪しいという話もある(笑)。だから、普段から良い鰻、おいしい鰻をたくさん食べて自分の舌を鍛えるしかないね。今季の活き鰻は4割高だそうで、鰻店は軒並み値上げに追い込まれているが、鰻は活きを使う(える)か否かですべてが決まる。活き鰻を扱うには生かしておく設備と捌いて串打ち、焼きができる職人が必要(関東は背開きでカットした身肉を竹串に刺して表裏を返しながら焼く。西日本の鰻は型崩れする蒸し工程がないため、腹開きの有頭鰻を数尾金串に挿して豪快に焼いているかな。蒸しがなければ型崩れしないから、おばちゃんが網の上でトングで長焼きをひっくり返して焼いているところもある)になるのでコストは嵩むし、捌くところから蒲焼までこなせる一人前の職人に自ら成るか、雇う必要がある。それが大陸の最新鋭工場で熟練の女工さんが目にも留まらぬスピードで捌いた鰻をフルオートで蒲焼にした加工鰻との価格差に直結するわけだが、倉庫で寝かした加工鰻の在庫を抱える商社や卸、販売者にとっては鰻のおいしさは素材の状態や調理の工程でなく、産地にのみ帰結してくれることが望ましいのはわかるよね?(笑)。国産というだけで倍の値段を払ってくれる消費者ほどありがたい存在はない。ありがたや~。

活き鰻の値上がりも何年も倉庫で寝ていた蒲焼加工品には関係のない話なので心配はいらない(せいぜい基礎コストが1割アップかな)のだが、今年は春からカッペ鰻屋の鰻三昧なので、すき家も各所の鰻弁当も丑の日惣菜も全く食指が動かず、それはそれで困ったものだ。土用の丑は何もなし。ああ、二の丑は出先ランチだが鰻は止めておくか。少しマイナーなところも開拓している。北の川沿いもちょっと心惹かれるな。別の方面違いの仕事先の帰り道に共水と坂東太郎を扱う店を見つけたので期待している。

男の胃袋をぐいぐい掴むアスパラガスの夕べ

アスパラ2022

初夏の話。そろそろどこかでアスパラを頼もうかと物色していたら、今年も知人から極上品が届いた。農産物の選別やらグレードはよくわからないのだが、姿形や鮮度はスーパーの棚や普通の通販品に比べ明らかに差があるのね。数本選んで水でチャチャッと洗い、塩胡椒なり辛子マヨでそのままポリポリ食うのが最高。瑞々しい。

保存は一束にした根本を濡れたペーパーで覆い冷蔵庫で立てて置く。かつては光にあてないで芽を出させたホワイトアスパラが主流だったが、いつの間にか逆転したな。遮光が必要なホワイトは割高だし、含まれる栄養素も緑には敵わない。

魚は高いんだから爺は茄子で我慢せいや

古くなった茄子を使えとの下命を受け、麻婆茄子で誤魔化そうと思ったが、せっかく泡辣椒(長さ20cm弱の巨大唐辛子を乳酸発酵させた酢漬け:大陸製既製品)があるので魚香茄子(ユイシャンチェーズ)だ。大陸奥地、四川では固くて食えない茄子の皮をすべて剥き、あたかも白身の川魚のように見せる貧乏人向けのインチキ料理である。日本の茄子の皮は柔らかいので剥く必要はないが、雰囲気で半分剥いた。剥いた皮は塩で揉んで辛子と酢と和えると猪口才な摘みくらいにはなる。

泡辣椒

茄子は適当な大きさに切って片栗粉をまぶす。180度の油で薄っすら色付くまで油通し。揚がったら油を切る。生焼けはハンバーグに任せて、牛挽肉は爆ぜるまでしっかり炒める。水分が完全に跳んだら弱火で大蒜生姜を香り立て、適当な大きさに切った泡辣椒を加える。鮒の香りがするというのが魚香の謂れだが、まったく魚臭くはないな。香り立ったら茄子を戻し、熱い鶏ガラスープ、老酒、砂糖、醤油で味を整えミジン切りの葱、水溶き片栗粉で綴る。鍋肌に胡麻油を回し入れ、強火で1分。油が跳ね始めたら火を止め、香醋を混ぜ込んで完成。砂糖の代わりに酒醸があれば満点なんだが、モノ溢れててどこに置いたのかわからん。缶入りとペットと二種類あったはずだが、棚卸ししないとヤバい。

魚香茄子試作

日本では主に町中華や中華チェインで提供される麻婆豆腐の豆腐を茄子に置換した料理を麻婆茄子というが、魚香は豆板醤も豆チも花椒も使わないから辛味の質が違う。泡辣椒を使うから辛くないわけではないが、あっさり目の甘酸っぱさが特徴的な味わいの野菜料理である。それはそれでとてもおいしい。四川系のそれなりの料理人の店ならどこでも扱っているはず。一方、町中華では賄である丼飯と合体させた中華丼、天津飯、麻婆丼、麻婆茄子丼といったメニューが大陸にはない日本食として独自に発展していて興味深い。今や青椒肉絲丼や回鍋肉丼にエビチリ丼まであるよな(笑)。

魚香茄子習作

アマプラその後

『Broadchurch 2』

第2幕は前作の結果としての法廷闘争と、主人公が左遷された原因になった未解決事件の解決がテーマ。どちらの部分もよくできているし、双方を上手く絡めて緊張感のあるドラマになっている。前作で色気を振りまいていた被害者の美貌の母は懐妊中。旦那は相変わらずフラフラしてるし、匿われてる奥さんはスれてて可愛げないし、仁王立ちの元旦那は悪人に見えないし、婆さんたちは戦ってたり告白してジンラッパ飲みしてるし、コケにされた牧師はブチ切れてるし、やっぱり悪党はどこかで見た顔だし、主人公DCIの不倫奥さんはいい人だよな。

『DCI.Banks』シリーズが東欧やアジアの移民に社会の根底を侵食され揺さぶられ、人間のダークサイドを抉り出すような陰気さを湛えつつも、イングランド北辺ヨークシャーの裏寂れた情景と対比させるような熱血ポリス・スト-リィであるのに対し、こちらは南イングランドの明るい海辺を舞台にしているせいか、ノホホンとした空気感とシリアスな葛藤の対比と差異をうまく表現している。深刻な内容も海が明るくて気持ち良いよねで済みそう(笑)。この繊細で緻密な描写力は侮り難い。金をかけなくても良い作品はできる。こちらもオマワリが一皮剥くと熱血で、似たようなシステムを持った落ちぶれた先進国の価値観の中で、オマワリはまだ正義の味方として機能しているのかと再認識させられる。

ちなみに英語がわかるわけではないけど、吹替版というのが極度に苦手なのでこの字幕ヴァージョンは大変ありがたい。お母ちゃんが裁判所のホールで息子を凄い剣幕で怒鳴りつけるシーンなんか吹き替えたら臭くて見れないだろ? あひゃひゃ(笑)。

『MOZU,MOZU2,MOZU劇場版』

一連のMOZUは逢坂剛の百舌鳥シリーズの映像化なのかね? 原作の初作は1985年刊。当時けっこう話題になってすぐ読んだ記憶がある。けっこう絶賛されてたし、自分でも面白いと思った記憶は残っているが、今となっては陰謀の底がちょっと浅いかな。原題は『百舌鳥の叫ぶ夜』。二作目『幻の翼』は一部では公然の秘密だったある事象が白日の下に晒され、出版延期になったと著者が奥付で書いていた。

原作けっこうエグかったからどうなることやらと心配して(期待して?)見たが、どうも狂気の方向性が違うし、風呂敷広げすぎで収拾尽くんだろうか? と心配になった。拳法使いのイカれたオヤジはナカナカだけど、残念ながらTVじゃ表現に限界あるよな。飲食店の選択も不思議、センス悪くない? 主人公はいつも怒ってるウドの大木だし、姉ちゃんは舌足らずでセリフが回ってないし、上司はとっちゃん坊やだし、追放処分の歌舞伎俳優?がいちばんプロっぽいのはどうしたもんだろう(笑)。あと昭和でもないのにタバコ吸い過ぎ。画面から臭いが漂ってきそうで煙いわ。

劇場版は『砕かれた鍵』かと思ったら『さまよえる脳髄』なのか? もう無茶苦茶だな。ちゃお東くんが回を追うごとにピエロな「いいヤツ」になっちゃってて、芋くっさい悲劇に陥りそうな人情劇をオ茶らかす一服の清涼剤として救っている。

懺悔、老境に入りてメジウマでメシウマ

どこの帰りか憶えていないがあまりの暑さに堪えきれず、エアコンが良く効いている鉄道系の駅前スーパーに飛び込んで涼を貪る。一息ついて生鮮を眺めていたら珍しくもメジのサクが並んでいた。ちょうど3尾分。時刻は昼過ぎで刺し身やパック寿司を物色している主婦はちらほらいるが、誰一人興味を示さない。近づいて眺める限り量的に食えるならまとめて全部買おうかなというグレードで値段も1/4身が700円ほど。しっとりと脂乗りが良さそうなものを確保して、もう一サク買おうかしばらく悩んだ。メジは捌いてみないとわかんねぇと言われるが、捌いてあれば概ねわかるよね。

めじ

メジだけじゃ寂しいから抱卵ボタンエビとイクラを用意して、イクラ飯にした。飯はもちろん酢飯。メジは大当たりでコクや酸味は薄いが表面を覆うしっとりとした脂と柔らかな身肉のバランスが上品。老境に入ると脂デロデロの蓄養マグロの大トロなんか見るのも嫌になるわけで、その真逆。しつこくないからあっという間に食っちまった。

ボタンエビ

まぁ、メジは本来狙って獲ってはいけない魚(遊漁は禁止)だろうが、でも定置網には定期的に掛かってしまうし、巻き網で一網打尽にする船もいるわけで、指を咥えてモラルを叫ぶ奴がバカを見るわけだ。漁獲量と流通・販売量が乖離している大間のマグロとか、組織ぐるみでカツオを盗んで転がしてた泥棒漁協とか、海保が密漁者を摘発しても一切告発しない漁協とか、一次産業の闇は深すぎてブラックホール。だから積極的には求めないが市場に流れてしまう以上は見つけたら躊躇なく買う。というか目にした瞬間、おっ…と、すぐ手が伸びるよね(笑)。

海老卵

オレはもう用済みの老害で既に逃げ切り+後は任せた、もうどうにでもナ~レに身を任せ、ただ朽ちていくだけだけど、いずれこの国の組織は内側から総崩れでみんなダメになる。『他人が得をするくらいなら、自分が損をしてでも足を引っ張って引きずり落としてやる』という性根をチラつかせながら互いに牽制し合っている組織+個人に傾倒するほどダメージが大きくなるのは必然にして自明だ。このページを読んでいるような心の捻じ曲がった若者や中高年の皆さんは、自分一人でも回していける技術とそれを実現する技能、それを表現するセンスを身に付けて、できれば中国語と英語に堪能であれ。そのためには日常的な努力が必要だが、努力の継続を惜しんではいけない。花は咲かなくとも実には成る。ち~ん。

いくら飯

シンママと老害の相剋・爺だからポテサラくらい自分で作るわ

ポテサラはムツカシイので老害はシネというのが問答無用な結論だった。ネットを検索すると膨大なレシピがヒットするが、なのにその殆どに簡単!、お手軽、絶対美味しい、名店の味、ネコでも作れる、チョチョイのちょいといった言葉が添えられている一方で、スーパーの惣菜サラダ・コーナーは百花繚乱阿鼻叫喚の如し。簡単に作れるはずものが何故ここまで隆盛を極めるのか? というか、出来合いのサラダって味付け凄いよな? サラダで飯食えるだろ。いくら日本人とはいえ、ポテサラで白飯を食う人はいないと思うが、ポテサラはあくまでメインのおかずの脇役であり、口直しではないのか?

爺ぽて

ポテトはキタアカリ。新物が出る秋まではこれが最後。ポテトはあまり潰さない。芋が熱いうちに発酵バターと岩塩、黒胡椒を混ぜる。シェリー・ヴィネガ多め。辛子マヨ少なめ。胡瓜は塩揉み、リンゴは入れる。最近は干し葡萄も入れる。木の実は気分で(湿るとおいしくないからトッピングが吉)。ベーコンは短冊切りして炒める。サラミや生ハム(輸入品の固くて塩辛いもの)もいける。玉葱必須だが紫玉葱があると彩りが冴える。気分でマスタード粒、食べる直前に下ろしたトリュフやexvオリーブ油を垂らしても良い。パセリを散らすのは可。ミントやバジル、オレガノとかセージはやり過ぎ。控えおろう。

老ぽて

ジャガイモはポテサラ用の同量を同時に茹でて、発酵バター、黒胡椒で和えて冷蔵しておくまでは同じ。それは簡易ポタージュとして消化される。市販のポタージュ類は液体のレトルト・パウチか缶詰、またはお湯を足すだけの顆粒やカップ入りで、残念ながらお世辞にも旨くない。なので適量を鍋に取り、牛乳、生クリーム、コンソメの素、刻んだ玉葱と合わせて塩胡椒、ゆっくりじっくり沸騰させないようシャンパンを飲みながら加熱する。ベーコンやマシュルームを加えると尚良い。朝のホットドッグやサンドウィッチのお供に。デブること間違いなし。

ぽてぽた

見切られた水茄子に滴る福はあるか?

浅漬けになっているものが標準なのかどうか知らないが、水分が多く皮が柔らかいのでそのまま食える茄子としての水茄子。見た目はやや難アリの見切り品だが、正真正銘の泉州産水茄子77円の20%引きで61円で4つ転がっていたので3個get。土人コミュニティではあまり人気がないのか、知名度がないのか知らんが、昨今売れ残りによく遭遇する。中はきれいなものでおいしく食ったのでした。身を縦に裂いて醤油を垂らし、鰹節をまぶしてムシャムシャ食うだけ。

dc水茄子

老いも極まり、昨今は残り時間を考えて今まで謹んでいたことも色々どんどん速やか+野放図に絶賛解禁している。残念ながら体力や欲望が萎え縮み、潮時を逃した趣向も多々あって慚愧に堪えない。

グリーン車はViewカードを持ってJREポイント交換ができるようになって解禁したのが10年くらい前。今は近郊在来線は400pointsで乗れてしまうという大盤振る舞い。休日祭日もホームの券売機より安くて心服した。まぁ、電車自体それほど乗らないから気にすることではないが、他人とくっつかなくて済む快適さは一度味わうと手放せない。通風で足痛いのに出掛けなければならず、仕事以外で迎車タクシーを解禁したのは3年ほど前。田舎のせいかアプリで呼んでも配車料取られるのは残念。徒歩5分ほどのタクシー乗り場に行けばいいんだが、現金しか使えない個人タクシーがのさばっててがっかり三乗。

食い物は特に贅沢をしているつもりはないが、ドリンクバーやらサラダバーは勘弁、食べ放題は論外、ブッフェも素人料理みたいで貧乏臭くて萎える。料理が適温じゃないし、メニューも在り来りの最大公約数でがっかり、眉を顰める客層と三拍子揃って行く気がしない。まぁ、オレが鈍臭いから気後れしちゃって初めから競えないというのもある(笑)。寄せ集めの残飯処理と見紛うばかりのランチセットも頼まなくなった。高ければおいしい訳ではないが、安くておいしいものはない。稀に遭遇してもそれはその一瞬であって恒常的に食えるわけではない。試行錯誤は必要だが、店や料理人が自信を持って売りたいものはだいたい分かる。だから、その店で最もおいしいものを食べるよう心掛けている。反面、持ち帰りや出前は極度に減った。そのモノが最もおいしく食べれるタイミングを逃すのは勿体ない。酒は元々飲めないし適量かつ控えめ、代わりに和洋を問わず甘味・スイーツの外食を解禁した(笑)。千疋屋とかパーラーとか午後茶完食とかでろでろパンケイキとかフルーツ餡蜜アイス載せとか豆かんとかあんころ餅とかよもぎ餅とか抹茶水羊羹きな粉ホイップ添も食べちゃうんだわ。

中華風サラダ

外食は今まで3000円だったものが4000円越えになっていいはずだが、どこも3300に抑えてその分質を落としてやがる。セット物は見るからに見窄らしくて悲しくなるよな。近郊の鮨屋は概ね1万円越えになっちまうが、仕事先の魚が穫れない港町だとたらふく飲み食いしても1万で納まるのね。ビールと熱燗で抑えれば摘みと刺し身食って後はお任せで握ってもらって7千円代と合理的で、オレみたいなの2時間近く相手していくら利益になるんだろう? 握りもすごく気遣って種を選んで出してくるし、ちょっと摘みにどうぞって中落ちくれたり、お椀にデザートも食べてねって、毎回腹苦しい。苦しすぎて駅前広場のベンチで日向ぼっこしながら30分ほど寝る。鉄道会社がオマエラ電車乗んないから本数減らしたるわとブチ切れたので3月からは45分寝る。一応観光地だから昼営業してくれるのはホント助かる。ウチの辺りじゃ11時から開けてお好みで飲み食いできる鮨屋ってデパートのテナントくらいしかない。夜明けとともに起きて、日暮れとともにウチに籠もる生活をしていると冗談抜きで鮨食えないんだわ(笑)。蕎麦や鰻やとんかつは昼が主流だし、天麩羅は夜シコタマ食えないからいいんだけどさ。中国料理も昼はランチ優先でメニューが限定されるところが多くて困る。

老爺も嗜むほっぺが落ちるサンドウィッチというもの

コロッケサンド

挟むことはサンドじゃない。自分で食うものくらい誰でも自分で作っているだろうが、この国に自ら趣味でサンドウィッチを拵えて悦に入っている老爺は数えるほどいないはずだ。仕事に倦み、人付き合いに飽き、心が疲弊したとき、唐突にサンドウィッチを作りたくなる。奇矯あるいは変態という。うっかり公言すると間違いなく胡散臭げな目付きをされ、へーすごいですねと聞くことはあっても本心は何コイツ? キンモーと思われているのはよく分かる。それでいいんだ。オレもそう思うもの。

燻製鱒サンド作成中

皿に積み上げ、霧を吹いてラップで密閉し一晩冷蔵するからその日は食えないので直接的な腹の足しにもならないという自虐的なトホホ感をしんみりと味わう。コンビニの断面至上主義的ミニチュアは別としても、ちょいとパン屋やサンドウィッチ屋を覗けば彩り豊かでほっぺが落ちそう。調子に乗ってあれもこれも買うと会計がオヨヨ。多品種少量生産だと割高になるのは仕方ないよなぁ。

鮭sw

ハムと鮭燻製は手軽だが、やはり和風サンドの王道はカツサンドだろう。取り敢えず揚げ残り2枚で作ろうと思ったのだが、面倒になってダブルロースかつ丼になってしまった。かつ丼は好きです。昨今はかつ用に様々な銘柄豚の入手に努めている。しかしいきなり銘柄豚のとんかつをかつサンドにするのは気が引けるので、取り敢えずコロッケ・サンドで練習してみた。素材は出来合いの冷凍コロッケ。冷凍のまま揚げて、ソースと辛子をまぶしてパンに挟むだけという油と炭水化物の饗宴、GI値急上昇で快感。

鮭サンドの野菜

コロッケよりも簡単なのが出来合いのレトルト・ハンバーグを挟むサンドウィッチ。揚げる手間がないから朝一で作ってすぐ食えなくもない。付属のソースは間違いなくマズいので味付けは塩胡椒で調整する。贈答品などで貰うレベルのものはソースも悪くないが今は何でもかんでも甘過ぎでパンには合わないと思う。

ハンバグsw

鮭燻製サンドは胡瓜とクリームチーズとディル・シードが必須なんだろうが、薄切りの酢玉葱、柑橘、ケイパーズあたりを加えると風味に幅が出る。最近はインド産黒胡椒の代わりにカンボジア産の黒胡椒の塩漬を使うこともある。生の実の塩漬なので辛味と匂いが素晴らしい、というか絶品。葡萄酒の摘みに齧るのも良い。まだまだ世界には旨いものが満ちている。

塩漬胡椒

ハムサンドのハムは色々試してみたが、しっとりしたロースハムがいちばん。切れてるスライス品は割高だし、厚みが物足りないのでブロックを自分で削ぐ方向で落ち着いた。以前は1.5kg/本だったが最近買おうとしたら1.2kgになっていてふ~ん、割安なセット品は腿肉の端っこの細くて脂がない部分に変わっていて、もう一度ふ~ん。調達先を含め再考しているところ。

ロースハム

カツサンドといえば井泉マイセン万世と相場は決まっていたはずだが、元々どこもちょっとお上品過ぎで物足りない。更にここ数年の傾向として、売場のショウケイスを眺めても貧乏人の決断を迷わせるほどに小体化が進行している。1box完食に5分も掛からんだろ。大都会人の粋な洗練はカッペにとって虚しさでしかないが、文句を垂れるならば自分で作るのが近道である。サンドウィッチ用の肉としてヒレ、ロース、肩ロース(それぞれ輸入肉と国内産自称銘柄豚)を準備したので、最初は最も安価な輸入ロースと国産肩ロースから始めよう。

ハムsw

カツは家で揚げない、天麩羅なんて論外、魚も捌かないのが極当たり前の標準化が進みほぼ達成されたが、魚はともかくとして揚げ物は揚げたてが原則だから、揚げたてを出してくれる手頃な外食店が身近にないと辛いものがある。ウチでは活性炭パックで濾過するオイルポットを使うことで揚げ油の再生利用を図っている。活性炭パックも嘘だろ? というお値段で決して安くはないが高価な菜種や紅花、太白胡麻油を惜しみなく使うには必須だろう。管理も非常に楽なので揚げ物が億劫になることはない。

輸入ロースは1枚100g強にスライスされたもので、ネスパ注文だがこのところ100gで100円を切ることはなくなった。特売で98円/100gだな。背脂はかなり落とし気味でまぁ、良心的と言うべきか。両面から筋切りだけして塩胡椒。

肩ロースは青森の山崎ポーク。とはいってもカッペ舌だもんで同時に食べ比べでもしない限り差異はわからん(笑)。1kgの塊のうち500gを酢豚用に使い、残りを2枚に切り分けて250g/枚にして揚げる。

最初だから、まぁ、あまり細かいことは考えずに定番の刻みキャベツとトキハのとんかつソース、辛子で作ってみた。パンは予め軽くトーストして辛子を練り込んだバターを塗っている。揚がったカツは余熱で火を通しつつ最低30分置く。挟む準備ができたらソースをまぶし、圧を掛けながら挟んで15分後くらいが食べ頃。カツとパンが冷めず、かつキャベツが熱くならない温度管理が難しい。食べる直前にラップ無しで軽くレンジアップするのがいちばん簡単かもしれん。

カツサンド初作

生の卵が好きじゃないから、蓋付き丼など綴じ加減を調整できる手段がないくせにいい加減な状態で提供されることが殆どの卵綴じは外食では避ける。よっぽどのことがない限り。つい先日、仕事先のダム湖の湖畔にある食堂で15年ぶりくらいにカツ丼を食べたが、卵の綴じ加減はかなり緩いんだが蓋付きなので多少調整はできた。地元産の勝手銘柄豚180gほどの肉厚のトンカツに卵も地元産だそうで、かなり甘めの味付けなのだが、ちょっとふ~んという味わいだった。味噌汁、お新香付きで税込み850円。

残り物のカツを玉葱と出汁つゆで煮込み、卵で綴じた熱々の具を丼の冷や飯に載せることで丼全体を一体化し、なおかつ夫々の素材を適温に近づけ、お新香と味噌汁をつけるだけで余計な味付けを施さなくてもおいしく食えるというのが賄の王者カツ丼だろう? 味の落ちた素材を組合せの妙と一体化で在庫処分を兼ねて、なおかつ食えるものにしたという発明でもある。

カツサンドお手軽

少なくとも現代においては、白米、豚肉、卵、どれも品質は遥かに向上し、単独で食べても何ら遜色がないものを、ノスタルジックな一体化という見栄えを除けば、一緒に盛り付けて食う存在意義はないはずだ。そのせいかどうかは知らないが、巷では綴じないかつ丼というものがブームだ。超自慢の超銘柄豚の超熟成肉を超長時間超低温調理、驚く超肉厚、異様に黄色くて甘くて濃厚なコクが売りの超銘柄卵、丼の縁からはみ出すような超盛付、心をくすぐる売り文句と拘りの超素材と超産地(笑)、露骨に超根回しの効いたメディア・タイアップと、超薄っぺらいフードコンサルがバックを仕切ってるのが超ミエミエの、一杯3000円が標準の超豪華グルメ丼(笑)。多くは丼飯に出汁やソースで味付けしたフワフワ玉子を載せてその上に揚げたカツを置き、みんな超大好きな超甘辛タレを掛けるらしいんだが、カツがサクサク? であることが必要なら白飯と玉子とカツを別に盛り付ければいいわけで、昔ながらの定食じゃいけないのか? 定食じゃ器が増えるし、スプーン食いができないから受けないのか? 卵で綴るという本質を理解できない、オカズは何でも飯に乗せなきゃ気がすまない気持ち悪さ、何も食い方まで下賤に合わせなくても良いのに、いくらコロナでダブついてるとはいえTOKYO-Xが可哀想。

で、こういう店って大抵渋谷のちょい奥、あるいは日本橋再開発新興地帯に水天宮とか清澄白河とか(笑)? あの紫の線? 如何にもアー、ハイハイ聞かなくてもわかるわ(笑)って場所に開業して、メディア露出とともに周辺に一気にチェーン拡大していくんだなぁ。配膳も丼が右で汁が左奥とか、凡そ基礎的な教養すら?な上に、食い物に関するセンスが壊滅的に稚拙な料理人以前。増えたよなぁ、この手のプロ飲食あるいは産業飲食とでも言おうか。大商社や大手卸、食品企業と広告代理店が出資した事業会社が企画を立て、業態に見合った店舗と料理人やイケメン店長、従業員を調達し、コンセプトを叩き込み売り方を訓練し、メディアとタイアップし人目を惹く際どい広告を打ち、仲間内の花輪を並べて華々しく開業、サクラを動員して行列の演出から、ネットの口コミでダメ押しするまで。ブームが過ぎればさっさと業態変えて素知らぬ顔で新装開店してる。まぁ、なんとなく狙った店名や入居してるテナント、群がる客層等で判断は付くのだが、見せ方や売り方は今風の巧妙なステルス広告手法だから、釣り上げられる魚の数には困らんわね(笑)。店長以下のフロントエンドはいくらでも代わりがいる捨て駒として扱えるから、歩留まりの良いビジネスの手法としては妥当に思う。

この綴じないカツ丼、相変わらず行ったことがないんだがとうとう廉価チェーン『かつや』までが参戦するらしい。卵で綴る工程がなくなれば調理時間の大幅な短縮につながるし、バイトの技量も必要ないしでいいところに目を着けたよな。こちらもすっかりご無沙汰だが間違いなく『松のや』も追従するので、数年後にはカツ丼のスタンダードが変わってしまいそう(笑)。ちなみに『とんQ』ではカツ丼を扱っていないが、食品工場の滅菌服みたいな出で立ちの料理長はオレがタッチパネルでオーダーすると、やおら背面の冷蔵庫から該当の塊肉を取り出し、俎板にペシッと叩きつけるのだわ(見えないけど音は聞こえる)。ソコから測って毎回ほぼ20分で配膳されてくる淡いピンクが滴るような厚肉の見事な色合い。肉が厚くなるほどピンク色の絶妙な揚げ加減というか、揚げ置きで余熱で火を通しているよう。最大公約数的ランチやバラエティの薄肉はきちんと火を通し、いちばん高価で厚い肉を注文する客の期待にはしっかり応える術を熟知しているな。

カツサンド試作

のっぺりと凡庸で蒙昧な過疎の集落に一軒だけ豆腐屋が残っていて、代替わりしたのかな? 店舗改装して工場スペースが増え、売り場が一人しか入れない程度の超コンパクトに成っていて、Paypayとau-payが使えるんだわ。扱い品目は大豆製品のみで豆腐に加え、がんも類、湯葉や豆乳、おから、白和え、納豆なども扱っているが品目は少ない。カッペ土人なので主に木綿豆腐を買うのだが、一丁260円(税抜)と知ってる人はああなるほど系の真っ白な豆腐である。油揚げもよく買うが1枚100円(税抜)。2枚買うと若奥さんがちょっとひしゃげた奴も入れときますねーとおまけを3枚くれるので、かなり嬉しい。商売とは言えKKR(キモい・クサい・老害)の相手をしてくれる人は今や希少なのである。

豆腐には食品としての規格がないので原材料や製法が違っても誰でも豆腐を名乗ることができる。豆腐の自家製造は相当にキツイ仕事で、かつては朝餉の味噌汁に必須だったから夜中の2時3時に下拵えを始め、朝6時には店を開け、売れ残りを桶を載せたチャリで売り歩いて昼過ぎに閉店。今は味噌汁を自分で作る人もすっかり稀になって、スーパーに行けば日持ちする大量生産品が1/10の価格で買えるのだから、後継者が育つわけがない。

先人が築いた礎の上とは言え、ゼロからモノを作り出す仕事を生業としている負け組だから、他人といえども生みの苦しみはよく分かる。できたものを右から左へ横流して差益を稼ぐ人を見ていると、己の馬鹿さ加減に嫌気がさすし、救いがない。

年に2回のゴーヤはすっかり地元産

spam

10年ほど前までは沖縄産しか見かけなかったゴーヤもすっかり土着化して今は地元産以外を探すのは難しい。プランターでも簡単にできるから作っている家も多いな。学校もヘチマに変わって今はゴーヤだろう(笑)。仕事で特別支援学校に行くと帰りに持ってけと分けてくれたりもする。

ゴーヤ混ぜ2

ゴーヤといえばチャンプルー、チャンプルーにはSpamという思い込みから抜けられないが、一般的には豚肉を使う例が多いようだ。在庫を積み増しておいたからいいものの、Spamもとんでもなく値上がりしていて今や豚の生肉のほうが安いわな。島豆腐は入手性が悪いから概ね木綿豆腐で誤魔化す。豆腐は予めあらゆる手段で水抜きをして、胡麻油を敷いたフライパンで崩さないようじっくり炒めて別皿に取る。ゴーヤは種を抜いて3~5mm厚に切る。苦いのが好きだから塩で揉んだりはご法度。後は混ぜて炒めて玉子で綴ると。

ゴーヤ混ぜ

からあげの堕天才

何が気に入らないのか寄って集ってボコボコに叩くもんだから、近くの店が酷評もろともGoogleMapから消えてしまったじゃないか(笑)。店は何事もなかったかのように営業してるが、海苔弁とからあげ10個のファミリーセットも直ぐ作ってくれて対応も親切で悪くない。からあげ5種も以前より大振りに感じるし、カラッと揚がっている。

からあげのみならず拙速とも思える先読みで弁当に進出し、今はスイーツ展開を見据えた六本木クラス(なんじゃ? それは)と矢継ぎ早に新機軸を打ち出す変わり身の速さが「変わらない+変わりたくない+決断できない」の新3K社会に疎まれているのは想像に難くない。他力本願+責任取りたくない+身バレ忌避の雇われ愛好者にとって、あの佐川のセールスドライバーから一代で成り上がったオッサンは不倶戴天の仇敵らしいな(笑)。

麦トロ老もぺろりの哀れな食卓

麦10%

とろろ芋(正確には長芋)が安かったので、麦飯を炊いて麦とろ飯だ。米は七分搗きがウチの標準。麦はもち麦という広島産の大麦を使っている。山芋や自然薯は高価だが、長芋は安い。保存もかなり利くので天麩羅や和え物にしてもシャクシャクでおいしいが、摺り下ろすのが最も簡単でかつ含まれているビタミン類を壊さない。外で食べるとろろはたいてい出汁と醤油で味付けされているが、ウチでは芋を下ろすだけ。飯を盛ってからとろろを適量流し、醤油、海苔、山葵、三つ葉などを散らしながら食う。

とろろ麦飯

オカズは定番の目差しがあれば完璧。鰻の蒲焼きや白焼きも組合せの妙だろう。春菊の胡麻和え、豆腐、酢の物、味噌汁が付けば言う事なし。書いてて食いたくなってきた。

Hotdogs

3連ホトドグ

近くの廉価食品スーパーで廉価なのにしょっちゅう売れ残って20%offになっているHotdog用6本入りのパンを買い込み、これまた廉価なB級ソーセイジを挟んでJunkの極み。このパン、典型的なメーカー量産品ではっきり言ってマズい。具を挟めるように最初から割れているのはいいんだが、見事なくらいフニャスカなので一旦トーストしないと食えたもんじゃないんだが、Junkといえばその通りにしてそのものなので理には適っている。ちなみにソーセイジも誰もが知っている国産メーカー品なのだが、これまた肉々しさの欠片もない竹輪麩みたいなソーセイジで情けないことこの上ない。海外仕様で作られた生ソーセイジやリングイッサとは言わないが、100歩譲ってジョンソン・ビルや米久あたりが腸詰めとしては最低限のグレードだろう。

6連

焼いたパンの割れ目の片側にバター、他方にマスタードをたっぷり塗る。ソーセイジは少量の湯で茹でて水分を飛ばし、羊腸が裂けぬよう軽く焼き目をつけ、黒胡椒をたっぷり、岩塩を軽く振る。迷うのは菜っ葉。生のレタスを挟むか、千切りキャベツをクミンで炒めたものを挟むか、どちらも決め手に欠ける。辛味は刻んだハラペーニョの酢漬けかチリソースで補う。好みでトマト・ピューレかケチャップを振れば出来上がり。チョロすぎて欠伸が出る。


2023/01/14 作成__2023/01/14 最終更新