一抹の不安

近くにまた買物商店街ができたそうで最果ての寒村なのに変なところで道が混んでおるわけですが、こちとら寒いわ、雨がパラつくわ、最悪の天候のなかをピンポン・ポスティング88軒+α。大事なのは訪問したという事実なので、適度に留守か居留守がいい(笑)。日常的に仕事で紙ゴミをポスティングして歩いてる爺さんの気持ちがわからんでもないな。ヘロヘロになって街道筋の洋食屋に出掛けたら、店主急病で無期閉店だと。親父が一人で切り盛りする店にありがちな状況だが、そういえば、敬愛していたとんかつ屋も親父逝去で休業中(今は奥さんが継いで再開?)だった。うちも、いずれ同じ道を歩むのだろうね。間違いないわ。

老人、蟹に会う

フツ~の人が敬遠するものでも、恥を知らず安けりゃなんでもいいをモットーに生きているせいか、選択肢は概ね無限に広がるというもの。この季節、いつ頃からか誰もがこぞって買い求める倉庫から出したてのズワイガニやタラバには目もくれず、珍昧でみすぼらしい小ガニをチマチマ蒸して食うことの身の丈に合った諧謔にして法悦。

蟹裏

腹が丸いのが雌、三角なのが雄である。爪にモズクみたいな藻をくっつけておるので、シナモズクガニというのが名称なのでしょうか? 紐付きのまま適当に洗って、紫蘇の葉を敷いた蒸籠か蒸し器で10分強蒸すだけ。残念ながら5年ほど前から活きでの輸入が禁じられ、素人が入手できるのは冷凍モノだけだが、カニ味噌を温めた紹興酒で啜りながら、生姜と鎮江黒醋で食うのはオツなもの。ガラは貝柱と合わせ翌日のお粥の出汁にと徹底的に利用しちゃうのである。

蟹表

鰻も最後の一枚を摘みにしちまって、そろそろ季節も頃合い(1年で最も安い時期)かと16尾/5kgだから3Pの特大。もちろんナカクニ産。広東や福州の水温の高い、得体の知れぬ豊富な栄養分の養鰻池で養殖され、女工さんが目にも留まらぬ速さで捌き、炭火工程を含むラインで白焼き+蒸し+蒲焼きされ、アイヤーと冷凍されたもの。鰻は大きいほど安い(いちばん高いのは5P:5pieces/kg、頭と骨取って150g程度のもの)ので、飯を覆い尽くさないと気が済まない乞食飯にはぴったり。

10kg買おうか迷ったのだが、南方ではシラスウナギの漁獲量が去年の20倍らしいし、おまけに冷凍庫は得体の知れぬ肉塊と深海魚の切り身、セロリ餃子や羊餃子でいっぱいで、今回は諦めた。冷凍庫買うか。いや、本来冷凍庫を置く場所は本棚が専有しており、可動書架を設置しないと冷凍庫を置く場所がない。可動書架を設置するには中身が詰まった本棚をどかさねばならないわけで、なんという5年計画。ぐぬぬ。

鰻重

蛤なんかも隣に並んだ1個200円(それでも以前に比べりゃ半値以下)の千葉県産チョウセンハマグリを尻目に、手が出せるのはナカクニ産シナハマグリに決まっておろう。持ち帰って冷蔵庫で一日くらい放置しても、イカン忘れとったぁ~と塩水で砂出しさせると、吹くわ吹くわ。他の貝に這い登ってボウルから逃げ出そうとする個体までおって、ナカクニ産の生命力は侮れない。

半額支那蛤

網で焼いて蓋が開いたら醤油を垂らすだけという、原始的焼き蛤がお手軽で失敗はない。蛤といえば江戸の昔から桑名の焼き蛤だが、今でも固有種が残っているのだろうか? 東京湾産の固有種は既に絶滅した。今、千葉県産としているものは鹿島灘や九十九里でとれたチョウセンハマグリ(外来種ではなく外洋種とでも言うべきか)を銚子や片貝に揚げたもの。

半額焼蛤

半生に湯掻いて、冷ました漬け汁で数日じっくりと味を染み込ませる煮蛤は良い酒の肴になる。鮨ならば、柔らかく煮付けた大きめのものに包丁を入れて、ずるっとシャリに載せ、詰めを垂らした煮蛤の握りは貝ネタの最高峰と思うが、技術の継承に難があるのか、味わいが陳腐化しているのが残念だ。

半額煮蛤

鮟鱇も妖しくて、やはりナカクニ産を常用する。肝は専門店需要があるので量がなく、鍋セットの類にちょこっと載っている肝は皆コレであるのだが、あの手の半調理品は加工食品扱いなので産地表示の義務はないんだな、これが(笑)。

支那鮟肝

モノによっては生臭く、臭みを取るのに苦労することもあるが、これは手抜きでも遜色なしの良品であった。けっこう細かく血管抜きと血抜きされていて、ほとんどそのまま使えてコンビィニエント。ココの魚屋は仕入れ担当がなかなか目利きで、良い日(漁獲+市場+買付)に当たると心躍る。

半額万歳

毎度お馴染み得体の知れぬ赤魚やら解凍エビも半額が相応しい。赤魚は粕漬けだから焼くしかない。アスパラはこの時期豪産が手頃で入手性が良い。

半額赤魚

ブラックタイガーとしてすっかりメイジャーになった牛エビは背わた抜いて、殻毟って、曲がらぬよう串に刺して軽く湯掻いて冷水に取る。開いて甘酢にでも漬けようかと思ったが、面倒になって醤油と胡麻油と黒醋と唐辛子と生姜と黒胡麻と葱でこさえたつゆで食べることにした。凡庸だったと反省した。

半額偽装車海老

半額というよりは捨て値。投げ売りしてた台湾産シナチク400g。これは青天の霹靂。もっと買っておけばよかったと激しく後悔した。

有明鳳凰メンマ

まず、辛い。透明感のある辣油漬けなんだが、竹がパリっとして繊維がしっかりしている。麻竹を使用している模様。角柱状で食感と柔らかさのバランスが絶妙。ラーメンに一般的に使われるフニャフニャの甘辛シナチクや和食の筍の煮染とは雲泥の差というか、全くの別物である。筍の扱いの素養の差というべきか。

胡麻振っただけ

■水茄子■

今年は何故か夏の間は見かけず、季節外れ? の11月になってお目見えした泉州水茄子。相変わらず高いが、あれば買ってしまう。切れ目を入れて手で毟り、そのまま食べる。糠漬けにしても美味であるが、漬ける前になくなっちゃうんだな。泉州の人は毎日食えたりするんだろうか? そういえば水茄子定期預金(利子代わりに水茄子くれる)というのがあった。決済用を除いて円預金には手を出さないのだが、水茄子くれるならやってみるかな?

水茄子割いただけ

■豚バラ塩漬け■

普通のカナダ産豚バラ肉を塩漬けにして水抜き後、脱水シートで包んで冷蔵3週間ほど。最近は塩少なめで、早めに脱水シートに包んでしまう。削ってそのまま食える程度の塩分で処置している。この脱水シートは非常にスグレモノだが非常に高価。で、ついケチりたくなるんだが、その場合は塩多めでスパイスふんだんに使わないとちょっと怖い。

豚バラ塩蔵

■無残■

うるめイワシ無残

潤目

誰もが馬鹿にする量販の片隅で、オヤ旨そうだと買ってきたはいいが、忘却の彼方。冷蔵庫で3日放置の刑に処され、時既に遅し。脂回っちゃったわ~。

ぶらぶら

仕方ないので2枚に下ろし、塩水漬け。割り箸に刺して一日放置で脱水、干物化。軽く炙る。干物を買わなくなって久しいが、各種の調味料や多糖類、化学出汁を加えたアミノ酸調味液に漬け込んだわけではないので、昔の干物の味がする。

ダブル潤目

穴子無残

野締めだけど結構な大きさだったのでつい手が出た。兵庫というのが明石・淡路なのか、城崎・香住・浜坂なのかは知らん。意味あんのかね? この表現。300g超えの大物。心底羨ましいな。兵庫の人たちは当たり前のようにこれを焼きアナゴにするのか。

2x穴子

頭と骨は焼いて蒲焼のタレの出汁にするからありがたい。ちょっと俎板が小さくて難渋したが、捌いて、皮目を湯霜していつもの煮穴子に。

解体中

調子に乗ってやり過ぎた。手ですくい上げることができず、1尾は際限なく、慌てれば慌てふためくほど分裂してバラバラ。穴子丼ならぬ穴子無残丼のできあがり。

無残丼

■おおお■

シラス・桜海老

おお。さすが国産。目が眩むほど高価だが、代替品は見たことがないので仕方あるまい。桜海老は山葵と煮切り醤油で。釜揚げシラスはいろいろ産地を選べるが、うちのあたりでは生は静岡くらいしか手に入らんね。鮨屋も似たり寄ったり。たまに愛知か三重産、瀬戸内淡路産があったかな? 生姜と青葱、再仕込醤油で。酒を振ってもいいかな。随分前、女人3名に請われ沼津に出掛けた折にシラス丼が有名と聞いて海鮮料理屋に入ったことがあるが、嫌な予感がしてオレはウニだけ頼んで酒を飲んでいた。ウマウマ。頼んだシラス丼が出てきて絶句。酢飯でもない丼飯に釜揚げシラスが山盛りになっていて、3名涙目。あんなモソモソ、胡瓜とタコとワカメなんかで和えて甘酢で締めなきゃ喉通らんだろうに(笑)。

シラス+桜海老

赤海鞘

珍しく赤海鞘があったので手が出る。貝じゃなくて原虫だけどね。法螺か?(笑)。オホーツク海が主産地で、真ボヤと異なり外観に刺がなく滑らか。ヌボ~っとした見映えだが外殻はけっこう硬い。+の水管を落として、ホヤ水をボウルに受け、ハサミを突っ込んで外殻をジョキジョキ切る。殻を剥いたら根元を切って、内側の黒い内臓の部分を削ぐ。後は適当にぶつ切りにするだけと簡便至極。

2x赤海鞘

ホヤ水に少し酢醤油を足して食うのが一般的か。真ボヤより香りが強く、色味も濃い。価格は天然真ボヤの倍くらい。ホヤなんぞ見るのも嫌という人が多いから、この値段で治まっていると考えるべきか。良かった良かった。

海鞘酢

数年おきに役場に出向いて身分証明書、帰るついでに法務局でデナイコト証明書を取らねばならぬのだが、昔は運転免許証に表示されていた本籍が空欄になったおかげで、役所の戸籍係で慌てた(笑)。1980年代に町名と丁目が動いて余計混乱した地域だが、まぁ、今の役所は親切だからウロ覚え番地くらいちゃんと探してくれて事無きを得た。しかし、わざわざ隠すようにするならIDはもう一本化すべきではないか? 家制度なんて、もうとっくに死に体だろうに。

■燕麦にまつわる悲しい事情■

燕麦のココナッツミルク煮

牛乳は中学の給食を最後に飲んでいないが、ココナッツクリームは意外と好みに合う。ココナッツの実を買ってきて、穴開けて飲むのもいいが、果肉は多かったり少なかったりで外見からはよくわからんので、紙パック品や缶詰を重用することになる。値段と中身が比例しないことが多いのである程度の経験が必要になるが、最近はもっぱらタイかインドネシア産が多い。

燕麦はUKやカナダ産がオートミールとして商品化され流通している。小麦より若干北方で栽培されているようだ。北海道産もなくはないが、価格は呆れて手が出ないレベル。塩を加え、水とココナッツミルクで少々煮込み、器に盛る。トッピングはクランベリィとレーズン、木の実。ジャムやチーズを下ろすのも良い。初めて食ったのは小学生の4、5年の頃で、その乳臭いモソモソ加減に、なんじゃこりゃ? とタマゲたものだが、作るのが超お手軽なので最近はパン代わりによく作っている。

オートミール

燕麦食が増えているのは好みのパンの入手が難しいという悲しい事情が背景にある。高齢化と過疎がもたらす頑迷で保守的なまでの後進性は、本来良質なはずの商品の価値を殺してしまう。お菓子のような味付けパンではオカズの付け合せにはならない。

バタール

鉄道系量販店で最近見つけたこのバタールは工場配送品のくせに皮がきちんと焼けて小麦の味がする、余計な味わいが添加されていない、塩味が効いているという三点で基礎的な条件を満たすが、いかんせん高い(笑)。長さ40cm程度と小振りな割に、従来の許容二店舗に比べても、いちばん高いぞ。おまけに毎日あるわけじゃない。4種扱っているバゲット、バタールのなかで、どうでもいいのはいつも残っているが、これだけ無いときがある。パン一本買うのに三店回る絶望感は半端ではない。


2013/12/28 作成__2013/12/28 最終更新