無想無念

陽は一日ごとに伸びていくが、どうも飽きてきたせいか、外食がめっきり減っている。タダ券消化も義務感のみ。弁当屋や牛丼屋のものは全部あげてしまった。毎度の鮨以外は食べたいものがないし、何を食ってもおいしく感じない。何か面白いもんないすかね? ワクワクするような鮮烈な風味と、お代わりしたくなるようなマッタリ感。一方で、巷を席巻する“チキン”の隆盛には目を疑うばかりだ。メニューが変わる度に器が綺を衒い、“チキン”ばっかり増える大戸屋の端的な戦略は支持するが、マクドに至っては“チキン竜田”に“チキンフィレオ(Chicken-Fillet-を?)”? 何屋なの? もう開いた口が塞がらない。松屋フーズの和食系列だったはずの松乃家もいつの間にやらカツ専門に戻って、やっぱり“チキン”カツなメニューを手を変え品を変えで呆れる。松乃家は作る人間に依って、カツの下の網があったりなかったりするエクスペリメンタル・レベルだが、荒目のバリサク衣でただでさえ油っこいんだから、手抜き加減は統一した方がいいと思うね。豚は外国産も安い牛と大差なくなっているから、ヘルシーエコ志向を擽りつつ余っちゃってどうしようもない在庫一斉処分の放出冷凍鶏を使えば馬鹿みたいに儲かるのはわかるんで、利益率をガンガン上げてその分四足肉利用者に還元しようというなら心から理解して歓迎するよん♪

■やっと新米

昨夏の古米30kgをようやく消化し、遅ればせながら新米。鳥海山西南麓のササニシキ玄米30kg。今年は二等米だそう。今となってはけっこう入手に苦労する品種の上、非JA、混ぜ物なしの単一産地・単一農場の単一品種・自家収穫・自家袋詰め、自家出荷で、農政事務所から検査官が来る農場検査米ながら1万を切るのが魅力。一般的にJAや卸が流通させる場合は二等米が店頭に並ぶことは普通ない。出来の悪かった産地や田んぼの米も良かったものと混ぜることで全て一等米にすることができるから。一等と二等の差は外観で欠米や白濁が3割以下が一等、4割以下が二等。50%の二等米に出来の良い50%の一等米を混ぜれば、全体が一等米になるという仕掛けですね。大事なのはラベリング。見映えと美辞麗句。ヘルシーとエコ。どうせ味なんかわかりゃしないって。例え○○100%、☓☓県産○○と表示されていても、米はブレンドが基本だね♪ 混ぜれば安心・安全。牛乳もか♪

白飯

30kgの米袋で買うのだが、一応添子ちゃんを突っ込んでしばらく測る。検体量が多ければ時間を掛けるとそれなりに反応することもあるので、オモチャでも意外に使える。米は胚芽にカリウム(一部がK40)が多く含まれているから若干高めの数値を示すが、古米の計測記録と同じだから良し。さすがに水分が多く、柔らかで香りもしっかり残る。柔らかでもコシヒカリ系のように甘くないし粘らないからソッポを向かれる昔のお米。日本人特有の白米信仰は持たず、米の消費量は世間一般の半分以下(玄米で年間30kg)なので、どうせ食うならあらゆる品種を比較検討した上で、価格品質比の良い物を選ぶよう常々心掛けている。

3ヶ月ぶりに回高屋に出掛けたら、3時までの禁煙タイムが夕方5時まで延長されていて喜ばしいが、バイトのネーちゃんがちんちくりんで愛嬌に欠けるという劣化改悪が施されていて残念至極・無念無想。年に数回a.m. 10:30の開店時に朝飯を食いに行くことを旨としているが、5分おきくらいに入って来る客はぱっとしない、薄汚い貧相なオヤジとジジイばかりで、心底嫌気が差すことは理解する。馬鹿の一つ覚えのようにタンメン大盛り・餃子・タンメン・タンメン大盛り・半炒飯の繰り返しだもんな。うハッ。おまえも同じオヤジだろ? と言われると言い返せないけどな♪

鰻は流通量が若干回復基調に入りつつあるらしいが、すっかり高値止まり。活鰻は人件費を掛けられる分、質が高くなる中国産が国産の2割高といったところ。そのうち隠し切れなくなった東日本の曰く付きがシレッとホッカムリして流通しそうだな♪ 松茸や鰻は高価で需要が逼迫していて必ず買い手がつくから、麻薬並みの対処が必要じゃないか? 重武装の自衛隊で取り囲んで火炎放射器で公開焼却処分でもしない限りは確実に出廻る(笑)。ワケあり品になるのか、西日本産が大豊漁になるのかは知らん♪ 手を広げ過ぎた鰻屋はご愁傷さまだが、この高値が鰻離れを引き起こし、7月のお祭り騒ぎが萎むのは良いことに違いない。すき家や吉野家を含め、弁当屋や量販店で安直で形骸化した加工鰻を扱うことができなくなる程度に、量と価格が決まれば良い。特定の人が特定の金額を払ってありがたく食べるものに戻ることが、江戸から細々と続く鰻料理という技術の継承と食文化を守っていくことになるだろう。平等とは誰もが同じことを為すことではなくて、各人の素質や素養に応じた生き様を追求していく機会を妨げるものがないという状態を指すはずだ。だから、好みの酒を酌み交わし、うざく、肝串、う巻き、白焼き、鰻重、肝吸いといった塩梅で、年に一、二度、ゆっくりと時間を過ごせれば、オレはそれだけで十分だ。

■長茄子糠漬

米の消費量は年間で玄米30kgぐらいだが、米を食うと糠が出る。糠を減らそうと胚芽仕様で精米したりしているが、それでも発生する糠の量は馬鹿にならん。ので、糠漬。いろいろな糠漬があるが、個人的にはやはり茄子に尽きる。博多長茄子を3本。漬け込みは常温(18~24℃くらいか)で2日。ちょっと漬け過ぎた。なかなか売り物のような色にはならない。塩を擦りつけて糠に漬けているだけなので、売り物のような甘味やアミノ酸添加による旨味は一切ない。糠から出しても一日置くだけで醗酵が進み、色は落ちるしどんどん酸っぱくなるので、食い時の見極めが難しく、現代の一般向けには辛いところ。瞬間の美味を味わう。

茄子の糠漬

■牛焼肉

魚が食えないと肉が多くなるのは仕方あるまい。魚と違って包丁捌きしなくていいし、焼いている間は他のことをできるのも合理的。焼き加減は機械だからロー・テクで泥酔してても味は変わらんからお手軽で安直とイイコト尽くめ。

サーロイン塊

◇肩肉版◇

岡田屋で肩ロースとして売られていた肩肉ブロック。薄く切ったものしか置いていない場合でも、店員に塊クレといえば出してくれます。100gで88~98円くらいのもの。700gほど。適度に脂の入った後ろ寄りの部分に見えたので丸ごと焼いて半分に割ってみた。塩胡椒を手で擦り込んで、オリーブ油を敷いたパンで外殻だけ焼き目をつけ、アルミフォイル包。オーブン150℃で25分。庫内放置20分。ソースは赤葡萄酒(シラー)とバター、野菜適宜、塩胡椒。薬味はホースラディッシュと山葵の合わせ練り。ソースの野菜は厳密には漉すべきだが、ま、いいじゃん。オレが食うんだもの♪

肩肉塊

一人前250gほどに切り分け。溢れ出た肉汁と共に皿に盛る。リブロインほど柔らかくはないが、ナイフはスッと入る。ムッシャムッシャと食いごたえのある肉々しさが旨い。肉そのものの旨味が強い部分なので、肉好きのための肉だよね♪

薄切り+レタス

200gほどを余らせて、後日冷えた塊を薄切りにしてレタスに盛る。パンにバターをたっぷり、ピクルスを載せて、レタス、肉。味付けはマスタードでも山葵にグレービー・ソースでもお好きなものを。ビールは黒がいいが、葡萄酒なら辛めのシャルドネかな。軽い赤のテンプラでもいいな。

◇サーロイン版◇

焼付け

これは1kgのサーロイン・ブロック。100gで300円くらいの豪産。焼きは同上。塊が大きいぶん、時間若干長めで。両サイドを落とし分割した一人前350gほどがオカズとして適量になる。付け合せにマッシュト・ポテト3個、スープとサラダといった組み合わせ。サーロインだから肉質は柔らかく、旨味も程良く乗っている。必要以上に脂っこくないので、赤身肉が好きならば量が多いとは思わないだろう。

サーロイン・ローストビーフ

同じく余らせた300g程を薄切り。売り物ほど薄く切ることは無理だが、肉質が良ければ多少厚くとも無問題。マスタードで食べてもいい。

サーロイン・ローストビーフ・カット

後日オープンサンドで食べる。バターは塗るというよりは、置くぐらいの感覚で。レタスやピクルスも合わせて肉汁がバゲットに沁み込むのを阻止する。さすがはサーロイン。こりゃ、いいわ。パンの固さと肉の柔らかさが程良いバランスで、ピクルスの酸味が優れたアクセントになる。

ローストビーフ・オープンサンド

一般食品に含まれる放射性Csの新しい規制値が4月からようやく100Bq/kgに下がった。加工品は検査品目が少ないし、生鮮も統計学的には無視し得るほどの極めて小品目の恣意的サンプリング検査と、利害当事者が行うお手盛り検査にどこまで信憑性を期待できるかは別として、100を超えていると低レベル放射性廃棄物を食べても良いという論理矛盾を起こすし、出荷自粛を要請したところでホトボリすら冷めぬ内に全て出廻ってましたぁ~という現状を鑑みて、将来に渡って一切責任を取らないためにはインチキもほどほどにしとけよ? オマエラ! という姿勢を取っておいたほうが得策と厚労省レベルでは防衛本能が働いたのだろう。100という数字は流通する食品の半分が汚染されていると仮定して、それを摂取しても被曝量が年間1mSvに納まるという原子力推進団体ICRPの推奨値をそのまま採用したにすぎない。尤も、ICRPの1mSv/yは総被曝量であるわけで、ここに毎度お馴染み、巧妙(でもないか:笑)なすり替えが紛れ込ませてあるわけだね♪ 食品による内部被曝量を1mSv/yに抑えても、うちのあたりは外部線量が0.15μSv/hほどなので、外部被曝線量を年間で1.3mSv加え、更に皮膚接触や粉塵、花粉の吸入を考慮すると、総計で3mSv/yの被曝線量になると想定しなければならない。後者2つを減らすにはこの汚染地から出るしかないわけで、それは余命を勘案しながらの中期的な課題になろうが、取り敢えず今できることは食品からの内部被曝をいかに下げるかということに尽きるよね♪ 最近輸入されたポーランド原産のブルーベリー・ジャムが、あれま200Bq/kg超えちゃった♪ という現実を見れば、そのうち何とかなるってわけじゃないんだな(笑)。おいおい、地獄のカーニバルはまだ前夜祭の宵の口じゃないか。75日で忘れてくれるのなんて人間だけだって♪ もう、ぐっちゃぐちゃ♪

何を考えてんだか、パン屋に出掛けたら並んでいる半分ほどの菓子パンや惣菜パンが緑色。抹茶パンと薩摩芋パンばっかりで仰け反った。緑茶はヘルシーで安心と安全の代名詞のようなホっと一息だからね♪ 今年からは抽出後の液体で測定するように測定法も変わったから全てノープロブレム。濃くも薄くも自由自在(笑)。最初に注いだ湯は捨てるんだっけ? もう、中国茶の作法だな♪ 茶葉の天麩羅、茶蕎麦、抹茶アイスにソフトドリンク、和菓子からパンまで、低レベル放射性廃棄物だって堂々と売れるというこの世の不条理と人情喜劇を、ただ平然と傍観していくのが与えられた努めなのだろう。この先ずっと♪

■蛤

10円/個くらいの中国産蛤。養殖モノと思われる。最長部で5cm弱と小ぶり。まぁ、蛤の場合大きいと固くなるので、最大でも5~6cmに抑えたいところではあるか。最近のものは砂抜き加工済みとみえ、わざわざ塩水に漬けて砂抜きしなくても良いようだ。取り敢えず吸い物、残りは煮蛤にしようという目論見。

吸い物

殻ごと流水で洗ったら、鍋で水から茹でる。口が開いたら、蛤のみを取り出し、残りは灰汁を取って吸い物用と煮蛤用に分けておく。吸い物は酒、味醂、淡口醤油で調味。煮立ったら蛤を戻し三つ葉と生麩を添える。煮蛤は蛤を煮立てた出汁汁に味醂、濃口醤油、砂糖を加え、弱火で1/3量ほどに煮詰め、冷ます。冷めたら殻から外した蛤の身を加え、漬け込みながら冷蔵庫で一晩寝かす。

■芋とカレーの情緒的結託

揚げ芋

カレーは世間的には白飯と合わせ盛りカレーライスとして食うことが一般的であるようだが、時折自分で作るカレーは基本的に白飯に全く合わない。どうやっても煮込み風のオフクロカレーじゃなくて、スパイス薬膳になっちゃうんだわ。勢い、最適はチャパティ、パパド、ナン、或いはパンで食べる小麦系か、穀物としての芋になる。最近は小麦練るのが面倒だから芋が多い。カットして水に晒してフフンと揚げるだけと簡単至極。芋はジャガイモ。サツマイモでもいいんじゃないか? 狐色。カリカリに揚げたら油を切って、熱いうちに塩胡椒、モルト・ヴィネガーを好みで振り振り後は食うだけ。カレーはシンプルに具といえるのは鶏手羽のみ。

チキン・カレー

■君も知るや回転寿司

カウンターに座り、ネタケースを眺め、食べたいネタを頼むと即時に握り、下駄に並べてくれるオンデマンド鮨を初めて食わせてくれたのは父だったが、それから数年後、70年代中頃と記憶しているが、初めて回転寿司に連れていってくれたのは、新し物好きで食事の支度が大嫌いを自認していた祖母だった。屋号は「元禄寿司(今はもうない?)」だった。システムあるいはモードとしての回転寿司が市民権を得る以前の遠く懐かしい時代の話。ネタは今とは異なりごく普通の鮨店で食える上寿司と同等程度。ネタが小さかったり薄かったりすることはなく、普通の鮨職人がレーンの中央に立って、人力で握ったものを皿に載せて流していた。正直、味は憶えていないが、食いたいものをどんどん食えというから、片っ端からどんどん、どんどん、「おばあちゃん? お金、大丈夫?」くらい訊いた気もするが、育ち盛りだから際限なく食った憶えは残っている。祖母は海辺で幼少期を過ごしており、当時の流通事情と鮮度維持技術で並べられた都内の魚屋の魚は食えなかったという。確かに回転寿司では鮪の赤身と玉子と巻物ばかり食っていた。

それから十数年、居所の近くの商店街にマイナー・チェーン?(今となっては名前不詳)の回転寿司が新規開店し、数ヶ月経った頃、懐かしさに釣られ入ってみた。皿の柄で値段が変わるタイプで、レーンに皿は流れているが、職人がレーンの中央に立って、頼めば直ぐ握ってくれるタイプ。シャリもマシンじゃなくて人力。レーンに載らないマイナーネタを頼むと瞬間的に客を見極め、喜んで握ってくれるところだったが、高額ネタにはいろいろ無理があった。2度ほど利用したが、2度目は明らかに質が落ちており、コリャ、ダメだろうと思っていたら、数カ月後、しばらく店に明かりが灯らない日が続いたと思ったら、ドアに債権者やら裁判所の告知が貼られていた。全てオッポリ出して夜逃げしたと思われる。

それから5年後。次は近在の岡田屋内にテナント入居していた、中規模くらいのチェーンだったかな? 小樽か函館か憶えていないが、素人受けするしょうもない寿司屋にありがちな北海道(北陸だったかも)の地名を冠していた記憶がある。今はもう別テナントに入れ替わって存在しないが、同行していた老人が寿司以外は食べたくないとごねるので、おっかなびっくり。予感は見事に的中し、入った瞬間帰りたくなった。回っているものも、メニューを眺めても、正直食いたものがなかった。絵の具で染めたような“何か”の赤身に悶絶して、恐る恐る、回っていないコハダ(笑)とアワビ(爆笑)を頼むが、予想通り冷蔵庫からスライス済みの冷凍パッケージものを取り出した。それをへなちょこバイトがシャリマシンから出てきたオニギリに載せてるだけ。もちろん、コハダじゃなくてコノシロ、アワビじゃなくてロコ貝。冷凍焼けしてるしどちらも臭い。シャリは甘いわ酢の味がしないわでサイテー。何じゃこれ? 口に合わないを通り越して、鮨を残した初めての経験を作ってくれた。

そして、今回、たまたま通る道筋にあって、皆おいしいと褒めるから是非行ってみたいと老人に執拗に要求され、まぁ、時代と共に品質は改善されるものだし、時勢に準じた風俗文化を嗜むのも暇つぶしになろうと、モノは試し。行ってみないで語ることはできないとも思い直し、人生初デビューが大手100均チェーンの「あきんどスシロー」と「かっぱ寿司」。近在には各々2店舗ずつがほぼ対面に軒を並べるが老人の足では車がないと行けない。オレの足でも行く気はしない距離ということは、飲めない仕様なんだろうと割り切って正解。以下は各2店舗計4回の感想。

平日の午後。郊外型の重量鉄骨造2階建て店舗で1階がすべて駐車場。プロトタイプを敷地に合わせて嵌め込むだけという値切りまくった杜撰な設計施工。サービスバック側にDWはありそうだが、客用EVはなしと、凡そバリアフリーには程遠い安普請の極み。少なくとも現時点(2012年4月)ではユニヴァーサル条例には引っ掛かりそうだし、イニシャル500万、ランニング数十万をケチって将来の客を逃すんじゃ基礎的な経営感覚に疑義を感ずる。階段を上がった内部は間仕切なしの大空間に2レーンが並列。それを囲むように席が配置されている。レジ前に広いソファ付待合スペース(50㎡くらい?)があって驚く。何スカ? この無駄な空間は? 店員の誘導案内は適切で、初めてでも不明な点はなかった。BOXシートかカウンターを選べるそうなので、眺めてみたが実質的な差は何もない。老人連れだし荷物があったのでBOXを選択。シートは5年ほど前を最後にご無沙汰しているファミリー・レストランのようだ。席の端部にレーンが接し、その上部に液晶の注文パネル。2010年産と謳われている粉茶を自分でサーブ。これなら来年以降は白湯で対応できるね♪ 四角いツボに甘酢生姜。その横にプラ箸箱と個パッケージのワサビやタレ? プラスチック製の醤油皿はレーンの上の棚。

稼働しているレーンは半分。2レーンの一つだけ動かすところと、レーンの途中でショートカットを作り2つのレーンの半分が機能するようにしている店舗があった。昼を外した時間帯だが3割ほどの入りと客は思いの外、入っていた。うだつの上がらない職人風やくたびれた営業サラリーマン風情はカウンター席に充当される模様。パッと見は、いたいけなお子様を引率した御家族様御一行やオシャレでナウなヤングのグループ、雄雌のツガイなどが幅を利かせており、椅子の上に立ち上がってドタバタ喚くお子様と一緒になってお遊戯に耽る親御様や、BOXのどの位置に座るかで突っ立ったまま延々と家族会議で揉めて、罵り合っている親子3代計6名や、椅子の上にうんこ座りした雄雌様がテーブルに突っ伏してスマフォでゲーム? している辺りがデフォルトな御客層でしょうか? オバちゃんパート店員は眉一つ動かさずに完璧な鉄面皮を保持していて、ちょっと怖い(笑)。オトト。女子供が多い店は基本的に苦手というか、経験的に旨くないし価格に見合うものが食べれないという、飲食店として致命的な欠陥を抱えていることが殆どなので、やはり鬼門だったのでしょうか?

回転するレーンをしばらく眺める。腹は酷く減っている。話には聞いてたが、うどんやプリン、ケーキにデザート、天麩羅やハンバーグ、唐揚げ、揚げた芋、揚げ物を寿司にしたような創作アイテムが目の前を流れると、あまりの場違い感にさすがに目を背けたくなる。一方でウニやイクラ、鮪、貝といったネタは回っていないのね(笑)と思ってメニューを見たら軍艦は半分胡瓜(笑)。いくら冷凍だからってウニやイクラに胡瓜は合わないだろ? そんなもん頼む人はいないから回ってないのか。了解した。白身もない? 青魚は鯵や鰯、〆鯖はときおり視界の隅を掠めるが、味わう以前の問題で見た目が完全に無理。後ずさるレベル。一方、鮨の代名詞でもあるコハダはメニューにすら載っていないことに驚いた。店に入った時の酢の香りとコハダの仕込み加減でその鮨屋がどんな鮨屋か一発でわかるのだが、その効率的で無謬の判断基軸を予め封じ込めるたあ、なかなかやる? じゃあないか。

代わりに、炙り○○だの、弛緩して白く不透明になった海老? の類、ビントロ? 何だそれ? ○○トロやトロ○○って新生命体? 最近よく聞くけど? セシ入りペレット餌の味がしそうな脂がでろでろに光ったハマチ? カンパチ?、向こうが透けて見えるカラスガレイのエンガワ? 海蛇を斜めにちょん切ったような穴子? かなぁ? 芽葱はないのに何故か茄子? 目を疑ったのはタッチパネルでピコピコする液晶メニューの1ページすべてを占めるサーモン(ドナスチ? 銀鮭? 大西洋鮭?)のヴァラエティ。鮨屋では提供すること自体憚られるモドキが安っちいプラ皿に載って、正に満艦全飾+満漢全席のフルラインナップでオンパレード。おおお、ここまでとは思わなかった。感動した♪

もちろん、鮨屋でも季節ネタで滅多に食えない桜鱒やキングサーモンが流れているとは思わなかったが、さすがにここまで生臭+脂を前面に打ち出せる現代の外食嗜好には隔世の感を覚え、空腹も忘れ深く感じ入るものがある。何だろう? この心の奥底を低く静かに揺るがす予兆のような不安感は? と、ふと目の前を、スライス玉葱を載せてマヨネーズを掛け回したオレンジ色のネタが視界をよぎり、もう一度絶句した。いや、細く絞りクロスに掛け回されたマヨネーズの淡くクリーミーな白さと玉葱の青味がかった鮮烈な白、生鮭の照りが入った朱色のえも言われぬバランスの妙。これ、日々自らの味覚とプライドを犠牲にして、どこまでも堕ちて逝かねばならない、商品開発担当者には頭が下がるわ。いやマジで♪ と同時に、今まで誰も食えるとは思っていなかったモノを、ここまで広く一般大衆に受け入れられ、先を争い、こぞって食いに出掛けるまでのモノにした功績は称賛に値するだろう。園遊会に招いて、叙勲すべき。

異様なまでに薄切り(ネタの厚みは鮪で7~8mmが標準)で背面が透けて見える養殖・蓄養魚と冷凍魚のオンパレード。冷たいシャリに載せただけの凍って身がピンと硬直している鰹にゃぁ笑った(回っていないから特注したのに、10分ほど置いて解凍してから食った)が、数種のイカと数の子、アルゼンチンの赤エビ、あん肝軍艦、玉子、鉄火巻き、梅しそ巻なんぞをもそもそ摘んでみる。鉄火の鮪は赤が不自然に滲む。色素で色付けたようなキハダ鮪かなぁ? 養殖は国産餌を使う限り微妙だが、冷凍輸入魚は近海魚がほぼ皆無だからこそ、今となってはかえって“食える魚”かもしれない。基準が不分明だが、山葵を塗っていないネタがあって困惑させられる。握っていないからネタが直ぐ剥がれるのはご愛嬌。醤油(ただの醤油か? これ)や甘酢生姜、山葵、海苔は語る以前の水準だが、冷たいシャリの米は堂々の国産米使用。新米とは思えないが、「はえぬき」「きらら」あたりの複数原料米かな? 産地は不明。機械握りのシャリは1貫あたりの分量、外形共に大きいし、米粒が詰まり気味のせいか重めに思う。塩はそれなりだが、シャリの砂糖で甘々と酢ケチり過ぎはもう、鮨に限らずこの国の平均的な食物全部がそうだわ。女子供をおだてて毟るのが金儲けの真髄だからしょうがないか。諦めた。

カウンター席の場合、機械と正面に向き合って黙々と食うという様態を強いられ、食事というよりはケージに嵌った鶏が餌を啄むような仕掛けが素晴らしい。握ってくれる職人(がバイト君だから存在しない)相手にお勧めや旬のネタ、仕込の仕方、ネタの切りつけや包丁のブランドや手入れ、材料の仕入値や海の荒れ具合、時勢の話もできないし、せっかくの寿司なのか屋台のファストフードの現代的展開なのか、どちらにしても酷く味気ない時間を過ごすことになる。まぁ、さっさと食って、さっさと帰れってことか。会計は液晶パネルをタッチ。パートオバちゃんが皿を数えにやってくる。記入された伝票を貰い、レジで精算。カード使えたかな?

時系列に沿って、外観、中身の味、構成、システム、設え、食い方、そのすべてにおいてファストフードたる江戸前握り鮨とはどんどんかけ離れた独自性を追求しているという意味で、回転寿司は鮨とは完全に別ジャンルのクイモノになっていると考えるべきだろう。AOC葡萄酒に対してのシャンメリーみたいなもん。或いは、ナルホドと思ったのは、女子高生のグループがタダのお代わり自由のお茶で、最高でも200円程の多種デザートと揚げ芋、唐揚げで、キャッキャしながら長時間BOXシートを占拠し放題という居心地の良さが売りなのかもしれないな(笑)。今回は100均タイプだったので驚くほど安上がり。一皿二貫では頑張っても13皿/人は超せない。シャリが重いこともあって腹一杯だわ。皿の柄で値段が変わるタイプだともうちょっと行くのかな? 値段からして中身は押して図るべきだが、流通の現実や魚の味を知らないド素人さんからボッタクッてる、いわゆる漁港や市場の観光田舎寿司の類よりは概ね良心的で社会的な貢献度合いも比較にならないと思う。寿司屋なのに刺身系のネタを試す気になれないのは本末転倒だが、割り切りが必要だろう。尤も、口直しに普通の鮨屋へ鮨を食いに行ってしまい、魚ばっかり食っちまうのは困ったもんだ。

今回は時代に乗り遅れた衝撃のあまり、汁物やサイドメニューを試せず腰砕けに終わったが、次回は普通の鮨屋では絶対食えないネタを中心に食べに行ってみようと考えている。ハンバーグ握りや天むす巻にサラダ軍艦、アボカドエビマヨなんぞが、実はお勧めだったのかもしれないな。うん。外道を一皿2貫はちょっと辛いが、やはり味わうことなしに語るべきでないという初心に還り、目を瞑って食ってみよう。後は「くら」「はま」「がってん」「おんど」「銚子丸」「平禄」くらい回れば回転寿司を回ったといえようか? どこにあるのか探さなくちゃな。

■焼き魚二題

◇またホッケ

稚内産だが静岡沼津の加工品。稚内加工は中国人奴隷が少ないのか、生産量があまりないようだ。干物としての品質はやはり昔ながらの加工地の伝統故か小田原ほどではないにしても、沼津加工の方が遥かに良い。素材の良し悪しと料理の出来は全く一致しないのが普通だわ。200g/尾で188円と手頃。国内で食べる魚としては比較的大型で腹の足しになる。下ろしにレモン、サラダに漬物も付けよう。

松山揚げ

かつて魚の切り身は100g/尾が標準だったが、今は量販店ですら「よくも、まぁ、ここまで薄くしたもんだ」的な70gあたりが当たり前で、一人前最低2切れになるから結果的には高くつく。基礎的な分量をコソコソ変えるのは慎んでほしいものだ。揚げは愛媛松山特産の「松山揚げ」という乾燥油揚げ。油抜き不要で賞味3ヶ月と保存性が極めて良いので重宝しておりんす。

鯖味噌焼き

半身にして塩をして15分ほど水を出す。よく拭きとって、三河の壺入り甘めの赤味噌を塗り、オーブンで焼く。途中で葱も加え、生姜を散らす。東シナ海産だが時期的に脂のりが悪い。真鯖はやっぱり秋から冬ということで。

鯖味噌焼き

2012/05/08 作成__2012/05/08 最終更新