在に降る雨


在に降る雨は侘しい。しとしととただ降る雨脚を眺めていると、その単調で線形な反復がDNAの固有周期と同期したかのように感覚の振幅が鎮静化する。穏やかで心地よい灰色の陰と影。虎ふぐの刺身と共に、木枯らしが吹くとヒレ酒の季節。燗酒だから高価である必要はないが、自分で作ろうとするとヒレがけっこう高いんだよね。乾かして炙るだけと聞いたからフグが手に入れば簡単にできるのだろうが、それはそれでちょっと怖い。カワハギでもかまわないらしいので、素人としてはそっちのほうか。本鮪は剥がし。脂が薄い部分を頼む。滑らかで蕩けそうな深みだけど、しょっちゅう食ってるとありがたみが薄れるわ。通称ボタンエビという名のトヤマエビ。長さ25cm(髭除く)、直径3cmのお化け。背から眺めると腹がどす黒く透けて見えるが、卵を抱いている証拠。頭は焼いてもらって、身肉で特大2貫、濃緑の卵は軍艦で1貫とれた。大きいからって別に旨いわけじゃないが、まぁ、面白そうなものは一応何でも食べてみるミーハー体質。

■味噌バターコーン拉麺

笑。「味噌バタコーン!」「ウチはそ~いうの、やってないんすけど」

味噌バターコーン拉麺

ラーメンの味噌味は1970年代前半、札幌一番が一般化したものだと思うが、まぁ、ふ~んってとこだわな。このメニューに接するのは多分15年ぶりくらい。百人町の小汚いラーメン専門店(今はもうない)で食った記憶が微かに残っている。味噌は自家製合わせ味噌。バターは“それ以前”の四つ葉製大量備蓄品、コーンは東南アジア製缶の激安きっと遺伝子改良品缶詰。ワカメはちうごく産乾燥戻し。叉焼は岡田屋特売米産豚肩肉の見切り品を煮て醤油+紹興酒+スパイスに漬け込んだものを胡麻油と大蒜で軽く炒めたもの。2枚しか見えないが、実際には6枚埋もれている。彩りは秋田の長葱のみ。出汁は鶏ガラ+叉焼を茹でた残り。どや?

支那竹

シナチクは塩蔵品を水で戻し、塩抜き。塩が抜けたら胡麻油、醤油、老酒、唐辛子、花椒で炒めておく。味が付いてしまえばけっこう持つので、スープで軽く湯掻いて温めるだけと、ラーメン時には重宝する。麺はかんすい入り細麺、38円と。バター好きだから、悪くはないっす。コーンは、やっぱり何か違うよなぁ。

■鶏手羽元の簡単炒め煮

初日は薬膳

チリ産の大振りなブロイラー手羽元1kg。チリやインドはFTAで関税が原則無くなったので、円高も合わせ安価に入手可能のはずだが、あんまり効果ないね。中間が貪ってやがるのか? まぁ、チリの葡萄酒は298や398でも確かにEU産の798円クラスではある。具には手羽元以外に牛蒡、人参を、肉が減ったらグリーンピース缶詰を加えている。白っぽい粒は清々しいコリアンダーの実。ヨーグルトが手に入らないので困窮するが、今回はココナッツミルクには合わない仕様なんだな。付け合せはアター(Atta)に薄力粉30%ほどを混ぜてドライ・イーストで膨らまして捏ねたもの。。バターで食べることが多いが、胡桃やクランベリーを練り込んで焼くこともある。表面がパリッとして、中はふわっと膨らむのが理想だが、ココにもヨーグルトが欠けていて滑らかさに欠ける。

バターと胡桃

そろそろ生姜の収穫期だが、まだ手付かず。いい具合に葉が枯色になってきた。たくさん採れるといいなぁ。場所を空けないと豆を植える余地が無い。そろそろ蒔かないとマズイんだがな。大蒜は中国産11本、国産25本くらいを植え付け済み。気温があるせいか快調。糸唐辛子はそろそろ種採りで終了、と思うと花が咲く。福耳も収量は落ちてきたがまだ花が咲いている。ミニトマトがまだ生り続けるので畝一本と深底プランター2個が塞がりっ放しで難渋。台風で倒れて絡まってもうぐちゃぐちゃで手の入れようがない。再生三つ葉は鉢替え。少し肥料をあげて、土を変えたせいか、涼しくなって暴走中。サラダにできるほど茂る。パセリは相変わらず出てるようなので、ヤバくない土でプランター2個増設。外置きで香菜も順調に発芽中。真冬用に中置きを2鉢ぐらい追加予定。3月に遅霜に当ててしまい、逝ったかと思ったタマリンドは見事に復活して枝が増えた。食い終わった種を蒔いたら3本増えて、5鉢に増えたタマリンドはそろそろ温室に入れないといけないが、温室が空かない。育つのを眺めるのは愉しいんだが、存命中に実が生るんだろうか? 30cmに伸びたパパイヤはもう少し外でもイケそう。地植えのアボカドも冬霜にあたって上部壊滅、生き延びた根っこから再発芽を繰り返し、今年も1m程になっているが、どうしたものか。ビニルで覆ってやれば持つかなぁ? 土中保管の泥葱から生えた葱坊主から採った種を発芽させた葱はひょろひょろ。早く太くなれ。経験的に葱は簡単そうでけっこう難しい。2夏を乗り越えた再生葱2本は順調に生育中。秋田産と新潟産を2本追加。再生は簡単なんだ。ただ、葱は湿気に弱いんで雨に当て過ぎない工夫が必要。

初二日後は野菜

伸びに伸びたアブチロンは鉢を替えた。また花が咲き始めた。日差しが弱いと花の色が濃くなるのね。天使喇叭はそろそろ花終了。整枝はしなきゃいけないが、もう鉢に退避させるのは無理な大きさ。このまま冬越しできるんだろうか? 保険で枝を少し差しておくか。茸類の床下菌床栽培にも手を出そうかと考えている。安価な2x4用SPF(主として北米産のスプルス、パイン、ファー材)オガクズと、精米するとけっこう出る米糠で培地を作れそう。いろいろ調べてるところ。

◇ 名前忘れた某インド風料理店で昼飯

某飯田橋の賃料高そうなピカピカ建物に入居している某財団で査問じゃなくて評定。大学の先生に取り囲まれて、微に入り細に入り問い詰められること2時間。まぁ、オレは世間話してるだけだからどうちうことはないんだけど。2階デッキに降りると浅黒い肌のあんちゃんが手招きするので、取り敢えずネパールビール(名前忘れた)で乾杯。ランチタイムらしいので、それらしいメニューを注文。7種から2種選択のマサラはダールとマトン、お茶はチャイ。牛豚がメニューにないな、と思ったら厨房含めて日本人スタッフは皆無だな。ほどなく最長部50cmほどの巨大なナンが載ったワンプレート。ナン以外にマサラ2種、鶏胸肉のタンドーリチキン、ミニ・ターメリックライス、野菜の小山、デザート風ヨーグルト付。ナン食べ放題とけっこう盛り沢山。マサラは辛さを訊かれたので6段階中4を選択。辛いのは苦手なんだ。のはずが、ちっとも辛くない。「カラサドーデスカ?」とよく喋る店員が訊くので「辛くないよ」と答えると「10ニシマスカ?」「20デキマスヨ」とかほざくんで、「8でいいよ」と返したら、半分食ってるのに作り直してくれた。量まで元に戻って来たが、まぁ、多少辛いか? という程度。おまけに匂わない。家で食ってるスパイス薬膳というよりは、まるでカレーに近い(笑)。まぁ、いいんだけどさ、日本人がイメージするインド風料理で。食い終わったら店員が「ドーデスカ?」と訊くので、「マトンはおいしい、でも辛くねえぞ、スパイス弱い、チャパティ出せ」と答えておいた。一応、焼き物はタンドールで焼いていると語っていたが、こんな新品ビルのテナントで使えるタンドールがガスか電気かは知らん。しかし、ネパールなのか、インドなのか、パキスタンか、マレーなのかは訊くの忘れた。調子に乗って乳製品や生野菜を摂取したことを深く反省する次第であります。

■実山椒の醤油煮・紫蘇の実の佃煮

山椒は以前どこかに書いたモノを醤油、味醂、酒で水分を飛ばしながら軽く煮込んだもの。鰻の共にする場合は乾燥粉山椒よりも好みである。紫蘇の実は庭で調達。花が咲いて10日ほど経ったものがよい。白飯のオカズ用なので砂糖は入れず、酒と醤油と味醂のみで煮詰める。ピリリと一粒でも辛い山椒とは正に言葉通り。野蛮で野卑なエグ味万歳。京都の実山椒瓶詰めは毎年買ってるが、売りモノはちょっと痺れが抜け過ぎで、優しいお上品な和風味なんだな。

実山椒醤油煮

Netスーパーの配送料が期間限定だが100円ほどになっている。普段でも300円程度だし、一定金額で無料になるから、重いものやかさばるものを車で買いに行く頻度は激減した。生鮮もトラブル防止のためか、店頭売りのモノよりも良いモノを回しているような気がする。各売場担当者が責任を持って商品を確保するらしいので、オレが選ぶよりマシだわね。勢い、店に出向くのは特価品や趣味性の強いものを探しに行く程度になる。

実際、店に出向くのは効率が悪くてかなわん。愚鈍な子供にバーコード読み取りさせて延々とセルフレジを占拠する親、カートに商品を山ほど詰め込んでレジ前を占拠する仲良しファミリー御一行様、各々カップ麺一個だけを大事な宝物のように抱え長蛇の列を作っている屑学生やら、いつでもどこでもレジ打ち終わってから財布取り出して1円玉数えてる耄碌老人、駐車券寄こせってファビョッて大声上げてる糞オヤジ、お釣り貰ってからポイントカード出すキチガイ女の後ろに並んだりするのは、他の生産行為に支障を来すほどお互いに純粋に時間の無駄だし、店も経費掛かってるんだから手間の掛からない客には価格差を付けるなどの公平な配慮が欲しいよね。現金専用レジを設けてつり銭準備が必要で時間が掛かる客を区別したり、レジ通過時間に合わせて割増するとか今の技術なら簡単にできるじゃないか。レジ並んで、3分待つくらいなら最近は買わないで帰る。

もっともカード類も数が増えると管理が面倒になるから、ワンチップ化して体内埋込にならんかね? モノを持つのは嫌いなんだ。本人認証DNA登録とGPSと確定申告機能付き決済口座と住民登録IDや通信機能、各種免許や個体計測機能とかも盛り込めば、電車は合理的な容積+体重別運賃制にできるし、残高がないと店のドアが開かないとなりゃ、すき家の強盗も激減するし、どうでもいいサービスで食ってる御用も要らなくなるだろ? 世俗の雑事に掛かるコストを減らせば、時間が有意義に使えるじゃないか。そのプライバシーに価値がない人間に限って管理を嫌がることがあるが、プライバシーは人間が関与するから必要になるわけで、物事の決定は7台の自己診断メンテ機能付き人工知能から無作為3台選抜の合議多数決制にでもすれば完璧やん。

パトロンには逆らえないだろうが、東アジアはあっさり止めて、今度は環太平洋ASEAN+英語圏に乗り換えか? 乳製品や穀物、肉類他一次産品の関税が原則撤廃になるのかな? 保護で飯を食ってきた業態は壊滅的打撃を受けそうだが、乳製品にしてもパンにしてもできたものが劣悪極まりないマガイモノじゃ仕方がない。どのみち後継者が育たない、終わってしまった産業だ。放っておいても今、生産技術を持っている現役層はあと10年もすればもう身体が動かない。まぁ、その前に食うもの無くなりそうだから、先を見越して段取りしとこうってことかな?

産業の半分位は崩壊しそうだが、大事に大事に守ってきた、文化の領域にまで達した権益も毎度お馴染み黒船にはすくわれるものだ。残念ながら現在の支配階層には統治能力がないことがすっかり露呈してしまっているし、強烈な外圧がないと何も出来ないのは歴史が証明している。個人的には更なる災厄が降りかかるとしても変化の風が吹くことは望ましいことだと思っている。というか、ツマンナイから変われ。毎日慌てふためいて右往左往したい。

HMの思ひで

いかんいかん。今月末が期限ではないか。近くの店は作り置きをしないので多少待つ必要はあるが、せいぜい10分だからOK。オレが行く時間帯はパートのオバちゃん3人体制くらい。盛り付けと対応はとっても丁寧。付属の箸が普通の割り箸ではなくて、ちょっと面取り加工され、飾り溝付けたものでなかなか。もうちょい長いと更に良いが、値段が値段だから贅沢は言わない。以前も書いた通り、味の面では若向き過ぎで選択できるメニューが少ないのだが、世間との乖離を避けつつも、尚且つ、スーパー惣菜弁当よりはマシという微妙なレベルを教えてくれるという意味でそれなりの価値を見出している。HMはほっともっと、通称ホモ弁。ほっかほか弁当のほっかほか亭と分裂した際に、いい年こいた大人が子供の喧嘩のような殴り合いをしていて笑えた全国区の持ち帰り弁当店。

◇クリームシチューかつライス

チラシを見る限り、どう見ても下手物。ご飯にカツ載せて、クリームシチュー掛けたんだろ? ドッヒャー。注文するとき、思わず声が震えた。が、すいません、もう終わりましたって(笑)。販売終了だとさ。メニューを眺めいちばん仰け反ったのにぃ。話しのネタにしようと思った目論見はあえなく粉砕された。そのうちまたやるらしいので、次回に繰越し。残念なり、ほっとしたなり。

◇海鮮天丼

海老x2、穴子、タコx2、いんげん3本、蓮根精進揚げに胡瓜の漬物が少々。飯の上に白紙が敷かれ、その上に行儀よく並べられている。つゆは別途添付。生姜無し。衣はモッサリ。小麦に重曹でも加えた感触。卵は使っていない。揚げ油がサラダオイル系。揚げる温度がちょっと低いんじゃないか? 天麩羅じゃなくてフリッターの類だな、こりゃ。似て非なる、いわゆる、モドキ。海老は小振りのバナメイか? ブツ切りの穴子は海蛇じゃないようだが中国産か? 霜降りが不十分なせいかちょっと臭いし小さい。タコはマダコかなぁ? 味が抜けて固い。以上は外国産冷凍ネタのはず。しかし、海鮮って? 何? 「天麩羅=芝浦の海老+青柳の柱+どっかの三つ葉のかき揚げ」とまでは云わないが、「天麩羅=魚介類の衣揚げ」じゃないのか? いんげんと蓮根は冷凍ならいいけど、生はちょっと怖いな(笑)。

飯は天丼用に炊いているわけはないので柔らかめ。コシヒカリ系の複数原料米だろう。この手の米としては非常においしい部類だと思う。おいおい、大丈夫か? かえって不安になるじゃないか? 最大の問題は「天丼のたれ」 って何だよ! おい、こら。舐めてんのか? ゲラゲラ。食べ物に対する愚弄。量はびっくりするほど相当多め。弁当3個分はあるわ。還元水飴か? 粘度高め。甘すぎ、アミノ酸臭い。意味不明な酸味。ある種のソースだわ。何だよこれ? “天つゆ”に砂糖入れないだろ? これは箸が止まる。普通の醤油掛けたほうがマシなレベル。近くの天麩羅専門店の500円天丼弁当とは比較にならない出来、というか不出来。これを天麩羅と言ったら、天麩羅屋が可哀想。“てんや”やスーパー惣菜天麩羅に匹敵する新しいジャンルの食べモノと捉えるべきだろう。これが天丼としてそこそこ売れるなら、天麩羅という料理にもう未来はないわ。合掌。

◇焼肉コンビ弁当

玉葱人参と一緒に炒めた牛カルビ、牛挽肉入りコロッケ、鶏唐揚げ1個と生キャベツは群馬が終わって茨城あたりか? 量が多くはないのがせめてもの救い。半切りのいんげん2本が彩り。すべてが白飯に載ったワンプレート、390円。普通盛りでも飯の量がけっこうあるので、腹は膨れる。焼肉部分の油が飯に染みるのはちょっと辛い。冷凍と思われるコロッケが細目のパン粉で油っこくなくて思ったよりおいしかった。カルビ肉も臭みなく、柔らかく、味付けもクドすぎずヌルすぎずで、まぁまぁ。唐揚げも大き過ぎず、小さ過ぎずで特徴はないが及第点。HMのイイトコ取り的組合せなんだろう。質・量と価格のバランスは非常に良い。

◇海苔弁再度

随分前の200円セール以来。迷っったときは海苔弁ね。ホキだかメルルーサのフライはまぁまぁだが、皮付きか? 冷めたら臭いそうだな。厚さ0.5mmの向こうが透ける沢庵が異常に甘いぞ。砂糖漬けか? 金平や海苔の下の中国産昆布の細切りもちょっと甘いんだけど、これは、もう、今のデフォルトなんだろう。わかってる。オレが時代遅れの田舎モンなんだよな。竹輪天が甘くないのが唯一の救い。値段の割にボリュームは思ったよりある。肝心の海苔はあまり匂わないが、薄すぎず飯とほどよくマッチする。

VSの思ひで

◇ プライムリブ予行演習

BSE以前・バブル以前、近隣の在にヴィクトリア・ステーションという牛の肉を食わせる料理店があって、よく通った。今でも同じ名前の店があるそうだが、それとは全く別物で、何店かあったVSは90年代までに廃業したと記憶している。肉はすべてアメリカ産で、輸入しないと怖いんだからね! と散々脅されて渋々出回り始めた曰くつきの肉だった。なかでも圧倒的な存在感を誇ったのが、店の中央に置かれたガラス張りのオーブンで、ヌルリとピンク色に染まりながら、じくじくと肉汁を滴らせた塊肉がプライム・リブと呼ばれる厚切りのローストビーフだった。gを指定してオーダーすることができたこのプライム・リブはグレービーソースとホースラディッシュで食うのだが、肉のヌルさと柔らかさが得も言われぬエロティックさで舌を悩殺したものだった。

リブアイ(Rib-eye)1.6kgをいきなり使うのは怖いので、ショートロイン:1パウンドで焼肉予行演習。オーブンでの焼き時間と温度を探るのが目的。リブアイやショートロインは日本風に言えばロース赤身肉の一部を指すが、日本語のロースは肉の部位を指しているわけじゃない(雰囲気か?)ので、正確を期しているつもり。平たくいえば岡田屋謹製豪産ロース塊88円/100g。室温にしたちょっと若い500g弱の塊に岩塩・黒胡椒・タイムを摺り込む。30分放置で熱したフライパンにオリーブ油を敷き、肉を手で掴んで各辺を押し付けるように強火で外周を固め焼く。計30秒ほど。直ちにアルミホイルに包み、オーブンへ。150℃・20分。火が止まったら、そのままオーブン内で20分ほど冷めるに任す。その間にソースを作る。肉を焦がしたパンで玉葱、セロリ、パセリ茎、大蒜を炒め、バター、赤葡萄酒を適当に加え、塩、胡椒で味を整える。別途、ホースラディッシュ、山葵を下ろしておく。時間が来たら、肉を取り出し、厚さ2.5cm程に切り分ける。俎板に落ちた肉汁はソースに加えればよい。皿に盛り付け、肉と一緒に焼いたジャガイモを添え、ソースを掛ける。

予想以上に縮むな。もうちょい生っぽいほうが良かったか。安い赤身輸入肉を柔らかく食う工夫は概ね目標通り。30年前、初めて食ったプライムリブを思い出させてくれた。次回はサーロイン塊で130℃・20分くらいかな? 今回は500gの塊ニ分割なので底部の焼けた面を切り落とさなかったが、肉の醍醐味は味わえた。肉は正味220gほどだが、年齢的にはイイ線だ。これ以上だと胃が凭れるわ。パンとスープが加わるとちょっと苦しい。

■ 飽くなき無謀な挑戦と玉砕の試行錯誤的反復

~~~~◇回高屋で日本人の矜持を取り戻せるか?◇

嫌味過ぎとか辛辣とか、非国民とか罵られるならともかく。ナウなヤングだった頃「貴様それでもニッポンジンかぁ!」と軍刀を吊るした将校さんに一喝された記憶が蘇る。そこで一発奮起。最寄りの回高屋に出向き、W餃子定食である。W餃子とは6個の餃子がx2仕様、すなわち12個皿に載って、鶏唐揚げ3個(くらいだった気がする)と生野菜盛り合わせ小鉢、中華風スープ、丼飯の白飯が付くという代物。小麦皮の肉野菜包みとしての餃子で白飯が食えない人間にとっては、どう考えても鬼門である(=オカズがない)。だが、生卵でご飯、シチューでご飯、コロッケでご飯、エビフライでご飯、キャベツでご飯、ソースでご飯、焼売でご飯、ハンバーグでご飯、ステーキでご飯、拉麺でご飯、饂飩でご飯、マヨネーズでご飯、おでんでご飯、肉じゃがでご飯、焼肉でご飯やソーセージでご飯にチーズでご飯といった組合せに対応できないと、もしかしたら生き残っていけないのであろうか? という不安に蝕まれる昨今である。それなりに苦労と研鑽を重ね、カレーでご飯ととんかつでご飯、鰻でご飯と天麩羅でご飯ぐらいまでは叱咤克服してきたつもりであるが、やはり、漬物にご飯という時代遅れなステレオタイプに逃げ込みたくなるのは田舎モノの宿業か。まぁ、漬物って野菜だけでなく、茸でも小魚や貝でもよいし、なれ寿司はもちろん、鯖やコハダといった鮨種や明太子や数の子だって漬物の一種に違いないとは思うけどね。

午後3時過ぎはタバコ臭いし、1時過ぎは集団ババアが煩いし、緑茶ハイ一杯で管巻いた屑爺が店長呼びつけて説教してるし、昼時は態度だけエラそうな木っ端役人や非正規雇用者や学生風の貧相な客がてんこ盛りでどうにも飯がマズいので、最近はもっぱら午前中、無人の10時半ごろにしか行かなくなった。ホールのバイト姉ちゃんは若くて可愛いけど今風の雑な感じがなくて、キビキビ愛嬌もあって大変よろしい。平日の開店直後にノソノソ来て、ビールと餃子2枚、稀に中華蕎麦食って券で済ます変な客という認識があるようで、奥さんに逃げられて可哀想的なノリを演じているわけでもないのに、サービス券出さなくても大盛にしてくれたり、叉焼が異様に厚切りだったり、1枚おまけしてくれたり、唐揚げおまけしてくれたり、メンマをてんこ盛りにしてくれて嬉しい。いつも、ありがとうね。最近魚粉出汁が薄くなってきた中華蕎麦のスープをもう少し透き通らせてくれるとありがたいのだが、値段が値段だから文句は言うまい。

で、まずはビール。サーバの清掃が行き届いたのか回転が良くなったのか、普通の一番搾りの味。マズくはないが旨くもない。せめてクラシック・ラガーにしろよ。アサヒよりはマシだが典型的にツマンナイ日本の小便ビール。餃子の解凍終了ブザー音の後、炒め音に続き3分ほどで全てがトレイに載って登場。ウッ、食えるか? こんなに。見た目のボリュームは凄いな。焼餃子単体は平均的な大きさ。体積で幸楽苑の倍。典型的な冷凍餃子。片栗粉を流してバリを着けるような工夫はなく、電子レンジ解凍後、軽く焼き目を付けたもの。油も胡麻じゃなくてサラダオイル。皮にはデンプンかタピオカ、中身にはラードとゼラチン? を加えたと思われる小細工。つまり必要以上に《皮もっちりで中身ジューシー》という典型的な日式。そこそこの質と相まって、言葉と雰囲気で釣れる人に対する演出はとても上手い。それがここまで伸びた要因でもあるが。よしよし、どんどん営業益を上げるように。

おまけの唐揚げはブロイラー胸肉だろう。固めのガワと固い肉。大蒜を使わないことだけ評価。刻みキャベツが少々。スープは拉麺のつゆを薄めただけのような味わいで魚出汁臭い。具は葱が浮くだけ。ここの餃子はコストダウンと機会拡大を兼ねているのだろうが、今や大蒜(と韮)を使わないという意味では外食唯一と言って良いほど貴重なモノ。中身に関しては材料や組合せを客が自由に選べる店は原則的に国内にはないから敢えて問わないが、白菜の代わりにキャベツを使うのは勘弁して欲しい。この悪貨が良貨を駆逐するような嘆かわしい風潮は何とかならんものか? もう、味の組み立てが滅茶苦茶やんけ。それというのも、臭いマトンを大蒜でごまかし、餃子をオカズに白飯を食べるという敗戦直後の貧困のどん底時代の和食化過程で引き起こされたボタンの掛け違いのようなものだろう? 肉まんをオカズにご飯を食べないように、餃子をオカズにご飯も食べないのは合理にして有理と思わないか?

いやぁ、食った食った、腹パンパンだぜ。薄い皮がもてはやされる国産焼餃子としてはしっかり目の皮なので腹が膨れてかなわん。香菜スープで水餃子にしてくれたりすると個人的に頻度は上がるだろうが、市場調査はしっかり為されているだろうから、そういう無駄な方向には走らない辺りは理解する。白飯は無料で大盛りにできるのだがしなくて正解。可愛いお姉ちゃんに訊かれるとうっかりしそうになるが、標準で丼飯なので、普通盛りでも余っちゃって最後が辛い。子供の頃から餃子は、餃子だけを30個くらい食うのが標準だったから、やっぱリこの組み合わせに違和感は否めず、摘みにしかならないようなしょぼい唐揚げで無理やり白飯を食う格好になる。せめて搾菜の漬物でもあればいいんだがな。餃子3枚とスープのみにしてくれれば食事としては丁度バランスがよい。とは思うが、今のほうが釣れるならそれはそれでかまわない。

◇ 麺二題

■牡蠣そば■

大きめの牡蠣4個を水切り、キッチンペーパーで水分をよく拭いて片栗粉をまぶす。つゆは鰹出汁の自家製に新規で引いた昆布出汁を合わせた。蕎麦を別鍋で茹で始めたら、牡蠣をつゆで軽く湯掻いて、丸く膨れたら上げておく。少し固めに茹で上げた蕎麦は氷水できっちり締めて、つゆで温める。器に蕎麦を盛り、海苔1/4枚を敷き、牡蠣を載せ、つゆを回し掛ける。葱、三つ葉を散らし、牡蠣に軽くスダチを絞る。たまには温かい蕎麦もいいもんだ。

牡蠣そば

■肉味噌麺■

肉味噌

ときおり食べたくなる、肉味噌の麺。牛バラ塊600gを挽肉化しゴリゴリ焼いて、スパイス・ソフリット・トマト2缶と合わせ、赤葡萄酒で煮込んだもの。塩胡椒で味を整え、1日2回加熱放置を1週間ほど繰り返す。食べる1時間前に業務用ホールのマッシュルーム(缶詰2号缶)を刻んで加えている。肉味噌は1回に3kgくらい作って、4分割し残りは冷凍、延8人分の昼飯にしている。

肉味噌ヌッチャラ麺

まずはぐちゃぁっとしたヌッチョリ麺。フライパンにバター30g、下ろしたてのパルミジャーノ・レッジャーノ(以下PL)50g。溶けたら肉味噌ソースを加え加熱。別鍋で茹でた生フェットチーネを湯切りして和える。皿に盛ってPL50g追加とパセリ。なんつう重さ。コクが強過ぎて年寄りには辛い。半分ぐらい食うとペースががっくり落ちる。


2011/11/19 作成__2011/11/19 最終更新