息災日


6月以来店頭でホヤを見掛けなくなってしまった日々が続くが、顔を見せるとオホーツクのアカボヤを剥き始め、捌きたてを出してくれる鮨屋のあんちゃんのおかげで、途切れることなく週に1、2回はホヤが食えておる。ああ、ありがたや。シーズンも終わりかけ、だいぶ値段も落ち着いてきたそうだが、まだ数年は供給不足でしょう。津軽・秋田・山形庄内あたりでも十分イケると思うが、岩牡蠣のついでにどうでしょう?

ぶらぶら白

大間の鮪をウリにすると客が入るそうで、この時期何も言わずとも、オレの下駄にも最初にでっぷりとした赤身と豚肩肉のような脳天が置かれる。黒鮪の場合、血合いに近い赤身の酸味と深み、脳天なら蕩ける脂と濃厚な風味、中トロなら爽快でキメ細かな旨味とでも言おうか、青森・北海道産でも魚体の大きさや個体差でけっこう差が出るので、あんちゃんとも会話が弾む。筋があっても気にならないものもあれば、薄く削いだものを重ねて握ったり、剥がしやカマ、頬肉等々、鮪はやっぱりピンきりにして王道だから話のネタに尽きることはない。牡蠣は赤穂のもの。大きすぎず小さすぎず、さっぱり系を紅葉おろしとポン酢で。最近の真牡蠣はクセがないが旨味はある。鰤がもう出回っている。頼まなくても出てくる白イカ詰め塗りや小肌、締鯖みたいな老人ネタが嬉しい。別に通じゃないんで、偶にはウニとかイクラとか海老も食べたいんすけど。

ぶらぶら

◇ 焼肉

秋は辰の日。天気が良いし、一段落したので焼肉。ラム肩肉ブロック1.2kgを3分割。一人前200g見当とは侘しさが募るな。国内では羊ブロック肉を食べないせいか、入手に苦労するし、なによりもあまり安くない。肉は塩胡椒を摺り込むだけ。玉葱は売り物。赤と緑は自家産福耳。串に差したら焼くだけ。焼けたら食うだけ。主食は麦酒。けっこう腹膨れた。

串焼き

夏を越した炭は若干水分を吸っていて火起こしすると時折爆ぜるが、屋内保管だからβ・γ共平常値。肉の脂が落ちると煙る。浴びる煙にまで気を遣う時代とは恐れ入った。

焼肉

Созкс

国産廉価品が出回り始めて、すっかり値段が落ち着いたロシアン添子ちゃんでピコピコ。Cs校正され、測定時間10秒で移動平均表示する最新ファームウェアのもの。室内1階で0.12、2階本畳(中が藁・笑)上で0.16、2.5階板敷で0.08、猫肉球0.10、プランター地表0.15、屋外土壌表面0.18、庭砂利敷0.22、庭の落ち葉堆積0.25、物置コンクリートブロック基礎0.42で警報表示、隣の空き家側溝松の枯葉堆積Max0.75で腰が引けた。単位はすべてμSv/h。よく言われる雨樋下という部位は竪樋桝直結のため残念ながらウチにはない。誤解している人が多いが、コンクリートやアスファルト(特に最近の透水性のもの)はミクロな目で見れば多孔質の材料で、汚れが極めて付着しやすく、尚且つ、一度付着したら取れないんだな、これが。時期的にもう遅いし、素人が除染に手を出すべきではないと考えるが、手袋、マスク、眼鏡は必須、着てた服は捨てるくらいの覚悟で。

添子

従前のバックグラウンドは0.04程度だから4倍程度は常時浴びていることになる。平均的な状態でも外部のみで年間1mSvは超えてしまうが、日立アロカのシンチを使う地元自治体の近隣計測値とほぼ一致。文科省の航空モニタリングよりはだいぶ高い。屋外地面の線量から換算すると土壌汚染は当初の予想より低く75kBq/㎡弱程度(1200~3750Bq/kg)と推定される。添子ちゃんはGM管なので遮蔽しないとβも合算されるため、若干高めに出る傾向があるようだが、β崩壊する核種も捕まえたいのね。作物への移行係数を鑑みても、まぁ、こんなもんだろ。自分で作った食い物を自分で食う以上、土壌におけるある程度の担保は必要と考えている。まぁ、いずれわかることだが、α核種が無いことを取り敢えずは祈ろう。第一報は毎度お馴染み金曜の暮れ方。屈辱的なまでの円高容認に加えTPPの陥穽に自ら嵌るとは、何を取引したのかは知らないが、そこまで阿らねばならぬほど状況は深刻ということか。あはは。

故郷とかフルサトに縁のない根無し草だから、未練はない。戸籍上、本籍地は存在しているが、行かないし、行っても何も無いし、道路付けの変えようがないから、まぁ、今住んでいるところよりは、移り変わりが目立たない気もするが、薄暗い胎内色モザイクタイル貼りだった最寄りの駅がすっかりリニュウアルしてピッカピカのホームドアが付いていたり、神社の境内が極小化して珍妙な重層長屋に成っていたり、爺ちゃんと心中死体を見物に行ったドブ川が小洒落た公園化されてしまったりして、「あれま…」とは思うが、これといって感慨はないわ。人は土が無くとも生きていける。

■ 丸亀製麺再訪

10月も中だというに暑い。真夏か? 平日11時半ごろ。入口正面至近の駐車スペースが空いている場合に利用することがある。中も空いているだろうと思ったら、やっぱりガラガラ。レーンに他人いるの見たことないんだがよくやっていけるね? 今回は冷やしとろろと“かしわ天”。“かしわ天”たぁ、東日本では聞き慣れない天麩羅だが、鶏ですね。各席にオリジナル出汁醤油に加え、以前は無かった“オリジナル天麩羅ソース”なるものがあったので早速カシワ天に使用してみた。かなり甘めの和風ソースという趣か。赤褐色系でイカリやオリバーとも異なる風味。クセが無いので天麩羅に“ソース”という組み合わせの違和感はあまりない。生姜をつけながら食べたが、饂飩のおかずとしては天つゆよりもパンチがあって好まれるのかもしれない。とろろは普通の長芋だがケチり過ぎ。お玉2杯じゃねぇの? 刻み海苔が載る。山葵はよくある小パック入りの練り。席で出汁醤油を掛け回すが、旨甘すぎてちょっとバランスが悪い。とろろにはキリッとした香り高い醤油のほうが合うと思うが。麺はちょっと粉っぽいが以前に比べ意外に固く腰があって太め。打った人間が違うのか、タイミングが良かったのだろうか? 貧乏臭く葱をちょっと盛ってみたが、予想通り邪魔だった。とろろに葱は余計。締めて430円先払い。個人的にはなかなか贅沢な部類の食事だと思う。最近ようやく理解したのだが、この手の主材の上にいろんなモノを無分別にトッピンッグして食べるという形式は「丼」と同じで、現代日本食としての一般嗜好を非常に上手く突いているようだ。

かしわ天は柏天。オリジナルは大分の鶏天だと思うが、皮を剥がしたブロイラー腿肉と思われる部位を棒状に固めに揚げたもの。魚介以外の天麩羅を自らの意思で選択して食うのは生まれて初めてだが、比較的脂が少なくて好みのタイプ。フライドチキンに近い。本来は地鶏を用いるのだろうが、今はコスト的に無理だろうね。ココの天麩羅は饂飩用ということで揚げ油に胡麻油をまったく用いていないし、サクサクを通り越してバリバリだったりするのだが、こういった変わりネタのほうがかえって違和感がないかもしれない。

◇ 蝸牛

蝸牛

やはり基本は1ダース:12個だと思うんだが、皿に7個しか載らないなんて貧困が目にしみる。12個載る皿を買おう。バターとエシャロットとパセリのソースで味付けされた、よくある調理済み冷凍惣菜。これはブルゴーニュ産だが、最近は安価な東欧産のものもけっこう出回っている。葡萄酒の摘みに丁度よいし、オーブンで焼くだけと超絶簡便なので前菜としては重宝する。中身だけの缶詰も売っているので、殻を残して再利用している外食店は多いだろう。うちの場合、各種貝殻は栽培作物のpH調整剤として砕かれて土に還る。さすがに主食にしたら健康を害しそうなので、チーズ載せバゲットとアボカドサラダを白葡萄酒で流し込む。バゲットはそのうち自作してみようと考えているが、慎重に選択している店のもの。近在には2店しかない。余計な味付けが施されていない、一日置くとカチカチで口内が裂けるタイプ以外は受け付けない。溶けるチーズはオランダ・ゴーダ。レッド・チェダーは溶かさずスライスが好み。

バゲット

◇ カキフライ

関東に西日本の殻付き牡蠣は殆ど出回らないのだが、今年はどうなるか? 需要がないわけじゃないから仕入れる業者は出るだろうが、150円/個あたりに暴騰しそうだな。カキフライに使う加熱用養殖牡蠣も上がっているが、外で食うのは馬鹿らしいモノの一つ。といか、似非洋食の割には気取り過ぎ。小洒落たダイニングバーで、着飾った自称セレブ女がナイフとフォークでちまちま切り刻んで、平らに盛った皿飯をフォークの背に載っけて食っていたりするのを見ると、回高屋でW餃子をオカズに大盛りサービス券でてんこ盛りの丼飯を掻き込んでいるキモデブと同じくらい滑稽にして失笑モノ。カキフライをオカズに白飯を食うことができない人間にとって、多くても6個しか皿に載ってないんじゃ話にならん。ガワは小麦粉とパン粉なんだからさ。

牡蠣の扱い単位は1ダース/一人前と決まっている。1.5なら18個だ。ケース買いしている広島の冷凍牡蠣を1kg解凍。あまり大きなのは好きじゃないんだが、2Lサイズ。表面の氷膜がとれ、中は凍ったまま程度で表面の水分を拭い、塩胡椒。胡椒は挽き立ての白。多めが好み。薄力・卵・パン粉の順に衣付け。軽く握って形を整える。油は使い回しキャノーラにオリーブを30%ほど加えたもの。高温で一気に揚げる。右手で衣を付けながら、左手で滑らすように投下、浮いたら反転15秒ほどか。火が通りすぎず、熱々に溶けた半生。網で油を切りつつ、ビールを開ける。すぐ食う。冷めたカキフライほどまずいものはない。

カキフライ

酸味はメキシコライム・熊本レモン・徳島スダチ・大分カボスあたりならどれでもよい。下味が付いているのでソースは飽きの来る途中から。ウースター伯御謹製のリー&ペリンズと大量備蓄している国産ウスターソースあたり。外食はタルタルが多いが、自家製を出すところは少ないね。市販のいんちきタルタルはどう考えても多糖類で甘いし、ピクルスケチって酸味足りないし、ケイパーズもマスタードも入ってないし、今や禁断の乳製品で色付けて誤魔化してるしで、好みからは外れる。タルタルはマヨネーズがあれば簡単に作れるが、油脂にオリーブ油、酢に葡萄酒酢を使わないマヨネーズで作ってもおいしくないんだな。となるとマヨネーズをフープロで作るところから始めなければならないんだが、まじめに作ると材料がびっくりするぐらい高価について笑える。フライ本体より高いぞ。

カキフライは和食だから葡萄酒よりもラガービールが合う。ムシャムシャと残りを気にせずひたすら食う。身に張りがあっておいしい。昔のものほど臭わないし、クセも無くなっている。

◇ 福耳で青椒肉絲

泡菜

福耳が採れすぎて困っちゃうので、大量消費を兼ねて。パーシャルで熟成させた豚肩肉のブロックを切り出して5mm角の糸状にする。一人前で150gくらい。老酒、塩、胡椒、醤油、溶き卵、最後に片栗粉を加えよく揉んで、胡麻油を垂らして暫く置く。青椒(福耳20cmを7、8本使用)、鶏がらスープ、生姜・葱みじん切りを準備。中華鍋に油を張って低温(150℃以下)で肉に油通し。表面がウッスラ白くなったらジャーレンに上げ油を切る。

肉絲

少量の胡麻油で生姜、葱を炒め香り立てる。少量のスープ、老酒、塩、三温糖(オイスターソース不使用)のみで味付け、水解き片栗粉で粘度を決める。強火にして青椒をガーッと30秒ほど一気に炒め、肉を戻す。鍋を煽って味を回し出来上がり。スープは今や偽装の的になりかねない中国産椎茸とセロリ。福耳と大根、搾菜で作った自家製泡菜(パオツァイ)を添える。酒は青島碑酒、茶は茉莉花茶で決まりだね。

青椒肉絲

元来は塩と老酒のみで味付けした福建料理らしいのだが、今となっては何が何だか。オイスターソースで味付けする広東風と、辛くない青椒(=ピーマン)を用い牛肉化したアメリカ由来の濃甘味ソース系が巷を席巻する。味は、完璧。予想通り。肉の甘柔らかさを引き立てるピリッとした辛味。


2011/10/30 作成__2011/10/30 最終更新