弥勒はいつも間に合わない


初新子は8/3。2枚付と横3枚付。抜群の塩加減。ネタは総じて夏枯れ気味だが、JF京都の岩牡蠣がいいな。鮨ネタの秋刀魚はそろそろおしまい。奥尻や礼文の生ウニは最盛期。鰻は夏枯れ、蕎麦も時期は最悪、天麩羅は外で食う分には暑くなくていいが、幅を広げようと他ジャンルの新規開拓も進めている。

最近はもっぱらシラー(Syrah)。英米圏ではシラーズ。元はフランス南東部の大都市リヨン近郊だったかな? ローヌ河岸。コート・デュ・ローヌといえば通りがいいのかな? 赤葡萄酒用のぶどう品種の一つで、現在はラングドックや米豪、そして赤貧御用達のチリでの生産が盛ん。カベルネSが誰もが認める華やかな美人、メルロが恥ずかしがりで可憐な素人、ピノ・ノワールが付け入る隙のない年増の貴婦人なら、シラーはさながら野卑で淫乱だがあどけなさが残る娼婦といった趣。まぁ、チリ産だとレゼルヴァやグラン・レゼルヴァ級が1500円以下で買えちゃう。ハズレもあるけどショックは小さい。

シラー

左がPoltal del Altoの2008 Gran Rezerva、右がCarmenの2005 Reserva。ちなみに、後者のほうが高い(笑)。

産地名だけを眺めてすべてを忌避する意味はないが、情緒的な対応に終始するマスコミや官製キャンペーンに乗れるほど青くもない。自分で基準を持ち、自分で考え、自分で行動する。際どい綱渡りには違いないが、それ以外にない。安く買い叩いたセシウム牛を名を伏せてばらまいてぼろ儲けした食肉業者や給食事業者を、震災復興食べて応援の美談に仕立て上げ、法令で定められた必要照度すら欠くような、節電という名のただの経費削減が奨励大流行の昨今ですが、舞台は偽善者でいっぱい。あたりを見回しても建前だけに終始する胡散臭い社会になったものですなぁ。

そろそろ新米シーズンなので様子見繋ぎ用ササニシキ玄米30kg袋検品印付を仕入れておこうと思ったら、幾つか目を付けておいたところが軒並み売り切れで慌てた。凄いな、おい(笑)。伝手を頼って結果的には昔懐かし遊佐(空間線量0.04μSv/h、土壌:検出せず)のササが手に入ったので事無きを得たが、誰しも考えることは同じか。世間の半分くらいの消費量でしかないが、来年以降のことも考えて、モノが良ければいっそのこと契約栽培してもらうかな? 流通経路に乗ったモノは混ぜモノされたり、清濁不分別で精米機に掛けられてしまうわけだから、いずれは精米機が街のホットポイント化しそう。糠漬用の糠も当てにならないから、自分でやれば一石二鳥なんだよね。今年以降は安かった西日本と北海道の米が値上がり、東日本は低落傾向だろう。江戸の昔から伝統的に食肉業界以上に腐っている米問屋(とhttp://www.maff.go.jp/)のやることだ。アフラトキシンB米やカドミ米横流し黙認(奨励か?)の例を持ち出すまでもなく、後はどこまでインチキ三昧ができるかだな。

■丸亀製麺

昨今、吉野家傘下の饂飩チェーン:はなまるうどんを凌駕する? らしい、神戸の外食産業トリドールによる全国チェーン。低単価と、SC内や郊外街道筋にファミレス風店舗を積極出店することで、これまで自ら積極的に饂飩を食いに出かけなかった女子供を大量動員したのが成功の秘訣だろう。但し、四国では高松市内SC等に名前を替えた3店舗のみ。丸亀市内に店舗はない、なんちゃって讃岐うどん。ちなみに香川に出掛けて讃岐うどんを食ったことがないので、正直言って、何をもって「讃岐うどん」とするのか、さっぱりわかっていない。

仕事の打ち合わせ先の国道沿い新興商業地に新店舗ができたので寄ってみた。黒と木質調の外観デザイン。駐車場は大きめ。平日11:30ごろ。むっとする曇天。入り口専用から入ると、厨房をコの字型に廻るレーンにはオレ一人。メニューを眺め、トレイをレーンに置く。冷おろし醤油饂飩普通盛り+野菜かき揚げ。天麩羅は数種が並んでいたが、冷めてはいないがどれも揚げたてというわけでもない。並びにおむすび・おにぎり・稲荷の類。型抜きミニ。レジを通った先、最後尾の方に取り放題の青葱と生姜、天カスが置かれているが、二掴みしてまで載せたくなるような品質ではないな。

ガラガラとは言わないが、3割ほどの入り。テーブル座敷席は子連れ主婦、老人夫婦、オバサン団体などで近寄りがたい。音量は距離の二乗に反比例するものだ。清々しくレーン向かいの横一列20人掛けくらい、無人のカウンターの中央部に座る。饂飩の上には大根おろしと貧相なスダチが一欠け。卓上の見たことがない既製出汁醤油をタラタラ回し掛け。饂飩は機械製麺の生麺で太くもなく細くもないが、はなまるよりは細い。弾性に富み、滑らかだがコシはそれほど感じない。タピオカや澱粉を控えているのだろう。

国産小麦がウリのようだが、それはまぁ、3/11以前なら推奨仕様だろう。国内小麦は原則的に契約栽培(事前に契約した分だけ農家は作付けする)だから、産地は限定されているだろうが公表はされていないので不明。今うどんになっているのは昨年以前のものだから、まだ問題はないだろう。小麦の袋と製麺機? がエントランス先にディスプレイされているが、ゆで太郎レベルのパーフォマンスが実演されるのに出くわしたことはない。

基本メニューは普通盛り280円で、アイテム追加で50円刻みで上がっていく価格構成。すき家あたりにも通づる最底辺外食産業の価格ポリシーはしっかり踏襲されている。饂飩以外は天麩羅数種、お握り、稲荷寿司のみで、ビールと酒くらい置いて欲しい。天麩羅で飲めるようにしてくれりゃ、利用頻度上がると思うが、概ね歩いて行けるような場所にはないからドーデモいいか。

うどん

まぁ、再現はそれほど難しくない。おろしは無いから割愛。スダチも季節にはちょいと早いからグレープフルーツで代用(笑)。葱はうちのほうがずっと質は良い。天カスじゃなくて揚げ玉は既製品。出汁醤油は無いから自家製蕎麦つゆと正金醤油の“純”を合わせた。生姜は下ろしたてたっぷり。麺は豪産か中国産強力粉が多いコシの強いもの。緩めに茹でて氷水でキンキンに締めて盛る。食う。自分好みにコントロールできる幸せ。

■ミニトマト

品種はマイナーなティンカーベル。トマト類は人気が高く、ホムセンの売り場にはサントリーやらデルモンテのブランド品種から輸入品までも豊富に揃うが、地道に種蒔きから。発芽に気温が必要なので播種は5月になってから。種は一袋400円で20粒ほどか。一粒20円と結構なお値段。発芽率90%。18本の苗ができて最大背丈15cmほどで定植。6/9現在開花なし。6/20プランター培養土の苗は徒長気味で第1花房~第2花房が見えるが天候不順で未開花。世の中的にはそろそろ収穫期に入るが、種の発芽適温を考えるとどうしても出遅れる。7月に入ってようやく開花。8月に入ってようやく下の方から一部収穫。売値が¥10/個くらいと考えると、一本の苗からmin50個ほどの収穫を目指したい。初めてなので、露地、プランター軒下雨除け、温室栽培など条件を変えて試作と思ったが、面倒になって放置気味。雨に当たると実が割れる。葉っぱを食うならともかく、幹や実に潜る蛾の幼虫に難儀中。やってられんので、来年は実が大きくなる前にスミチオンをぶん撒いてやろう。

Tinckerbell

■ 簡潔で肉肉した肉を食うためのとんかつ

とんかつ

かつては安価だった米産背肉塊1kgを4枚に切り分け室温で放置する。厚さ2.5~3cm。肉は叩かず、筋を切り、塩胡椒。揚げ油はキャノーラ5、ラード3、焙煎胡麻2。低温で5分、10分休ませて高温で1分30秒。数分置いて包丁を入れる。キャベツの代わりにレタス。練った辛子を添える。簡単でボリューム感に溢れたシンプルなご飯のおかず。塩だろうがソースだろうが、そのままだろうがお好みで。カナダ産ほどではないが、米産豚肉はやはり国産に比べると大味で締りが悪い。脂に旨味がないのは餌のせいだろうか? 豚肉特有の匂いもないが、逆に味気ない。何とかならんのかねぇ。漬物は人参と胡瓜の古漬け。味噌汁は角久の赤出汁、なめこ無いからエノキで許して。

赤出汁

◇ 実山椒

山椒の実を1パック100円ほどで見つけたので大量に購入する。実山椒の醤油煮の途方もない価格付けを見ればたいそうお得な赤貧の知恵。軽く水洗いし、茹でる。摘んで食えるくらい。10分ほどか? 自分好みに。小枝をプチプチ毟るのがいちばん大変な作業で、人力に頼らざるをえないこの作業が実山椒の価格を決めているといえる。個人的にはあまり気にしないので適当に処理して水切り。キッチンペーパーで徹底的に水を切り、ジップロックで冷凍。食べるときに塩で揉むなり、醤油で煮るなり。

実山椒

■新規開拓――在の暮らし:らーめん専門店

少し日が傾いた午後4時半。丘を越え橋を渡り、ときどきバゲットを買いに出掛けるパン屋の隣。ドア脇に貼ってあるメニューに「東京ラーメン」の文字が見えたので、つい引っ掛かった。高級ラーメン専門店に入るのは14年ぶり。当時都内にあった喜多方ラーメンのチェーンで叉焼摘みにビール飲んで以来。風の噂に聞くに、いわゆるグルメ御用達の著名ラーメン専門店らしいので、赤貧田舎もんには敷居が高く、身分違いと考えずっと敬遠していた。実際、帰って来てう~むと検索してみたら、とんでもない量がヒットすること。

今時珍しい昭和の場末調ファサード。ブロンズ色のアルミ引戸。上半分の透明ガラスからは店内がよく見える。客は無人。L字カウンター席のみ。15席ほどか。真ん中付近の椅子を引く。バイトのあんちゃんが空かさず水。厨房の店主? の客あしらいは非常に丁寧で気が利く。ホントかどうか知らないが、黒装束の頑固親父が腕組みして睨みつけてくるような滑稽感は全くない。飲食では今どき珍しい部類。ついでに調度も潔癖症か? と思うほど隅々まで掃除が行き届いていて、ありがちなベタツキや煤汚れがない。ビール、餃子に、もちろん東京ラーメンを注文。店主が麺は少し後にしようか訊くので、そうお願いする。餃子を業務用蒸し焼き機へ。蒸しが先で時間設定で自動的に焼きに変わるタイプ。

5分ほど、ビール中瓶半量消化でコンパクトな長方形皿、付け皿付で焼き餃子が上がる。卓上には醤油+辣油+酢という和風中華の黄金パターン。中庸な大きさの6個、焦げ目が程よい見た目だが、片栗粉のバリはない。思ったより大蒜が臭わないので助かった。

餃子を摘んでいると、5時過ぎ。あっという間に客が増え始めカウンターが埋まっていく。何この雪崩込むような怒涛の流入? 売りモノの魚出汁が濃そうな麺を頼むのが必定の模様。大盛とか玉子とか麺2玉とか。餃子はライス付きに出来ることに気づくが、オカズがないじゃん。男ばっかり。キモ青臭い学生風若者7割、30代給与生活者2割、みんな余裕あるんだなぁ。残りはくたびれたオヤジ1名(=オレ)。注文が交錯しないうちに、2、3分前に声を掛けてくれと言われた店主にそろそろ麺を。

器に落としたラードを鶏ガラ+魚介のスープで溶く。麺を湯切りし、具を盛る。ほんの2分ほどでステンレス盆に載せた黒色系の器が目の前に置かれる。鶏ガラはかなり濃く煮出し透明感はない。更に、生姜の代わりに大蒜を使って出汁を引いていると思われる。魚介出汁は鰹というよりは宗太や鯖節か。野太い節だけでなく昆布? のぬめりが感じられるほど濃く、ドロッともっさりなまろやか感を演出する。バランスは魚+脂が勝ち過ぎるように思う。表層の脂で封印されて、スープは温度を保つ。醤油風味は色味共に薄めで塩が相当きつい。夏場にはいいかもな。

麺は中細縮れの平打ち麺。カンスイたっぷりでコシが強い。具は4ツ切りの焼き海苔、鳴門、でろでろのロールバラかと恐れていた叉焼は煮豚だが脂身のあまりない背肉か肩肉風のものが2枚。味付けは薄めで肉の味を残す。メニューによって変えているのかもしれないな。支那竹は穂先部分を切らずに用い、かなり柔らかく煮たもの。長葱のみじんがスープ一面に浮く。青モノの定番、ほうれん草は(夏だから?)無し。

見た目からの予想通り、味はアミノ酸フルスペックで舌が悲鳴を上げて悶絶。回高屋のような薄っペタイ安っぽさがないだけに余計濃く感ずる。昆布のぬめりと大蒜、玉葱と酒かな? 微妙な甘さも感ずるがすぐ慣れる。残したら怒られそうだから残り5cmほどまで頑張った。

締めて1350円。回高屋なら1000円切るメニューだが、専門店としては良心的と感じた。在の住人として、年に2回くらい世間に触れてみるにはいいかもしれないと率直に考えた。何よりもまた、常時禁煙というのは大きな利点ではあるな。瓶ビールと餃子3枚だけでいいなら気は楽になるんだが、嫌な顔されるだろうな? 麺はおいしいんだけど味が濃すぎ。ドロッとした重いスープは年齢的に辛い。一食で一週間分ぐらいのアミノ酸摂取量が賄えそう。廉価チェーンの気持ち悪くなる脂や旨味とは組み立てが違うが、オニカサゴとハタとコチとホウボウとマダイと黒ムツと赤ムツとアイナメとソイとイシダイとタカベとイサキとスズキの区別がつかなくなることは請け合い。まる一日ほど舌が馬鹿になる。

◇ オクラ

発芽

100均で2袋100円の種を買ってきて6月下旬播種。普通の5角形断面のもの。発芽率95%で驚いた。7月中に定植。7月下旬には最初の収穫と、実にスピーディで喜ばしい。以降、手間いらずで隔日10本ほどが収穫できる。15cmほどまで徒長させても十分柔らかく生で食える。

オクラの花

葵のような可憐な花。野菜には珍しい直径5cm程の大輪。花が落ちると実の子供が着いている。4~5日で収穫可能。採れたてならば生が最高。刻んで削りたての鰹節と最高の醤油で。湯掻かないと食う気にならない売り物は収穫後1週間経ってるな。癖がなくて、こりゃあ嵌る。馬鹿みたいに採れる胡瓜にはいい加減飽きてきたので助かった。

オクラの鞘

◇ 見た目は酢豚風の黒酢豚

豚肩肉塊を大振りに切り分け、老酒と挽いた花椒、生姜、五香粉に漬け込んでおく。揚げる30分前に卵白、醤油、胡椒を加え、片栗粉を振って冷蔵庫で冷やしながら馴染ませる。筍水煮、人参。セロリ、水で戻した黒木耳、自家製胡瓜を粗めにカット。水を切っておく。大蒜、生姜、葱のみじん切りを別に準備。中華鍋に胡麻油を熱したら、老酒、三温糖、老抽、水解き片栗粉、黒酢を並べる。衣を漬けた肉を適度に揺すりながら3分ほど香ばしく揚げる。肉はジャーレンにとって油を捨てる。

黒酢豚

新しい胡麻油を引いて弱火で蒜姜葱を炒め香り立てる。強火に戻し、肉、野菜を一気に煽り立て、準備した調味料を順次加え、鍋を煽りながら片栗粉に火を通す。最後に化粧油を鍋肌に廻し、グツグツさせて火を止める。油を替えて3分ほど。香菜を散らすもよいが、今は端境期なもんで。水分をタップリと含んだ柔らかな肉と衣のカリッとした香ばしさ。黒酢の旨味と砂糖の甘味、醤油の塩味の調和は中国料理の醍醐味ではあるな。


2011/08/07 作成__2011/08/07 最終更新