在所の暮らし


内容も固定化されてきたのでタイトルを少し弄った。温かくなったり寒くなったり気温が安定しないが、今年も終わりか。ちっぽけな庭に推奨の一月遅れで初夏に収穫した大蒜と豆の残りを植付け。豆は売るほどできそうなので保存方法を考えなきゃな。冬蒔き香菜とルッコラは苗床で発芽中。寒くなって葱と芹は息を吹き返して、すくすくと伸びる。来年は葱の種類を少し増やしたいのと、白葱を上手く作る方法を考えよう。畝を作って定期的に埋めりゃいいんだろうが、面倒は嫌だな。

一株掘り残した大蒜からちびちび採取する青蒜で回鍋肉や麻婆豆腐が食えるのはありがたい。夏の暑さ(と虫)で壊滅的打撃を被ったクレソンも復活してきた。来年はエアコンが効いた屋内で夏越しさせてやろう。

◇ 慈姑(クワイ)回収

クワイ水揚げ

初春植えの青慈姑(くわい)が枯れ、一際寂れ、みすぼらしいので回収。重い。上葉を毟って廃棄。盥を逆さにして蹴飛ばす。う~む、根だらけ。肝心の玉は期待の割にはしょぼい。最大でも直径2cm強ほどと、元の大きさには至らず。量も生産には程遠いお遊びレベルでやる気が失せた。盥の大きさが制約になっていると思われるが、やはり田んぼじゃないと無理かな? 肥料が足りないのか? 池に土を入れるか、専用圃場を作らないと売り物レベルの玉にはなりそうもない。埼玉の慈姑田でも眺めてくるか。

盥反転

もともとは肉団子や炒め物に使うシャリシャリした慈姑が欲しかったのだが、青慈姑は火を入れると蓮根のようにねっとり軟化してしまい、芋みたいだし、黒慈姑の代用にはならない。黒慈姑は品種が異なり国内では生産されていないようだし、剥き身が缶詰で非常に安価に手に入るので、敢えて作る意味もない。というわけで縁起物の青慈姑ではあるが、慈姑煎餅と金魚の遊具にしかならん。来年はどうしようか。

青慈姑

◇ 悪食の果て

『いろいろ@某役場』

丘と川を越え、近在を逍遥ついでに、久々に徒歩40分のゆで太郎。食券がウザイのと、行く度に萎びていくチープな味わいに懲りて、このところめっきり利用が減っていた。メニューは一択、「もり」か「大もり」。揚げ物はタイマーで時間測っているレベルの下手糞さ加減だし、油は古いし、トンカツ揚げたラード臭えし、全く頼まなくなった。いくらマニュアルに書いてあるとはいえ、油の汚れ具合や同時調理数で揚げ時間変わるだろうが? 蕎麦はこれまた人加減・日加減によるが、まぁまぁ、値段なりに納得できる範囲内。つゆは相変わらずトボけた味わいで安っぽい。少し薄甘くなってきたか? つゆがもうちょいまともなら、利用頻度は上がる。

一方、業務で週参していた近在の役場でたまたま昼時。腹は減ったが役場の周囲は恥ずかしくなるほど新興で、碌でも無いチェーン店や大規模小売店舗ばかりが軒を並べている。そこはそれ。この手の施設には必ず食堂があるもの。案内に地下食堂と表示が出ていたので混んでいたら止めようと思いつつも覗いてみる。最悪の12時30分だというに、地下ELVホールは静まり返っていた。うむぅ、地雷か? 昭和30年代か? 時代掛った引き違いガラス陳列棚にちょぼちょぼと全10種ほどのメニューで、そこが食堂であることがわかる。色褪せた手書きポップがダサダサ。酒類なし。昼時は持込禁止。日替わり定食が500円、カレーやうどんが350円というこの手の食堂では一般的な値付け。どこでもそうだが、初めての店では調理人の意気込みが感じられる、オーソドックスで率直なメニューを選ぶ。メニュー構成や見た目から質が似たり寄ったりの場合は質が最も高そうなモノということで、580円のパーコー麺とカレーライスの特別定食を選択。開きっぱなしのガラス自動ドアの向こうにカウンターらしき設え。そこでメニューを言って先払いするシステムと見たが人がさっぱりいない。と思ったら、なんだ、手前に食券自販機が置いてあった。2行5列。使っているボタンは10個しかないから、これならオレでも平気。いまどき現金かよ? と財布から小銭を取り出し、食券を買う。中に入ると、いきなりでかい声でイラッシャイマセの唱和。驚いた。トレー式のセルフ食堂だわ。お新香と小鉢を一つ選択して、食券を渡す。とっても感じが良い店長? が熱々でお願いしま~すと指示を出す。厨房は結構な面積で5人ほど。でも、おばちゃんたち暇そう。

4人掛けのテーブルが時代がかったレイアウトで整列する食堂は200人ほど収容可能と思われるが30人も入っていない。そのうち公務員は30%以下だな、どう見ても(笑)。大半はジャージ穿いた貧相なおっさんや年金生活者の老夫婦、あるいは公金に寄生するある種の団体、又は作業服の出入り業者など。サンクンガーデン側の一列だけ埋まっているが、あとはガラガラでアラアラ。正面に32吋程度の液晶TV。映像はもちろん時代を超えた日本放送協会著作製作御謹製。床Pタイル・パターン張りは張り替えたのかな? 清貧感を醸し出すために敢えて放置されているとしか思えないクロスがところどころ剥がれ、薄汚れた壁・天井と、元○○あたりから(有料で)寄贈されたと推察される凡そ場違い感が拭えない、どうしようもなく下手糞な絵画でみすぼらしさをいっそう煽る。

メラミン化粧板張りの骨董品テーブルに割り箸と調味料。清潔感はかなり保たれていて良い。水、ないしはお茶もサーバーからセルフ。お茶は熱いだけの色水レベル。完全禁煙。椅子だけは取り替えたらしく、比較的新しいビニルレザー・クロムメッキ・パイプ椅子だが、座面が小さくて疲れる椅子だな、こりゃ。

基本的に職員の厚生施設という位置付けのはずなので、何らかの補助は出ているにせよ、まぁ、値段が値段だから味に期待はしていなかったが、麺は業務用スープそのまんま。確かに熱々ではある。生麺だが、何ら特徴のない“かん水”麺の細麺。カツ丼用のトンカツがど~んと1枚、包丁が入って無造作に載っている。他に野菜少々。カレーはレトルト食品以下だし、小鉢は残り物の寄せ集めか? もう、これは今どきねぇだろう? と思わせるチープ感の量的集積に虜。工夫ひとつ感じさせない中身と食っても食っても減らない量にはまいった。器がでかいんだわ。いわゆる古き良き時代の食器。お見それしました。なんというノスタルジー。なんという昭和。全メニュー制覇しようかな。

次回は山菜うどんとカツ丼セットで特別定食、やっぱり¥580。お新香は白菜と何か。自由選択の小鉢はモヤシと春雨のサラダ、オレンジ載せにしてみた。うんどんか蕎麦かを選択できるのは予想外。今年2度目のうんどんか! と一瞬思考が横滑るが、ここまで来たらヤブレカブレ。地雷率のより高い蕎麦を迷うことなく選択。蕎麦が載るとずしりとした重量。想像以上にでかい器に並々と盛り付けられた具、具、具の山! 温かい蕎麦を食うのはたぶん12年ぶりくらい。ただの一辺足りとも期待はしていなかったが、けっこう旨い(爆笑)。滑らかな割には腰もしっかりと残り、仄かに蕎麦の味すらするじゃないか! いやぁ、これはもしや、役場近くにある〇〇名産〇〇製麺の蕎麦か? それなら確かに頷ける味ではある。この製麺所、マイナーではあるが、愚鈍なグルメ志向に寄り掛からず、なかなか面白い製品を妥当な価格で販売しているので、年に数回、自家用四輪自動車を自ら運転して直接購買に出向くところでもある。

蕎麦の味もさることながら、食っても食っても底から湧いてくる山菜の量と、揚げ玉、ワカメの分量に驚いた。まぁ、蕎麦に揚げ玉やワカメは合わないし、山菜はよくある輸入モノだが、余りそうだから全部入れちまえ! どうだ参ったかと言わんばかりの量に免じて許容しよう。つゆも業務出汁だが甘味がなくて気に入った。今度は冷たい蕎麦(天盛りがある)も食ってみようか? カツ丼はしっかり玉子が煮えていてOK。カツは薄いし衣はフニャフニャだし昨日の残り物レベルだが、味付けはくどくなく、あっさりでなかなか昭和風。相変わらず総量はスゴイ。量の感覚が30年ほどズレている? まぁ、かつて貧困に窮していた宮沢賢治は「一日ニ玄米四合ト 味噌ト少シノ野菜ヲタベ……」と書いたし、陸軍人は一日5合6杓の白米を配給されていたわけだから、今は小食になったよな。いやぁ、食い終わると満腹で動けない。仕方なくTVを眺めると肉の代わりに麸を使った“青椒肉絲”を作る料理番組が報じられていたが、どこが肉絲なんだろう? こういうモノを経費掛けてわざわざ作って、公共の電波に載せるぐらいなら、何もしないで金だけ貰ってればいいのに。

◇ 冬といえば牡蠣

殻洗浄

寒くなるにつれ、だいぶ手頃になってきたが今年はなかなか値が下がらない。50円になるのを待っていると来年になっちまいそう。120円だったものが、12月に入ってようやく100円/個。扁平なものが多くモノは今ひとつだが我慢ができなかった。基本は1ダースだが、貧乏臭く一人10個/食。まぁ、頑張っても20個しか持ちたくない。かさばるうえに重いんだよ。以前も書いた通り、日持ちするので翌昼食用。殻は合わせ目を主にブラシ等でよく洗う。合わせ目にナイフを捩じ込んで貝柱を切るだけ。5個/分くらいか? 最近はプライヤで殻をこじらなくても、殻の破壊を最小限に留めながら剥けるようになってきた。慣れだな。殻ごと焼いたり蒸したりすれば楽なのは自明だが、牡蠣は生に勝る食い方はない。

一皿目

上蓋を剥がしたら、ナイフを挿し込んで底の貝柱も小削ぐ。殻の破片がないか目視確認して、中の水をこぼさぬよう皿に載せる。昔はいろいろ試してみたが、基本は調味不要。殻内部に保持されている海水こそ最高の調味料である。途中から柑橘を絞りながら平らげる。どこ産か書いてあったとは思うが記憶にない。身は程々に小さく、腸が小さくヒモが多いのが好感。あまり牡蠣臭くない癖のない牡蠣で、あっさりした滋味であった。殺菌胃洗浄はビールとシャルドネの白葡萄酒ね。シングルモルトの白っぽいウィスキーを滴しても旨い。10個じゃ、ちっとも腹の足しにはならん。倍は軽いな。次は18個にしよう。もっと量を仕入れておいてよ、魚屋さん。腹の足しは、仕方がない。簡素極まりない大蒜と唐辛子のオリーブ油パスタ特盛を付け合せる。

二皿目

◇ カマ

メジカマ

久々にマグロ。某鮨今期二度目の入荷という津軽海峡産クロマグロ各部位を堪能。赤身旨い。さすが。最高。やれば出来るじゃんといいつつ、フグをふぐふぐ食らう。マカジキの超絶ホワイトピンク腹身に辟易とし、既に正月ボッタクリ価格になっている日本海産ブリなんぞには目もくれず、銚子産駄ブリの部位別味比べで腹が膨れたら「カマ持ってかない?」というので貰ってきた。くれるものは貰う。いつもありがとうね。メジのカマとブリカマ。メジの割にはずいぶんでかいし、ブリカマもさすが鮨屋のブリだ。軽く10kg越えの、ブリと名乗れるブリのカマ。大型の魚類のカマ、特にマグロやブリ、サケのカマなどは、商品として、スーパーなどでもよく見かけるようになった。昔は金を出してわざわざ食ったり、店に並べて売るようなものではなかったはずだが、今はもう、なんというか……。賄いや家でコソコソ食っていたものが大手を振って表通りを歩いてしまう。切身が買えないときには重宝する部位であったが、昨今は小洒落たグルメ御用達になったのかこれがまたけっこう高い。ブリカマなんかビックリするような値付けで馬鹿臭くて買えないぞ?

ブリカマ

マグロはせこくカマトロ掘ろうか迷ったが、面倒になって両方共、まずは両面に塩。30分置いてキッチンペーパーで余計な水分を拭き取り、網で焼く。凄え脂だな、おい。脂っこい魚は苦手なので、脂を落とし気味に強めに焼いたら膜が焦げた。でか過ぎて角皿に乗らないぞ。恐れをなしてマグロは軽く両面炙ったものを生姜と酒・醤油で煮付けに変更。調理というレベルではないが、これはこれで腹の足しにはなる。

ブリカマ塩焼

ついでにシシャモ(全部オスだけど)を手に入れたので焼く。10~11月の鵡川のモノが昔からの馴染みだが、価格的にたかが目刺しの域を超えてしまい、とんとご無沙汰だったが、少し出回り始めたのか? 禁漁を重ねた結果、漁獲量が回復しているのだろう。淡白ながらも脂があって、ちょっとワカサギあたりに似たヌメッとした舌触りと奥深い旨味が懐かしい。最初から干物の加工品だが、炙る前に1時間ほど天日で乾かすと尚良い。酒が旨いな。

柳葉魚

たまたまスーパーの魚売り場を眺めていたら隅にワラサカマが積み重なる。もちろん氷見の寒鰤じゃなくて、今期豊漁で安い太平洋モノの駄鰤。哀れ在所。イナダカマじゃねーか? というレベルだが、刺身や切身はブリとして売るのだろう。カマは大きさ見られちゃうから難しいな。商売の割には正直でよろしい。売れなくても蛋白加水分解物として再生されたり、肥料や飼料になるわけだが、色がキレイだし、捌いた人のついで人件費に敬意を表して半額なら買ってもいいか。恥ずかしながら、酒の摘みぐらいにはなるだろう。

ワラサのカマ

小さいので期待してなかったが、けっこう肉厚で自然な脂のりが見て取れる。ペティナイフで掘って、ブリトロ握りにでもすればけっこういい値段付けて売れそう。焼き加減などは好みに合せ、適当でOK。個人的にこの手のものは内心似菩薩外面如夜叉と決めている。

ワラサのカマ塩焼

味付けは最初の塩のみ。完熟スダチを絞るだけ。肉食なので付け合せは肉。塩胡椒を手で擦り込んだ臭い始めたくらいの安い塊をまるごと焼いて、ナイフで削ぎ落としながら食うのが常。原始人レベル。在所ゆえ、タレやドレッシングの類は見掛けず、塩の果たす役割は常に奥深い。

網焼き

基本的にモツとかアラより、普通の身のほうが好きな平々凡々たる常識人なので、マニアックな方向性には向かわないことを信条としている。それより雨だと飯食えないし、風が吹くと寒いから、壁と屋根がほしいなと思うこの頃。

おまけ

2010/12/19 作成__2010/12/19 最終更新