つかの間の……


101日ぶり。つかの間の休日。この歳になるとさすがに堪えるな。掘り残したジャガイモが花を点けている。潅木並みに繁盛した紫蘇の下で、暑い夏を生き長らえていた模様。花が散ったら掘ってみようか。大蒜も掘り残しがあってこの時期貴重な葉大蒜が採れる。P3Cが3分おきに低空を通過。教導隊の体験飛行らしい。最新の塗装になって日の丸も極小、ガルグレー単色で4発ターボプロップ軍用機らしい騒音を撒き散らす。哨戒機とはいえ、対潜爆弾から魚雷、射程150kmの国産ASM-1C対艦ミサイルを搭載して長時間の滞空時間を誇る優秀な攻撃機でもある。

P3C

秋の入はボタンエビという名のトヤマエビ、北海道産。¥7000/kg。全長25cm(ヒゲ除く)ほどの巨大エビで、握り2貫にしてもらう。凄いヴォリューム。鮮烈でありながらもねっとりと濃厚な旨みは希少に思うが、おいしい海老の標準がわからないので、本当においしいモノなのかどうかはよくわからない。かといって、個人で入手できるものでもないが。新子も一気に小肌化する時期か。今年は一貫五枚付けを食いそこねたぞ。

今年は10月中を過ぎてもホヤがある。長いなと思ったら、北海道の赤ボヤだと。マボヤに比べると身肉に若干赤みがあって、甘味と爽やかさを感じる。11月に入り、今年も白身のクエが来た。長崎五島産だが北九州ではアラと呼ぶ。偽物が極めて多いハタの同類だが、身が締まっている割に脂がのっており、噛み締めたときに凝縮された独特の旨味とトラフグのようなシコシコした食感を感じる。鮨ならまだしも、鍋だと正直区別がつかないので、どうでもいい。この歳になっても相変わらず鍋の味はさっぱりわからん。キロ当たり1万を軽く超えるらしいが、メニュー外のおまけで出してくれるので値段はこれまたさっぱりわからん。日出ずる国もいよいよ水没か。滅び行くものの無駄な足掻きの醜さには際限がないな。どこもかしこも(まともなところから)閑古鳥が鳴いているが、おかげで下々にまでおもしろい食材が回る。

昨日はメジの赤身と腹身。多分3ヶ月ぶりくらいの鮪。鮪を食わしてもらえるのは秋から冬の年に3、4回という変わった鮨屋だ。自分で買ってくるものとは異なり、赤身はしっかり赤いが若く、腹身はさっぱりとしながらも口に含んだ途端蕩ける。いいじゃないか。メジの見極めについて尋ねるが、二人の職人が同時に首を振る。メジは捌いてみないとわからない――だそうだが、¥1500/kg以下のはダメ~だとさ。なるほど。鰹はそろそろおしまいだが、ねっとりむっちりで香りも上等。0.5mm間隔で隠し包丁の入ったスミイカも簡潔で噛めば噛むほど味わい深い。珍しく煮ハマがあるが、小振りなもの3枚載せ。高級店では大振りな朝鮮ハマグリを生っぽく茹でて詰めを塗るのが常道だが、小さいシナハマグリなら味をきっちり染み込ませても固くならないという利点はあるな。最後は余興の芽葱と湯葉で口直し。

酒はこのところ安価なおり酒が気に入っている。口当たりは甘いが辛口、まだ発酵中の搾り滓。とろんとした穏やかな酸味とアルコール分のバランスが肝要。甘い肴や鮨は食わないので、酒はキンキンの吟醸よりもふくよかな味わいが欲しいと思うこともある。

◇ 茗荷

今年は日照りが続いたせいか盛夏は今ひとつの出来。もっとも、9月後半になって収量が一気に増え、最後の収穫は11月と画期的なロングランではあった。土が痩せてきたので来季は少し肥料を恵んでやろう。

茗荷

業スーの冷凍クズ肉で牛皿を作ったら、なんだか見た目が外で食う牛皿に似ていてびっくり。不安になるほど安い¥680/kgくらいのオーストラリア産表示の冷凍薄切り肉をドライアイス代わりに買い込んで、解凍後、温度を均し、玉葱と醤油・酒あたりでテキトーに合わせるだけ。単独では食う気にならない肉も化けるもんだな。味もそっくりだが、調味料の質をいくらでも上げられるから、肉のグレードは同じでも一皮剥けた味わいが簡単に作れる。

自家版廉価牛皿

◇ 悪食の果て

『海老真薯@大戸屋』

今風のチェーン定食屋として近在の主だった駅前各所に出店しているが、メニューを眺めても心惹かれるものがなかったせいで、なかなか足が向かなかった。そろそろタダ券を使わないと使い切れそうにないので初訪。夏から秋にかけて週一頻度で出向いていた田舎電車の新興駅前のショッピングモール内店で遅い昼食。pm3:00ごろ。厨房を床上げして物販を無理矢理飲食に改造したような、どう見てもテナント料が格安の妙な区画割故の変なレイアウトでテーブルのみ50席+くらいで客は女ばかり二組でガラガラ。ざっとメニューを眺めるが、本来四足肉を使う料理に鶏だのチキンが目に付くあたり貧乏臭くて萎える。外食なんだから劣化コピーでなく、自分で作るのが面倒で、かつ、上手く出来ないものというのが最低の選択基準だろう? 散々考えあぐね、海老真薯定食に、どうせ量が足りないだろうとサイドメニューで最も量が多そうな黒酢野菜鶏炒め? を追加。飲み物は定番オーソドックスに生ビール。オーダーの黒装束お姉ちゃんの対応はハキハキしてて大変良い。ご飯の盛りは? と訊かれたので、考えもなく大盛りで、とお願い。

注文後、料理が提供されるまでの時間は想定よりもかなり長い。オーダー入れていたのは自分だけだったが15分程度かかった。オーダーを受けてから調理しているのだろうが、回転は今一つだろう。昼時は困らないのかな? 最初に生ビールと黒酢炒めが同時に、直後に続いて海老真薯定食が到着。タイミングは良いほう。今はこういう当たり前の常識が通用しない世の中だから、尚更そう感ずるのか。先日、日高屋に行ったら、中華そばが最初に来て、半分食った頃にビールが出て、最後に餃子が出てきたわ。丼にビール流し込んで餃子浮かべて帰ろうかと思ったぞ。定食は味噌汁にヒジキの小鉢、お新香付。見た目や盛り付けはなかなか良い。飯が中国風に小さな茶碗にてんこ盛りで笑った。黒酢~の野菜に掛けろとさっぱりめのドレッシングが別添。

さっそく真薯椀の蓋を取る。意外とボリュームがある。真薯と名乗る以上は卵白と山芋をつなぎに使った白身魚の練り物なのだろうが、ふわふわというよりは固めで、(米粉ではなく)小麦を使っている? せいか蒲鉾か薩摩揚げのようなしっかりした食感。驚いたことに、海老(東南アジア・バナメイと思われる)はすり身ではなく、ぶつ切りになったものがそれなりにふんだんに使われて、視覚的かつ、ぷりぷりした食感を直截的に(わかりやすく)重視しているようだ。味盲対策としてはよく考えたとは思うが、目が点になったぜ。他に蓮根・人参など数種の野菜類が煮汁に浸かっている。煮物としての味付けはかなり濃い目で塩辛いが、昨今の外食としてはまともなほうか。多糖類を多用しない点は評価する。旨味系の出汁は典型的な業務用和風出汁で、これも濃い目でくどく、品性に欠けると感じたが、御飯のおかずとしては適度なレベルなのだろう。

サイドの黒酢~も思ったよりボリュームがある。数種の温野菜と鶏唐揚を黒酢餡でざっと和えて、野菜サラダ(サニーレタスとキャベツ千切り)の上に載せたような塩梅。ただし、ジャガイモは純粋に余計。芋やコーンなど、おかずに穀物を入れるのだけはヤメテほしい。熱々だが、餡が平凡で甘すぎる。これは砂糖入れ過ぎ。ジャガイモなんて水飴塗った大学芋みたいだぞ。お菓子か? 黒酢は典型的な日本人向けで全く特徴のないもの。

飯は比較的柔らかく炊かれたコシヒカリ系、はえぬきかこまちの2等米を適宜混ぜたブレンドか? しらたは多いが炊き加減はまぁまぁ。大盛りにすると器は同じで倍量? 佛飯。こういう外観は久々に見た。飽きるので、途中でテーブルに置かれた胡麻塩ふりかけを振った。1500円強で腹いっぱい。ランチとしては不足はない。はぁ、苦しいぜ。

料理の提供温度やボリューム、価格とサービスのトータル・バランスは適切で、チェーンとしては予想に反して満足できるレベルであった。メニューは調理をしない人向け、あるいは女子供向けの家庭料理的色彩が強すぎで魅力を感じないが、今後とも需要が増えそうな領域ではあるか。味付けは万人向けとしては仕方のないグレード。出汁を改善するだけで大きく化けると思うが、B級として市場調査の行き届いた味付け(多糖類・不飽和脂肪酸・アミノ酸過多)ということだろう。女一人客が入れる店舗造りと毎日掃除しなけりゃならないツマンナイ内装造作はOK。あとは回転率向上かな? メニューが総花的。もう少し整理しても良いように思う。

◇ 極細短小麦麺

ヴェルミチェッリ。スープに入れて、麺のように食べることが多いが、ビーフン風にしてみた。アンチョビとキャベツで茹で時間数十秒の即席パスタ・オーリオ。思い立ったら10分で食える。

Vermicelli

◇ 松の実黒炒飯

国産醤油の代わりに老抽王を用いると黒炒飯になる。松の実、自家製葱以外に肉が微量入っているが何を使ったのか覚えていない。焼豚の脂身かベーコンか? 老抽なので見た目に比して味の濃さはほとんどない。牡蠣油は不使用。準備10分、調理3分ほど。簡単至極。

黒炒飯

2010/11/14 作成__2010/11/14 最終更新