Death is life


梅干詳細

今年は梅雨開けに異様に晴天が続いたので梅干しが楽で助かった。市販品の大半が甘ったるく味付けした調味梅干しや干していない梅漬けと化し、減塩する代わりに保存料入れちゃうんじゃ本末転倒だろう。塩辛くなくてマイルドな酸味、アミノ酸添加された強烈な旨味の“梅干し”というのは、梅のエキスの抜けた出しガラに味をつけただけなわけだが、そのほうが売れるんだから仕方ないよなぁ。売れるものが正しくて、売れないものは間違っている。それはいつの世も変わらない摂理なわけで、結果的に、まともなものは法外な価格(数百円/個)で手が出なくなる。手が出なくなれば廃れる。廃れればいつの間にか消えていく。まるで、オレの生業そのままじゃないか(法外じゃないけどなぁ:笑)。

梅干風景

忘れていたジャガイモを収穫。種芋を買ってきて植えたわけではないので生育が危ぶまれていたが、冷蔵庫の底で芽の出掛かった小さな芋を半割にし煤を付けて4つ植えたが、2~3kgぐらいには再生した模様。なぜか赤い芋が混じっているが理由は不明。全部食った。春、出てきた芽を適度に摘むと数は少ないが(売り物程度に)芋は大きくなり、芽を摘まずに放置すると小さいものがたくさんできるようで。個人的には小さいほうがいいかな。

ジャガイモ

100円で買ってきた種を1/3ほど蒔いた苗から5本ほど選抜して、100円土を入れた100円プランターに植え替えして3ヶ月。唐辛子も収穫期。地植えは育ちが悪く今頃白い花が咲いているが、プランターは土が違うせいか、手間いらずの割にもう食い切れないほど実る。これくらい効率がいいと自分でやるのも悪くはない。時期をずらしながら長い期間に渡って収穫できる体制を作れば尚よいか。

唐辛子

来た来た。店長が冗談で仕入れた新イカでミニ握り。見せてもらったが、それは即ち全長10cmのスミイカ。甲の長さ5cmほどか。江戸前の夏、昔風にいえば秋か。もう立秋だし。シンコは高くて買えねぇ~(1万円/kg)そうなので、取り敢えずミニイカで盛夏。ハモはそろそろ終わりだが、湯引きの梅肉添えという定番中の定番。今年は秋刀魚が全然ダメらしい。確かに小振りで痩せている上に漁獲量激減で高騰中。それ以上に、息つく暇もないあまりの連続猛暑で人通りが絶え、商売も上がったり。午後は外に出る気がしないものなぁ。

◇ 茄子煮浸し

調理時間:30分

季節柄、茄子が安いので大量に買い込み、煮浸しやら漬物に。茄子は縦に6等分して塩水に漬ける。胡麻油を熱し、180℃くらいでキッチンペーパーで水気を拭き取った茄子をしんなりするまで揚げる。3分くらい。ジャーレンに取ったら油をよく切っておく。鍋に蕎麦用濃厚鰹出汁(どんなに頑張っても市販よりは薄いが)を煮立て、酒、味醂、醤油テキトーを合わせ、下ろした生姜適量を加え、強火で茄子を煮る。煮汁が半分になったら火を止め粗熱をとる。冷めたら容器に入れて冷蔵庫で一晩寝かす。千切りの茗荷、青葱、辛味大根下ろしなどを合せ盛れば完璧だが、何もせずとも十分旨い。

茄子煮浸し

◇ 回鍋肉

調理時間:20分

暑さもちょっと一息ついた隙を狙って中華鍋を引っ張り出す。豚ロースブロックで。650gの茹で塊をスライスしたが1/3ほど食ったところ。バラほど脂っこくなく、それでいて肉が硬くないという意味ではロースも悪くはないな。彩り野菜は葱と獅子唐。味付けはいつもの通り。特に工夫の余地はない。自分で作り始めると、少なくとも国内の外食では、全く注文する気がなくなるものの一つ。

ロース肉回鍋肉

といいつつも茹で豚バラ600gで作り直してみると、やっぱり脂があったほうがおいしいわ。最初の炒め油を花椒入りにしているので脂があっても爽やか。

バラ肉回鍋肉

◇ 悪食の果て

『鰻重@登亭』

庶民系廉価鰻チェーン。路面7~8店に加え、デパート等にも出店しているが、やはり鰻は店で食うもの。神田、京橋、新宿が行動範囲だが、店によって焼き方や飯の炊き具合がけっこう異なるだけでなく、同メニューでも値段が違うので、自分好みの店を見つけるとより幸せになれる。同じ店舗で長焼き、串焼きの持ち帰りと弁当も扱う。

内藤の御苑の近くで現調。脳漿が沸騰して倒れそうになって何はともあれ、まず、ビール。生は中ジョッキ。微妙に量を減らすところが多い中でジョッキもキンキンに冷えていてたいへんよろしい。昼時は外したつもりだったが混雑が残っていたので、摘みは頼まず鰻重(松)。まぁまぁのお新香と肝吸いが付く。客回転は1.2~1.5/hといったところ。注文後5分でビール、10分ほどで鰻重セットがお盆に載ってやってくる。本日の鰻は入り口に台湾産と表示。まぁ、たいていいつも台湾だ。鰻重は松竹梅の格付けがあり、鰻の量と並べ方が異なる。

一段だが重箱の蓋を開けると、箱物の必定として一応、鰻が飯を覆い尽くすように載っている。鰻は重箱の短辺に沿って敷かれ、余った端部は折り返されている。まぁ、神田のきくかわと比較しちゃいけないが、この折り返しはツボに嵌るというもの。色味はあっさり系、タレも薄く控えめに見える。

夏鰻ゆえ身は薄く、脂のりもあっさりめ。4Pというよりは5Pに近い適度なもの。提供時間からして蒸し置きだが、回転が良いためタイミングによってはかなりアタリと思える場合もある。皮目の焼き加減、脂の落ち具合、フワっとしたまっさら白い身と表面の炙られ具合は一応鰻屋を名乗る鰻屋ならではの焼き加減。

タレはサラサラ系で薄め。甘くはないが醤油が香り立つという程でもない中庸で一般受け狙いのものだが、この手の庶民派店では江戸前に忠実な部類に入るだろう。タレは後掛けのみ。量も適量で必要十分だが、卓上に置かれたタレ差しから追加することもできる。飯は熱くそれなりだが、(特に新宿は)少し柔らかい。山椒は瓢箪がテーブルに置かれているが敢えて掛ける必要はないだろう。

値段以上の味はしないが、ラベリングばかり立派で値段なりのモノを食わせる店が少なくなっている昨今の世相においてはそれなりに貴重だと思う。他のものに比べ決して安くはないが、妙な気取りや高級感を感じさせず、かといって粗雑でもお粗末でもない。簡潔できっぷの良いオバちゃんやあんちゃんの客あしらいも嫌いじゃない。幼少時から慣れ親しんだ味わいという意味で贔屓目に見ている部分はあるだろう。

レジはSuicaのセンサー付。もっとも、普段電車もバスも乗らない人間にとっては、カードはあってもその日に使う往復交通費だけしか入っていないわけで、むしろWAONが使えると嬉しいというもの。

そういえば、吉野家も鰻丼をラインアップに加えていたので、人生100年にして祝・初吉野家と思ってこのクソ暑い中を前まで行ったのに、なんだか販促セール中で幟が立ってるし、ちらりと眺めると、暑苦しくもむさい男ばかりが肩を寄せ合うように充填されており、入ってみようという意欲が一辺で冷めた。飯食うときにまで窒息しそうな閉塞社会の終末的刹那感を感じるのは嫌だものなぁ。すき家でよく見掛けるDQNファミリーや研修中の若いバイト苛めるくらいしか能がなさそうな下品なオヤジ、粗暴で汗臭い運動系童貞集団にも心底閉口するが、吉野家は駅前繁華街立地の割にはイメージ戦略に今一つ乗り切れていないし、松屋は立食い蕎麦でもあるまいに食券買わなきゃならないし、照明のホワイトバランスが妙だしで、どうも自動ドアのタッチセンサーを第2関節でコツンとする前に門前払いを食らった気分。レーダーとか埋設磁気マットとか熱感にしてくれればドア開いちゃうから入ると思うんだが(笑)。

一方、片田舎の路傍といえば山田うどんかくるまやラーメンの独壇場だったが、今はすき家だなぁ。さて、そろそろセールも終わったかな? 普段より30円安いだけなのに、異様に混んでいて時間を外しても落ち着かないんだよねぇ。冷たいビールをククイとやって、2倍皿とお新香を摘む。たまにこの手の店で扱っている和風カレーも食べてみたくなるんだが、ご飯抜きはできないのかな? 夏は飯いらないんだよね。最後にポッキーが2本刺さったソフトクリームを追加して席を立ち、プラプラ食いながら帰ると溶け具合が丁度良い。安っちい植物油脂の味がするがこんなもんだろ。量的にも文句はない。ちょっと吹く風は涼しさを感じさせるが、相変わらず影一つない脳天気な晴天のコントラストに視覚が追従しない。圧倒的なまでの光量のもとで、青と緑は何故ここまで映えるのだろう?

考察@うな丼

鰻(穴子も)は一般的に小さい(とはいっても5P程度)ものほど皮が薄く、脂がしつこくなく、身が柔らかい。結果的に高値がつくもので、基本的な常識として、大きな鰻を半分載せるよりも、5Pを2匹載せるのが上質になる。5Pとは1kgあたり5匹、すなわち200g/匹の活き鰻を指す。捌くと骨や頭、腸として30%程が失われ、140~160gほどの長焼になる。また、見映えが灰青色の青鰻が、灰褐色の茶鰻よりも旨いとされている。アンギラ・アンギラ種はヨーロッパの禁輸で稚魚が途絶えたらしく、現在では少なくとも開いた蒲焼状のものには、ほとんど使われていないと思われる。多くの人は産地による味の違いがわかるようで大変羨ましいのだが、私は貧乏舌のせいかどうしても区別がつかない。

似たような材料を扱っていても、鰻の質はやはり専門店とファストフードでは明らかに違う食べ物になっている。宇奈ととがジリ貧なのは食感が地焼きみたいだからだろう。三島以西の方が受けるのではないか? 鰻(飯も)の量は明らかに、すき家>宇奈とと>登亭。質はちょうど逆の順だろうが、すき家と宇奈ととは甲乙つけ難い。活鰻を自前で捌いている鰻専門店はやはり味わいの根本的なスタート地点が異なっている。

あまり食べたことはないが、国産鰻とは、

1:成魚を輸入し国内生簀で育てたもので、その生育期の過半が国内で、国内生簀から出荷されたもの。

2:日本沿岸で国内船籍船ないしは漁師、素人が捕獲して国内に水揚された稚魚(シラス)、または輸入シラスを国内生簀で成魚まで成長させたもの

3:国内の河川や海で素人、漁師、国内船籍船が捕獲して国内市場に出荷したもの

1は手間が掛かり、歩止まりが悪い時期を生育環境に恵まれ、人件費の安い中国台湾で養殖するのでコストが最安。“過半”が“国産”のキーワードなので、里帰り鰻に代表されるように、輸出した個体と戻ってきた個体が同一か否かは業者の良心に立脚しているという、日本の第一次産業における生産者性善説に立脚した素晴らしいシステムが踏襲されている。〇〇牛とどこが違う? といわれればその通り。

2はかつては主流だったが、シラスが採れず高価、燃料費や人件費の高騰で現在では採算が合わず斜陽傾向にある。数量的に限られているので、差別化のため当然、生産者(養鰻業者・漁協名など)の名前が明記される。輸入品に自前のブランド鰻シールを(誰かが勝手に)貼っていた漁協もあった。一方で、「共水」や「坂東太郎」といったブランド鰻や、老舗と契約栽培している業者もある。

3は天然ウナギ。ごく一部の鰻屋か料亭、割烹などに不定期に卸す数量しか捕獲できない。 四万十川の鰻、利根川の鰻など産地呼称を伴い最大限の差別化が計られている。秋から冬。鰻重で最低¥6000くらいから。かなり当たり外れがある。

国内流通量の9割が輸入品と云われるが、見掛ける鰻の9割には国産表示が付いている。国産信仰もここに極まり。日本、万歳!

◇ コロッケ

調理時間:60分

惣菜として売られているものが悉く甘ったるく、クロケット(croquette)でもないのに往々にして乳臭かったり、コーンなどが混入されているので自分で作るしかないものの一つに成り下がった。典型的な擬似洋食としての和食であるコロッケは、穀物に穀物を混入して穀物のガワを付けて穀物油で揚げて穀物が主成分のソースを掛けて穀物のおかずとして食べるという、ある意味日本人好みの、画期的な食い物の一つ。

コロッケ分解

ジャガイモは軽く洗ったら皮付きのまま10分ほど茹で、熱いうちに手で皮を剥き、芽は包丁の手元で抉る。先に皮を剥くと茹でる過程でかなり水分を吸い込み、水っぽくグズグズになるし、単純に面倒だろう。ジャガイモはざっくりと潰すのが流行りのようだが、芋が好きでも何でもない人間にとっては、あのホクホク感と舌触りの悪さは苦痛以外の何ものでもないので、それなりにしっかり潰す。

50gのバターでミジン切りの玉葱1個をよく炒め、挽肉がないので普通の薄切り肉、人参・パセリのミジン切りに火を通し、ナツメグ(豚肉の場合のみ)、塩、黒胡椒で適切に味をつける。この味がそのまま最終的な味になるので、濃くもなく薄くもなくしっかりと付けたら、そのままラップで空気に触れぬよう密封して冷蔵庫で数時間冷やす。冷やさないと爆裂するという話も聞くが真偽は不明。むしろ成形がやり辛いので冷やしている。

コロッケ盛り

卵型や俵型、好きな形に整形したら、小麦粉、卵、パン粉の順に衣を着けてあとは揚げるだけ。揚げ油はラード50%にキャノーラ50%の合わせ。温度は170℃~180℃くらいか。中身に火は通っているので、単純にキツネ色になれば引き上げてよいだろう。ビールを開けて、揚げたてを摘む。

野菜和え物

味は付いているのでマスタードを添えるだけでよい。外よりは多いはずだが、肉の量は芋の1/3なので、やはりおかずがあると嬉しい。今回は野菜の和え物にしてみた。スライス玉葱を土台に、アンチョビーを白葡萄酒酢で和え、ミニトマトとドライトマト、種付きライプオリーブ(種の回りが旨い)、夏芹と胡桃、自家パセリ。白胡麻と黒胡椒で味を整えてみた。


2010/08/13 作成__2010/08/13 最終更新