妙に蒸すな。暑くなると鮑の季節。黒鮑は高価で希少なせいかマダカ、北海道の蝦夷鮑をよく見かける。昨今は渦巻きの捲き始めがエメラルド・グリーンに輝くマダカ系? の三陸産稚貝放流ものが市場を席巻しているが、旨い鮑はとことん旨い。生もいいし、蒸してもよいし、煮鮑も捨て難い。江戸前の伝統に従えば柔らかく蒸し上げるか、醤油でしっとり煮込んだ鮑にツメを塗るのだが、固さと柔らかさを兼ね備えた瑞々しい生も捨て難いものだ。忘れてならないのが肝。濃厚な旨味とマッタリと溶けていく舌触り、強烈な磯の味はまさに夏の味。捌くのは簡単だから、鮨屋でなくともOK。ただし大きいものは値が張るので、結果的にコストは大して変わらない。

酔った勢いで老人に鮑三種と生鳥貝、タイラギ他、貝尽くしの鮨折りを持って帰ったら、翌日、車で送迎させられて散々食われた上、置いてある貝20種ほどすべて握らせて持ち帰るという暴挙。隣で“お茶”飲みながら礼文の紫ウニ系の生ウニと鮑肝食ってたら泣きそうになったわい。久々のウニは箱ウニだがツブ立ちのよい優しいウニだった。北海道は漁期が厳密に定められており、味わえるのは年にほんの数ヶ月だが、生ウニの優しいふわりとした舌触りとスッと溶けていく濃厚な旨味はミョウバン漬の冷凍輸入ものでは味わえない価値がある。

タマリンド

作柄

どうみても豆の苗はカレー等に使っている果肉に含まれている種を発芽させたタマリンド。成長が非常に遅いが、この気候風土で実が生るのか? くたばる前に生るといいなぁ。2球植えた埼玉の青クワイは巨大化して背丈1mほどに成長。風で煽られるので水深の深い場所に引越し。取り敢えず青森産のものだけ大蒜を収穫。大きいモノで直径5cm程度4~6粒くらいか? けっこう肥料やったのにでかくならん。次期は少し早めて10月植えにしてみよう。まだ掘っていない残りの中国産に期待。ツタンカーメン豆は大豊作。8割食っても来年の種は十分に確保できた。

クワイ暴走

歳のせいか夜が早くて困るこのごろ。酒が呑めなくなるのはコスト的に嬉しいが、12時前どころか9時や10時に寝ると朝が早い。寝る場所をいろいろ変えて、紙障子の場所にしたら朝5時前から阿呆のように明るくて目が醒めてしまうのが問題だと悟った。近在の高麗食材店で買ってきた白菜キムチとイカキムチで起きぬけにビール。ビールはやっぱり朝が旨い。最近はもっぱら瓶ビール大瓶一択。缶とは微妙に味が違う気がするのだが、組成を変えているのか、アルミ缶のせいなのかは知らん。

大蒜収穫

暑くなってきたせいもあるが、早朝散歩でビールも旨い。客層が以前とはすっかり変わり、ビジネス・ファストフード化している駅前のすき家で朝ビール。さすがにこの時間にビールが飲める店は限られる。近くに『松』があるせいで丼モノがすべて30円引き。早出の給与生活者がチラホラいるが、家族やカップルで来るような場所ではない。24時間完全禁煙だから時間を気にしないで済むのはありがたい。生卵と丼モノという鬼門だから、ビールでも飲まぬと期限付の500円券がいつまでたっても消化できない。いろいろ食べたわけじゃないし、一時に比べ総じて改善されてきたとは思うが、ここでいちばん旨いのは間違いなくビールなんだな(笑)。タダ券はCOCOSやBIGBOYでも使えるらしいが徒歩圏にない。ついでがない限り、自ら車で出掛けてハンバーグ食って素面で帰ってくるみたいな生態とは遠の昔に決別したので最初から選択肢に入らない。誰か迎えに来てくれれば行く。

ツタンカーメン豆収穫

オーダーを取る若いあんちゃんの気の気かなさが最高。隣に座った女一名が恐らくメニューを指して、アレとかコレとか言っているのに、「チーズ牛丼“特”盛りの一辛で卵と味噌汁お新香セットでございますね」と糞真面目かつハキハキと復唱するもんだから思わず顔を向けそうになったじゃないか。特盛りというのは大盛りよりも多いのじゃないか? 並だと肉と白飯のバランスが悪いし、一度だけ大盛り食ってウンザリしたことがあるし、よそう人に因るが飯がつゆでべちゃべちゃなことがあるので丼は原則パス。摘みは牛皿1.5盛りに豆腐かお新香と決めている。回転の良い店は肉がグズグズに煮詰まっておらず、脂も浮いておらずあっさり目の味付けでよろしいが、もうちょい甘味を抑えてくれると尚よい。試したことはないがトッピング状態がデフォルト? で、その味で平準化されるということかいな。

◇ 豆ご飯

取り敢えず豆ご飯だ。実は黄緑で、初日は普通の豆ご飯と変わらないが、翌日になると赤い色素が染み出して飯全体が赤飯のように染まる。米3合に豆二掴み程度。規定量の水の一部を酒、味醂に置き換え、淡口醤油と塩微量で味付けして炊く。エンドウ豆よりも固いが豆の味わいは野趣に富んで旨味が際立つ。

豆ご飯

◇ 悪食二昧

忙しくなると缶詰ストレスが溜まるので飯くらい外に出たくなるが、悲しくなるほど在ゆえ、相変わらずロクな店がない。高ければおいしいかというと、そういう訳でも全然ないところが殊更悲嘆と諦観を誘う。最低限、作り手はその手の抜き加減を見せないでほしいものだが、どうせがっかりするなら、良素材を台無しにする稚拙な手法よりも粗悪な材料の適切な組合せで“旨く思えるモノ”を作り出す才能に金を払いたいか。

日高屋

半年振りくらい。惚れ惚れするような材料原価率と出店戦略が当たり、業績絶好調! メニューがちょっと変わった? ビールは昔と違ってだいぶおいしくなった(笑)。タンメンと中華蕎麦しか食べたことはないが、中華蕎麦の汁は残念ながらお子様ベタベタ濃厚アミノ酸路線へ転じているように思われる。汁はどろっとした不透明な様相を呈し、塩辛く、脂がいっそうきつく、魚粉と思われる粉っぽさが舌に残り、妙な甘さまで感じられる。コクってヤツか? 複数の動物合わせ出汁は鍋を思わせるものがある。塩はきっちり使う主義だし、塩忌避信仰に興味はまったくないが、さすがにこれは辛い。

公平を期すために3週間後再訪。今日は雇われ店長と目される初老の、やたら腰の低いオジサンが厨房。バイトもいつものオネーチャンやオバサンではなく炒飯を振れるあんちゃん。まったく同じメニューを頼むが、明らかに味が異なる。汁はきっちり漉されているのだろう。透明感を湛え、舌触りも悪くない。表面に浮く脂もはるかに薄く玉になる程度。チェーンだから汁は工場生産の同一材料で、調理人が手を加える隙はないのだろうが、扱い一つで味は変わるもの。余生を賭けちゃった店長とパート調理人の差は如何ともし難いな。要はやる気と能力の問題だよん。

天麩羅・天丼の拾藩家

こちらは9ヶ月振り。平日の昼過ぎ。客の入りはかなり改善がみえる。そのせいか、天つゆが今風に、かなり甘ったるく、濃厚になった気がする。出汁がまったく香らない。胡麻油も香らない。甘過ぎて箸が止まる。完食が辛いぞ。揚げている人は以前と同じ店長と思われるオヤジだが、衣がサクサクを通り越してバリバリ。なんじゃ? これは。サラダ揚げに甘ダレとか掛けちゃう“てんや”レベルに堕したか?

公平を期すために一月後再訪。今度は鶏ささみ天定食と蕎麦を食ってみた。蕎麦は細目だが黒っぽい田舎風で、機械製麺の生麺ないしは冷凍麺か。腰はまぁまぁだが蕎麦はまったく香らず。蕎麦粉30%程度だろう。まぁ、¥350という値段からすれば最初から期待はしてない。薬味に練り山葵、葱に揚げ玉が若干付いた。つゆはそれほど甘くはないが、濃くもなく香りもせず平凡な出来合い。合わせ出汁のツマラナイ業務用だろう。ささみ天はかなり大振りなものが2枚。衣は中庸。今日は白っぽいが薄衣でさっくりした感触。固くもなく柔らかくもなく、中心まで火が通るか通らないかぎりぎりの揚げ加減も上々。午前中だったせいか、いつものオヤジではなく、30代くらいの女性による調理。つゆも時間が早いせいか煮詰まった“タレ”と化してなく、甘くて出汁が香らないという欠陥はコストと需要を鑑みればどうしようもないのだろうが、食えないというほどではない。なんだ? オヤジ、ダメじゃん。バリバリは繁盛時の準備揚げの二度揚げで揚げ過ぎたか、オーダーミスの再利用揚げだったのかもしれないな。

◇ 牛皿

わざわざ作らなくとも想像はつくが、自分なりに作るとどうなるのか? と、験しに薄切り肉を買ってきてみた。上下で200円/100gの価格差がある。どう見ても肉に火を通しすぎると味わいを損ねそう……という前提で、2種調理してみた。

牛薄切り肉

昔風に長葱で牛皿

長葱1.5本、肉200g。熱したフライパンに牛脂を溶いて、生姜みじん切り+肉。色が変わりきる前に葱。煮切り醤油30ml+酒30ml+鰹出汁汁45mlを薄く張り、沸騰したらすぐ火を止める。計1分30秒ほどか。

長葱牛皿

今風に玉葱で牛皿

牛脂を溶いたら生姜と肉を塩、胡椒で30秒ほど炒めて取り出す。肉は半分赤味が残るくらい。そのフライパンで上記つゆを沸騰させ、櫛切りにした玉葱1個を強火で1分煮る。肉を戻して15秒くらい。赤身が消えたら火を止め青葱を散らす。

玉葱牛皿

超簡単でお手軽でそれなりにおいしいと思うが、外で食うようなどぎつい味にはならないし、もちろん外で食ったほうがはるかに安くあがる。好みで紅生姜や七味唐辛子といいたいところだが、余計な薬味はかえって邪魔か。口中で蕩ける肉の旨味を率直に味わえばよい。ビールの摘みに。


2010/06/15 作成__2010/06/15 最終更新