雪後晴れ


雪かと思えば翌日は嘘のような春うらら。うかうかしていたら花芽が付き始めてしまったので睡蓮を掘り起こして植え換え。腰が抜けそうな超重労働だぜ。おまけに臭ェ。田んぼの臭いがプンプン。購入時数cmの蓮根は一抱えある盥一杯に広がって、もう収拾が付かない。適宜分割して2鉢を3鉢にしたが、もう許容限界だよ。なんという繁殖力。ツタンカーメンのえんどう豆が開花。気温が低くまだ背丈70~80cmほどと生育途上だが、気が早いものだ。花の数だけ実が生るわけで、せっせと追肥。名前の通りツタンカーメン王の副葬品として発掘されたものを培養発芽させ種を採り回した何代目か(といわれるが眉唾)。種苗会社が安価に販売しており入手性は良い。太古から甦った? 蓮もあったような気がしたが、来年やってみるかな。

ツタンカーメンのエンドウ豆

秋植えの大蒜も一気に背丈が伸びてきたので、適当に葉を採取。今年は玉を採ることも目標にしているので、あまり葉をちょん切るわけにはいかないところは辛いところ。畑ほど水捌けが良くないので、このところの多雨傾向で露地ものは病気や根腐れが心配だが、今のところ頑健に育っている模様。

大蒜畑

◇ マンネリ・速成カレーライス

気力がないとき、メニューに窮したとき、この世のすべてが面倒で堪らないとき、カレーは手間要らずでテキトーにやっときゃ何とでもなる安価(材料原価50円/皿はしない。笑)でコンビニエントなファストフード献立であり、月に一度ぐらい食べるとおいしいと感じることもある。今回はタマリンドとカレーリーヴズ、ココナッツクリーム缶+パウダーで簡単に手抜き、秘密の隠し味や秘伝のコク旨タレなどの拘りは一切ない、ちゃちゃっと30分カレー。玉葱+78円の輸入トマト缶ベースに具はブロイラー手羽中とマッシュルーム、水に浸しておいた数種のインド産豆(200円/kgくらいの)を二掴み放り込むだけ。豆があれば肉は要らないが、要望により鶏か羊を加えると一般性が増すのか?

ベース・スパイスをテキトーに選別したら、たっぷりの油で炒める。刻み大蒜半個分、同量の生姜を加え、玉葱1個を5分、ガシャガシャと焦がさぬよう強火で炒める。カルダモン+シナモン+クローブたっぷりの南方香味仕様に、今回は固めに炊いたコリアンダー+ローズマリー入りのターメリック・ライスを合わせてみた。マサラをよそう前に炊き上がったターメリック・ライスにギー(加熱殺菌バター:澄ましバター)かバターを20gほど落とすと重くなるけど旨味は増すが、本質的には邪道だろう。彩りはコリアンダー生葉ないしは青紫蘇の葉で、マサラ7:米3の典型的な盛付、和風カレーライスの王道。見映えや風味は気分(使用スパイス)で変わるが、概ね白~ピンク~赤~オレンジ~黄色~緑であって、どうやっても暗褐色にはならないのはあいにく。マサラにターメリックはまったく用いず、炒め時間、煮時間共に極小なのでトマトとカイエンペパーの色が素直に出てしまう。一見辛そうに見えるが、実は甘くて酸っぱくて、個人的にこれを辛いと言うことはない。鶏骨が入っているのでアミノ酸系の旨味も出てしまうが、個人的にマサラに肉類は必ずしも必要だとは思わず、コクや旨味はむしろスパイスの風味を曖昧に削ぐものと思う。マンゴー・チャツネかアチャール、ナッツ類を別添えして摘む。巨大なバナナの葉に一式盛り付けて、右手指三本で食うと食器も要らない。

ココナッツカレー

ライス(勿体ないけどササニシキしかない)は硬い方がよいので軽く洗ったら、スパイスを合わせ、オリーブ油を垂らす。10%減水で鍋炊き。電気釜なら40分、ガス直火で20分ほど。炊けたら蓋をとって水分を飛ばし、熱いうちにギーを垂らしておく。たまにはサフラン・ライスにしてみたいがサフランが高くて買えない。ココナッツ・クリームはタイ産100円/400gを一缶。具材を炒め水分を飛ばし、ココナッツ缶とトマト缶の液体部分とタマリンド・ジュースを加え塩で味付け。油と水が分離しないよう強火で一気に煮立てたら極弱火に落としてクリーム部分を加え沸騰させないように数分加熱、スパイス調整して完成。炒め15分、煮15分といったところ。煮時間が長くなったり、余って一晩置いたものはスパイスが飛んで食えたモノではないので、再構成が必要。残ったマサラは翌日カッテージ・チーズやヨーグルトをダバダバ加え、ホウレン草やインゲン、異種スパイスで趣向を変え見映え込みで別の味にすれば飽きずに食える。マサラに酒は今ひとつ合わないのでラッシーとかタピオカ・ココナッツとかパパイア・ミルクとか。テレッと甘酸っぱい乳清系が爽やか。

◇ マンネリ・魚香茄子+回鍋肉

茄子が買う気になる価格に落ち、市販の泡辣椒(500g:1年分くらい)を手に入れたのでたまには魚香。う~む、デカイな。10cmを越えるものまである。国産のデカイ唐辛子形状の野菜はちっとも辛くなくて、この手のメニューにはまったく使い物にならないが、これは齧ってみるとそこそこ辛い。本来の青椒肉絲に使われる青椒もこんなものの未熟果だろう。乳酸醗酵の効いた塩辛酸っぱい味は自分で漬けているモノとそれほど変わるとは思えないが、完熟している唐辛子自体のぬるりとしたねちっこい旨味はこちらがはるかに優れるだろう。

泡辣椒

季節柄、大蒜畑で葉大蒜が成長中なので葱ではなく適当に収穫した葉大蒜を使用。魚香の作り方は以前と同じ。特に改善や工夫はない。砂糖は用いず、3ヶ月おきぐらいに餅米と酒粕で作り置きしている酒醸を使っている。甘旨すっぱ辛い独特の魚香は飯のおかずにしてもよいかな。

魚香茄子

豚バラも安かったので手が出た。半量をトンポーローに、残りは葉大蒜と葱で定番の回鍋肉に。P県豆板醤と甜麺醤は2.5:1と基本通り。朝天辣椒を使ったらちょいと辛くなり過ぎたがビールには程良い。芸がないのでおこげ(鍋[米巴]:コーパー)に載せて食べてみたが悪くはないか。

回鍋肉

◇ マンネリ・中華蕎麦2種

◇極少素材で誤魔化した赤貧ラーメン

ごてごてしたラーメンは好きじゃない、という負け犬の遠吠えに相応しくも簡素簡潔、ほどんど具がない中華蕎麦。業務用カンスイ入り中華生麺に業務用鶏がら中華出汁、醤油、胡椒、紹興酒、豚肉小間切れ、紫蘇の葉、煎り胡麻に庭に生えた再生葱を加えただけ。材料原価50円しないだろう。

赤貧

◇某国産素材を使い回した眉顰中華蕎麦

鶏ささみ、黒木耳、エノキ茸、葱を豆板醤と泡辣椒でまとめてみた。とろみは付けていない。スープ等は同上。

眉顰蕎麦

◇ 醤油(2)

ヤマモリ:黒豆醤油

醤油だけでなく加工食品全般を生産する三重県桑名のメーカー製。黒大豆使用によるポリフェノール含有量の高さが売りだが、そういうのはどうでもよい。価格的には普及品なので後述の丸島などとは比較にならないが、個性があって面白い。三重と言えば濃厚で甘口の伊勢醤油が有名だが、これも本醸造ではあるが、アル添。意外に甘味よりも塩辛さを感ずるが、気付かない程度に三温糖も添加されているあたりは地域性だろうか? 嗜好の移り変わりなのだろうか? 今や糖類が添加されていない醤油を日常的に用いる地域は少数派かもしれない。

醤油2題

マルシマ:こいくち

小豆島の丸島醤油製、本醸造濃口。同じ小豆島の正金醤油を愛用しているが、ちょっと浮気してみたもの。0.9lと量が中途半端だが正金より10%ほど安い。正金がすっきりした透明感と香りよさを際立たせた洗練された味わいであるのに対し、こちらはまったりとした柔らかさと優しさが特徴か。

相変わらずの食いものネタに自分でも食傷気味で更新意欲が減退中。食い物ネタの本質的な胡散臭さは言葉では本来表現しきれない味覚を躍起になって記述しようとすることにあるのだろう。味を伝える形容詞は限られているし、いわんや「うまい」「まずい」といった味の基本的基準すら、地域や風土、年齢層や社会階層、生まれてこの方の食経験で、場合によっては正反対の結果が出てしまうほど異なっている。その意味において、普段自分が作っているものは自分にとっておいしいものであり、誰もがおいしく思うものではないということは冷厳たる事実である。まぁ、備忘録風に、アレはどう作るんだっけ? と自分で自分の書いた文章を探すと言う意味でこのWEBも役に立っていないというわけではないのだが、訊かれもしない薀蓄を並べる“料理を語る”料理人よりも、何も言わずに当たり前のものを当たり前のものとして食わしてくれる料理人が望ましいことは言うまでもない。


2010/04/20 作成__2010/04/24 最終更新