Ready Aholdings


アオコでどんよりと濁った水底から、ときおり金魚が浮いてきて餌を食べるような日和になってきた。金魚といってもうちのはただの赤いフナ。水が減ったら水道水をホースで足すだけという、何一つ管理らしいことはしていない放任主義だが普通に育っているようなのであるがままに、自然の摂理に任せている。もちろん我もの顔をしてあいつらもやって来る。今年は雄24匹、雌29匹を確認。クェクェ煩くてかなわん。どいつもこいつも肥え太りやがってよほど生育環境が良いのか? うち数匹が数万個/匹を産卵した疑いがあるのだが、水が青水で濁っているのでわからん。底浚えで全部回収しきれたとは思っていない。可哀想という意見もあろうかと思うが、水面を真っ黒に覆い尽くして、ウニュウニュピチピチしている数十万匹のおたまじゃくしを見れば気は変わる。大半は池から出た段階で生き残れないのだろうが、生まれた場所は蛙の遺伝子に刻みつけられて、運良く生き残った個体は数年後、再び産卵に戻って来るという堂々巡り。

一匹育ちの悪い金魚がいて、よくみると体表が薄っすらと白い。水カビ病かな? とすくって盥で一晩塩温浴+メチレンブルー薬浴させたら、よっぽど嫌と見えて、盥の縁に突撃して外に出ようとするのだな。しょうがないから網を張っておいたら、浮いた。横倒しで。触っても無反応。こりゃダメだわと、どうせ死ぬなら元の池がいいかと戻したら、翌朝普通に泳いでやがる。なんだかなぁ。

暖かいくらいの雨の夜。たまには飲み会にもいく。小伝馬町と人形町の中間くらい。クエ鍋やら鮟鱇鍋が売りの魚介系の飲み屋で、刺身も含め質はそれなりだが、さすが東京、質を求めてしまうと高いわ(笑)。奢られる身として腹は痛まないが、寒村で赤貧窮乏蟄居している身には物珍しくも驚くことばかり。雑居ビルの3層分を使った飲み屋だったが、座敷は広く明るくて食いものを味わうには適している。チェーン居酒屋を否定するものではないが、凡そ法定換気量すら満足していないような今風の薄暗い個室風には腰が引けてしまう。

ここ10年の社会全体、あるいはそれを構成する人間の劣化ぶりにはスザマジイモノがある。もうどうにでもなぁれ? とばかりに業界全体もほとんど死に体故、暇だから4時ごろからと誘われていたが店が開いていない。それでも5時前から始めれば終わりも早い。電車が混まないうちに帰れるのは楽でよいが、わけわからん相互乗り入れが増えると、ほんのうっかりが途方もない絶望感を生み出すのでおちおち寝ることもできない。

かつて同業の事務所内といえばどこもかしこも対辺が霞んで見えたものだが、オフィス禁煙は当然として、今や酒の場ですら一人としてタバコを吸わなくなったのは隔世の感がある。昨今の虐げられっぷりを見ていると本当にあの時(10年前か……)辞めておいてよかったと感慨も深い。かつては一日3箱吸っていたほとんど犯罪者としては、御迷惑を掛けた方々や動植物、建築物、物品、野原、海浜その他に対して、今更ながら深くお詫びし、反省する所存であります。今からでも謝りに来いといわれるならば、菓子折持って参上いたしますんで遠慮なくご一報ください。

新規開拓

繋ぎと異種肉で如何にフカスか? しか考えていない日本のふにゃふにゃハンバーグは女子供の食いものだからどうでもいいんだが、一応牛100%を謳うマクドナルドの子供向けぺらぺらパティに満足できるわけもない。なんでハンバーグはこんな風になってしまったのか!!! ということで、フライングガーデン(以下FG)。元来は北関東本拠のチェーンで略称“フラガ”らしいが、この辺では通じないし、知ってる単語をつなげればいいというわけでもない。最寄で10kmほど。駅から歩くのは嫌だなぁ、と思える某製鉄所跡地の一角にできた薄っぺらで異様なまでに人口密度が低い新興ショッピングセンターの一角。たまたま法改正で義務付けられた年次業務報告書を提出する県の出先機関が近くにあるので、ついでに廃墟になった高炉を眺めに足を伸ばしたついでのついでで知ったもの。向かいには大きさからして新品の球蹴り場があるように見えるが興味はない。催し物がある場合には来ないようにしないといけないな。鉄骨平屋。工期3ヶ月のよくあるファミレス風の造り。ちゃちなナチュラル調の内装。テーブル席のみ。70%ほどが禁煙席で区切りは木枠の型板ガラス。天井が高いのでh=2500ほどと、まぁ、許せる高さだが、中途半端であることは否めない。平日の1時半過ぎ。50席ほどに先客2組。食事中に追加2組。サーヴ側の配置はホール1+厨房1かな? まぁ、こんなもんだろ。

売り物は潰れた球状をした「爆弾ハンバーグ」といわれるもの。原型は80年代バブル期のプレストンウッドや横浜のハングリータイガーかな? 網焼きで外殻は香ばしく焼けている。球状なので中心部には火が通らず、グリルに載せたものをオネーチャンが目の前で切り分け、生の面を焼けた鉄板にぐいぐい押さえつけ、更にソース(4種から選択)を掛けて供される。この段階で肉はミディアム・レア状態になっているので、余熱で火が通り過ぎないうちに食べるという具合。塩と胡椒と牛肉だけで、繋ぎはおそらく入っていないと思われる。ローストビーフの挽肉版か。250gの爆弾キングを常食する。もちろん生肉の重量であって出来上がりではない。爆弾? キング? たいした大きさではない。けっこう脂っこいのでしばらくすると腹はかなり膨れるが、二個は食えるな。肉はオーストラリア産100%と表示されているが、脂身が多く含まれているのだろう、しっとりしていて柔らかく、食感は非常に良く、臭みもなくきっちり肉の味がする。強いて言えばタイムなりオレガノの風味がしてもよいかな。ソースは4種から選択可能だが値段なりにして平凡。お子様向けの最大公約数。付け合せは申し訳程度の人参、ブロッコリー、ジャガイモにコーン。夏のトウモロコシは10本/年は消費するほどおいしいと思うが、遺伝子改良輸入コーンとなると飼料のイメージが強すぎてちょっとみすぼらしい。ランチではスープ・パンorライス込みの値段設定で、スープ・ライスはお代わり無料。パンは今風の柔らかめ、○と■が一つずつ。バター付。ライスは食べたことがないので評価不能。そう、私はハンバーグ(というかグリルもの、ステーキ類全般洋風ソース)をおかずに米飯が食べれない人間です。

バブルの頃、今は亡きヴィクトリア・ステーションなるステーキ・チェーン(1999年に全店閉鎖。メニューは異なるが現ビッグボーイが資本的には後継)で食ったプライム・リブと呼ばれた厚さ1cm~、重量指定ができた極厚リブ・ロースが忘れられない。ガラス張りのロータリー・オーブンで脂を滴らせながらじっくりと焼かれた、ぬめっとしたピンク色を呈したミディアム・レアのローストビーフのようなものだが、低温で長時間焼いたしっとりとした独特の味わいがあった。脂身の多いロース(サシじゃなくて赤身+脂身)が手に入ると、ときどき試してみたくなるが記憶の味には程遠い。部位的にあれと同じアメリカ牛は手に入らないのだろうが、A4くらいのサシが入っていない和牛で代用できるかな? 値段は途方もなく張りそうだが。

ロース焼肉

同じころ、イエスタデイ(Yesterday)というファミレス風情だがファミリーを見たことがないほど照明が暗いファミレスが在った。マッシュルーム・ステーキやズッキーニのフライなど当時としてはモノ珍しい、ちょっと凝ったメニューが売りだった。4輪自動車を乗り回すのが愉しくて仕方がなかった頃、小石川や東陽町によく出没したものだ。バブル崩壊と共に質がどんどん落ちて、こちらもいつの間にか見かけなくなってしまった。

贔屓の立ち食い蕎麦屋が隣接する牛丼屋やらラーメン屋の攻勢に屈して値下げ。蕎麦の質は変わらないが、掻き揚げが一回り小さく薄くなっていた。期間限定だが破格の野菜天蕎麦やメニュー一新で対抗しようというのだろうが、悲しいほどにガラガラ。経費削減か? 昨今は経営者らしき人が蕎麦を茹でている。今年は蕎麦が凶作らしく奪い合いによる高騰と、だからといって値上げもできずで、まさに泣きっ面に蜂か?

贔屓の立ち食い鮨も芳しくない模様。周辺の昼間人口の減少に伴い、単価が高いモノから打撃を受けるというのはどこも同じ。いつものように、食べれないものはないのでその日のお薦めを握ってもらう。超マニアックな品揃えで、ここで初めて味わったネタも多い。8割くらいは視覚と味覚でわかるが、わからないものはもちろん訊く。通り一遍の一般ネタで構成されたいわゆる“お決まりセットのおまかせ”とは異なるが、好みを憶えてもらえるので自分で頼むよりも満足度は高い。良いモノが入ったときは鮪やウニもちゃんと出してくれる(笑)。常ネタ30種ほどは木札が掛かり、その日のお薦め30種は別途ホワイトボードに書かれているのだが、そこにもないネタを出してきやがるという、まだ若いのに仕事を愉しんでいる店長の心意気と夾雑物のない風情が気に入っている。ここ1年ほどは他2名の職人も安定してきた。落ち着いた高級感とはとことん無縁だが、普通の鮨屋にいっても妙に物足りなくなってしまうのが玉に瑕。高い店で良い材料を使っていればおいしいのは当然だが、亭主、客を問わず、馬鹿丁寧で気取ったあしらいみたいな雰囲気を感じてしまうと、どうにも居心地が悪くて適わない。

Vive la Trance!

某石鹸屋の健康油問題もほとぼりが冷め、及び腰の消費者庁が重い腰をようやく上げて、トランス脂肪酸(TFA)の自主表示をお願いしちゃおかな? と逡巡する間に、さぁすが、情報が早いな(出来レースか)。賢いところはさっさと含有油の在庫処分攻勢をしてやがる。ずいぶん前から削減をアピールしている掃除屋系のドーナツは別として、トランス脂肪酸はポテトやチキンの業務用揚げ油のみならず、ショートニング、マーガリンとして安価な惣菜や洋菓子類に用いられるが、オリーブ油や紅花油、胡麻油といった天然油が高価であるがゆえ、もちろん植物油脂を含むと表示された多くの2次加工品(海老と相性がよいらしいタルタルソース、マヨネーズ、コーヒーフレッシュ類、偽チーズ、インスタント食品、カレールーの類、レトルト・パウチ食品、食パンを含む惣菜・菓子パン類、スナック菓子などなど、ありとあらゆるモノにふんだんに使われている。もちろん動物性油脂や牛乳にも若干は含まれているので割合の問題なのもしれないが、工業的に水素添加して固めた植物油製品に問題があることは昔からよくいわれていた話で、先進国では10年ほど前から規制が始まり、アジア諸国でも数年前から表示義務付けが始まったので、だぶついた安価なTFAをここぞとばかりに買い叩いていたのだろう。初期有機化学の成果にして、虫も食わないプラスチック。コストダウンの神髄、デフレ万歳!!……の割りに、この手の話題が広がらないのは青息吐息のメディア産業のスポンサーへの配慮なんてことではなくて、日本人なら当然、目刺と漬物、味噌汁で飯を食うわけで、トランス脂肪酸なんかどこにも入りこむ余地がないため何ら気にする必要がないということ。大丈夫。寝てる子は蹴飛ばしたって起きやしないさ。

麺2題

◇ 担担湯麺

下準備:20分 本調理:10分

敢えて書くこともないが、麺は38円/袋を1.5/人。肉は牛挽肉。胡麻は練り+擂り。芽菜入り、朝天辣椒、P県豆板醤、もちろん花椒たっぷりで純四川風で安定。あとは気分で香辛料の量を変えるぐらい。簡単で安上がり。

坦坦湯麺

◇ 海老タンメン

下準備:20分 本調理:10分

天下の岡田屋で買った冷凍バナメイ種の海老が余っていたので湯麺(タンメン)にする。海老は下拵えすると小さくならず、味も良いが、そこまでする海老ではなかった。黒木耳、椎茸、搾菜、セロリ。薬味は葱+生姜。鶏がら出汁、塩味スープ。

海老たんめん

アン肝

ずいぶんな分量だが180円という値付けだったので面倒臭いと思いつつも、つい買ってしまったアン肝。2匹分だが測ったら700gあった。内外食限らず値段はピンキリだが産地の差や鮮度?(笑)の差による味の違いがどうしてもわからない貧乏舌なので、この手のものは安くて大きければ大きいほど良いと割り切ることにしている。置いておくと臭くなるので、塩をたっぷり振って1時間ほど水抜き後、薄皮と血を抜いて酒できれいに洗う。時間を掛けて酒に漬け込んだほうが癖はなくなるが、野趣も欠けるので兼ね合いが難しい。酒を振りラップに包んで15分蒸す。冷えたら冷蔵庫で一晩馴染ませる。5mm厚にスライスして葱、柚子、紅葉おろし、ポン酢で酒の肴にするのが常道だろうが、しみったれた居酒屋みたいで嫌だなぁ。そんなに(量を)食べるもんじゃないし、ちっとも減らない。ドブ汁とかパスタとか、そういった方向性はまったく気が乗らないので、どうやって消化しようか? アン肝と○○(←憶えていない)のテリーヌというのものが近くの食堂で前菜に出てきたが、それも今一つだった。

アン肝

1:茹で海老とちょうど芽が出た蕗で酢味噌和え?
  ――苦味が良いがアン肝はなくてもよい
2:穴子の詰めで甘辛く煮るか?
  ――まぁまぁだが、甘辛濃くてお子様味だよ
3:オリーブ油で焼いてマスタードにオレガノ?
  ――こいつはなかなか。香ばしく焼けたアン肝もよいものだ
4:白子の天麩羅があるんだから海苔で挟んで衣つけて揚げてみるか?
  ――揚げ立てならば口の中で蕩けてたいへん素晴らしい
5:ピータン豆腐ならぬアン肝豆腐
  ……は失敗。冗長。愚鈍。一杯飲み屋の突き出しレベル。
6:やっぱ究極は燻製?
  ――になる前に消化した。また今度ね。

しかし、まぁ、どう見ても、どう足掻いても、どう味わっても、かつて闇市で闇鍋に出汁代わりに放り込まれていた下手物中の下手物。昨今は場所によっては“海のフォワグラ”などと称して滑稽千万な高級化が計られているようだが、鮨屋で食っても末席を穢す100円ネタである。ありがたがれと強要されるとしらけるモノの一つ。

蕗が生えたので精進揚げ。蕗だけでもちっともかまわないのだが、なぜか調理台には他の材料が転がっている。むぅ。仕方なく、残っていたアン肝をスライス、海苔に挟んで包み揚げ。あとは……人参、玉葱、年々辛くなくなる山葵菜の野菜掻き揚げと、……舞茸と牛蒡かな。

蕗とアン肝

稀に天麩羅と海老が同義なこともあるらしいが、近在でまともな海老を入手することは極めて難しいし、なおかつ高価につくし、いわんや揚げ加減が難しく、揚げ立てでなければ食べるほどのものでもないという意味で、内でも外でも敢えて海老を選択する場面は限られるというもの。浮世絵の女があらぬ方向を眺めながら海老天を咥えているのは絵になるが、馬鹿の一つ憶えじゃあるまいし、いい歳こいた老若男女が嬉々面々と海老にかぶりついているのを眺むるは往々にして滑稽だ。

素人調理における天麩羅の最大の欠点は、冷めた天麩羅は食べないという原則を貫くと揚げている人間が食べれないことである。揚げながら酒を呑み、立ち食いすればいいのだが、片手は衣でドロドロなんだ。手と視覚が左右完全独立して機能すると便利と思われる。


2010/03/11 作成__2010/03/11 最終更新