雪は溶けたか?


空気が締まる良い季節だが、さすがにシャワーは寒いので風呂に入りたい冬の入り。温室がいっぱいなので冗談で植えたら芽が伸びたアボカドも夜だけ屋内に退避。一方、香菜は屋外で順調に生育中。去年スーパーで買ったモノの根から再生して開花、種取りしたものは微妙に葉色が変わったりしているが、味や匂いはむしろ強くなっている(野生化している?)ように思える。

種植え香菜

インド産のスパイス用コリアンダーから発芽させたものは時期はずれというに、何故か花茎が伸びて開花し始めた。驚いたことに花色は白ではなくピンク。こちらも負けず劣らず匂いが強い。今年はプランターで誤魔化したが、来年は管理が楽な地植えにしよう。

コリアンダー

最近の中国産大蒜は発芽しない処理がされているようなので、適当な価格の国産端物を入手。一房から一粒程を割愛し地植えにて葉大蒜の増産に取り組もうという魂胆だが、発芽するかな?(現在、水漬2日で5mmほど根が出ている) 素揚げにするとほくほくと芋の同類を思わせるほど上品だが、中国料理や南アジア・中近東・南欧料理に使うには、やはり香り、味共に弱すぎて風味が埋没してしまうのが難点。大蒜以外のスパイス類を減らすなり抜くなりすればバランスがとれるのだろうが、それは本末転倒というものだろう。そこまでして食べるものでもないように思う。

端物大蒜

◇ 唐突にわらさと大根を煮てみる

調理時間:90分(実働30分)

鮨屋の帰りだと魚を見る目が厳しくなって無駄遣いをしなくなるもの。隣に並んだブリのアラ・カマは4倍の値段をしても補充されるたびに売れていくが、いつまでも売れ残ってかわいそうなワラサであった。鮨屋にいけばタダでくれるものを売り物にするのは末世を体現しているとしかいいようがないが、値段を付けて売ったとしても、余興というか採算に乗るものではない気がする。既に一口大に分割されており、使い勝手を強制されているようで殊更気に入らないが、まぁ、出刃を引っ張り出さなくて済むし、楽チンではある。この段階で見映えと添付情報だけで素材を選択するには多少の知識と経験が必要だが、ブリ類は素人でもあまり失敗がない素直な魚の一つ。

ワラワラサ

鍋に湯を沸かし、その隙に青首大根を適宜切断、皮を剥く。京料理のなんとか剥きじゃなくて日常のおかず剥きでOK。湯が沸騰したら生でも齧れる今時の大根を普通の水で下茹でする。柔らかくなるまで、およそ20分程度。茹ったら鍋ごと冷流水に晒しておく。ワラサは笊に取る。目が合う。こんばんは。臭いを嗅ぐ。臭ければ塩を振るという手もあるが、そんなものは今時普通は売られていない。今時ってホント便利だよな。この時点で素材の出自によってかなり差異が出る。失敗を経験することでおのずと選択肢は絞られてくるものだ。

あらわらさ

手早く薬缶の熱湯を廻し掛け、表面が白くなったら氷水に取り、鱗や血合、赤黒い臓物や血管の部分を指先や爪で抉り取る。程度問題だが、手で取れる範囲は取るぐらいが丁度良い。ナイフでちまちま切開して……までいくとやり過ぎ。所詮はブリの身が食えない貧民向けの残飯処理なので、肉じゃがなどと同じく外食では扱わない食いモノ。テキトーを旨とする。下処理が済んだワラサはキッチンペーパー等で丁寧に水分を拭き取っておく。

激しい葛藤を乗り切って、普通に飲める酒(紙パック純米酒・アル添可)1lを鍋にかけ、煮切る。エタノールが蒸発し始めたら霜降りにしたワラサを入れ、中火で数分煮る。アクがかなり出るが、このアクは雑味や臭みの素になるので、ウゼェ脂と一緒に丁寧かつ完璧にすくい取る。ワラサに火が通ったら弱火に落とし、生姜の皮と下茹で大根を加え30分ほど煮る。大根が柔らかくなったら味醂75ml、本醸造濃口醤油75mlで味付け、葱の青葉適宜を加え、落とし蓋をして更に20分ほど弱火で煮込む。最初から濃い味こってり系の煮物になると食べる気がしなくなるので、具材は液体に完全に埋没するよう、頃合を見て酒を補充する。摘み食いで味が乗ってきたら一日目はここで完了。食べる分だけ取って、残りはそのまま放置する。

一日目

くどくはないが素材の旨味はよく出ているはず。臭い場合は素材か手法のどこかに瑕疵があったのだろう。塩味が欲しい場合は醤油を一部又は全部を淡口に差し替えると良いだろう。翌日、翌々日になると、火入れ冷却の繰り返しで大根に執拗に味が染み込んでくる。煮崩れを防ぐには味醂を増量するとよいが、照りが出る上に当然甘ったるくなる。本来のワラサ大根はこのあたりの味を指すと思われるが既に逃げ腰。初日に比べると味が凝縮されて濃くなっているので、葱や柚子を散らして目先を変えないと一口摘んで飽きる。

2日目

◇ 魚に飽きたら肉を焼く

調理時間:1時間(実働20分)

たまに肉が食いたくなることもある。和牛A4クラスなんぞとても買えないので、たいていは輸入肉になる。薄切りは食べた気がしないので基本は塊を買って調理している。

漬物

安い赤身(88~98円/100g)の牛肩ロース塊600gの両面に塩、胡椒を振り、大蒜、乾燥ローズマリー、タイム、オレガノをまぶし、EXVオリーブ油に30分~1時間程漬け込む。その時間を利用して適当な添え菜を準備する。添え菜は簡潔に軽く塩茹でするだけ。フライパンを空のまま高温に熱し、牛肉を漬け込んでおいた漬け込み油を注ぐ。大蒜や香草類が香ったら肉を塊のまま、強火で両面を軽く焦げ目が付くように焼く。ほんの数分。香草類が焦げない程度。焼けたらフライパンから上げておく。火を弱火に落とし、フライパンに残った香味油と焦げ付きに白葡萄酒を適当に加え、塩、胡椒、最後にちょいといんちきバルサミコ酢、シェリー・ヴィネガーで酸味とコクを付けて軽いソースとする。肉は6mm~8mm程度の削ぎ切りにし、たっぷりと器に盛り付けたらソースを注ぐ。

焼物

焼けているのは表面3mmくらいで、中はオリーブ油漬と熱の効果で半生程度、ピンク色になるくらいが最もおいしいと思う。外殻の香ばしく焼けた食感と、瑞々しい肉のバランスが勘所。厚切りの手抜き促成ローストビーフのようなもの。ソースの穏やかな酸味と香草の組み合わせも合う。もちろん、肉を食ったという気になるにはとにかく量が大事。一人250gぐらいが適当でしょう。


2009/12/08 作成__2009/12/08 最終更新