徘徊その後


ちょっと浮気してみた“うどん”にもすっかり飽きたので、半年振りに日高屋に行って中華蕎麦を食ったら、作る人が替わったのか仕様が変わったのか知らないが、スープのキレが著しく悪化して、濁ってるし煮干臭いし恐ろしく中途半端な味になっていた。弱小T蕎麦はマニュアル化が進んでいない弊害として日によって、人によってどうしても差ができてしまうのだが、最近つゆがちょっと薄っぺらくなってないか? 色味から判断するに、明らかに返しが薄くなっていて(そのわりに塩分は変わらない)、出汁が立ち過ぎるような気がする。醤油の質を落としたのかな? 一方、ゆで太郎は円高と小麦の国内売り渡し価格大幅引き下げをもって? 値下げに踏み切る模様。11月から現行のもり260円が230円になるらしい。円高で20%、小麦粉で23%だから4割くらいは利益率が上がっているわけで、そのわりに反映される価格としては微々たるもんだが。

しかし、近在のチェーンうどん店で周囲を見渡すと女子供が多くてびっくりだな。年齢層が高くおっさんと老人しかいない蕎麦屋とは雲泥の差。店舗の設えやデザイン、照明、色彩サイン等も明らかに廉価ファミレスやパン系のファストフードに近い客層をターゲットにしている。同類の潜在万年失業者みたいな風采の上がらないおっさんはポツンと隅っこに小さくなって、目に入るのは、子供連れ、中学生や高校生の女の子、外れた時間に昼食を摂っている派遣やバイト風の女性、買い物ついでのオバサンといったところか。昔、婆さんに連れられて行く店は、中華料理屋、洋食屋、普通の鮨屋から当時東京には数店しかなかった回転寿司まで、外食好きの新し物好きで、家では食えない数々の味を教え込まれてきたわけだが、どちらかというと謹厳実直で質素を旨としていた爺ちゃんに連れられて入る店といえば大概は街の蕎麦屋だった。爺ちゃんはビールの小瓶か酒とモリ。なんでも好きなものを食べなさいというから、一度、“おかめうどん”とリクエストしたら「うどんは女子供と病人の食いモンだ。みっともないから止めなさい」と窘められた記憶が鮮明に残っている。今こうして見回していると、あの爺ちゃんの言葉はあながち間違いではなかったな。

実際、麺つゆ製品を造るヤマサでは、蕎麦は男・年配者の食べ物、素麺・冷麦は女性・子供・若者がメイン、うどんは子供が特に好むという市場調査を元に、それぞれの対象を正確に見据えた味付けを製品に反映させている。まぁ、本来の意味は、明治以降日本の婦女子の心得として確立された、酒を呑まない女子供のための食い物という位置付けだったのだろうが、こうして目の前に展開される現象をどよんと半酔した目で眺めている(←置いていないから他でしこたま呑んで来た)と、己の途方もない場違い感は否めない。一方で、そろそろ新蕎麦の季節だし、小麦粉は見るのも厭になってきたのでうどん屋行脚は越年決定。昔ながらの山田うどんがちょっと荒んだ安っぽさが漂うのに対し、丸亀製麺は流行っているのか浮ついてて疲れるね。両者一度ずつ行ってみたが、もう1、2回食べてみないと中身の評価はできない。今年は12月になったら、自分で一度鍋焼きうどんでもこしらえて、うどんはお終いということで。

Line

人任せ

3年ほど前に購入した最新のデスクトップ・クライアントが死亡。うんともすんとも言わねぇでやんの。電源が焦げた臭いも爆裂コンデンサーのケミカル臭もなく、蓋を開けても特にイカレタ雰囲気はないし、通電状態にも問題はない。おや、珍しい。マザーボードを初期状態にしてもダメなので、手っ取り早いのはボード自体の交換なのだろうが、同じマザーなんぞとうの昔に廃番だろうし、ということは仕様や規格をチェックして使えそうなものを探すという、昔はできたが今は面倒でできないことをしなければならないなぁ……としばらく放っておいたのだが、これ「埼こむ」じゃん。なんだ。ピコーンと閃いた通り、さっさと修理に出すのであった。

Webのサポートに症状を書いて送ると、さっそく「見ないとわからんから送レ」とメールが来た。買ったときは5万もしたのに、補償期間は過ぎているので費用は有償らしい。修理費・返送料5250円+部品代ということなので、マザーボード交換でも1万ちょいだろうと踏んで任せた。高いけど、いろいろ面倒だから梱包集配も宅急便屋に任せた。人任せって楽で良いよね。

結果的にはやっぱりマザー交換、all込みで1万ほどで済んだ。同じのがないということで、Biostar製が最新のGigabyte製になって帰って来た。よく見てはいないが、Core2が使えるソケットになって、VideoがIntelのチップになって、LANが1Gbit仕様になってるし、ドライバーも全部入れ替えてくれて、動作確認完済ということなので余は満足じゃ。安いなぁ、このマザー5000円じゃ、買えないよなぁ。さすが格安組立屋。繋ぎ直して新しいLANチップに閉鎖LAN内ipアドレスを割り当てなおすだけで復活した。今のところOS再認証をしろとは言われていないが、その辺りの制限は弱くなったのだろうかね? よしよし、次も入れ替えのときは考えるぞ。大手メーカーと違って、使用部品が普通に売られている汎用品だから、いくらでも取っ替え引っ換えができるというのも心強い。

米二題

新米の季節ということで、今年も最速は8月下旬のふさおとめ。大粒で見映えが良い。今年度産ササニシキ新米は週明けに到着予定。

 ■三度海苔巻

調理時間:実働2時間

干瓢は近在の岡田屋で買った栃木モノ2包み。塩揉み後、煮沸して灰汁抜きしたら、濃口醤油とザラメで煮汁がなくなるまで1~2時間煮込んで調味料を染み込ませる。人それぞれだが、個人的にはしっかりとした繊維感を残して硬めに茹でたものが好みである。鍋肌に押し付けるように水分を飛ばしたら、粗熱をとって冷蔵庫で一晩寝かす。今回は紫蘇が満開なので、漬け上がりの梅干の試食を兼ねて梅紫蘇巻とカッパ巻にも手を出してみた。カッパは芯材の形状がほとんど変形してくれないので非常に難しい。もっと四角く切ればいいのだろうが、歩止まりが悪過ぎ。鮨屋のあんちゃんはヒモキュウや穴キュウを頼むと、キュウリを1mm角ぐらいに千切りにして、外周飯一粒、シャリシャリした胡瓜とネタがみっしりと充填された見事な巻物を作るが、もちろん比較にすらなりゃしない。

海苔巻三種

米は20年産のササニシキを10%減水して普通に炊く。昆布は匂いが邪魔なので最近は使わない。炊き上がったら直ちに、米4合当たり米酢90ml、砂糖30g、塩10gを予め溶いておいた寿司酢を回し掛け、団扇で扇ぎながら、しゃもじで切るように混ぜていく。酢飯は人肌まで冷ます。山葵を準備したら、巻簾に定型海苔の半切りを乗せて巻く。具が多いと巻きにくいが、少ないと出来上がりがみすぼらしいので、自らの技量に応じて適宜判断する。ボリュームを見た目のカンで掴む。習うよりは慣れるしかない。カッパ巻は角を立てて四角く巻いて6等分縦置き、干瓢巻は丸く巻いて4等分して横置きするのが基本的な伝統。横にするのは干瓢の煮汁の流出を防ぐため。梅紫蘇巻はどっちだろうね?

海苔巻詳細

廉価なのであまり期待していなかった干瓢はけっこうモノが良く、幅広肉厚で噛み切るときのゴリッとした感触と口に広がる甘辛味が堪らない。甘くない酢飯との組み合わせが決まる。海苔巻なのでやはり海苔には大きく左右される。写真でもはっきりわかるように二種類使ってみたが、厚み、色合い、香り、食味まですべてが異なって感じられる。海苔に拘って、パリッとした巻きたてを食べればいうことはないだろうが、確実に味が変わる海苔は地元産だと最低2000円/帖クラスと、とてもじゃないが手が出ない。カッパ巻は山葵と胡麻の香ばしさが胡瓜の青臭い清涼感を補強する。外ではあまり食べないが、ときどき無性に食べたくなるものの一つ。梅紫蘇巻は、まぁ、余興だね。

 ■粥

調理時間:実働30分

材料:生米(ふさおとめ) 2合、貝柱、木耳、骨付き鶏肉など
調味料:老抽王(中国たまり醤油)、老酒(紹興酒)、塩、胡椒
香辛料:五香粉、生姜みじん切り
その他:香菜、搾菜、支那竹、松の実
 
1:準備(前夜)
イ)乾燥ホタテ貝柱6個を水に漬けておく。
ロ)普通のブロイラー手羽元は適宜包丁で叩き切って、五香粉を振ったら老抽王、紹興酒に一晩漬け込んでおく。
 

白木耳

2:調理
イ)ほぐれた貝柱を液体と固体に分離しておく。
ロ)ふさおとめ新米2合を軽く水洗し、笊に上げて胡麻油10mlをまぶして手で揉み、30分ほど置く。
ハ)香菜、葱などを庭に刈りに行く。香菜は軽く水洗し水に漬け、葱は適当に切っておく。
ニ)白木耳(銀耳)を水に戻す。
ホ)厚手の土鍋や陶器鍋など大鍋に米の10倍以上の水量で湯を沸かす。
ヘ)鶏肉を漬け汁から取り出して、軽く水洗し、しっかり水分を切っておく。
ト)水が沸騰したら鶏肉と生姜、生米を入れ、強火で30分ほどぐつぐつ煮立てる。灰汁がかなり出るので丁寧に除く。
チ)30分したら火を米が舞う程度の弱火に落とし、貝柱出汁を加え引き続き煮込む。底が焦げ付かないよう適宜底を返し、水が減ったら注ぎ、上下を掻き混ぜる。
リ)45分ほどして花が散るように米が割れ、一部が糊状になったら白木耳、刻んだ葱を散らし、塩、白胡椒で味を調え、更に15分ほど煮込む。
 

粥薬味

米2合でも水量で大幅にふけるので、軽く5、6人前にはなる。薬味・付け合わせは在り合わせ。適当に塩抜きした搾菜は細切り。支那竹水煮は軽く塩茹でして、老抽王、辣油で数分炒める。松の実は焦がさぬよう乾煎り。根っこから再生した青葱、香菜は水を切り、刻む。

粥

器に粥を盛り付けたら、ほぐした貝柱と薬味を好みでのせる。熱いうちに食う。複雑で豊かな味わい。肌寒い日の昼飯(普通は朝飯)には格好のメニューになる。次回は油条(棒状捩じり揚げパン:西洋スープのクルトンにあたる)も作って、本格風にしてみようかな。


2009/10/11 作成__2009/10/18 最終更新