骨休め


春の病葉をせっせと摘む。風通しを確保しないと先が思い遣られる。冬植えの青蒜が30cmほどに伸びたので葉先を適度にカットして試し食い。売り物は50cmくらいあるのだが、そんなに伸びるかな? 肥料が足りないとみえてこのところ勢いが今ひとつ。収穫は4~6月らしい。うまくいったら来年は量を増やしてみよう。春になったので金魚を飼おうと思っているのだが、うちの辺りは在のせいか“きんぎょーえーきんぎょー”の金魚売りが廻ってこない。ホームセンターの類ではかなり趣味性が高いものを中心に扱っている模様で、なかなか駄魚がいない。餌用でも探せばいいのかな? なるべく鮒に近いような普通の魚体がいい。

青蒜

そろそろ終盤に差し掛かったマガキが50円/個になっていたので全力買い。15cmはないが大きさも厚さもまぁまぁ。膨らんだモノを狙って、持てるだけ買う。そうはいっても重量の大半は殻である。重いよ、こら。剥いては食い、剥きつつ食う。ナイフを差し込む付近をプライヤでペキッと折ると隙間を探す手間が省けるので、剥き時間は一段と短縮されている。最初はそのまま、後半は青唐を漬け込んだ液を白葡萄酒酢で割ってソース代わりにしてみた。今回のカキは宮城産。マガキ特有のクセが少なく非常に食べ易いが、これは最近の傾向なのだろうか? 腸が小さめで、ヒモの部分の歯応えがよく、身は小ぶりだが透明感とカキの旨味が程よくマッチした優しい感触のカキであった。今年は岡山産のカキ剥き身がかなり安価に出回っていて、艶々となかなか鮮度がよく、ぐちゃっとパックになって売られていたモノを何度かフライに使ってみた。気に入ったので気を付けて眺めていたつもりだが、殻付きはついぞ見かけなかった。来シーズンは来るのかなぁ?

マガキ

酸辣湯麺

鶏そばにも厭きが来たので、何かないかなぁ? と探しあぐね、減らない黒醋を眺めていて思いついた何を今更酸辣湯(スァンラータン)。酸辣湯の辣(ラー)は元祖の四川では唐辛子の辛味だが、北京に出て胡椒の辛さに取って換えられた。酢も黒酢や白酢などヴァリエーションが多く、具材にいたっては千差万別雨あられ、見た目も味もとても同じ料理とはいえないほど異なるように思う。現在日本で見かけるのは白から黄色のスープで卵たっぷり、辛味に胡椒を用いる北京式のものが主流のようだ。酸辣湯自体は名前の通り本来はスープで、冷麦と饂飩の合いの子や餃子を入れたようなものはあるが、日本ではラーメンの一種としてカンスイ麺を入れて、まるで伝統的な中華料理の顔を装って広まった。古典的な中国料理店だったら菜譜に加えるのを躊躇するのではないか? そういう意味ではれっきとした創作和食の一つ(赤坂の広東系?某中華料理店が発祥といわれる)。だからたぶん、酸と辣以外に決まりごともリファレンスも何一つない筈。

麺は50~60円くらいの生カンスイ麺。細太縮れ具合はお好みで。酸は白酢、黒香醋、辣は泡辣椒、唐辛子、黒胡椒、ピー県豆板醤あたり。具材は肉類、茸類、野菜適宜。香味は葱姜蒜。調味は胡麻油、辣油、鶏がらスープ、溶き卵、醤油、老酒などなど。水溶き片栗粉も必須か。以下、量はすべて1人前。

◇ 蕪と鴨肉版

調理時間10分

酸辣湯麺1

残りもの鴨肉の整理。蕪は葉と球根に分離し、適宜刻む。茹で卵があったので代用。葱姜蒜とは別に飾り葱を刻んでおく。手鍋に胡麻油15mlで鴨肉を炒める。肉に火が通ったら、豆板醤10g、葱姜蒜各10gを香りたて、ワタを搾り出し刻んだ泡辣椒と唐辛子、蕪の実を炒め、透き通ったら葉を加え手早く炒める。炒め時間は中火で計2分くらい。別鍋で鶏がらスープを煮立て、醤油10ml、老酒30mlで調味する。麺を茹で始めたら、器に黒酢を30ml、胡椒5g程度を合わせておく。醤油や老酒も器で混ぜたほうが良い気がするが、スープの味見が出来ないので慣れないとちょっと怖い。麺はたっぷりの湯で固めに茹で、茹で上がりの30秒前にスープに水溶き片栗粉を加え、トロミが付いたら器の酢を煮立てたスープ150mlほどで割り混ぜる。すかさず湯切りした麺を盛り、具材と茹で卵をどっと盛り付け、全体に残りのスープを廻しかけ、たっぷりの自作辣油と葉玉葱で飾る。

酸と辣が際立つのは当然として、それに負けない鴨肉の旨味と蕪のさっぱりとした苦味が効いていて悪くはない。中国産黒酢の咽るような匂い(臭いか?)と醗酵した唐辛子の“甘い”辛味の組み合わせは、まぁ、こんなもんか。若干酢が勝っている。スープはドロドロではないが見た目以上にトロミが付いている。片栗粉は小さな器で同量の水で割る。混ぜてもすぐに分離するので使う直前に指で混ぜ、小指以外の4本で摘むように鍋に落とす。麺を茹で始めたら手際が味の決め手になるので、もたつきや忘れ物がないように。しかし…茹で卵って、なんというか……子供じみて可愛いな。

酸辣湯麺2

◇ 支那竹とモヤシ版

調理時間15分

塩蔵支那竹一掴みは塩を洗い流し、湯で適宜塩抜き(スープに煮出すので適当でよい)。頃合を見計らって熱した胡麻油、刻み唐辛子で支那竹をよく炒め水分をとばす。更に赤唐辛子みじん切り5本、ピー県豆板醤10g、葱姜蒜30gを加え焦げないようによく炒め、香りがたったらいつかの麻婆豆腐の残り物、火が通っただけの牛挽肉50gほどをヘットごと加える。ヘットが溶けたら鶏がらスープ300mlを加え、醤油5ml、老酒30mlで調味しつつ味を決め強火で煮立てる。麺を別鍋で茹で始めたら、モヤシを熱湯で軽く湯掻き、湯を切っておく。麺が茹で上がる30秒前に溶き卵を流し入れ、水溶き片栗粉でスープにトロミ付け。一般的な手順とは順番が逆だが、卵が散るのは絵的にあまり好みではない。予め器に入れておいた黒酢30mlをスープの液状部150mlで割り、麺を盛りつけたらスープの具、モヤシを盛り、辣油と葉玉葱のみじん切りを飾る。

酸辣湯麺3

一見して、まるでもやしラーメンのようで凹む。酸っぱ辛さは程よく拮抗して際立つが、具の組み合わせが平凡というか愚劣だった。ベースのヘットは濃厚に利いているが、モヤシを食うと含有水分のせいか味が丸まり気味で暈けてしまう。香りは刺激的なので、葱よりも香菜があるとよかったなぁ。麺はシマダヤの中細ストレートにしたが、食感がつるつるでスープにはよく合う。

◇ トマトと豚バラ版

調理時間15分

乾燥椎茸は水で戻す。豚バラ100gをたっぷり30mlの胡麻油でしっかりと炒め、赤唐辛子みじん切り5本、ピー県豆板醤15g、葱姜蒜をどーんと多めに50g投入し、最後にみじん切りにした椎茸を加え瘴気が立ち昇るほどに香り立てておく。慣れてきたので器に醤油10ml、老酒30mlを加え、麺を茹で始めてから黒香醋30mlを加える。別鍋で鶏がらスープ300mlを沸騰させ、ザク切りした小さめのトマト1個を入れ、すかさず水溶き片栗粉を落とす。再沸騰したら溶き卵2個を流し入れ軽く掻いて散らす。この時点で麺がどんぴしゃで茹で上がっているはず(笑)。器の濃縮液をスープの液体分で割り、麺を盛り付けたら具を載せて、残りの卵とトマトスープをどばどば上掛け。紫蘇の葉を飾る。

酸辣湯麺4

麺は太揉み麺。トマトの赤に目が眩み、辣油は掛けなくて丁度よかった。危ない危ない。上澄みは透明に見えるが混ぜると黒赤い(笑)。それでもトマトが利いて非常にあっさり・さっぱり・さわやかで、忘れた頃にやって来る肉の旨味、酸、辣と旨くバランスした。卵とトマトは四川料理でよく見かける組み合わせだが、さすが、なるほどと思わせるものを持っている。次は有り合わせの投げ遣り手抜き調理はやめて、卵、筍に豚の血ゼリー、飾りに香菜てんこ盛りといった按配で再考してみよう。


2009/03/09 作成__2009/03/10 最終更新