冬だけど桂花陳酒

12月ということで、ようやく空気に透明感が出てきた。唐突にスコールで掃除の手間も省けた。食い物も変遷を重ね、海鼠や大振りの味噌付車海老がふんだんに食えて嬉しいぞ。旬は初夏だが年中採れるトコブシの煮貝もなかなか。肝は秋冬のほうがやっぱり肥えている。秋口に順調だったブリはこのところ不漁なのか、値段が高いから仕入れないのか、偶々なのか見かけないが、皮付きのヒラマサはあって尚且つおいしい(笑)。近海シマアジも肥えた割りにしっとりと稠密な身肉が嬉しいというわけで、もはや旬? はまるで無いものの如く狂いっ放しである。

法改正に伴う厳格化で3年おき更新とのたまうので隣町で一日講習+考査。ベースの資格のほうではなくて取敢えず差し迫っている“管理”のほうから。およそ意味があるとは思えない某省指定講習を睡魔と闘いつつ聴講し、最後に習熟度を考査してやんよということらしい。講師は役人や業界団体の人ということで死ぬほど退屈かつ中身がないが、在席チェックがあるし中座は30分超えると考査受験資格を喪失とか凄いんだからもう。午前中に既に諦観の境地に達し、昼飯は駅前で鮨とビール。飲酒に関しては特に制限がない(笑)。店は昼だというにガラガラ。お好みという雰囲気でもないのでセットものを頼むがやっぱり物足りないので、カキと黒ムツに光モノを数種追加する。いい気分になって午後は意識朦朧。それでも2時間もすればすっかり復活して、この歳になって考査はねぇだろと思いつつも、マークシート試験に臨む。内容はともかくとして、マークシートを枠通りに塗り潰すことが困難になっていて笑った。目が見えていないのだよね。あ~あ。結果は一月後ということで。

回鍋肉

真牡蠣

岩手のマガキ。もちろん養殖。3年ものくらい? ようやく70円/個で出回り始めたので1ダースほど所望したら、魚屋のおばちゃんが驚いた。え?? なんで? 残念ながら店頭には10個ほどしか置かれておらず、冷蔵庫にも在庫はないというので全部買ってきた。面倒臭そうな顔で“全部剥くの?” と訊くから、“全部剥かない”と答えたらコロッと笑顔。なんで?

カキは昼に合う。明るい日差しでも、薄曇の灰白色でもよいのだが、夏だろうが冬だろうが、やはり明るい時間に食べるのが見目もきれいで尚且つおいしい。海の匂いなんだよなぁ。翼昼、さっそく賞味。剥く前に殻はよく洗い、殻の合わせ目部分は金ダワシなどで藻や苔、付着物などを特に注意して落としておく。所定の位置からナイフを突っ込み、中の海水をこぼさないように貝柱だけをこそぐ。

結果的に、中身が大きく、マガキ特有の癖に欠けるが味は比較的濃くよいモノだったので物足りないというほどではないが、やっぱりカキは吟醸酒か白葡萄酒を片手に1ダースが基本だろうと思う。ただの食い物にオイスター・バー風の余計な洗浄は味を殺すというものだろう。好みでライムか柚子を絞るだけで味付けも不要。味をつけるのは不興。採れた海を味わうものだ。最近は左手軍手なしでも(推奨はしない)最長1分弱で剥けるようになってきた。白葡萄酒は珍しくモーゼル・ザール・ルーヴァーのリースリング。ちょいと黄味がかったマッタリ酸味の辛口で独逸葡萄酒もちょっと見直した。

瀕死

夏場の岩カキを含め、生カキは年間100個以上(外食50%、自家50%)を食べているが、今のところ不具合はない(体質的には極めて敏感)。若輩の頃、剥いてあった生カキで一度当たったことがあるだけ。田舎土人故シャレたところにはもちろん行けないが、近在の鮨屋ではたいていの店で扱っている。それとなく訊いてみると、やはりクレームはそれなりにあるらしい。注文がない限り盛込み等には絶対出さないらしいが、札には書いてある。必ず難癖つけてくるクレーマーがいるので、面倒臭いからネタとして扱うのをやめようかとも思うらしい。でも、好きな客もいるからねぇ、とこっち見るなよー。はははぁ(←もう酔ってる)。

昔は毎冬、自分で牡蠣フライも揚げたが、今は超場末の飲み屋で週4個食うだけで満足している。厨房おばちゃん2人のみで切り盛りしている店なので「カキフライのお客さん~」と呼ばれると取りに行かなきゃいけないの。面倒だからカウンター脇に陣取って、プロの超合理化された技を眺めるのが酒の肴。揚げ物だから10分以上待たされるが、実際、自分で揚げながら飲んで食うのはけっこう大変なので仕方がない。

辣油

香り抽出

昔、業務スーパーで購入した辣油が切れかかっている。辣油は概ねラー油と表記され中国料理で多用される赤褐色の調味油の一つ。基本は唐辛子の辛味成分と色を油に抽出したものだが、今はさまざまな化学的工夫が凝らされていて、既製品として売られているものはピンとキリでは使用材料がまったく被らなかったりするかもしれない(笑)。一方、中華料理店などでは自家で生成している店も多いようだ。その場合、新品の油を使わず、コクとまろやかさを出すために揚げ油など廃油を再利用して作るものらしい。

唐辛子

基本になる油は、新品のキャノーラ油に半量の揚げ物油(継ぎ足しながら数回既利用)をたしたもの。手鍋に赤唐辛子、一欠片のシナモン、八角、陳皮(ゆずの皮で代用)、花椒、ミジン切りの葱、生姜、大蒜を投入し、混ぜた油を入れて弱火でゆっくり油に香りを移す。大蒜や葱が焦げ付く寸前に笊で漉し、油だけを180℃以上に加熱する。

油ぶくぶく

一味唐辛子(カイエンヌ・ペパーを使用)50gほどを盛ったSUSボールに加熱した油を一気に注ぐ。立ち上る瘴気に悶絶しつつ、常温まで冷ましたら香り付けに焙煎胡麻油(カドヤ銀印使用)50cc程度を加え、攪拌放置。焦げた一味を漉しとって分離した上澄みが辣油になる。

出来上り

思ったよりもまろやかで、香り高い。辛味は刺激的というよりは後からふくよかに効いてくる。色も悪くはない。そのへんに転がっているもので出来てしまうからコストも極めて廉価で安上がりといいこと尽くめ。出来上がった辣油は暗所で保存すれば数ヶ月は余裕で持つだろう。


2008/12/07 作成__2008/12/07 最終更新