水無月記 -(2007/07/14-2007/08/12)

1;諸々

またズレてきてしまった。一週間遅れの月記ですが、ここまで暑いと何とかしようという意欲の欠片も湧かないな。まぁ、夏休みで書くこともないし、需要もないことだろう。

レーザー・プリンタが電気代のアップに貢献してくれている。先月、既に第3段料金が適用される電力消費になって笑ったが、待機で75W、印刷時400W、ウォームアップで900Wってすげえなオイ! 7月なのになんでこんなに高いんだよ~と思ったら、コイツのせいだった。世間的な大義にも東電の権益にも興味の欠片もないが、使い終わったら電源落としましょうね。

夏はまぁ、赤江瀑で決まりでしょ。新作『狐の剃刀』もさることながら、再読『上空の城』の夏光にぽっかりと空いた闇黒の魔力に囚われて、冷や汗をかきながら灼熱の光に巣食う闇を探してしまう観念の麻薬。志水辰夫の未読『ラストドリーム』『約束の地』、若竹七海『猫島ハウスの騒動』、南部樹未子の旧作をやっと購入するもまだ読んでいない。

音楽CDはこのところすっかり興味を失っているが、円高基調に戻れば再考しよう。映画は9月にようやく『ヒッチャー』が再発になるので予約しといた。入手したら「映像の話」にでも書こう。

■ここに至って心を去来する由無しごと

さすがにこう暑いと料理なんぞする気にもならないどころか、外に出る気もしない。おかげで素材が枯渇して冷蔵庫がスカスカ。在庫処分と乏しい材料のわけワカラン組み合わせ試行錯誤で料理どころではないわ。冷蔵庫の外箱は熱気を孕んでおるし、7月末から24時間常時稼動のエアコンが消費した電気代が恐ろしいな。室外機を北海道東部とか山の上に置けば効率的だと思うが。気温差を利用した集中冷媒管システムを作れば儲かるぞ、きっと。

料理は1にセンス、2に技術と経験、3に素材、78番目くらいに設備、夫の気取りとか妻の愛情などは間が飛んで37298番目くらいに大事だろう。どうやってよりおいしくするかを常に考えていない料理は料理にあらず。給餌というべきだろう。もちろん、全ての食事を料理にする余裕はないし、たまにエサ・レベルのゲテモノを無性に食べたくなることもあるから、深く考えて書いているわけではない。外食の場合は環境も大きな要素になるだろう。立地や営業時間、オヤジの性格、店員教育、客単価、客層、内装什器なんぞによっては味わう以前の問題になりかねない。ついでに外食は一人で食べ、飲んでみることを是非、お勧めする。一人で食うと味以外のことに関心がいかないからその店の個性がはっきりと伝わるものだ。一人客をどう扱うかで店の質も浮き彫りになる。経験的に味わうための外食と、他の目的で行く外食はきれいに分離するように思う。

このところ、素材の善し悪しが異常に強調されすぎるきらいがあると感じている。区別がつかないものにまでラベリングして素材の産地や鮮度に異様にこだわる様は、滑稽を通り越して供給側を萎縮させる、もはや弊害にしかならないレベルに達しているように思う。素材の良さと料理のおいしさは本来別物で、素材を生かすも殺すも料理人の見識と腕次第。いわゆる“創作料理”はただのゲテモノでしかないが、本来の料理は伝統と作法に基づいた創意と工夫の賜物だ。漁師が釣り上げて、その場で捌いた魚を海水の塩味で食うのがいちばん旨いなんて言う言葉を真に受けないで、ちゃんと対価を払ってきちんとした料理を食べることで世界は一回り広がるはずだ。

■果実三題

◇イチジクの冷製赤葡萄酒煮
この手のものに手を出すのは気が進まないが、おいしそうな無花果が出回り始めたのでついうっかり。子供の頃は庭に木があったので、手を伸ばしてもげばよかっただけだが今は買っている。赤葡萄酒に月桂樹の葉、シナモン、黒胡椒を適当に放り込んで鍋で煮立てる。軽くアルコールを飛ばして砂糖をちょい大目に投入。砂糖が溶けたら、皮付きのまま縦4分割にした無花果を数分煮立て火を止める。常温になったらそのまま冷蔵庫で一晩寝かす。キンキンに冷やしたものを器にとって食す。甘味と酸味、スパイスが効いた独特の香りを愉しむ大人の味。アイスクリームを添えて、ライムを絞ってミントの葉でも飾れば完璧だろう。

無花果コンポート

たまたま開いていたイタリア産サン・ジョベーゼ種のロッソで作ってみたが、ピノ・ノワール等の渋めでマッタリのほうが合うかもしれない。つゆがちょっとフルーツぽくて華麗かつ清々しすぎ。生の無花果にはちょうど良い。

無花果

また、無花果の木を植えてみようかとも思うのだが、果樹は管理が煩雑で堪らん。生家には桃、無花果、葡萄、夏蜜柑、橙、杏と一通りの果樹は揃っていて、季節になると包丁(ナタかな?)を片手にした祖母がもいで食べさせてくれた。無花果は花弁(というか先っちょの孔)が開くと猛烈に蟻がたかるので、収穫のタイミングが難しい。もぎ取ったものを井戸水に放り込んで洗い、半割にして、孔の部分から皮を剥いて食べていた記憶が残っている。無花果にしろ桃にしろ、祖母は虫が食っていても包丁でちょいちょいと抉って池に落っことし(鯉の餌)、虫が食ってるほうがおいしいよとか言いながら残りはしっかり食っていたわけで、害虫に対する容赦のなさと、あくまでも無造作で無駄の無い所作はとても印象に残っている。あの時代の人は強かった。

◇羅漢果
砕いてたっぷりの水で煮ると焦げ茶~黒に近い濃い紫の液体になる。透き通った、あるいはスッと染み込んでくるような甘さは未体験の味わい。独特の渋味苦味薬臭があるが気になる程度ではない。そのままお茶としてもよいし、粗熱をとって屑を漉したら冷蔵庫で冷やし適宜薄めてジュースにしてもよい。薬効はあるのかないのかよく知らん。屑は出なくなるまで再利用できる。バブルの頃は秘果などといわれ三つで1000円ぐらい(今は100円だな)だったが、東南アジアの街角のジュース屋ではタダみたいな値段で普通に売られていた。パパイアジュースなんぞと値段は変わらなかったはず。ウソのように甘いが糖分は少ない。

羅漢果

◇とうがん(冬瓜)
夏に採れるのに冬瓜。人の頭大の瓜の一種か。重いが安い。薬膳料理としても使われていた渡来野菜。鶏肉と炒めた煮物あたりが定番だろうが、冷やすとウリ科特有の舌触りと冷やっこさが気持ちよい。乾燥貝柱出汁で冷製煮物にしてみた。半割にして種を抜く。皮を剥いて一口大の適当な大きさにして出汁で15分ほど、柔らかくなるまで煮る。セロリを加え、淡口醤油、味醂で味を調え粗熱をとったら冷蔵庫で冷やす。冷やした器に盛り付けて刻み茗荷を載せると、独特の微かな苦味がすっきりと爽やか。

■外食二題

■蕎麦
唐突に思い出して蕎麦屋。いつもの十割ではなくてずいぶん前に見つけたが、その後すっかり忘れていた某停車場裏の路地にある店。偶然車で移動中、あまりの暑さに閃くものがあったわけだ。作務衣姿の厳めしい顔をした蕎麦職人がいたりすると引き返すことにしているが、ただの町蕎麦でよかった。箱蕎麦という、大盛りと薬味、つゆが重箱に入ったものを頼んでみたが、量はあるけど味がなぁ。粉は更科系だが若干色付きが濃い業務用出来合い。明らかに小麦粉が添加された食感は許せる範囲としても、この酷暑だというに締めが温い。蕎麦つゆは甘辛で量も多く、今風の濃すぎるほど出汁が効いたもの。値段のわりにまぁまぁだが、蕎麦の切れの無さが惜しまれる。たまたま?
車が簡単に留められて、かつ普通に食事ができる飯処が周辺にはまったくといっていいほどないため、取敢えずここも選択肢の一つに付け加えておこう。

■とんかつ
複合商業施設で買い物をしたいという老人を乗せていくと、施設内にカレー店、ラーメン店、パスタ店、周囲にやっぱりラーメン店、ファミレス、牛丼店、焼肉店等があるが、どれも若者向けや勤労者向けのチェーン店で場違い感が否めない。諦めてそのまま隣町に出ることも多いが、暑くて面倒だと施設内で唯一客層が完全にズレているとんかつ屋を利用する。今更自分でとんかつを揚げるのは面倒だから、外ではこういうものを食べたいといわれれば別に反対する理由も無い。水分や塩分を自らコントロールできるという点でも適当らしい。もちろん、とんかつといっても場末ゆえ、都内老舗の厚2.0cm越え、200gなどという目から鱗が落ちて平伏したくなる芸術品レベルのものではなく、厚1cmほどの廉価版150g程度で可もなく不可もなく、最低限の注文をとってから揚げるという所作が守られているファスト・フードである。そういえば、昔よく食べたフィッシュ・アンド・チップスも作り置きではなく、注文するとアンちゃんが「でけたら呼ぶから座っちょれ」と揚げ始めて紙に包み、サワー・クリームとピクルスをどっぷり別容器に載せてくれた。熱々でホクホク。鮨や天麩羅と同じファスト・フードであるからこそ、揚げたて、混ぜたて、作りたてという基本に忠実な作法が生かされているのだろう。

■魚三様

カタクチイワシ

■背黒鰯(カタクチイワシ)
千葉産の鰯が順調に入荷している模様。あまり安くはないがアンチョビが切れて2ヶ月ほどが経っているので切実。先日漬けたものは発酵完了が今月末だが量が少ないので追加だ。今回は3パック。11月頭の漬け上がりになる予定。鱗を落とし軽く水洗したら水気を拭いて容器に並べ、塩をぶっかけるだけ。もちろん、摘み食いは止められない。鱗が残るものだと薬味は一切不要。生姜も山葵もいらない。鰯の中でもいちばん鰯らしい旨味を持った鰯だと思う。一日二日で水が出るので適宜塩を追加して魚体が空気に触れないようにキッチンペーパーで覆い、重石を置いてもよい。この飽和している高濃度食塩水に浸かっている限り腐敗はしない。一週間ほど冷蔵庫で、後は常温で待つだけ。

摘み食い

■鰹
通年なら端境期のはずだが、北上中の鰹は金華山沖にいるのか? このところ石巻、気仙沼の鰹が爆安。既に脂がのり始めていてう~んと唸ってしまうのも多いが、なるべく避けて買っている。
あたた。買ったときは鮮烈な赤だった血合いが褐色に。忘れてました、ごめんなさい。石巻水揚げですが先週より100円安くなってとうとう背身半身が200円台に。一本買って皮付きの刺身にするのもいいかなとは思うが、余っても食いきれないし、民生用の冷凍庫で冷凍しても使い道がないから、食べれる量だけを買うように心掛けるしかない。
臭いはないが色が嫌。血合いを落とし、表面を軽く削いで炙ってしまえ。氷水をボールに張って、金串を刺してガス直火で炙る。脂が落ちてボーボーよく燃えること。表面の色が変わったら裏手に持ち替えて軽く焦げ目をつけて氷水で締め上げる。切断面で見たときに火が通った部分が3~5mmくらいのものが好みです。

鰹

鰹というと高知や鹿児島枕崎、あるいは和歌山、三重あたりの南西日本のイメージが強いが、流通量の1割にも満たない天然トラフグの60%が静岡・遠州灘で揚がるようにイメージと実際の産地はかけ離れている場合が多い。加工用のポリネシア遠洋冷凍鰹やソウダ鰹は別として、近海・沿岸の生鰹は質量ともに夏から秋は宮城気仙沼がトップ、ついで初春から初夏は千葉勝浦が全国の7割を水揚げする独壇場。宮城の場合は漁場が南下すると石巻、女川にもけっこう揚がるが、気仙沼から山道かっ飛ばしたほうが渋滞がなくて東北道に早く乗せられるのかもしれない。ちなみに生鮪は塩竃がNo.1というのは意外だった。一般に名が通っている鮪、鰹水揚げ日本一は静岡焼津だが、焼津は100%遠洋基地なので揚がるのは当然半年前に獲れたカチンコチン。解凍の仕方で大きく味が変わる。生の場合は漁場との距離の問題が第一だが、その時期最も高い値が付く港に水揚げされるのが普通で、港湾施設、市場、加工産業、背後の流通網や消費地との距離が大きくものをいう。

生で作ったタタキは売物とは比較にならないほどおいしい…かなとは思うが、江戸時代じゃないのだから鰹自体わざわざ喜び勇んで食うものではない。いまどきなんだ、鰹かよ…と半分の落胆と諦観を露わにするのが普通だろう。まぁ、気張らずに分厚く削ぎ切りにしたものを薬味なし、煮切りだけで食べる。夏魚の香りがいっぱいに広がる。そんなところじゃないか。
飽きたらキッチン流し台の奥底からいつ漬けたのかトンと記憶にない大蒜醤油を取り出したり、生姜を下ろしたり、葱を刻んだり、酢味噌をこしらえて変化をつけるのもよいが、薬味の範疇を越えないように節度が必要に思う。鮮度落ちした鰹をありがたがって食わなければいけなかった時代ではないのだから、味や匂いを過度に誤魔化す必要は感じない。

鰭黒

■鰭黒
ヒレグロが安い。ナメタとあるがナメタガレイは極めて高価。誰が見てもナメタじゃないから気にする意味はない。ワカシを買ったらレジでイワシと入力した店員がいるくらいだから、もう何が起きても気にしないよ。12cmほどのヒレグロが捨値だったが、あまりにも小さいので唐揚げに。煮魚にしたら食うところないだろ? 腸だけ出して、水分を拭きとっておけば数日チルドで放っておいても大丈夫。水分のあるものを非力な機能で冷凍すると、水が固体になるときの体積膨張で0℃~-5℃あたりをうろちょろして細胞が破壊されるので味が著しく落ちる。業務用の冷凍庫があると便利だが、単相じゃないだろうし電気代がかかる。鱗は有って無いので気にせず、そのまま塩胡椒をふって薄力粉をまぶす。最初は低温でじっくり狐色に、二度揚げは高温でかりっと。頭も骨も全て食える。冷えた唐揚げを食べる趣向はないので、余ったものは玉葱と赤唐辛子、三倍酢に漬け込んで南蛮漬けにして冷やす。お手軽な肴になる。

■やっぱり向いていない

◇Pasta alla Bolognese aka. Meat-Sauce?
いつになく高くついたボロニェーゼ、あるいはミートソース? ちょっと色が違うが寝かすと落ち着く。分量は2~3人前。ポイントは質量ともに肉>トマト、ソースと麺をのったりまったりよく和える、麺は生太麺といったところ。肉をケチってはいけない。

ボロニェーゼ

まずはソース。300円~(可能な限り良い肉を)/100gのおいしそうな牛肉500g(本場風なら1kg)に岩塩と黒胡椒を振りながら包丁で引いて叩く。ざっくり肉の食感が残る程度でよい。続いてソフリットの製作。玉葱、人参、セロリ、パセリの茎各1をみじん切りにして100ccほどのExvオリーブ油ドバドバでよく炒める。好きならばバジルやローズマリーの香味を更に加えてもよいだろう。玉葱が完全に崩れるぐらいまで焦がさないよう丁寧に。一方、油を引いたフライパンを煙が上がるまで熱し、ミンチにした肉を水分を完全に飛ばすまで強火でしっかり焼く。ああ~、やっちゃおれんよ。油は跳ねまくるし、いい加減暑くてうんざりするので冷えた焼酎をロックで口に含む。麻婆豆腐の挽肉炒めと同じ要領で肉の旨味を引き出すまで完全に炒める。油が透明になったら別鍋に移し、ソフリットと赤葡萄酒(チリの濃い目カベルネ・ソヴィニヨン)300cc(涙目)を加え、フライパンの肉汁を同じく赤葡萄酒100ccで洗い、それも鍋に加える。月桂樹の葉を加え、中火、煮立ったら弱火で1時間煮込む。最後にサン・マルツァーノ種のトマト缶400gの固形分を手で握り潰しながら液体とも全て鍋に空け強火で軽く煮立てて、塩胡椒で味を調え火を止める。灰汁は出ない、あるいは出ても取らない。以上でボロニェーゼ・ソースの完成。常温まで冷やしたら冷蔵庫で寝かす。火入れと冷却を2、3日繰り返すと尚、味が馴染むがやりすぎるとトマトの赤と酸味が死ぬ。

使用パスタはフェットゥチーネやタッリャテッレ。ショートならペンネ、フジッリなど。板状で歯応えがあるものが合うらしい。実際に使用したのはフェットゥチーネ生250g。発酵バター10mm厚程度(涙目)をフライパンで溶かし、作り置きのソース適量を温める。予めパルミジャーノ・レッジャーノ(PL)を100gほど下ろしておく。パスタをたっぷりの湯と塩で茹で、アルデンテになったらソースの鍋に移し、PLをぶっ掛けてぬっちゃらねっちゃらよく和えるだけ。パスタ茹で汁でソースの濃度調整をしてもよいが、肉料理なので水の使用は極力避ける。火を止めて皿に盛る。パセリはないのが普通だが素人家庭料理だから気にしない。肉の味が決め手だが、自分が食う分は肉を除けて少なめに盛りつける。バター、葡萄酒、チーズ、香味野菜の匂いに加え、肉々しい匂いが肉々と立ち上り、幅広麺の有無を言わせぬ圧倒的な食感と相まって、あまりの濃度とコクに半分くらいでうんざりするわぁ。ボローニャは北だから乾麺は使わないだろうが、これは確かに“スパゲティ”というよりはラザーニャなどに近い食いものだ。太るでぇ(笑)。

おまけ

おまけサラダは茹でアスパラガス、生ピーマン、黒オリーブ、クリームチーズ、パセリを偽バルサミコ酢とオリーブ油で和え、乾煎りした松の実を種蒔したもの。葡萄酒の肴にはこっちのほうが合う。もっとも、西洋料理はけっこう正統的に作っているつもりでもリファレンスが今ひとつわからないし、おいしいけれど感覚的に方向性が違うし、作っているうちに味が想像できて嫌になっちゃうのでそろそろ転進を図ろうかとも考えている。

■今月の鮨ネタ

おお、とうとう小項目に昇格。血鯛が揚がっているようで春日子が再見参。珍しい。真夏ということでネタとしては端境期かつ出掛けるのが億劫。秋刀魚は走りの割りに脂のりすぎ。ヒラマサは季節を問わず、もう、いつでもおいしいね。その割に同類のカンパチはまだ。新子もまだかぁ? というところで3枚付け、2枚付けが登場。この時期になると数千円/kgにまで下落するので中身は全て手間賃のようなものだろう。浅く締めた柔らかい身肉と縞模様のように見える小体な斑点が浅い青と銀色の身に並ぶ、技巧と味わいの組み合わせが盛夏の風物詩にして芸術品にして絶品。このところ、新子も含めて鮨全体が妙な銘柄志向というか高級志向に祭り上げられているが、個人的に希少動物を殊更ありがたがって食う嗜好はないし、江戸前だとか職人技に思い馳せながら食うなんて気持ち悪いだけだし、虚実を問わず“高級”な雰囲気というものは非常に居心地が悪く困惑してしまう。コノシロなんて鮨以外に使い道のない(どう調理しても食い物にならない)、魚屋では扱わない安価な魚なわけで、冷酒でちょいと摘まんで、今年の夏もやっと終わったかと一息つくもののように思う。

定番中の定番、岩牡蠣はそろそろ終わり。季節感が合ってるのか無茶苦茶なのか、黒ムツ、ホウボウ、鰆、蝦蛄あたりからそろそろ穴子、海老、蛸が旬か。最近は蝦蛄とホヤ、コハダがあれば大体満足できる。隣のねーちゃんがトロ、あん肝、ウニと注文するのを聞いて正直羨ましくて凹んだ。後はネタケースをざっと眺め、おいしそうなものを握ってもらえばよいのだが、結局小柱とか海葡萄に流れてしまうあたりに何とも言い尽くせぬ侘しさを感ずるものだ。そうそう、目鯛がまったり、しっとりと白身のくせに見た目とは裏腹な強烈な旨味を放っている。イボ鯛の仲間の地味な魚だがこれは病み付きになる。こういった本来誰が食べてもおいしい魚が町場の魚屋に流れないところをみると、魚屋というのも記号商売なのだな。

▽干瓢巻
元々は大阪の木津(今は浪速区の海よりだねぇ)で作られていたものだが、戦後は栃木に夕顔の生産拠点が移り、関西では太巻きにちょろっと隠れている程度であまり目にしなくなってしまった。直径60cmにもなる瓜のように巨大な夕顔の実を薄く帯状に剥いて、天日で干したものを味醂、醤油、砂糖等のつゆで煮上げたもの。実際に流通するものは味付けまで施された安価な中国産が少なくないらしいが、乾物を自家で煮上げた干瓢の味は出来合いとは異なって極上である。食べる人も少なくなっただろうが、生地が厚く、きちんと歯応えを残したがつんとくる干瓢巻を食える店も本当に少なくなった(注:薄く剥かれ口の中で蕩けるほど柔らかく煮込んだ上品なものを上等とするのが普通)。それなりに主張のある干瓢巻を出せる店は他のネタもやはりおもしろいものだ。

団子やおはぎ、饅頭の横に干瓢巻、赤飯、稲荷寿司なんぞを並べている店もずいぶん減ってしまった。近在のテイクアウェイ太巻屋にはたまに出掛けるが、甘味処の干瓢巻には山葵が入っていないのが不満であるぞ。鼻が曲がりそうなたっぷりとした山葵と甘辛く煮た干瓢、パリッと巻かれた香り立つ海苔、程よく成型され酢がツンと香る冷たくない酢飯というあたりが肝要であろう。

2;サーバごっこ機 いまだPlamo Linux 2.0改-0.18GHz不眠不休号

ここはもう中項目としての必然性がないな。修正しようと考えてはいるが涼しくなったらねぇ。

3;スキャナ機 NT5.1 sp2 Home セレロン2.2GHz新まんせえ!号

OSを入れ替えるか別の機械を割り当てるか、そろそろ先を見越して計画を立てねばならない。

4;Win機 NT5.0 sp4⇒NT5.1 sp2 早くも1.8GHzに降格?

AVGに日本語版が出たそうだが、これといって支障はないので以前のまま。毎朝勝手にUpdateされている。

Doom

暑くてマウス握るのも嫌なのだが……。「Doom2050」は完了。「s666」も完了。「Vile」はバグかな。橋を渡れないから進めない。


2007/08/21 作成__2007/08/23 最終更新