皐月記 -(2007/06/15-2007/07/13)

1;諸々

このところあまり暑くなくて快適とはいわないが凌ぎやすい。このまま夏が終わればいいのにと毎年思っているが一度として願望が成就した年はない。

がんばってるなぁ…某米穀卸。続報が出ていないから政治力でかたが付いたかな? さすが田舎。10年以上前、安さに釣られ一度だけその某で扱っていた地元産コシヒカリを購入したことがあるが、粒の崩れや黒変など明らかに斑点米や胴割れ米を混入しており、食感も酷い有様だったので二度と買わなくなったが、ここに来て内部告発があったようだ。個人的にはかなり悪質な部類と考えていたが、安価な複数原料米や多年度産混入米でローエンド・シェアを伸ばしていたのだろう。

香りや米粒の形状からササニシキを偽装することは非常に難しいだろうが、ブランド信仰がまかり通るコシヒカリ系は甘みと粘り重視で系統的にも味が似たり寄ったりだからどうしても偽装がはびこるようだ。常食はササニシキだが、コシヒカリ(非BL)は地元の農協で米粒を見て買うのが結果的には安くつく。ちょっとしつこいがミルキークイン、あるいはパッケージが可愛い“ふさおとめ”もいいかなとも思うか(笑)。おいしい米はおいしい。

■ここに至って心を去来する由無しごと

ユーロ高もさることながら、ポンドまで250円を越えてしまった。ポンドけっこう持ってるんだなぁ。換えるに換えられなくて死蔵していたがここに来て一気に息を吹き返した。たまにはいいこともあるものだ。CDの類は一切買えなくなったけれどね。

改正された法令と関連情報の収集でうんざり。もう字は見るのも嫌な気分だわ。

■貝三題

▽赤貝
ちょっと珍しかったので買ってみた船橋産。三番瀬で揚がるらしいが、こりゃまたミニというか可愛いのう。しわの本数を数えたらチョト足りない。赤貝(本玉)のようには大きくならないサルボウだろう。わけのわからん移入貝が氾濫している湾内産としては昔懐かし、貴重な原生種である。察知されると貝剥きナイフも入らない強度でがっしりと蓋を閉ざすので、閉まっちゃったら蝶番側をこじると簡単に分解する。身は半分に割ってウロを取る。紐も合わせて全て刺身で食う。独特の香味ががつんと口内に広がる。小さくて剥くのはうんざりだが、味は濃い。

赤貝

▽岩牡蠣
去年くらいからそこらでよく見かける岩牡蠣。山形、青森、岩手あたりが安く千葉産が最も高価。今回は石川産が400円割れとまぁ、買えないほどではないか、ということでついふらふらと手に取って、こんなところに置いておいても可哀相だなとケースを空にして来た。ずっしりとした重量感は期待を抱かせる。殻は流水でたわしを使ってよく洗う。冷蔵庫に入れておけば丸二日くらいはおいしく食べれるのでこの季節貝類は重宝する。

殻

いよいよ殻を開けるが殻の破片が入らないように丁寧にこそぐ。平らな殻を上にして矢印の位置からナイフを入れて水平に柱をこそぐ。上殻を開け、なかの液体をこぼさないように身の下にナイフを入れて裏面の貝柱をこそげば完了。人によりけりですが、このまま水洗しないで、ライムだけを搾り海水エキスごと一口でつるん。たっぷりとふくよかな大振りの身は一口で食える限界に近いが、口の中に広がる濃厚な風味は極上の幸せをもたらしてくれる。冷やしたシャルドネをくいくいやりながら、半ダースも食えば飯はいらないな。浜値で50~100円/個あたりだろうから仕方がないのだろうが、願わくばコストを気にせず心置きなく食いたいものだ。

岩牡蠣

▽ムール貝
今年は去年の2倍ほどの値付けになっているが?? 海鞘の筏と一緒に廃棄処分にされたのだろうか。刺身があったのでムール貝は後回し。一晩冷蔵庫で寝かせて翌日処理。殻を洗って細く強靭な紐を抜く。熱した鍋に放り込んで白葡萄酒を注ぎ蓋をして蒸す。殻が開いたら完了。そのまま食えるが(いや、生でも食えるのだが)、EXVオリーブ油を振って、トマト缶、バジル、パセリ、大蒜、青唐辛子、塩、胡椒で味付け。このあたりで食品庫の在庫を勘案しながらメニューを考え始める。よしよし、冷製カペッリーニの具にしよう。トマトが煮立ったら火を止めて味を染み込ませる。常温になったら冷蔵庫へ。そのまま忘れて翌日でもOK。ムール貝は冷たくても固くならず、おいしく味が冴える。

冷製カペ

■切り身二題

■銀鮭
5~7月に味わえる女川の活〆生銀鮭(俗称伊達ぎん)がおいしい。輸入物は年中出回り値段も半額以下だが、銀鮭の天然ものは漁としては獲っていないはずで、市場に出回るものは全て養殖もの。大半はチリないしは北米、北欧産でトラウトサーモン並みの生臭くどぎつい脂が人気を呼んで、中国加工の粕漬けから切り身、焼き物から塩水に漬けただけのインチキ甘塩鮭まで実によく見かける。そのあたりに目を付けた商社が国内で養殖を始め、これも広く出回っているようだが、身に締りがなく濃橙色の身に入る白い脂が太く間隔が大きいのですぐわかる。餌以外のプラスαの部分が垣間見えるな。もっとも女川産も最近は餌にアスタキサンチンを混入しているのだろう。色味が鮮やかで輸入ものと比べ遜色はない。まぁ、今以上不自然に脂をのせなければ、旨味があって夏鮭としては面白いだろう。

同じ海域でF1人工生物のドナルドソン・スチールヘッド(商品名:トラウトサーモン)も養殖されているというのは初耳。ここのドナ・スチは価格のハンデを乗り越えてどういうところに使われるのだろう? 興味深いが、並べてみると確かに鮭と鱒。今度探して食ってみよう。原発が一つあるだけの、とことん何もないところだが、海はあくまでも海色で人気のない静かな小さな浜辺が複雑な海岸線の間に点在している。ちょっと懐かしい。

■冷凍穴子の解凍品
何故かスーパーにはこのところ裂いた解凍モノばかりが並んでいる。地元産、かつ活きに比べ半値から1/3ということで買ってみたがこりゃ外れもいいところ。その価値はまったくない。湯霜して丁寧にぬめりをこそいでも、煮る、焼く、どう足掻いても固くて臭みが抜けない。穴子とは完全に別の食い物になってしまう。冷凍食品は苦手なので滅多に買わないが、これもお定まりの安かろう不味かろうの典型のような食感だ。天麩羅にでもすればよかったのかな。本来ならばおいしい穴子を何故こんなに不味くして食べなければいけないのか、理解が及ばない。生の穴子は普通に煮上げられるので手法に問題はないと思うが、今度鮨屋の板さんに聞いてみよう。何でもプロに聞くのが早くて正確だが、生きているのじゃないとダメでしょう、とか言いそうだな。

■魚

▽きんめ(金目鯛)
銚子名産深海魚。40cmほどのもの、780円。今や、きんきとともに安くならない魚の代表格になってしまった。刺身と定番の煮付けで賞味。強靭で頑強な鱗取りに苦闘した甲斐があって、薄っすらと脂を含んだ白身は独特の香味を放つ。今度は皮付きで炙ってみよう。煮付けは鍋には入らないのでフライパン。酒八方と屑野菜、生姜を煮立て静かに魚を寝かし、煮汁を廻しかける。沸騰したらキッチンペーパーで覆い蓋をして蒸し煮にする。10分ほどで火は通る。固くならないように火を止めて2、3分蒸して出来上がり。刻み生姜、青葱などで彩を整えればなお完璧。

きんめ刺し

生のきんめは皮が弾けてきれいに仕上げることはけっこう難しい。よく見る冷凍モノは何故か皮がきれいに残るのだが、身がしっかりと固くて、蕩けるようなふわふわさが命の煮魚という料理とは別物になってしまう。

きんめ煮付

▽青森産蝦蛄は外れ
見た目に遜色はなかったが、やばいかなぁ? と思ったとおり、鮮度落ちで中身が溶けかかっているものが2匹。殻が上手く剥けなくてほじくる羽目になった。水槽で活けで運んでいるのだろうが、どうせ茹でて食べるんだから、水揚げ地で茹で揚げたものを廻せないのかな。

鰯

▽鰯
定番の鰯。焼くとか煮るとかツミレにするとかいろいろあるが刺身がいちばん簡単だわね。思ったより脂がのっていて途中でうんざりして2匹分でリタイア。まぁ、値段が値段だから贅沢は言うまい。と思ったが鯵より高いのは腑に落ちないな。まぁ、臭みがなくて生姜はなしでもよかった。

鰯刺し

■野菜三昧

◇茄子科全盛
ヘチマのような巨大なズッキーニが50円とさすがに旬。茄子やトマトも安いね。季節ものの路地野菜は味がしっかりと昔を思い起こさせるので好みです。ズッキーニはオリーブ油で炒めてパスタの具に、茄子は冷製煮浸しに、トマトは生でもカレーに入れても使い道を選ばない。

アチャール

◇アチャール
インド風の漬物。取敢えずは試作として辛くない青唐辛子(京都の万願寺唐辛子)と人参で作ってみた。
唐辛子は縦に切れ目を入れ、人参は皮を剥いて□-6x6x75(単位はmm)に成型する。パプリカ、ターメリック各大匙1、岩塩、チリ、黒胡椒、コリアンダー、アジョワンシード、クミンシード、フェンネル各小匙1~2を合わせたミックス・スパイスを唐辛子のなかに指先で捻じ込んでいく。ボールに入れた唐辛子、人参に残りのスパイスをぶっかけて手で軽く捏ねる。密閉ガラス瓶に入れて、オリーブオイルをたらたらと廻しかける。蓋をして常温で3日。一つ試食いして瓶は冷蔵庫で保管。食べるときには適当に刻んでくだされ。長期保存可能です。

ター菜

◇ター菜+空芯菜
このところ爆安の葉もの野菜。ター菜も空芯菜も日本の野菜ではないが、近在は日本でも有数の農業地帯なので最近は目先を変えて変わった野菜の生産に励んでいるようだ。立派なター菜が転がっていたのでさっそく購入。一株80円とお買い得。青梗菜の茎に縮れホウレン草かサニーレタスの葉が付いたような感触。白菜に似ていないこともない。葉は生でも食えるか。取敢えず豚肉と塩抜きした搾菜の炒め物に投入してみた。青梗菜の茎の感触でコクがあり、仄かに香るがエグ味はない。スープや青菜炒めにもよいな。ラー油や胡麻油にもよく合う。一方、空芯菜は読んで字の如く茎の中心が空洞の葉が尖ったサツマイモの葉のような菜。こちらも一束80円と量と生きの良さに目が眩んだ。フォーなどにも極めて無造作に入っているあの葉っぱだ。国産化されているようで東南アジアで食うようなエグ味はまったく感じられない。生で齧ってもどうということはないくらいだ。熱したときのぬるっとした食感も上手くコントロールされている。

既に産地や国産か輸入かに拘ることに有意な差はほとんどない。種苗貿易が自由化されて以来、今や国産野菜の種は90%(海外での委託生産を含む)が輸入品だし、なおかつF1化(一代交配、一代雑種)が進み、再生産ができない種を蒔くしかない農家は毎年、お金を払って種を購入するのが慣わしだ。各地の農業試験場などがそれなりに改良や育種を進めているのだろうが、ありとあらゆる手法で良性種を作り出すグローバル寡占企業の製品は甘くて柔らかいから人は簡単になびいてしまうものだ。もっとも、彼らは育成者権を売って商標ラベルを貼り付けるだけで、実際作っているのは中南米や東南アジアの貧民であることは言わずもがな。逆に国産の種は日本人好みの野菜をより安く生産するために中国、韓国、台湾、ベトナムあたりに輸出され、製品は外食やお惣菜として戻ってくるわけだ。もちろん、果物や魚、肉など単価の高いものはとっくの昔に特許やパテントでがんじがらめになっているのだろう。

叉焼

◇豚腿肉で叉焼
バラ肉より安い腿肉で煮豚。網なしの普通の国産肉。目立つ脂身はラード用に切除し、大鍋に水3l、屑野菜と屑生姜、醤油大匙1で1時間くらい蓋をして茹でる。茹で上がりの10分前、濃口醤油、老酒、味醂を媒体に、八角、砂糖、黒胡椒、胡麻油、大蒜、生姜で漬け汁をこさえておく。茹で上がりを漬け汁に漬け、キッチンペーパー等で覆う。ときどき漬け汁を掛け冷めたら冷蔵庫へ。思い出したように肉の向きを替え、漬け汁を廻しかけ2日以降ぐらいが味が染みてよい。赤玉葱と合わせて冷製でもよいし、軽く炒めてもおいしい。工夫もへったくれもないシンプルな飯のおかず。

■しつこく鰻

また大蒜を一網買ってきた。声高なアンチ・キャンペーンで投売りを期待していた鰻は扱いがかなり縮小されてはいるが、思ったより安くはない。台湾からは主として活けものが、中国からは蒲焼加工が施された冷凍品が輸入され(価格調整のため倉庫で寝かされ)るが、路地池養殖ものが多い中国産は泥抜きや蒸し、焼きが改善されれば、天蓋付コンクリートプールで温水養殖される国産に比べるとより天然に近いものが味わえるだろう。実際、酒で蒸し直して、軽く焼入れすると専門店レベルとは違う食い物だがけっこう持ち直す。身がそっくり返って盛り上がっているものではなく、べたっと平たいものを買うのが皮が比較的よく焼けている当りを掴むコツだ。一方、このところ増えている天然鰻は種苗放流の効果が出てきたと考えるべきだろう。もっとも放流種はジャポニカ種とは限らないようなので、いずれヨーロッパ種を天然物として喜んで食う日が来るのだろう。

残念ながら国産だからといって活けとは限らないのが安物の現実だし、加工食品には生か解凍かを表示する義務はないし、区別をつけるにはそれなりの修養が必要だ。もちろん老舗もピンキリなのでブランドに頼る意味はないし、国産と輸入の価格差に見合った味の差は(ハイエンドは別としても)残念ながらない。
素材としての差があるとすればタレの好みと捌き方、焼き方の差だけだろう。最近は身肉の味を誤魔化す嫌味な甘いタレばかりなので、甘くなければどこでもいいか…というレベルまで許容基準を緩めなければいけないのが悲しい。また、蒸し、焼きの工程は本来ならば熟練の職人技が要求される最も高コスト要因なわけで、そこを真っ先に省略してしまったのが今の量産鰻の姿ということになるだろう。
食い方としては丁寧に泥を吐かせたものを捌きたて、蒸したて、焼きたてで食うことが肝要にして最低条件である。とりあえず肝串と新香を頼んで冷で一杯やりながら40分待つのが本来の作法だ。

実際、シラスは12月から3月ぐらいにかけて本州南岸で採取されるが、すぐにお湯+αで養鰻しても夏の土用の丑には間に合わないことは小学生でも計算できる。(後注:いちばん高く売れるので今は無理やり間に合わせるらしい) まぁ、自分の身の程は正確に理解しているつもりだから、鰻は秋から春にかけて年に数回でも食べれれば良いね。それ以上は望まない。
「御馳走」をいつでもどこでも誰でも食べれるようにするという展開には、いろいろな思惑や背景が透けて見えて面白い。海山で英語混じり歌をガンガン掛けたり、旅先でも携帯ゲームに夢中にさせるサービス過剰型欲望喚起装置と似たようなものを感ずるか。ハレとケの概念なんて今の世で通じるものではないし、他人の金儲けの邪魔をするつもりもないが(笑)。

個人的にキャンペーンは迷惑。アンチ・キャンペーンは純粋に価格の下落に繋がるので大歓迎している。まぁ、行き過ぎるとモノがなくなってしまうので程々がよいのだが。
実際見聞きしていると非常に不思議に思うのだが、巷に溢れる中国産というもののなかに、中国人が独自に作り独自に輸出しているものがどれだけあると思っているのだろうか(今はね。先のことは知らん)? 思いつく限り、華僑が独自ルートで仕入れている中華食品や素材など、あるいは、中国製以外のものが存在しない(それだけの競争力がある)特殊な茶葉や薬、香辛料、あるいは“日本人が食いモノとして認識しない食いモノ”くらいのものだろう。個人的にそういうものは興味深いので積極的に入手に勤めているが、残念ながらどれも万人の口に合うものではないから市場に出回るものではない。

結局のところ、現在市場を席巻している多くの製品に組み込まれている中国産品は日本の商社やメーカーが安い労働力や素材を宛てに、一円でも多く儲けるために進出し、品質からパッケージングに至るまで全て日本向け仕様で作らせているものに過ぎない。岸に押し寄せるシラスを肥料にしていた台湾や中国に鰻の蒲焼はなかった(中国人は海老とフカヒレ、海鼠、ホタテ貝柱以外の海の魚介類を食べない)し、もちろんラーメンも餃子も日本で作られた日本料理である。日本で獲れるシシャモは一匹100円を下らないし11月にしか食えず、尚且つ半分は卵を抱いていない雄だ。一方、ノルウェーで水揚げされ中国で加工され、解凍品が棚に並ぶ雌カペリン(商品名:カラフト・シシャモ)は束になっても200円はしない。もちろん“子持ちシシャモ”をカペリンで代用しようと考えたのはノルウェー人でも中国人でもないが、まぁ、あまり大人気ないことを書くのも無粋か。おっかないしね。

こういった様々な現象は結局のところ資本主義の行き着くところを示しているに過ぎないが、目の前にあるものがいちばん安くておいしいということを思い出せば、欺瞞や偽装の入り込む余地などどこにもないことに気付くだろう。別にピューリタンじゃないから、飽きたら輸入品や目先の変わったものにでも適度に浮気すればよい。要は“おいしい”ものを極めて単純かつ素直に“おいしく”食べれば良いだけのこと。偽物は“おいしく”ないし、どんなに工夫しても“おいしく”は食べれない。もちろん、今は何でも個人のレベルに引き摺り下ろさないと気が済まないようだが、“おいしい・まずい”という概念は普遍的なものであって、単に口に合うとか食べ慣れているという瑣末な感覚とは異なるものだ。

******************************************

鰻に関する補遺(08/01)
形骸イベント化した丑の日も終わり、抱え込んでいた冷凍ものも掃けたことでしょう。12月から養鰻を始め6月に出荷する超促成鰻を「新仔」といい、その薄皮と脂乗りを売りにしているところが散見されますが、個人的には1年ものが好みです。誤解を受けている部分があるようなので、一応、言い訳。長焼や蒲焼としてデパ地下出店から場末のスーパーまで、現実的に入手できるものに関しての考察です。都内の老舗や沼際の場末掘っ立て小屋で食する店屋物鰻重の話ではありません。

産国の差:
身肉の質に関していえば、中国産と国産の違いは私の舌ではわからない。ピンキリ・グレードを合わせて相互比較試食できる環境もない。味が落ちる鰻の代名詞ともいえる身肉に残る泥臭さに関してもサンプリング数が不十分で、実際、産国で差異があるのかどうか判断が付かない。北太平洋に回遊するシラスは共にマリアナ海溝の生まれなので区別は出来なくてもおかしくはない。ヨーロッパ種と日本種の違いも曖昧というか、わかったようでわかっていないと自分では考えている。

産地の差:
主要産地によって養殖の仕方や時期は異なるようです。促成養鰻を除けば、静岡、愛知は春から翌年の夏にかけて養鰻する通年型、宮崎、鹿児島など九州は冬から始め同年の夏に出荷するようです。シラスが取れる時期や輸入先、出荷時期、外気温と暖房費の兼ね合いなどで開始時期が異なるのでしょう。しかしながら製品としての鰻に産地による差を認めることは難しい。味の差は個々の養鰻場の質的な差、鰻自身の等級差によるものだろう。

冷凍と活けの差:
現在の養鰻は促成手法によって季節労働に近いので、冬から春の一時期など、時期によっては活けが市場にない時期があると思われる。その場合は輸入鰻で代用されることが多いよう。冷凍ものと活けものは明らかに味が異なると考えているが、正確には高く売れない冷凍ものは扱いが雑なだけで、きちんと手を施せば味は変わらないのかもしれない。

添付されているタレの差:
概ね西に行くほど甘くなる。粘度も地域によって大きな差があるようだ。関東はさっぱり辛め。関西はさっぱり甘め。中部と西部は醤油の差だろう。濃い甘のマッタリ系。

消費地向けの差:
料理法の差は厳然として存在するでしょう。背開きか腹開きか、頭、鰭をつけるか落とすか、蒸し工程が入るか否かで味や食感、見た目、タレの差も含めほとんど別の食い物というほど差があると考えている。

焼きの差:
すなわち工場生産の量産品か、職人の手焼きかに関しては区別がつくつもり。というか、完全に別の食い物でしょう。経験的に鰻の味の善し悪しは焼きの善し悪しと考える。手焼きの場合は皮の厚さや脂ののり具合を見ながら焼き時間をコントロールしている。蒸す時間も5分程度から1時間近くまで、鰻によって大きく差が出るらしい。ただし、炭火焼とガス焼きの差はわかったようでわからない。目の前で炭で焼いたものをそのまま出されればそうなのかと思うくらい。

安全性の差:
以前も今後も興味がないので、何も言及していないはず。各種薬品の使用は国産、輸入を問わず行われているが、減少傾向にあることは確か。不使用を売りにしている養鰻場もある。一般的には出荷前の数日間、餌断ちしてきれいな水で薬抜きをする。農作物と同じ。薬を使い過ぎたり、繁盛期で薬抜き期間が十分取れないときなどには薬物が検出されることになるが、検査は業界団体が自主的に行っている。もちろん、サンプリングの仕方や義理人情、あるいは利益誘導を含めた政治力で発現数が変わることはないし、うっかり見つけちゃいけないものを見つけた獣医が自殺に追い込まれたりすることはないのが先進国の仕様だろう(笑)。一方、検疫は国が行うものだから、全箱検査を敢えてしないように、あるいは国内では禁じられているポスト・ハーヴェストの使用を許可するなど、目に余る不快な外貨準備高へのあてつけや国内産業の保護のため非関税障壁として利用したり、宗主国の意向が反映される向きはあるかもしれない。

■乾物

◇乾蕎麦
暑いくらいならまだしも雨だと徒歩10分の十割蕎麦に出掛けるのが億劫でたまらない。そこで乾蕎麦に頼るわけだが、これがまた難しい。この国では蕎麦粉の含有量が30%以上なら蕎麦と名乗ってよい(ソーキソバは0でも慣例的にOK)という、恒常的な利権構造に則った極めて合理的な基準(JAS)が制定されているので、それに従うのが国民の務めなのだろうが、やはりどう考えたって五割をもって蕎麦とするのが妥当であろうよ。当然蕎麦粉の含有量が高くなれば値段も高価になるが、乾麺としていくらまでが妥当かという判断はけっこう難しい。所詮、乾麺だからね。いろいろ試したがこのところ更科は特に定めず種類が多い二八を、田舎系は東根(山形)の五割あたりに落ち着いている。

都一

◇乾中華麺
基本はスープなし生麺を使って作ればよいのだが、せっかくだから都一の乾麺。もちろんスープなし。卵不使用、ノンフライ。茹でてもある時点までまったくほぐれない。ふわっとほどけたら軽く煮立てて湯を切る。細縮れ麺ながら信じられないくらい重厚で腰が強い。小麦の匂いと乾麺とは思えない独特の食感が堪えられない。あっぱれ。
市販の日式ラーメンが食えない人間にとってスープなしは無駄が省けて非常にありがたい。ガラスープ、醤油、練り胡麻、ラー油、老酒だけを合わせ、具は空芯菜、白葱、厚切りの椎茸、鶏腿肉の叉焼でシンプルかつ率直に。中華蕎麦はそこらでちょいと腹の足しに食う、ビールの摘みに食う、酔い覚ましに食う、作るのがタルイときにヒヨって誤魔化すもので、それ以上でもそれ以下でもない。

◇乾饂飩
乾燥饂飩は難しいな。個人的には“氷見の饂飩”>水沢(伊香保)>武蔵野・秩父といったところか。真冬、風邪引いて具合が悪いときに東北風煮込みを生麺で食べることもあるが、基本は冷たいもの。なおかつ腰が強い細麺、小麦の風味がきちんと立っていること、滑らかでしっとりと喉越しのよい食感を選択基準にしている。定番は別として特筆すべきは生が主体だが群馬・栃木・北埼玉あたりか。このところ讃岐に匹敵するほどめきめきと質が向上している。地場産の饂飩用に作られた小麦を使って製麺しているので好感度も高くなる。饂飩のつゆは甘くなければ何でもよいが、強いていえば出汁は濃い目の羅臼昆布(にキモチ鰹)でさっぱりした香りのよい醤油、胡麻なら濃厚、卵や柑橘は小麦の匂いと合わないと考えるのでいらない。薬味は青葱、茗荷、生姜、山葵、七色、酢で溶いた辛子、山椒の葉、実、紫蘇、煎り胡麻、擂り胡麻、辛味大根、最近復活した? アサクサノリベースの湾内産海苔。具なら白髭葱、山菜、なめこ、大根おろし、胡瓜もありかな。季節ものだが筍と枝豆なんかもいいな。油ものや動物ものが入ると腹持ちがよくなってゴハンモノ的な性格になるように思う。

パパド・パッケージ

◇パパド
クミンと黒胡椒が効いたウタドパパドと呼ばれるひよこ豆の煎餅。微妙に不気味なパッケージはインドでは受けるのだろうか? 一応、インドではいちばん有名なリジャットというメーカーの女性の手作りを売りにしたパパドらしいが、直径20cm、厚さは1mmを切るという薄さ。それを直火でヒラヒラ炙るわけだが、これがパリパリの薄焼き煎餅になるわけだ。不思議なことに、食べて暫くするとぐっと香辛料が効いてくる。辛っー。一袋200円(安売りで100円)くらいで入手できますが、けっこう分量はあります。アチャールなんぞを挟んで食べてもおいしいし、タンドーリ・チキンやカレーのお供にしてもよい。食べ終えて1時間ぐらいなんとも説明しがたい香りと辛味が残るのは凄い。インド料理は基本的にコク(=アミノ酸)という概念のない(あるいは必要としない)料理だが、この残り香は非常に特徴的で面白い。

パパド

◇今月の鮨ネタ
初夏は鰯に始まり、秋刀魚に終わるといった按配か。カタクチイワシの子、生シラスがテンコ盛りになった軍艦はまだあった。脂がのり始めた入梅鰯が出始めで優れて美味である。夏の雄、ヒラマサは安定した食感と爽やかな香味。蝦蛄も大きく肥えてきた。海鞘(ホヤ)の壊滅的打撃は事実のようだが他県産が出回っている。岩手産も身が肥えて歯応えが良い。マコの縁側を味わいながら、白身は平目に変わってカレイに移行。旬の身肉は厚く歯応えが堪らない。マガレイはそろそろ夏の味覚マコガレイに移行。ババカレイもお目見え。さわらは皮をさっと炙って生の身肉との差異、香ばしい皮の味を堪能する。貝は産卵期で今ひとつ。岩牡蠣の独壇場だろう。酢飯の場合なら柑橘なし、塩だけでありすぎる濃厚な旨味を味わえる。大きさ、味ともに今が最高だろう。

板さんが見慣れないチューブを絞る。それってマヨネーズ? と訊ねるとツナマヨと答えが返る。普段滅多に主張しない人だが、“うちのツナはインチキ缶詰と一緒にしてもらっちゃ困る”と珍しく胸を張るので握ってもらった。針のように細かいほぐし身が軍艦にたんまりと載せられた。ツナはマグロの大トロだという。色が変わったものを醤油で煮立てほぐしたものだそうだ。匂いが廻るので冷蔵庫でも数時間しか(売物としては)持たないから滅多に作らないそう。夏場に入り客足が減ってモノが廻らなくなったときの苦肉の策といったところか。パリパリの海苔で巻いた軍艦仕様で100円だけど150円でもいいんじゃないの? さっぱり目のホワイトソースのようなマヨネーズはどこのものだろう? 醤油なしで食ったが、普段あまり染まらないよう注意している脂の旨味が極めて濃厚にして酢飯の酸味と絶妙にマッチする。おかげで最後のサビたっぷり干瓢巻とお茶が引立つこと。ツナマヨなんて15年くらい前に食って二度と食わねぇと心に誓ったはずだが、うむむ、固定観念に捕らわれず日々冒険が必要だと深く反省した次第。

小肌は端境期。モノがない。南のほうから新子の季節だが、板さん曰く小さ過ぎてまだちょっと無理、二、三枚付けになるまで待ってね。代わりに初モノ秋刀魚を味わう。道東の小型船の秋刀魚漁解禁を受けての入荷だが、まだ北上中の秋刀魚故、脂がのっていなくて身肉本来の味がストレートに伝わる。端境期には煮イカ、茹でタコ、蒸し海老などという昔風のネタを詰めを塗ってもらって味わうのもよい。自家焼きの店ならば玉子も個性と工夫に富んだ味わいを愉しめる。今や安価なお子様ネタ扱いだが、江戸時代は最も高価な垂涎ものだったというのも面白い。

2;サーバごっこ機 いまだPlamo Linux 2.0改-0.18GHz不眠不休号

何一つ弄らず触らず。

3;スキャナ機 NT5.1 sp2 Home セレロン2.2GHz新まんせえ!号

行方不明のファイルを捜索するも発見できず。

4;Win機 NT5.0 sp4⇒NT5.1 sp2 早くも1.8GHzに降格?

たぶん何もしていない。

Doom

「Doom2050」は20面ぐらいで頓死中。けっこう手強いわ。平行で「s666」なるWADに浮気中。スイスイ進むが、これまたトリッキィ。おまけに暗い画面が多くて老人には堪える(笑)。

暗い空

2007/07/22 作成__2007/08/09 最終更新