卯月記 -(2007/05/17-2007/06/14)

1;諸々

一年でいちばんコントラストが高くて色彩が鮮烈に見える季節だが、あっという間に梅雨入りしてしまうのが惜しい。美しいものがいちばん美しく見えるだけに、その刹那感に翻弄されるのもまた悦にして魅惑に満ちている。それでも、微妙な色彩の差を追い求める感覚は歳とともに鈍磨していくのだろう。まだ差異がわかるうちに、少しでも多くの光と影を見ていたいと考えるようになった。

Gate

前月のGoogle。画像検索に関してはフィルターを外すことができる。画像検索のページの右に表示設定というリンクがあるので、クリック。表示言語の設定を日本語から英語などに変える。保存ボタンを押すと再度画像検索のページに戻る。英語版などになっているはず。今度は右のpreferenceをクリックすると同じ設定ページがでる。下から三項目めのfilteringを「Do not filter my search results.」に変更する。言語を日本語に戻してSaveボタンを押せば完了。変更の前後で明らかにヒットする画像の量や質が変わる。日本語版を使う限り、デフォルトでは特定の語句に反応しない設定になっているらしいな(笑)。

6/20の懲罰的法改正を目前に控え、巷(といっても同業だけだけど…)はてんやわんやの大騒動、ひいては経済的停滞を引き起こしかねない事態が切迫しているが、まぁ、お手上げだな。声の大きな業界に騒いでもらわないと、うちらが何を言っても無駄というのは前回と同様。しばらくは様子見を決め込むしかなさそうだ。ということで本日、不眠不休の(6/19)駆け込みで出してきた。民間は軒並み受け付け拒否だし、役所もダメというところが多いらしいが、うちのところはOKだった(笑)。差替えもしていいってさぁ。へへ。役人の頭の背後に光が輝いて見えたぞ(笑)。

しかしまぁ、この改正の主旨というか内容を策定した連中、本質をまったく理解できていない本当にアホだよな。読めば読むほど笑える。おかげで酒の席が盛り上がること(笑)。敷居が上がれば追従できないところも多くなりそうで、それはそれで専門化が進むのは機会に繋がるだろうから面白いが、チェックの手間が省けなくなったのは辛いなぁ。金払って自分でチェックまでしなきゃいけないなんて理不尽な。ようし、ここぞとばかりに、うちも値上げするぞ(笑)。

■ここに至って心を去来する由無しごと

光瀬龍+萩尾望都の「宇宙叙事詩・上下」は相変わらず暗い話が多い。「百億の昼と千億の夜」とは違った淡々とした虚無感と絶望感が横溢している。久住昌之+谷口ジローの「孤独のグルメ」は設定に若干馴染めない部分があるが、ちっともグルメじゃないあたりがこれまた淡々として茫漠。どうせなら、あとがきを絵にすればよかったのに。いちばん旨そうだ。

鷺

かつて梅雨入りの直前というと、まだ誰もいない海岸を目指してよく泳ぎに出かけたものだが、今となっては何をかいわんや。この間泳いだのはいつだったのか思い出せない。近郊の場合、昔と違って今はシーズンオフでも人が群れているから、わざわざ騒音を聞きに出かけることもあるまいという気持ちにもなる。さて、どうしたものか(笑)。
割烹ネタは書くことに困らないから意外と続くな。四季が繰り返すように中身も繰り返すことは仕方がないとしても、徐々に好みが変わるから新しいネタも拾える。というか、今は貪欲に食えるものは食っておこうという意識がある。それは裏返しの恐れなわけだが、あと10年もすりゃ、食べたくたって量は食えないし、医者に止められるかもしれないし、もちろん生きていないかもしれない。自分だけが例外であるとはとても思えないから楽しみは使えるうちに、前倒しで使い果たそう。

■貝三題

▽鳥貝
殻付6個360円が高いのか安いのか。噛み合わせが悪そうな薄い殻は簡単に開く。というかこのだらしなさ。食うのは身というか黒い足の部分だが、包丁を使うと簡単に色が落ちてしまい売物のようにはならん。う~ん、なんかコツがあるのだろう。俎板にペシッと叩きつけるのは止めにしてさっさと食った。身が薄い。モノが今一だったようだ。鮨屋で食うのとは比較にならん。

鳥貝

▽タイラギ
三河特産、俗称平貝。300円とはこりゃめっけもん。手に取った重量感に期待は膨らむが、予想通りの充実ぶりに唸った。貝柱も幅、厚みとも申し分ない。柱は縦に削いで山葵と煮切り。非常に淡白な味わいだがホタテとは比較にならない食感と香味に病み付きになる。紐とその他食えそうな部分は塩で揉み洗いして、ぬめりを落として軽く湯がく。胡瓜と一緒に酢の物に。一晩寝かして翌日味わったが、こりこりして美味であった。

タイラギ

▽青柳
標準和名はバカガイ。いつもでれっと口を開けている様が馬鹿に見えたというのが名の由来だろう。旬を迎え、今年は出来が良く、なおかつ所詮はバカガイなので高価なものではない(というか、貝掘りの帰り、重くなったときに最初に捨てる貝だって)。濃いオレンジ色の身も鮮やかに肥えて、甘みと苦味を湛えたしっかりとした食感が初夏の味。殻付きはちょいと車を転がさなければ手に入らないが、剥くのが大変なうえ砂出しに手間が掛かるから剥き身でOK。生のまま刺身、そのまま、あるいは軽く湯がいて白葱と酢味噌で和えたヌタ、天麩羅あたりが定番だろう。貝柱は小柱として別に流通する。鮨や天麩羅には欠かせない。特にかき揚げには小柱と芝海老、三つ葉が定石だが、香りと食感の組み合わせが肝だ。桜海老は芝海老の代用にはならない。強すぎても弱すぎてもいけない。

■ガレット

また蕎麦粉でガレット。250gほどの蕎麦粉に卵1個、塩、砂糖、白葡萄酒各少量に水を加え緩く練る。一晩寝かしてもよいが直ぐやってもどうということはない。具材は卵、チーズ、生ハム、野菜適宜。なるべく火が通りやすいもの。あるいは通らなくてもかまわないもの。必要なら予め火を通しておけばよい。

卵ガレット

フライパンに敷きバター。強火。お玉で生地を薄く流し込み、表面が乾いたら生卵を割り入れる。ゴーダチーズやチェダーチーズの薄切りを並べパセリを散らす。必要ならば塩胡椒。裏をちょいと捲り、生地に色がついたら四周を折りたたむ。折れるとチーズがはみ出る(笑)。発酵バターを塗って卵に火が通ったら皿に取る。他の具も同様。

生ハム・ガレット

出来立ての熱々を食うのがいちばん。蕎麦のあっさりした香ばしさは、意外に西洋の具材を引き立てる。250gで4枚できるが、具材にコクがあり過ぎて2枚でお腹いっぱい。ちょいと余った生地に、細切りにしたジャガイモを投入し和えたものをフライパンで丸く焼くと、ジャガイモのガレット。共に辺境ケルトの貧民食が起源である。

ジャガイモ・ガレット

■出汁と返し

和食はもちろん、蕎麦や天麩羅を食うにはつゆが必要だ。つゆとは出汁と返しを合わせたものをいうが、その割合を変えることで多くの料理に対応できる優れものである。予め合わせたものが市販されているので、甘さや雑味、香りの無さ、あるいは香料で付けたような人工臭が気にならなければわざわざ作るコスト・メリットはあまりない。手間を考えるとむしろ割高になるだろう。保存瓶は蓋付のガラス製。使用前に煮沸して完全に乾燥させておく。雑菌に注意。

▽出汁
風土によって構成素材は適宜変更すればよい。私の場合、保存用の出汁は最も一般的な「昆布+鰹」で作っている。2lほどの鍋で出汁用(でなくてもよいけど)昆布を水から煮立て、沸騰直前に取り除く。削り節一掴み(右手を袋に突っ込んでむんずと掴む)を沸騰した昆布出汁に投入。5分ほど強火で煮立てる。灰汁は取る。火を止めて鰹を漉して一番出汁の完成。常温に冷まし保存瓶に密閉し冷蔵庫へ。一週間から10日ほどは持つ。濁りが増して匂いがなくなると危ない。
同じ手順で今使った昆布、鰹節で二番出汁を作る。色味は半分ほどで薄くなるが、煮物や味噌汁には十分な香りと旨味になる。出涸らし昆布は酢に漬けたり醤油漬けに、出涸らし鰹節はフライパンで煎り、醤油と胡麻を合わせて水分を飛ばすとこれまた香ばしい“ふりかけ”になる。
出汁のとり方は恐らく風土や目的で大きく違ってくると思うので、この方法がベストと云っているわけではないので念のため。ついでに、昆布と鰹の素材に拘るとキリがない(男の料理になっちゃう)のでその辺りは目的を履き違えないで見極めて下さいな。

▽返し
味醂を火にかけてアルコール分を飛ばし、同量の醤油を加え軽く一煮立ち(滅菌)したもの。甘めが好きならばザラメを入れておくとよい。醤油は風土に合わせたものを用いれば良いだろう。私の場合メインは蕎麦用辛口つゆなので濃口醤油に本味醂となる。味醂風調味料は塩分や糖分が添加されているので不向き。質の良い味醂を使うと香りや甘みがふくよかなものになる。冷めたら同じく保存瓶で冷蔵。一週間ほど寝かすと醤油の角が取れ味が馴染む。こちらは雑菌混入に注意すればほぼ期限なしに持つ(責任はもたんが)。寝かせば寝かすほどおいしい。

返しの味醂の代わりに酒(+味醂を加えることもある)を用いたものが煮切り醤油。透明感のある鮮やかな暗赤色と軽やかな香り、さらりとした癖のないまろやかな風味が特徴。酒に甘みがない場合風味付けに味醂をちょっと垂らすが、こちらはいくらなんでも砂糖は不可。雑味を排した透明さこそ刺身や鮨の素材の味が引立つ。作り方は同じ。酒は高級品ではなくて本醸造程度のアル添酒のほうが良い。もちろん“料理酒”は酒じゃないから(笑)。

鮨の場合は酢飯に塩分が含まれているから、酢締めや海老蝦蛄など生臭味がなくて繊細な味を生かすものは醤油をつけないことも多いが、煮切りを使うとちょうど塩分バランスが良くなるという利点もあるかな。もっとも元々使う量が微少だから気にするほどのことではないか。
カウンターにつけ醤油と小皿が置かれている場合も、店によって異なるが酒や味醂の割合を微妙にいじって調整しているのが普通だろう。市販の醤油をそのまま使っている店はお目に掛かったことがない。多くの店では「煮切りかかっています」「塩と酢橘かかっています」などと出してくるので、何も付いていない場合はお好みで小皿の醤油をつければよい。ただし、出汁を入れたり柑橘類を多用するのは品がないと考えている。鰹出汁は論外だが、たとえ昆布や柑橘だろうとも素材の風味を阻害することもある。

持ち帰り寿司のパックやスーパーの刺身パックに付いている醤油も品質に差はあるものの基本的にはすべて何らかの加工が施されているはず。掻き集めて保存しておくと、うっかり煮切りを切らしたときなどに重宝する。不思議なことに市販の製品化された刺身醤油は方向性がまったく逆で、再仕込や溜まりに近い濃厚な風味と旨味、明らかに甘みが添加されたものばかりである。今流行の脂ぎった魚信仰の賜物なのだろうか。

あとは穴子の煮詰め汁である甘い“煮詰め=ツメ”を常備しておけば、穴子だけでなく煮蛤や茹で蛸、イカ下足、鰻蒲焼なんぞにも対応できる。冷蔵すると穴子のコラーゲンで勝手に固まるが、使うときに火を入れて滅菌を繰り返すので一度作ればかなり長持ちする。

こんな程度でも準備があると料理の味に深みが増すし、何より楽で時間が掛からない。もちろん、キンキンに冷えた返しを冷たい出汁で割って食う蕎麦の香りと喉越しは、これからの季節、かけがえのないものだ。そしてもう一つ。基本的な素材だけで伝統的な手法に基づいて普通に作った出汁やつゆは市販のものに比べどうしても“薄い”のだ。さっぱりし過ぎ、あるいはコク、旨味が物足りないと最初は多くの人が思うだろう。しばらくすると逆に市販品がくどいことに気付くのだが、ありとあらゆる手法で企業に飼い慣らされた舌の現実に思いをはせるのも愉しいことだ。

◇炒麺(ヤキソバ)
徒歩圏場末の中国料理でヤキソバ。普段は海鮮広東風を食うことが多いが、今回は趣向を変えて牛肉入りにしてみた。ちなみに料理人は某四川料理の店で修行したらしい。大皿にでーんと具沢山で非常に豪華、揚げ麺もパリパリで真似ができないのだが、これは業務用の麺というものがあるのだろうか? 自前で生麺を加工しているのだろうか?
きちんと下味付けて油通しされた青椒肉絲に使う豪華なロース肉(7mm角x7cmくらい)たっぷりとしゃっきりしたピーマン(5mmx7cm)、香りよい筍(控えめ)、木耳(たっぷり)をさっと炒めた典型的なシャオの食感と餡かけの旨味、控えめながらも五香と老酒のバランスが絶妙であった。部品がざっくり大振りなのだが大きさはきちんと揃っている。各々素材の旨味がきちんと生かされている。ちょっと感服した。あんちゃん、こんなところで燻っていたら勿体無いぞ。

ソースヤキソバや塩焼きソバなど鉄板などで蒸し麺を炒めるだけの安直極まりないヤキソバがすっかり主流になってしまったが、まったく別の料理と考えればよいだろう。このところ、あの味を再現しようと粘っているのだが麺がパリっとせんの。う~ん、業務用レシピじゃないとダメなのだろうか? どう足掻いても売物みたいにならない。あんかけは完璧なのだがなぁ。

■パスタ二題

◇カルボナーラ
単純で明快だがあまり作りたくはない。でも、要望はあるな(笑)。材料は極めて少ない。豚バラ肉の塩漬け、卵黄、乾酪にはパルミジャーノ・レッジャーノ(以下PL)を使用し、あとは白葡萄酒、黒胡椒、塩のみ。麺は個人的に乾燥リングイネ(細め~中太)に固執する。平たいものや太過ぎるものは食感がくどい。豚バラ塩漬けは完成品としてあまり売っていないので、自分で塩漬けにすればよいが、約1ヶ月の期間と頻繁な水抜きが必須で手間が掛かる。日常的にその辺で入手可能な、いわゆる“ベーコン”や“ハム”、あるいは“パンチェッタと称して売られている某メーカー製”はすべて本来の製法の要点をことごとく省略+促成製造され、コクの無さを誤魔化すために水飴やら増粘多糖類で甘く味付けされ添加物まみれになった偽物が多いので、塩漬け肉がなければ燻製されたブロック・ベーコンでも用意したほうがマシ、というのが経験的に得られた結論。燻製されているか、匂い付けだけの偽物かは値段で判断しよう。

茹で汁+PL+塩漬肉の各塩分が合わさってちょうど適量になるように、頭のなかで想定しておく。PLの代わりに、あるいは半量をペコリーノ・ロマーノなどにする場合は、当然、塩分量の再考が必要になる。
器に卵黄1.5個(乾燥麺100gあたり。全卵なら1個で良いが若干水っぽくなる)、摩り下ろしたPL100gを準備。いちばん疲れるのはここだが、香りが重要な要素なので乾酪はごつい塊をごりごり擂り下ろすことが肝要。他に代替手段はない。

塩漬生肉を指先大に切除し低温でじっくり炒め脂を出す。同時にリングイネを100gあたり1lの水に10gの塩で茹で始める。肉がこんがりしたら白葡萄酒をちょいと投入、香りを味わいながら脂を茹で汁大匙1くらいで乳化、火を止めて茹で上がった麺を湯切りして投入しよく混ぜる。器の卵黄とPLを茹で汁で溶きながら(卵が固まらないように少量ずつ)和え、ねっとりとした粘液状になったらフライパンの中身を投入、固まらないように手早く混ぜる。胡椒はミルで挽かないで、直前にホールの黒胡椒を包丁の背で潰し、盛り付けた麺にふんだんにかける。塩気の乾燥肉、卵、馨しきPL、ガリガリと口中で弾ける黒胡椒の野蛮な風味を心ゆくまで味わう。

この手の食い物の場合、概ね真面目に作れば作るほど、あるいは質の良いPLを使えば使うほど拒否反応が出る模様。プロの料理人の苦労が垣間見える(笑)というか、仕事なら生クリームだろうが牛乳だろうが何でも入れて、相手のレベルに合わせたものを出せば良い話か。ちなみに麺はアルデンテに茹でるとこれまた受けが悪い(爆笑)。この国の給食におけるソフト麺とナポリタン(ソフト麺のケチャップ炒め)、ミートソースの弊害はびっくりするほど根深く末端まで浸透しているようだ。原料小麦にそれほど差異はないだろうに、香りを殺し、ふにゃる国産パスタの食感は多くの人が馴染み、求めた結果ということか。先人は良かれと思ってしたことかもしれないが、全然パルメザンじゃない“Kraftの粉チーズ”とか“タバスコ”、“ケチャップ”というアメリカ大衆料理をイタリア料理と称したり、中国料理もケチャップで散々改悪して中華料理を創り出したりと忙しいな。

カルボ1

写真1は業務用イタリア産リングイネに、国産大手メーカー製“パンチェッタ”を使ったもの。残念ながら肉がしょぼすぎ。けっこう高かったのに。もちろん“パンチェッタ”という商品名のただの薄切り細切れ生ベーコン。おまけに(他のベーコンと同じように15年くらい前から)水飴や糖類をこてんこてんに使っているものだから肉から脂を抽出する過程で糖分が焦げ付く。たぶん想定している作り方が根本的に違うのだろうな(笑)。二度と買わない。

カルボ2

写真2はデチェコのリングイネ・ピッコレ(あまり売っていないが、これ最高)に三重の松坂ハム製のブロック・ベーコンを使ったもの。水飴は使っているようだが、塊が大きく使用量が少ないせいか焦げ付かない。匂い、燻製具合はかなりしっかりして肉が硬質な点がとりわけ気に入った。パンチェッタも製品化しているようなので今度探してみよう。

外でカルボナーラを食べたのは15年以上前だったか。記憶も薄れているが、出来上がった卵とチーズ、塩漬け肉のパスタは市販品に比べとてもさっぱりとして香る。まぁ、おいしいんだけどさ、やっぱりちょっとくどいというか、食べているうちに飽きるのは年齢的なものなわけ。お腹いっぱい。

◇冷製カペッリーニ
簡単だが冷やすのに時間が掛かる。液体窒素を用意しておけばすぐ食えそうだが、普通は半日前につゆを作る。普通のトマト乱切り、赤ワインビネガー、刻んだアンチョビ、5mm角に刻んだモツァレラチーズ、乾燥バジル、ローズマリーの葉、EXVオリーブ油、黒胡椒、塩を合わせ冷蔵庫で半日寝かす。冷やすと味覚が鈍感になるので味は若干強めぐらいがちょうど良い。盛り付け皿も1時間ほど冷やしておく。5分前、グラスにキンキンに冷やした白葡萄酒を注ぎ口に含む。500gで100円しない業務用カペッリーニを規定時間強茹でて水冷、氷を張ったボールで急冷して締める。締め上げたら笊にとって手でぐいぐい水気をしごく。和えたつゆと合わせて冷えた皿にきゅっと背高く盛り付けて、ルッコラを適宜盛り付ける。バジルは高い。原価比パスタの5倍くらいする白葡萄酒をクイクイ飲みながら、おもむろに片付ける。

旨味が凝縮され、皮も普通に食える日本のトマトは湯剥きしたことがない。塩分はアンチョビの分を考慮する必要があるが、強めにしないと味が呆ける。ビネガーを徹底的に効かせると辛口白葡萄酒の芳香と甘みがいっそう際立つ。初夏の夕べに。

■カレー三昧

◇茄子と獅子唐のカレー、ヨーグルト鶏胸肉パプリカのカレー、二日目ジャガイモのカレー
やはりカレーには夏が合う。あっさりサラッとできるから途中でウンザリしない。照り付ける直射光に目が眩むと何とはなしに恋しくなるもの。初めてカレーを食ったのはもう思い出せないくらい過去のことだが、今となっては妙に稚拙なデザインの昭和28年製の器で味わってみよう。写真ではわかりにくいが、縁の部分は釉にパールが入っている。10歳になったときカレーが辛口に変わった記憶があるが、そのときのカレーは飯と共にこの皿に盛られていた。

器

手順は以前書いたものと同じ。欧風カレーじゃないので、玉葱は透き通る程度まで炒めれば十分。せいぜい5~8分。暑いし、時間の無駄は極力避けたい。茄子は予め一口大に切り、油で素揚げしておく。獅子唐には切れ込みを入れ、生トマトはザク切り。湯剥きは生まれてこのかたしたことはない。水を加えるまでは煮物ではなく油炒め。各段階で水分をきちんと飛ばして、水を加えたら強火で油と水をぐつぐつ攪拌させる。
最後に揚げ茄子と獅子唐を加え、ときどき掻き混ぜながら、ここでも強火でがんがん沸騰させる。灰汁が消え(灰汁も味の内だから取らない)、獅子唐に火が通ったら器に盛り付け、生クリームをトッピングして出来上がり。総計30分以内。ターメリックを多めにしたので少し黄色っぽい。煮込めば動物性蛋白は固くなるし、香りは飛ぶ。カレーは時間を掛けたからといって旨くなるわけではない。

茄子カレー

十日以上漬けっぱなしで忘れていた鶏肉を発見したので、またカレーだよ。アチャール用に大量のパプリカを買ってきたので、パプリカ・カレーにしよう。冷蔵庫にある野菜・茸類を適当に放り込んであっさりと仕上げる。今度は赤い。

作り過ぎて翌日回しになったりすると香りは飛ぶし、具材に味が染み込み馴染み過ぎたシチューのように鮮鋭感の損なわれたものになってしまう。仕方なくスパイスを足して香り立てをする必要があるので単純に面倒だし、同じ味に回復は出来ないので食べる分だけを作るのがよいだろう。ところが具材管理や分量がいい加減なものだから余ることもある。仕方がない。翌日昼に一度火入れして、また放置。夜、ナンとともに食す。中身が寂しいので人参とジャガイモを準備。学生カレーみたいだな。

ジャガイモ・カレー

ジャガイモは皮付きのまま泥を爪でこそぎ、ざっと洗い芽を穿る。そのまま半割にして油で素揚げ。きっちり揚げておかないと火が通りにくいし、型崩れして肉じゃがや芋の煮っ転がしの出来損ないになって、もはやカレーとは呼べない惨状を呈するので要注意。人参は生のままでよいだろう。準備のできた根菜をドボドボと鍋に放り込んでスパイスを増量。今回はチリを効かせて辛目に仕上げた。人参に火が通れば完成。

生ナン

ナンはインド風にベーキング・パウダーで練ってみた。アイドルタイムがないのでお手軽だが、味がケーキみたいになるなぁ。イーストを使うとパン風になるが、どちらが主流か最近外で食べていないからわからん。焼き上がりのナンはプレーンにカルピスバターを塗って食うのもおいしいが、芸がないので大蒜、乾煎りしたアーモンド、ローズマリーの葉を練りこんでみた。焼きながら食うのは忙しいが世の中そんなもんだ。あとは、外で食うときのように、一食当たりカレーを色とりどり5種類とはいわないが、せめて3種類くらいにしたいのだが、なんか上手い方法はないかな。

ナン

■片口鰯
久々に見かけたので3パック。地元産。一見血が滲んでデロンと見えるが売り方下手だな。かなりの上物。12~15cmとけっこう大きい上にしっかり鱗が残っているので、角度を変えると体躯の後半部分が光加減が変わってちょっと黄色っぽく見える。早速、帰って水洗し鱗落として水切り。アンチョビ容器に塩を敷き、並べようとしたがでかすぎて縦に入らない。しょうがないから横向き。並べながら摘み食い。手開きして頭と中骨は塩漬け容器に放り込む。身は氷水でちょちょいと腸と血を洗い、背びれを摘んで皮を剥ぎ醤油皿へ。おお、これはうまい。生姜なしで食える。鰯の旨味と脂が口の中に広がる。調子に乗って10匹食ってしまった。片口鰯もちょうど産卵期なのかな? 腸に卵を抱いている。シラスの内に食われ、大人になっても食われ、なんだか空しいな。鮨屋の生シラス軍艦もそろそろ終わりだろうが、今年はよく食ったなぁ。

■鯵とスルメイカが25円だったので6匹づつ。
20cmほどの立派な鯵は最近よく揚がり始めた地元産。ちょうど時期のせいかどれも膨らんだ卵と精嚢を抱えてちょっと可哀相。産卵すると味落ちるけど。全部刺身で、中骨は醤油と生姜に軽く漬けて揚げる。たっぷりと肥えた身は清々しい鯵の香りとさっぱりとほどよい脂乗り。鮨以外は外で食べてもあまりおいしいとは感じない。料理人には申し訳ないが、いわゆる“造り”というのは食べるのも見るのも嫌い。半身分しか身が乗ってないし(笑)。鯵は捌く前に鼻を寄せてちょっとでも臭うとダメなんだな。刺身にしても臭いだけ。生姜を使おうが葱を叩こうが誤魔化せない。塩焼きにでもしたほうがよい。

スルメはまだ小さいから塩辛用。といいつつ2杯は刺身で食っちまった。身は皮付きのまま、肝を外し墨袋を取り除いて濃い目に塩を振って一晩冷蔵庫で水抜き。翌日、肝を絞って適当な大きさに切った身を和える。酒、塩、唐辛子、柚子胡椒などを適宜好みで加え、よく攪拌して冷蔵。2、3日に一度攪拌して一週間ぐらいからが食べごろ。

■支那蕎麦
セロリの葉っぱが余っていたので西洋風にしようか、中国風にしようか迷った挙句、偽セロリ麺。麺は生中華麺。太め。60円くらいのやつ。賞味期限を一週間ほど過ぎていたものを冷蔵庫から発掘した。スープは鶏がら。豆板醤と葱を胡麻油でじっくりと炒め香りを際立たせる。茹ったスープを投入、醤油で味を整える。別鍋で麺を茹で、頃合を見計らってセロリをスープで茹でる。器に盛り付け、寂しいからゆで卵半割をトッピング。刻み葱を載せて業務用ラー油を垂らして出来上がり。まぁ、こんなもんか。外で食う売物は豆板醤は使わないし、セロリは茎を使います、念のため。

シナ蕎麦

■たまには和風

◇鰹刺し+酢の物
鰹は春と秋にしか食べれないし、さっぱりとした風味が季節感を醸し出すので、あるときには食べる。鮨屋では厚さ1cmくらいのものを酢飯に馬蹄形にこんもりと盛り上げ、生姜と小葱をトッピング、煮切醤油がかかって出てくるもの。箸では掴めないからもちろん手で食う。血合や皮岸の脂を避けた香りよい赤身をさっぱりと味わう。鮮度管理が難しい鰹だが、さすがに鮨屋だけあってマジェンタに近い赤の鮮烈さと独特の香味は真似ができない。

残念ながら家で食えるものは鮨屋ほどモノがよくないが、勝浦水揚げの引縄地物、刺身用一サク398円が0.5掛けになっていたので、いつもの背身半身を購入。ボリュームの割りに価格がこなれるので見かけたときには一応じっくり検分する。買わないことのほうが多いけど。
何も考えず、1.5cm厚ほどに切り、皿に並べる。左手親指の爪を包丁が貫通してしまい、微妙な指加減がうまく使えないので倒れた(笑)。薬味は青葱、生姜、辛味大根、山椒の葉を細かく叩いたもの。生姜の代わりに辛子、葱ではなくて茗荷もいける。江戸風に辛子味噌もいいな。山葵だろうが、大蒜だろうが、青紫蘇の葉に包もうが所詮鰹は鰹だ。特に拘りはない。醤油は自家製の煮切り(酒のアルコールを飛ばし醤油と合わせて寝かすだけだから自家製というほどのものではない)。辛味大根は京都の特産。水気の少ない20cm弱のものを皮ごと下ろす。鮮やかな辛味と苦味、極少量の山椒の葉が鰹の爽やかな風味を際立たせる。

鰹

1/4身の半分を並べてみたが、モノはけっこう当たりで生臭みもないのだが最近はさすがに量が多いと飽きる。もう30円分くらいでいいかな。背身だというに時期の割りに脂が乗っていてへこたれそうになる。正直、腹身はもう食えん。置いておくと臭いが出るので余ったら濃口醤油、味醂、酒、生姜で漬けにしてしまう。冷蔵庫で寝かし、明日の昼に濃い目の煎茶で茶漬けにでもしよう。

■酢の物なども
独活(ウド)が余っていたので在庫処分。鞘エンドウ、茗荷で酢の物。独活は皮を手で剥き5cmほどに薄切りして水に晒す。鞘エンドウはヘタと筋を取る。茗荷は縦に薄切り。沸騰した湯に塩一摘みで独活と鞘エンドウをさっと湯がく。氷水で急冷し水気を切って、茗荷と共に三倍酢に漬ける。20分ぐらいチルドで冷やすと味が馴染む。

酢の物

■鰻

年々不味くなる鰻。かつては3年ほど掛けて冬場冬眠させて育てた鰻も、今や30℃越えの湯を張ったビニールハウスで8(ノーマル)~10ヶ月(熟成)で、ちょちょいと魔法を掛けて見る見るうちに成体にして出荷するのがすっかりスタンダートとしてもてはやされている。脂は改良されたペレット餌や極度の密殖による運動不足で賄うので言わずもがなにばっちり。今年ももうすぐ“土用の丑”がやって来る。

以前、関西は蒸さずに地焼き、関東は蒸して焼きと思っていたが、これには若干語弊があるようだ。正確には、関東は蒸す(といわれているが、妙なド田舎にすら地焼きもけっこうある)、中京は蒸さない、関西(京都・大阪・兵庫)は蒸す蒸さないが混在といったところか。一方タレは、関東はさっぱりだが醤油が効いて辛め、中京は溜りの伝統か濃厚でなおかつ甘辛、関西は粘度が低く味そのものが薄いが甘め。 丼や重は似たようなものだが、飯の上に鰻が乗っているか、あくまで別に出てくるかなどという点で流儀はけっこう異なる。また、“ひつまぶし”は名古屋特有の食べ方だ。ついでにどれも名前が同じだけで、まったく別の食べ物なので比較する意味はない。生臭くなければOK。多様性を喜ぶもの。

「登亭」の長焼の蒲焼だ。おお、でかいので、値段を聞くのは止めた。「石ばし」や「神田川」「尾花」とはグレードが違うが、店頭で捌き、かつ、心置きなく入れる大衆店の存在は貴重な時代になってきた。スーパーに行けば蒲焼を売っていない日はないが、蒸しや焼きが店のものとはまったく違うし、身質も当たり外れが大き過ぎて選択がとても難しい、というか実質困難だわ。天然ものも一時に比べればずいぶん目にする機会が増えたが、価格的にはまだまだ手が出ない。
一方、資源枯渇のためEUがシラスの輸出を大幅に削減するようで、安価だった中国加工のヨーロッパ種(アンギラ・アンギラ)が激減しそうな勢い。促成養鰻や輸入品で鰻の相場は大きく下がったが、結局鰻のイメージを地に引き摺り下ろすような鰻が増えただけで、逆に真面目に手間隙掛けて養殖していた良質な鰻がすっかり駆逐されてしまったというのはよくある話。

出前注文がなくなって(=パック寿司やスーパー惣菜、宅配に流れ)、住宅地にあった蕎麦屋や中華屋や鮨屋という業態が壊滅したように、あるいは、出店規制がなくなった大規模ショッピングセンターに駅前商店街が根こそぎ蹂躙されたように、極度に二極分化が進んだ結果、一流じゃないけれど素材や作り方は手抜きじゃない、値段もそこそこで手軽でおいしく食べれる店がなくなってしまった。残念ながら新たに進出した業態はその土地に根付いたものではないから、所得層の変化や住民の年代や質が時間とともに変われば、いずれ採算が合わなくなって別の土地に逃げていくもの。残された草木一本生えない荒野に立って廃墟を眺めるのも興趣のあるものだ。

■夏鱈の昆布締め+エイヒレ唐揚げ
夏だというに鱈サクが美味そうだったので即決で入手。売れ残り0.5掛け。隣で売れ残っているエイヒレも哀れを誘ったのでついでに籠へ。こちらは0.7掛け。両方で250円なら庶民の味方といえよう。鱈は揚げてもよいがモノが良かったので昆布締めに。密閉容器に安い昆布を酒で伸ばし、サクを置き更に上から昆布でぴっちりとサンドウィッチ。軽く塩を振って冷蔵庫で一晩寝かす。水分が抜けて飴色に染まったら刺身用に切り山葵醤油で。昆布の香りと凝縮された鱈の旨味が味わえる。夏鱈のせいか脂臭くなくて、身肉の味がしっかりと伝わる。

鱈昆布締め

エイヒレも鮮度がよいので明日廻し。古くなるとアンモニア臭が漂う。端部を適当に削いで摘み食いしたら、両面に軽く塩と胡椒を振ってキッチンペーパーで包み冷蔵庫へ。あとは粉振って揚げるだけ。

エイヒレ

◇今月の鮨ネタ
蝦蛄はシーズン。大きさ、身肉の旨味ともにしっかりしてきた。春日子は瞬間。今年は一度しか食えなかったな。鰆やコチはアイナメ、ヒラマサへ順調に推移。ヒラマサの香りよくさっぱりした脂と身肉の旨味が最高。太刀魚もそろそろだろう。シラス、生鳥貝、鰹はそろそろ終わり。赤貝も産卵期で品薄。青柳、タイラギは今年はでかい。水温高いのだろうな。待ちに待ったホヤ、岩牡蠣、ホタルイカの初夏三点セットがお目見え。ホヤは韓国から持ち込まれた種苗から感染症が広がり、春先に被害拡大防止のため発生地の養殖筏を全面廃棄する騒ぎに。南三陸産は今後数年間、原因である原虫が壊滅するまで(するのか? 天然ものは獲り尽くせないだろ)絶望が確定の模様。被害が北上しないことを祈ろう。今年も品薄かな? 1個100円もしなかったものが暴騰して三倍以上になっている。岩牡蠣は三重から伊豆へ北上中。大きさ、コクともに今年は期待を抱かせる。鯵に加え、そろそろ真鰯も食欲をそそる時期だ。

2;サーバごっこ機 いまだPlamo Linux 2.0改-0.18GHz不眠不休号

スピーカーを換えたせいか、サウンドボードの性能がよくわかる。

3;スキャナ機 NT5.1 sp2 Home セレロン2.2GHz新まんせえ!号

電源入れた覚えがない。

4;Win機 NT5.0 sp4⇒NT5.1 sp2 早くも1.8GHzに降格?

ようつべ動画の保存に使っていたctがリンクからファイル名を拾ってこれない。ようつべ側の仕様変更らしいが、これを機会にctをctfiに換えてダウンローダーをIEからIrvineに変更。手間要らずですこぶる快適。最初からこうしておけばよかった。

Doom

「Doom2k」は相変わらず行き詰り中ということで、「Doom2050」に浮気中。

連装ショットガン

マップがワンパターンでそれほど難しくはない。キャラが変わってちょっと斬新。チェーン・ガンの威力がもの凄いのだが、弾があっという間になくなる。音も本物みたい。一方、レーザーは連射ができないし、RPGは威力がないなぁ。

ちょいとメカニカル

2007/06/18 作成__2007/06/19 最終更新