神無月記 -(2006/11/21-2006/12/19)

1;諸々

新暦ではもう年末。旧暦ではやっと霜月ということで、どうも感覚が狂う。一週間遅れでなんとか更新だ。今年もまた水仙が咲き始めた。と、思ったら冬の嵐。一年で最も食い物が不自由にして不適切な時期を迎えるにあたってなんという無慈悲。三日連続の大時化で「何もない」。正月明けは? と聞いたら15日くらいまでダメだねとツレナイ返事。あそ。

水仙

今月は某法令集やら某省告示と首っ引きで、非力な論理性に脳ミソが悲鳴をあげた一月であった。参照先が三つくらい入れ子になるともう辿れなくなるんだよな。これ拙いわ。確実に機能低下してる。そんなときは、杉浦日向子「四時のオヤツ」。最近読みかけの本をどこかに置いて、わからなくて困る。

DVDはクラフトヴェルクの最近のライブ、ブラックモアズ・ナイトのドイツでのライブ、フェイツ・ウォーニングのやっぱりむさくるしいライブ。悪くはない。良くできてはいるがどれも平凡。鮮烈さに欠ける。映画は『サティとスザンヌ』、子供の頃に観た『世にも怪奇な物語』あたりを賞味。ようつべを放浪するも、あるのはあるけど、ないのはないなぁ。日本のメディア利権団体がようつべにイチャモン。日本語版を作ってくれる? そうじゃないか。日本のメディアは日本語版で完結してればいーと思うよー。おめでとー。

■ここに至って心を去来する由無しごと

食い物ネタは奥が深くて楽しいが、さすがに飽きてきた。知らないことがたくさんあるのも魅力だが、知ったところでどうにもならないことも優れて諧謔的にして滋味溢れる話題のための話題たり得る。人間の本能に深く結びついていながら、極めて趣味性に富んで終わりがないあたりも共通の話題として適当なのは事実だが、食べてみないと味はわからんうえに、感じ取る味そのものも個人によって著しい差異があるだろう。まぁ、概ね、素材そのものについて書くよりは、それを料理という形で如何に食べるかということにシフトしていければよいなと考えている。学校で調理は教えてくれる(それすらしないのかな? 今は)が料理は教えてくれないものだ。今や料理に対する関心は意外に低いのだね。

水仙

代用という概念にはあまり良い意味はないのだろうが、肝心なことはラベリングである。食い物ネタの総括を兼ねて、せっかくだから好例をまとめてみた。

イクラ:サーモンドロップス 無印とNo.2と醤油味がある。安価なロシア産鱒子の安定供給で価格的な旨みがなくり最近は下火のようだが、保存や老人子供病人相手などのトラブル防止には都合が良い。おせちとかにはよく使われるよ。安価なものには白鮭以外にも鱒子が用いられることもある。一般的に北半球で鮭が卵を抱くのは秋のみ。年間を通じて見られる一般的なイクラは冷凍の塩蔵品を解凍したもの。秋の一時期だけ食せる生イクラの醤油漬け、塩漬けはおいしい。簡単なので生筋子を自ら醤油漬けにするとコスト的にも安価でよいですね。
カズノコ:カペリンの卵を成型 そこまで低質なものは見たことないが。塩漬けだから味なんかわかりゃしないってこと?
タラコ:トビッコ(トビウオの卵)+着色料 ほぐし身は疑ってかかるのが身嗜みというものだ。
キャビア:ランプキャビア 値段見て笑うのが良識人というものだ。ニシンの卵に着色する方法もあるらしい。
スズキ:ナイルパーチ スズキは近海モノがほぼ年中普通に揚がります。そんなに値段高くないけどな。アフリカ産スズキというのもナイルパーチ(なまずの一種:ちなみに今やなまずは超高級魚)のこと。西日本では養殖場から逃げ出した大陸スズキが地物に置き換わっているらしい(笑)。
えんがわ:オヒョウのえんがわ、カラスガレイのえんがわ 色が真っ白で脂が薬臭いからすぐわかる。(平目やまともなカレイの縁側は薄いピンク色~褐色を帯びる) 最近はカレイのえんがわと表示して売られているよう。もっとも普通のカレイとは趣は違う。オヒョウは体長3m越え、200kgの巨大深海魚。暴れると危険なので船に揚げる前にショットガンで射殺するらしい。北大西洋産。腹も黒いカラスガレイは北太平洋産。1mほどになる猫も食わない脂っこいカレイで今や縁側のメインストリーム。切り身や煮つけも品のない脂がナウなヤングに大人気。外食産業で扱われるのはほぼすべてこれ。共に冷凍輸入品。
カワハギ:ウマヅラハギ 味はそっくりだが若干小さいものが多い。皮を剥がれ頭を落とされているのはたいていウマヅラ。肝がないのはカワハギの肝に転用されているからだろう。
タイ:テラピア テラピアじゃぁ冴えないので最近はイズミダイとも称するらしいが、そんな魚どういうところで使うのだろう? かつて話題になったが、最近は養殖鯛が非常に安価なのでそれを使うのがほとんどと思われる。真鯛は春から初夏、冬の一時期に極めて僅かに獲れる。身肉は締り、透明で薄いピンク色。
甘ダイ:キングクリップ 関西料理の焼き物だね。白甘鯛を除き普通の鮨屋では使わないネタ。いちばん安いキアマダイですら本物は30cmほどのもので最低1000円はします。キングクリップは体長2mになるアシロ科のズロッとした開発魚。鯛とは何の関係もない。
ヒラメ:カラスガレイ、アカガレイ 目の位置を見るしかないな。肥えた2,3kgのものは素人には極めて入手が難しい。普通売っているものはソゲといわれる子供。良いヒラメは腹が真っ白。悪いヒラメは背が白くて腹が黒かったり~(笑)
メダイ:ワレフ、ギンワレフ、シルバー 本来はエボダイ(イボダイ)の一種。近海産刺身以外の漬物、干物、煮物、焼物は全て代用と考えてよいだろう。
トラフグ:ウマズラハギ 注記がなければ純粋に詐欺。夏フグとして代用することはよいんでないの? まぁ、昨今のフグは何故か(笑)身が緩い(柔らか好きの今の人には受けるのだろう)。
サザエ:ニシ貝、アカニシ貝 殻がついていなければOK。問題ないあるよ。
アワビ:ロコ貝 チリ産アワビもどき。アカニシ貝の一種。チリには元々天然アワビは棲息しない。二枚貝ではなく巻貝で種が違うが、けっこう出回っている。生は味(磯味とでもいうか)と食感が全然違うから食えばわかるよね。柔らかさが受けてそのうちジャパニーズの標準アワビになる日が来ることだろう。殻は外されて冷凍輸入されるので刻まれた煮貝になっていると色もついているから判別は難しい。
赤貝:サルボオ貝、アメリカイタヤガイ 中国、北朝鮮産の養殖モノが多いらしいが、赤が鮮明なものほど良いとされる。缶詰や安価なものには近縁のサルボオが使われる。特有の香りが薄くコクが違うが、やはり赤貝は欠かせないもの。
ベビーホタテ:イタヤガイ まるでホタテのようだが、青森産ホタテ貝の稚貝であることは極めて稀。あのちっこい貝を剥き身にしたら中国人研修生を早朝から深夜まで“研修”させても人件費だけで普通のホタテより高くなると思わないか? ほとんどは同じイタヤガイ科のアズマニシキやアメリカイタヤガイで、主に中国から輸入されたもの。
イセエビ:オーストラリア産ロブスター ロブスターは平たく言えばザリガニのこと。もともと豪華なのは見た目だけ。刺身で食ってもおいしいものではない。軽く湯がいたほうが遥かに旨みが出る。何であんなに高いのか不思議。海老に不老不死の幻想を見れるのか?
クルマエビ:オレンジ・シュリンプ、ブラック・タイガー BTは牛海老の改良養殖品。車とは科が違う。車海老の旬、水揚げが多いのは初夏から夏。活きを天麩羅にするのが最高だが市場に行かない限りほぼ入手不可能。それなりに獲れるらしいが、それなりのところに全て引き取られてしまうそう。
ズワイガニ:ベニズワイガニ ロシア産冷凍品ばっかりだな。いちばんおいしいのは雌の刺身。産地だからといって、その産地で獲れたものが並べられているわけではない。
タラバカニ:アブラタラバ 値段考えればわかるだろう? が、これは厚労省の指導が入った事例。もっとも味が落ちるタラバとおいしいアブラの差異は知らない。タラバはしばれる稚内の焼き蟹が最高だけど、それほど食べたいと思うものではない。
サーモン:改良スチールヘッド・ニジマス、ドナルドソン・ニジマス 以前いろいろ書いたからもういいだろう。鮭とは一言も書いていないからもちろん詐欺ではないし、スモークやらパック寿司やら加工品に表示義務はない。某名産鱒寿司なんぞにもけっこう使われている。餌にアスタキサンチン(astaxanthin)を混入して身肉を紅くすると消費者にいっそう喜ばれる。国産白鮭(市場名:秋鮭、時期外れの時鮭など)、ロシア産紅鮭、缶詰用の樺太鱒以外は(アトランティック・サーモンを含め)全て養殖と考えてよい。だいたいトラウトサーモンなんて舐めた名前だと思わない? Trout=鱒 Salmon=鮭なんだから“鱒鮭”だよ。と思ったら、正確には商品名らしい。一代交配の人工生物だから生物としての名前はないということらしい。フィレ(三枚おろし)、ドレス(頭と内臓を落とす)で輸入される。信州サーモンという国内産もあるようだが見たことはない。
シシャモ:カペリン、キイロマイワシ ある程度の年齢の人ならかつては本シシャモを食べているはず。北海道鵡川産が著名。獲れるのは晩秋のみ。値段は違うが雄雌共に流通する。口開けてプラスチック棒に刺さっているのはノルウェイ、アイスランド等の北大西洋産開発輸入冷凍魚。輸入されるのは卵を抱いた雌のみ。腹を捌かずに雄雌を見分けるジャパニーズに現地の漁師は驚嘆したらしい。姿形味ともいわゆる北海道産シシャモ(本シシャモ)とはまったく異なる魚。既に慣例として定着している(扱っている会社の政治力が大きいだけともいう)ので今はカペリンをシシャモという。なるほど。
タラ:ホキ、メルルーサ ホキはアルゼンチン名で実態はマゼランアイナメのこと。ファストフード、外食産業の白身魚フライなどでよく使われていたねぇ。最近の様子は知らないが。鱈とは若干食感が違うがおいしい。本鱈の肝、白子は開いた口が塞がらぬほどおいしいが、さすがに肝とかは流通しないのだろう。
ワカサギ:チカ 最近稀に本名で出ているな。色が若干ピンク味を帯びる。わかさぎよりも大きくなるが、わかさぎの代用品として使われるため10cmほどで捕獲される。
黒マグロ、インドマグロ:蓄養 沖縄、奄美、宇和島、およびスペイン、イタリア、クロアチアの地中海産、オーストラリア、ニュージーランド産。商社と冷蔵倉庫、水産会社による素晴らしき芸術品だったはずが、国内流通量の50~70%を占め、値ごろ感から回転寿司や大規模小売店にまで出現する始末。痩せた小マグロの群れを網ごと引っ張ってきて餌漬けにしたもの。餌の改善が進んだせいか値段以外で見分けがつきにくくなってきた。身肉の全肉トロ化も進んでいるようだ。ニッポン万歳。刺身で食べるのは黒(本)、インド(南)、メバチ(鉢)、キハダ。近海以外の黒マグロ、インドは全てが冷凍品。稀にチルドがあるが食べれる場所は限られる。生が揚がる黒の幼魚、メジマグロは狙い目。特に表記がなければメバチだろう。大規模小売店舗では水っぽいキハダもマグロと称することがあるがかなり酷い。キハダ、ビンチョウは缶詰用。俗にいうシーチキンは(鮪なんて使っていないが)マヨネーズがよく似合う。2006年11月末に、餌による海洋汚染と資源保護を理由に黒マグロ漁獲枠が輸出国である“EUの反対を押し切って”2割削減された(大笑)。
ネギトロ:マグロくず肉+トロミユ+葱 トロミユは某社の商品名。食用油脂の一種。赤身に塗って炙るだけで炙りトロ化する「炙りソース」もあるよ。誰も宣伝はしないが超馬鹿売れ大ヒット革命的商品である庶民の味方。法的には“こんな値段でトロが食えるわけないだろ! という暗黙の了解が商行為の前提にある”という概念が適用されるため、誰もが安心しておいしいネギトロや炙りトロを食べることができるようになりましたとさ。めでたしめでたし。
穴子:アンギーラ(ペルー産海蛇:別名マルアナゴ) マルアナゴとして流通する(普通の穴子はマアナゴ)アンギーラは明らかに食感が違う。詰めを塗りたくって誤魔化しても二口は食えないからすぐわかる。東シナ海、黄海、大陸縁辺日本海産マアナゴは捌いて開き、または煮焼き加工まで施されて輸出されるので原産地表示義務はない模様。輸入ものは今のところ開き方が稚拙なので見ればわかる。マアナゴ自体は国内でもかなり獲れるがコスト高なので儲けたいところは輸入品を使う。握りは煮穴子を目の前で炙り、詰めを塗るのが関東では定番。蕩ける柔らかさと香ばしさ、江戸前の程よい酸味の酢飯と詰めの甘さのバランスが命。てんぷらは小物がおいしいが、いつも買っているのは生の開き40~50cmで一匹250円~300円。湯霜すると縮むけど、この値段じゃ末端生産者は青息吐息だろうな。穴子は時期、あるいは同じ店でも職人ごとに仕込にけっこう個性が出るので味わいが愉しめる魚である。幼体はウナギと同様レプトケファルスで“のれそれ”として4,5月頃だけ鮨で食える。
沖ブリ:シルバー、ヒラス JAS法の品質表示基準違反の一例。名前がどうあれ如何にも胡散臭い名前。どこで売っているんだ? 聞いたことないぞ。(後注:月末、某デパ地下で粕漬けになって堂々と売られているものを発見)
カンパチ:スギ 琉球スギ、スギ (晩夏から秋冬以外カンパチなんて獲れないって)。薄いピンク色と血合いの鮮やかさ、固い身肉が命。コクがあるので脂のりが薄くてもおいしい。関東では30cm前後の汐っ子と呼ばれる秋口に入荷するもの以外、個人が小売店舗で手に入れることができるものは全て養殖だろう。低迷するハマチ養殖の多様化を図るためカンパチを導入する例が多いらしいが、身肉の色が白く緩い上、味が平板。養殖ハマチと養殖かんぱちと養殖ヒラマサの区別がつかん。もっとも最近はかんぱちに化けるスギを南の方で養殖しているらしいな(爆笑)。
ハマチ:スギ 琉球スギ、スギは一見サメに見える南洋魚。ハマチは関西では刺身というと必ず付いてくるが、関東でいうイナダ、ワラサにあたる関西名のこと。獲れるのは初夏から初秋頃が多い。ブリになるには5年ほどかかる。養殖では場所にもよるが1年半から2年で出荷。西では脂のりが絶対視されるが、東では刺身用は脂が多いのは不可で身の締りがよいものが好まれ、照焼用は脂が乗ったものが流通する。ちなみに東では年中出回る瀬戸内方面製養殖ブリ類をハマチと称する。養殖も密殖し過ぎで自己壊滅したり買い叩かれて利益でないから伸び悩んでいるようだ。
イカ イカは種類が多い上、和名と市場名が輻輳し同定が困難。古来から使われるモンゴウ、スルメ、ヤリに加え、かつてはアカイカが多く使われたと聞くが今はその代替開発品であるアメリカオオアカイカ(体長1m越えで600円くらい)が使われている。身が厚く皮も剥きやすく取り扱いが楽とか。隣を泳いでいたりしたらかなり怖そう。
銀ダラ:セーブルフィッシュ カサゴ目の北米産深海魚(タラではない)。JAMARCの開発魚。タラは身に脂のらないし。生以外に味噌漬けなどの加工品によく使われている。
銀ムツ:メロ、コメロ これは極めて有名。実態は2mを越えるマゼランアイナメ、ライギョダマシ。スズキ目の南氷洋、南米産深海魚(ムツではない)。ムツ、黒ムツはそれなりに釣れるが、市場を通すと高価で小売店ではあまり見かけない。
銀サケ 国内ではほとんど水揚げなし。春から夏に三陸産の養殖ものが僅かに出回る。それ以外はすべて開発輸入のチリ産、カナダ産、アメリカ産など。ジャパニーズ好みの生臭くて脂っこい味に調整されている。かなり有名どころの味噌漬けや塩蔵品としてもかなり出回っている。頭に“銀”をつけときゃ大概は美味しそうに思えるあるよ。
タマゴ 輸入卵白(液卵、凍結液卵、粉卵)+(黄色の)着色料。だって卵黄の方が高いもの。また、加工卵には原産地表示義務がないのでいろいろ工夫の余地があるらしい。目に触れる殻付生鮮品は表示義務ができてからはすべて国産品になった(笑:結果的に安売りしない)。まともなものには差別化のため採卵日や農場名が必ず書かれているはず。健康卵というのは産んだ鶏の健康とは何ら関わりがないわけで実態を知ると笑えるが敢えて書かない。
ワサビ ホースラディッシュ+着色料+香料。家庭用チューブ入りの大半は大根山葵。本山葵は一年中収穫可。普通の鮨屋では超高級店を除き、業務用練りワサを使うのが普通。それ以下の飲食店は不詳。本ワサを辛く下ろすのはけっこうたいへん。伊豆の真妻が香り味とも最高級といわれるが一本700円くらいだから高いものではない。もっとも、山葵田だからといってその田で採れた山葵が置いてあるわけではない(笑)。
国産牛:老廃病乳牛 あるいは役立たずの老雄牛に女性ホルモンを大量投与し肉質を柔らかくして屠殺したもの。当たり前だが肉牛は和牛として厳密なランク付けがなされて出荷される。

ということで、昨今のテクノロジーの進化は想像を絶する。安価な魚から高級魚を生む「代理母技術」などというものまであって面白そうだが正直ついていけない。サプリや正義牛なんか不当に貶められて可哀想に思えるくらいだ(笑)。それを側面から支援する体制や法的基盤作りも、キャッシュフローを追いかけてみれば合目的性に則ったセンスが感じられるものだ。

ちなみに日本で最大の水揚げを誇る港は成田空港である。おかげでMADE IN CHINAはうっかりするとMade in Chibaに化けることもあるらしい。実際、多くのアジ・サバ干物や缶詰なんぞアイスランドあたりから輸入して、成田に近い過疎化して施設が遊んでいる銚子の水産加工場で中国人研修生が作るものと相場は決まっておる。もちろん表示は加工地でOK。小田原で天日干しされたアジが一枚300円以下で売られていないように、二枚パックで178円の干物が何なのかは自ずと理解できるのが大人の良識というものだ。

水仙

と、いろいろ書いてはいるが、国産品信仰はまったくないし、健康に良いとか食の安全云々に興味があるわけではないことに留意されたい。酢がなければ鼻が曲がりそうな純度99.99%の工業用酢酸を薄めて使ったり(まずい)、医療用のエチルアルコールを飲料に添加(おいしくはない)したこともあるくらいだ。天然塩や岩塩もあるが、合成塩だって使う。某県産の大蒜は中国産の10倍だが肥料に何を使っていたか一応理解しているつもりだ(笑)し、夏場の残留塩素濃度が高くなった水道水だって使う(本当は昏倒しない程度の塩素の臭いには不思議な郷愁を感ずる)。自然のものが安全で、人工のものが危険という短絡志向は微笑ましい。科学は人間が考えたのだから人間に理解できるものだ。人の造りしものこそ、人はきちんと理解すべきだろう。

したがって、判断と選択基準はただ一つ。おいしいか否かだけ。おいしいものにはそれなりの対価を払い、今と同じものが将来も食べれると良いと思う。もちろん沿岸漁業の衰退は憂うべきことだから、対価の行く末を知っておきたいという意識はある。ついでに、取敢えず人と同じものを食べたいという飽くなき希求の根源的心理、産官学のタッグマッチと1円でも多く儲けたいという先人の知恵と貪欲なまでの意欲、創出された壮大なからくりを傍観しつつ学ぶことは余生の楽しみの一つではある。

■冬? ――のようだ。

冬だというのに相変わらず鰤のない鮨屋だな(11月の話。12月に入ってからは概ねあるようだ)。たまぁに、三時ごろ荷物が着くと「氷見の寒鰤、今入ったけどいきます?」なんて声を掛けてくれ、脂の乗った日本海ものを食せる。今年は脂乗りは程々だが肉に旨味がある太平洋ものが少ないようだ。不漁か? 肝付のカワハギやらソイはきちんと入っているので仕入れをサボっているわけではないのだろう。と、思ったらヒラマサが。

◇ヒラマサ+穴子
? 何故かおいしい。身肉は白っぽいが身の固さ、旨みともなかなか良い。今頃何故ヒラマサが獲れるのか。
「いやぁ、最近の地球はわかんないっすね。でもけっこういいでしょ? ぴちぴちで立派なんですよ」といって見せてもらったが艶といい締り具合といい初夏のものに劣らない。帰りに眺めた超市場ではサワラやイナダが売っておるし、穴子も美味かった。塩釜水揚げの松島湾ものは冬穴子も評価が高い。穴子は捌けないから開いたものを買うが、煮穴子にする場合は値段には目をつぶりいちばん大きなものから買うのがよいようだ。旬の夏に比べ冬は脂のりが今一だが、大きいほうが柔らかく煮上がる。最近ようやく煮穴子のコツがわかってきて、失敗無くおいしく煮上げられるようになってきた。

どうでもよい店ばかりが残って繁盛していくのが時代の流れなのか。馴染みの店がまた一つ減ることになった。場所が今一つのせいもあろうが、昼から飲めて気に入っていたのになぁ。それなりの仕入れ、それなりの仕込み、それなりの心意気、店に入るとぷーんと匂う酢の香りが程よいバランスでマッチングした静かな店だったのに至極残念である。甘くないガリと煮切りのヤマサ系醤油とササニシキ古米(新米の時期に敢えて新米は選ばないというぐらいの意味)酢飯の酢加減、温度もそれなりだった。飲み物に合わせて酢飯の大きさを変えてくれるところもよいし、一口で口に入りかつ程よいバラけ加減もなかなか。無いものねだりはしないが、表には出さない隠しメニューもいろいろ楽しめた。

そういえば、6番線デパート口を愛用していた秋葉原デパートも今年いっぱいで閉店だとか。数年前に体力にものを言わせた某鉄道コンツェルンに買収されたとは聞いていたが、お決まりの再開発でピカピカ・キレイキレイのどこにでもある身内チェーン店満載の商業ビルヂングになるのだろう。“富めるものはますます富む”ことが“富めないマジョリティ”の選択であるというところが逆説的なまでの香気を感じさせてくれる。世間ではこれをして“感動”というのだろう。あっぱれあっぱれ。

一応、3層ぐらいのはずだが、EV(エレベーターのこと)もESC(エスカレーターのこと)もないという非常にけったいな造りのデパートで、階高から類推するには5階が鉄道ホームになっている。正確には5層分の高さがある土木構造物の下部を囲って建築物として利用していたという形態になるのだろうが、似て非なるものである土木と建築の隙間ない融合っぷりが今ではできない胡乱と混沌を極めた真美に至る完成度を示した好例である。

昭和の匂いがぷんぷんする崩れ落ちそうな外装と今ではできない左官仕事の内装が郷愁を誘う。店先にいきなり改札があったり、階段が予期せぬ場所にあるという(うぉお、直通してるのか? いいのかこれで?)迷路さながらの頽廃的な造作が酷く気に入っていた。2,3階の飲食店でビールに牡蠣フライや中華をよく食べたものだ。しょっちゅう改装を繰り返していたが、アニオタ本屋に雑多でジャンクな飲食、靴屋だの下着屋だの100円ショップに輸入食品、1Fの実演販売など無茶苦茶な店の取り合わせがいかにも混沌としてジャンクなかつての秋葉原に相応しかった。

もちろん今は街全体がすっかり画一化され、歩いている人間まで同じ顔をしている。ジャンクパーツが道端に溢れ、中国人海賊ソフト売りが徘徊し、美人揃いのオウムのおねーちゃんが白装束で歌い踊っていたころが懐かしい。さういえばビルの永年日陰でひっそりと息づいていた⑤はまだ生きているのだろうか? 臨終の汀を眺めついでに分厚いとんかつを食べに行こうか。

◇アンチョビ
9月に塩漬けした背黒鰯を解体。親指で頭をひねり腸を裂き、中骨を手開きで剥がす。背びれをとると適度に皮も剥げる。キッチンペーパーで水切りし、ひたひたのオリーブオイル、月桂樹の葉、黒胡椒の実、スライスした大蒜に漬け込む。エキスが出て濁った飽和食塩水はナンプラーそのものなので漉して別瓶に保存。塩は次の漬け込みに使える。
油漬け前を試し食い。鰯の旨みは売り物とは比較にならないコクと豊穣さ。一週間後を期待させる出来だ。10月漬けの第二段は1月にできるが、11月以降サボっていたので次回用の背黒鰯を探しているのだが、街はクリスマスモードのせいかまったく見かけず難渋しておるところ。思いっきり場違いな居心地の悪さにすごすごと引き返す。

アンチョビ

◇鱈
鱈は水っぽくて刺身で食ってもあまり旨くない魚だが、昆布で締めると一変する。薄いピンク色の透明で締まった身肉と濃厚な昆布の風味であっさり味の白身が引立つ。これこそ和食の真髄だ。
若干褐色を帯びた鱈肝はアン肝に劣らぬコクと旨み。上質なアン肝が入手しにくくなるなかでアン肝以上の味わいだが、いかんせん腸付の鱈を買うこと自体が難しい。超市場にはなくとも市場に行けば売っているだろうが、早起きは苦手だ。寝ないで行くか。
鱈白子は鍋需要があるからパック入りを目にするが、鮮度が命。型崩れ防止用の亜硝酸塩が臭いそうだ。ポン酢、紅葉オロシ、わけぎで濃厚な甘みを味わう。

◇村上の塩引鮭
塩鮭といえばやはり村上。三面川で獲れた(のかどうかまでは知らんが見た目は白鮭)雄の腸に塩を詰め、日本海の寒風で一週間ほど陰干ししたもの。締まった身と身肉のコクと塩が絶妙なバランスで、皮がまた極めておいしい逸品である。

◇紅鮭はらこ醤油漬け
今年の筋子ももう終わり。イクラほどではないが成熟卵は高価なので紅鮭未成熟卵をばらして酒醤油味醂に一晩漬け込むだけ。白醤油があれば色が美しく仕上がるが、高いし、どうせ赤く染色されているのだから気にしても仕方あるまい。小粒ながらも脂臭くない濃厚な風味。ばらすときにあまりお湯を使わない方が良いように思う。

◇金目鯛
刺身や漬けを握ってもらってもおいしいが、今回は煮付け。大皿に40cmほどの立派なやつが丸ごと一匹。おととと……と思ったが顔には出さず。値段は払ってないから知らない(方が幸せだな、きっと)。鮮やかな皮の赤と上品な脂のりの柔らかい白身が絶品である。銚子の名産でもあるね。もうちょい北で獲れるキンキとともに煮魚としての品格と旨みを兼ね備えた正統派。

◇濃厚ソースは多糖類の夢を見たのか
前々から疑問に思っていたが、やはり実態は砂糖ジュース(重量比25~35%)であったか。一般的に含有量の多いものから表示するのが妥当なのだが、業界の申し合わせで野菜・果実がトップになるような品質表示がなされていたそうだ。17年の農林水産省告示をもって亀甲満あたりから表示を改善しているそうだが、野菜・果実といっても実態は濃縮還元や野菜ジュースの絞り滓。多くのソースメーカーが野菜ジュース類を販売していることからも頷ける。

乾蕎麦などは特に二八とか十割の表示がない限り、小麦の含有量が多く実際は蕎麦風味小麦麺に他ならない。小麦の表示がトップにある蕎麦の蕎麦粉含有量は5%から40%(平均値は30%を切るくらい)に過ぎない。

近在の美味しかったパン屋のパンがこのところ軟質化の一途を辿り、香ばしさと旨味、硬質な食感が薄れてきて大変残念無念。はるばる某百貨店地下まで遠征しないと食えるパンがなくなってくる有様は如何ともしようがないのでせうか。近在で普通に入手できる大手メーカー製は既に我慢の限度を越えている。ふにゃふにゃな食感、ねちねちするしつこさ、明らかに糖類が混入されている甘ったるさ。菓子パン類の雑味、すなわち調味料、保存料、マーガリン、ショートニングなどの植物油脂の類も耐え難い。滅多に買わなくなったが、腹が減っていても最後まで食い通せない。三日くらい連続で食べると慣れるが調子が悪くなるな。人間の味覚というものは思ったより感度が良くてなかなか興味深いものだ。

◇えぼ鯛(イボダイ)
神奈川産エボダイを発見。即購入。小ぶりで面倒だが全部刺身にしてポン酢で。アラは生姜をちょいと利かせて潮汁に。透明で締まった身肉と上品な白身。昆布締めにしたほうが良かったか。ちなみに“えぼ鯛の干物”にはイボダイは使わないのが普通(笑)。加工品だからOKあるよ。

◇偽千枚漬け
ついふらふらと近在の八百屋で聖護院大根を手に取っていた。重い。取敢えずは定番の偽千枚漬け(千枚漬けは聖護院蕪:かぶら)に。薄くスライスした大根を重石をかけて塩漬け半日弱。スライサーがないので不揃いじゃが仕方がない。塩を洗い水切りして、昆布、赤唐辛子スライス、柚子少々に米酢、味醂で漬け込む。一日で良い味になります。

偽千枚漬け

◇かわはぎ
ようやく一匹丸ごとを発見。肝の大きさはわからないが398円だったので買ってみた。皮剥き、頭から中骨に包丁を入れて二つに割ると頭側に肝がくっついて取れる。頭から肝を慎重に取り出す。まぁまぁの大きさ。胆嚢を除けて笊で塩をして水切り。沸騰した湯で5秒湯がいて氷水で締める。そして叩く。包丁の刃でひたすら叩き重ね、酒と少量の味醂で伸ばす。身は皮を下に薄皮を引くように2~3mmほどの薄造りにして、肝醤油で。感覚的には肝に山葵と醤油を垂らす感じ。紅葉おろし+葱+ポン酢でもよいか。骨格はかなりごつい魚だが、けっこう肉がついている頭は口を落とし、縦に割り二度揚げすればこれまた香ばしい。尻尾もぱりぱり。

◇ヒゲダラの卵巣
正式名はヨロイイタチウオ。市場名はヒゲダラ。真鱈のハラコのようで多少グロいが煮付けに。昆布出汁をとって薄口醤油と酒で軽く煮る。小粒だがしっとりとした味わい。ねっちりむっちり、パサパサしない食感が面白い。あまり見かけないが極めて安い(三匹分で300円)のでまた買ってこよう。

2;サーバごっこ機 いまだPlamo Linux 2.0改-0.18GHz不眠不休号

滅私奉公。

3;スキャナ機 NT5.1 sp2 Home セレロン2.2GHz新まんせえ!号

期限が切れたノートンが買え買え煩いのでヌッ殺したいのだがどうすりゃいいんだ?

4;Win機 NT5.0 sp4⇒NT5.1 sp2 早くも1.8GHzに降格?

何もせず。

Doom

ぐっちゃぐっちゃで何がなんだかさっぱりわからんプログラム類とデータを少し整理。


2006/12/27 作成__2007/03/02 最終更新