文月記 -(2006/7/25-2006/8/23)

1;諸々

夏は、夏だから、もちろん何もネタもなければ話題もないし、興味もないし、関わりもない。今年もひたすら冷暗所に引き篭もりエンドレスで蟄居。もっとも、毎年のように一ヶ月以上の期間を無駄に過ごすのは長い目で見ればかなりの損失だから、そろそろ残りも短くなってきたことだし考えねばいかんな。真夏で20℃というとやっぱり樺太あたりかな。

稀に食うものがなくなって、買い物に出たりもするが、ぱっとしないので手ぶらで帰ってくることが多いこの頃。う~んと唸っておしまい。否、正確にいうと、質的には満足なものも多々あるが、そういうものにはしっかりとした値段がついているものだ。はは。

■ここに至って心を去来する由無しごと

志水辰夫『道草ばかりしてきた』、若竹七海『クール・キャンディー』『遺品』を読了。敬愛するシミタツ先生ですが、公式ホームページもあって委託だけれど歳の割には頑張るな。えぇ~~!?、『裂けて海峡』のあの膝を50回くらい叩きたくなるラスト変えたんだって? なんと。『クール・キャンディー』は毎度お馴染み、あぁあぁ~という頭の片隅で膨れていく予感が最後の一行で的中する中篇。清々しい夏の宵に最適。『遺品』はホラーだけど意外に読めた。場面展開に緊張感があって書き方を敢えて変えているように思える。

故人となって数年か、そろそろ入手が難しくなってきた光瀬龍の未読SFを片っ端から入手、適当に拾い読みしながら、取敢えず、つん読。中高大と学生時代の伴だったやはり故人の辻邦生の未読作も見つけ次第入手。版画付ショート・ショート『花のレクイエム』を再読。今の人が読む本ではないのだろうが、本当に巧い。

GENESISの『Gabriel era』をDVDで。ゲイブリエル時代のジェネシスはピーター・ゲイブリエルの意向で公式動画映像が皆無なのだが、これは貴重なTV映像ないしはライブ映像を細切れで収録した二枚組DVD。意図的とも思える冴えないDVDの作りや編集には極めて不満だが、当時のジェネシスのパフォーマンスには正に圧倒された。これは凄いとしか言いようがない。これを封印するのは歴史的損失だ! といっても良いだろう。

映画のDVDは今のところほとんど見ていない。『Heaven』のケイト・ブランシェットはちょっと儚げな美人でスタイルいいけどでかいなぁ。足の長さにビックリ。トスカーナといえばVinoだな。サンジョベーゼの明るい力強さと華やかで濃厚な芳香には憧れる。『高校教師』は70年代前半の仏伊もの。髭面の崩れたアラン・ドロンが珍しい。舞台は冬のリミニ。ちなみにバブルの頃日本でやっていた? 同名TVドラマの元ネタ。暗いわ。BGMはアラビック・エスパニョル、メディナ・アサアラの『Árabe』。乾燥した熱風と疾走する浪花節。濃青色の海と灼熱の光。

Why don't you touch me?

夏は外に出ないので写真がないのだねぇ。撮るものもないしな。ということで少し毛色を変えてみました。今月の表紙は手抜きだが、それなりに手間が掛かっていることもあるけれど、あくまでも趣味のお絵かきなので、追求しないで下され。下記のお仕事用枯木灘号でしこしこ描いていますが特にストレスは感じない。アプリケーションはPhotoshop6、ワコムの年代物の小さなB5シリアル・タブレットで描いています。

絵1 下絵を描く。350dpi、3000x2000pixelくらい。塗り下だからあまり描き込んでも仕方がない。レイヤは下から背景(白)、下絵、髪背景、肌、口、髪、一番上がLight(ハイライト用)。
絵2 光の方向を大まかに決めて(今回は右上から左下)、エアブラシを30%程度の強さで、大雑把に、大まかに透明水彩風に塗る。肌レイヤの白いところは背景抜けしてもかまわない。
絵3 明るい部分から暗い部分へ、エアブラシを細くして細部を塗る。はみ出ても気にしない。
絵4 口レイヤに移動してエアブラシで唇を塗る。唇の陰も歯も同じレイヤ。色味は後で変えられるので気にしない。
絵5 髪の背景を陰影を考えながら大雑把に塗る。髪が流れる方向へエアブラシで。細部は髪レイヤで書き込むのであまり髪の量が少ない部分は塗らない。

蕎麦屋はやっぱり返しが薄くなっていた。塩分控え目老人仕様。蕎麦は自分で打ってもおいしくないから、まともな店が近場にないと困るのだが。

■日陰が恋しい夏季の過ごしかた

◇わかし
鮨屋ではイナダからワラサに移り変わる頃だが、丸々太った淡緑色のわかしを入手。30cmもの一匹150円。惚れ惚れするぐらい美しい色と流線型の姿。身は刺身、頭と中骨はアラ煮がいいだろう。わかしぐらいだとわざわざ出刃を持ち出さなくともきれいに頭が割れる。頭を落としたら喉にカタクチイワシが原型のまま呑み込まれていた。三枚におろして皮を引く。薄く爽やかな脂のりと身の引き締まった生硬い甘味が真夏の味わい。割った頭と中骨は熱湯を掛けて氷水に取り血や汚れを丁寧に除く。醤油、酒、生姜で軽く煮立てて灰汁を取り、冷蔵庫で一晩放置。翌晩、山椒の実を加え弱火で落し蓋、軽く煮込めば完璧。

絵6 細くしたエアブラシで目の陰、黒目を塗る。エアブラシをぼかしなし1ピクセル、3ピクセルあたりで睫毛、眉毛を入れる。
絵7 顔全体を見て調子を整えながら髪レイヤで髪の毛を描き込む。根元から先端に向け、細いエアブラシ、ぼかしなし最細エアブラシで一本一本丁寧に描き込む。唇を若干明るめにした。
絵8 肌レイヤに戻って、黒くなった髪の毛に合わせ全体の濃度を調整、暗くなるべきところを塗り込む。
絵9 眉毛背景や目の周りの肌色を濃い目に整え、最上層Lightレイヤで眼球にハイライトを入れる。
絵10 全体を見て、はみ出した肌色を消しゴムで消し、髪の調子を整えて、人間は一旦できあがり。

◇新子
まぁ、夏の定番か。今年もやって来ました。7月末あたりだと小さいが値段もべらぼうだったものが、盆明けには落ち着くものだ。うっかりするとコハダになっちまうので微妙な端境期。ふわっとした柔らかさと噛まなくとも蕩けていくような、一口でなくなってしまう儚さ。生きていても興味を惹かれることが少しづつ確実に減っていくなかで、一人場末で冷酒を杯にして新子を食うというのはもう少し続けてみたい。

◇かんぱち
硬質な黄身を薄く縁取る濃紅の脂が美しい、今年初かんぱち。照り返しはきついが、吹き抜ける風にはそこはかとなく秋を感ずる頃になるとようやくかんぱちが食える。非常に身が硬くこりこりするぐらいの歯ざわりが、さっぱりした旨味と相まって今年も夏が終わる。

◇松茸御飯
中国の雲南山奥高地産松茸が旬。傘の開いていないもの。貰い物。思いの他、匂いが良い。エリンギなど他の茸に桂皮酸メチルで匂いをつけた偽松茸なども出回っているらしい(刻まれたらわからんものね)から、香料で匂いは増強しているのかもしれんな。汚れを濡れティッシュで軽く丁寧に取り、石突は包丁でこそぐ。繊維方向にスライスして、昆布+醤油+酒適宜で炊飯。焚き上がりの芳香を愉しむ。

◇煮蛤
穴子のツメ(煮詰め=タレ)がずいぶん溜まったので煮蛤に塗ろうと思い立つ。ハマグリは買えないし、朝鮮ハマグリも買えないので、支那ハマグリで我慢するわけだが、いつの日か心置きなくハマグリを使ってみたいものだ。4、5cmほどの殻が膨らんで厚いものが良いようだ。大抵は砂抜きしてあるので、隙間に薄いステンレスナイフを突っ込んで二箇所の柱をこそぐ。そのまま捻ればあっさり蓋が開く。煮立てたツメに剥き身を投入。時間は大きさや産地で異なるようだが、まぁ、15秒から30秒くらい。表面の色が変わって膨らんだところでザルに上げ、密閉容器のコラーゲンが冷えて固まっているツメに放り込む。そのまま冷蔵庫で一晩放置。翌日、室温に戻し、山椒の葉を添えておもむろに食す。

たまには浅利の佃煮でも作ってみようと思うのだが、どうも売っている浅利は腰が引ける。最近のものは知らないが、かつて、温暖な内湾である自然圃場で年がら年中採取していた観点で見れば、産卵期を控え大きく肥える秋、行きはヨイヨイ帰りは寒い10月中~下旬ぐらいがいちばんおいしい。何年ものかしらないが、沖側で掘るものは最大で6、7cmにはなっただろう。11月になると砂に深く潜ってしまい採取が大変だわ足が冷たいわ寒いわであまり採れなくなる。ちなみに旬とされる春にも産卵して、いちばんおいしい時期などと喧伝されることが多いが、実は小さな貝が多く、秋ほど旨味がなくて美味くない。今、スーパーで売っているような若いものは“まだ子供だから……”と採らないで捨ててくる貝だった。あの大きさじゃぁ、佃煮にはならんわな。

絵11 背景用の範囲選択。Ctrlキーを押しながら肌、口、髪、Lightレイヤをクリックして、各レイヤの透明部分を選択する。それを反転すると上記レイヤの色が塗られた部分が選択されたことになる。通常モードをマスクモードに切り替えると赤い部分に何らかの色が塗られていることになる。
絵12 頬の突部や服など何も塗られていない部分にはマスクが掛かっていないのでペンを100%の強度にして色が掛かって欲しくない部分にマスクを広げる。塗りすぎた部分は丁寧に消しゴムで消す。
絵13 通常モードに戻すと人間以外の部分が選択されているはず。後のため選択範囲として保存しておく。背景レイヤのすぐ上にBackレイヤを作り適当にバックを塗る。
絵14 背景とBackの間にもう一つレイヤを作り、青で塗りつぶしてみた。
絵15 髪の毛や肌との境界などはマスクが掛かりすぎて白く抜けていたりするので、選択範囲を解除して、人物が背景に溶け込むように背景色(この場合は青)で塗りつぶす。Lightレイヤの直下に陰レイヤを乗算レイヤとして作る。陰レイヤでエアブラシ15%でグレーを立体感が出るように陰になる部分に慎重に塗っていく。

◇春日子(カスゴ)
鯛の幼魚。最近では血鯛の幼魚を指すようだがよくは知らない。皮付きを軽く酢締め。漬かり過ぎない爽やかな淡い酢と皮の香味がしっとりとした白身を引き立てる。半身で7cmほどで一貫とはまたなんとも嬉しい。

◇鰆炙り鮨
そろそろ揚がり始めたとのこと。名前通り春が旬ですが、脂乗りは秋かな。皮付き炙りで香ばしさと脂の旨味、蕩けそうな身の冷たいさっぱり感を同時に味わえるという絶品。きちんと手の入った職人技だ。カスゴといい鰆といい、若い板さんだけど感心だ。これがあるから止めらんない。

◇ハタ+アイナメ
ハタはあまり見かけない……と思っていたら高級魚なのだね。まったりとしていながら歯応えがある白身と脂の赤味のバランスが独特。皮付きを炙っても良い。アイナメは地物。湾内ものが最高。そこで釣れるわね。見目は上品な白身だがねっとりとした旨味がある。

◇鰯
珍しく地元産真鰯が揚がったので背の黒々とぬめったものを5匹購入。一匹50円也と安くはない。買ったのが夕方だったので全部昆布で締めた。20cm強の大ぶりなものだったので包丁で頭を落とし三枚おろし。腹骨は包丁を寝かせてこそぐが酢で締めるから適当で可。皮は引かずに水気を拭き取って軽く塩を振り、その間にタッパに昆布を敷き酢で伸ばす。昆布が伸びたら皮を下に丁寧に鰯を並べ、昆布でサンドイッチ。ヒタヒタになるように酢を注ぐ。冷蔵庫で一晩。皮ごとスライスして盛り付け、冷やしておいた新たな酢を軽く注ぐ。脂と酢、昆布の風味がバランスよく口に広がる。

絵16 最上層Lightレイヤの直下に光色レイヤを乗算レイヤとして作る。光色レイヤを薄いオレンジで塗りつぶし。
絵17 暗くなるべき部分は暗くなるよう、細部の陰を描き込む。光色レイヤで頬や額、胸など明るくなる部分を、3~5%の消しゴムで拭う。肌に更に立体感が出るはず。更に最上層Lightレイヤで、50%くらいの強め1ピクセルぼかしなしエアブラシを用いて髪にハイライトを入れる。
絵18 服、指など細部に手を入れて、全体の調子を整える。
絵19 肌色を整えるため光色レイヤを若干赤に寄せ、トーンコントロールでコントラストを上げる。陰レイヤの陰のムラ、形状をエアブラシ、消しゴムで微調整する。
絵20 下絵レイヤの邪魔な下描線を消しゴムで消す。ようやく出来上がり。ここまで構想は別で、下絵からだいたい2時間半くらい。

◇パルミジャーノ・レジャーノとズッキーニのリングイネ
せこせこと削って使っていたパルミジャーノ・レジャーノもブロック買いすれば心置きなく使える。ズッキーニと合わせてリングイネにしてみた。適当にスライスしたパルミジャーノ・レジャーノを眺め、冷やしたキュベ・ルイ・ラトュール・ブランをグラスに注ぐ。一かけら摘んだパルミジャーノにExvオリーブオイルを垂らし舌上に放置。キュベ・ラトゥールの芳香を愉しみながら下辺が融け、味蕾を刺激する塩味を味わう。おもむろに、刻んだ大蒜、青唐をオリーブオイルで軽く炒め、適当に切ったズッキーニを塩、黒胡椒を絡め強火でさっと炒める。完熟オリーブもあるがもったいないから缶を眺めて元の場所にしまう。時間を合わせて茹でていた若干固めデュラム小麦西洋粗挽き楕円成型麺を投入、すかさず適当にスライスしたパルミジャーノ・レジャーノをどんぶらどんぶら心置きなく入れる。混ぜる。溶ける。刻みパセリとExvオリーブオイルで匂い付け。食う。濃厚さと苦味、若さとしゃっきりしながらねちっこいアンビバレンツなせめぎ合い。豊穣。

◇紫貽貝入の冷製フェデリーニ
日本でしか食えない冷製。具は野菜のみか、冷やしておいしい貝がベストだろう。ごてごて野菜を入れるのは嫌いなので吟味が必要だ。トマトベースなので青唐辛子、パセリの茎、 ふぬぬ……あと、緑アスパラと黄色のパプリカに……といいたいところだが高いから却下。要はコストを吟味しているに過ぎない。グラスにボンベイ・サファイアを半分注ぐ。氷。薄めるものがあったためしがない。にんにく、赤唐をオリーブオイルで炒め、匂いが立ち上がったらスライスした青唐を焦がさないように火を通す。トマトソース、塩、胡椒、月桂樹の乾燥葉、パセリ茎スライスを投入し味を調え(若干濃い目)中火で加熱。沸騰したら弱火にして殻を洗った岩手産紫貽貝を放り込む。蓋をして数分。殻内に蓄えられた海水分が良い出汁になるのでソースはこれで完了。冷やすので煮詰めないで若干緩め、スープ風で丁度良い。室温まで冷えたら、そのまま冷蔵庫へ。12時間以上1℃で寝かす。

翌昼、目を醒ますとたいてい前夜の所業は忘れていて、うひゃー、暑いから海鞘で冷酒だっぺと出掛けてしまうものだ。西洋デュラム小麦粗挽き麺(細目)は芯まで火を通し、氷水で急速に締めて水気をしつこくとる。温度が上がらないうちに、冷え切ったソースをかけて、パセリを散らせば完成。たまにはバジルやペパーミントもいいかなぁ…とは思うが匂いがきついので向かない…というより高い。貝の濃厚なスープとトマトのさっぱりした酸味がにんにくと唐辛子の辛味を仲立ちに相互浸潤。最後に飲み干すトマトスープが5℃前後で冷たいというのが譲れない最低線。冷たいものをさっさと食うだけという、別に料理というほどのものではありません。あー、腹冷えた。もちろん、イタリア料理とはまったく縁のない自家飲食物製作行状記なので誤解無きよう。○○風とか言われても全然わからないし、ソースと麺の選択など何も考えていないことは読めばわかるよね?

Supper's ready for you

レイヤを統合して全体のトーンを整える。ちょい彩度上げ。不要な部分をトリミングして完成。

上記を再度トリミング、彩度上げ、色調調整、トーン弄くったものが冒頭のもの。まぁ、デジタルだから使い回しはアイディア次第。強い目線の暗い絵を描いてみたかったのだが、なかなか上手くいかないねぇ。

2;サーバごっこ機 いまだPlamo Linux 2.0改-0.18GHz不眠不休号

停電でダウン。立ち上げるときの手順をすっかり忘れていて往生したわ。

3;スキャナ機 Plamo Linux 3.2 p5-0.166GHzまんせえ!号

おや。

4;Win機 NT5.0 sp4 セレロン300@450x2で枯木灘

微かな異臭。原因不明だったが、しばらくすると落ち捲くりでこりゃ重症だなと剥き出しのボディに触れたら火傷するかと思ったわい。電源ユニットが焦げて落ちたようだ。原因は電源ユニットのファン寿命による冷却不能。ファンレス日本製電源に交換で復活。いやぁ、火事にならなくて良かった。忙しいんだから、もう。

Opera9で遊ぶ。広告もなくなったし、動作もずいぶん良くなった。けっこう洗練されてきたな。

Doom

今のところ手付かずにて候。


2006/08/26 作成