卯月記 -(2006/4/28-2006/5/26)

1;諸々

旧暦更新だと閏月の年なんぞどうすんかいな? と心配しているのだが……と先月思ったらさっそく今年は閏7月というのがあるようだな。楽しみじゃないか。

Hole in the sky

忘れていたわけではなくて、純粋に忙しかったので、遅れ気味の更新になりました。

■ここに至って心を去来する由無しごと

知人と某都内で真昼から宴。30cm強のヒラメと赤貝、鯵の刺し盛り。なかなか良心的な店でぷりぷりの縁側をびろ~んと二枚そのまま盛り付けてくれた。しかし、その巾と大きさから想像するに、握りにするには最低50cmほどのヒラメを使う必要があろうな。あわび、ほっきはいつも生で握るところで、ほっきは湯通ししないから足はダークグレーだが旨味はかえって強いだろう。シャコは時節柄、身が大きく卵を抱いていて口の中に広がる粒々感がこれまた初夏だけの幸せな気分。

ようやく中古で若竹七海『水上音楽堂の冒険』を発見、速購入。『心のなかの冷たい何か』のあまりの暗さに卒倒ついでに、もう一つ救いようのない暗さをしかと味わってみよう。忙しくてまだ読んでいないけど。

睡蓮

たぶん数年ぶりに本屋に行く。まぁ、行けば何かしら買ってしまうのだが、今回の出色は芦原すなおの『雨鶏』。他愛のない話ではあるが、あーちんかわいいよあーちん。最後は魚屋。地もの鰹と天然ヒラメ一匹。連休の谷間だからか、貝は鮮度が悪くてダメ。

今の鰹はそれなりの鮮度で入ってくるはずだが、鮨屋ですら鮮度落ちが早くて扱い難いという魚だから普通の魚売り場では妙な加工品になっているものをよく目にする。車で二時間ほどのところに近海鰹の水揚げ港が二ヶ所あるから、他所よりは恵まれた立地なのかもしれないが、往々にして炙ってあるものは売れ残りだったり冷凍だったりとわけのわからない仕様(2ヶ月前に獲れた南洋ものか?)なので、どうしても食べたければ自分で炙ればよい。ガスで炙るとメタン、ないしはプロパンの酸化によって当然水蒸気で蒸しているようなものだから味が落ちる(実際安物はガスバーナーだろう)ので、藁はないだろうが木の枝と新聞紙でも燃やした方が良い。ほんの数分だから隣の家に通報される前にかたはつく。氷水の準備を忘れずにね。

購入してきたヒラメを解体。定番の五枚おろし。頭を落としたところで雌であることが発覚。だって卵抱いているんだもの。当たりと捉えるべきなの? ぬるぬるした光沢ぬめりと真っ白な腹、ぴんと張った魚体に惹かれて思わず買ってしまったが今度はちゃんと訊いて買ってこよう。おかげで腹身は痩せて期待できない。肝と卵を慎重に取り出して高濃度塩水漬け1時間。軽く煮立てて氷水にとる。水気を切って刺身のツマに。肝はフォワグラ並みの濃厚な味わいが楽しめる。基本的に臭みを誤魔化しているとしか思えない紫蘇の葉の類(花は除く)をツマにするのは好みではない。尻尾と中骨は二度揚げして骨煎餅にする。これがまたおいしいんだ。微小ながら縁側もあるし、コストパフォーマンスにも満足だ。ただ手が臭いことを除けば。

ヒラメといえば代表的な養殖魚ですが、昨今の主力は陸上の温水プールで行われ、人為的に成長の早い全雌化によって生産されているようです。養殖ものは腹が病気で黒かったり尾の付け根に黒い斑点があるのですぐわかります……のはずだったのが、今や逃亡魚? と天然魚の交配が進んでしまい天然ものにも黒班があるものが見つかるそうですね(笑)。そういえば、ノルウェーで数年前に日本人の大好きなバイオ・ニジマスが大量に生簀から逃亡したそうで、いずれ日本近海で採れる天然鮭も脂が乗ってめでたしめでたしとなるかも。

閖上の赤貝、最近は採れないようだ。名取の市長がブログで嘆いているね。ヒトデの大量発生と乱獲が原因なのかな? 変なところに変なものが発生するのはたいてい温暖化やヒトの経済活動が原因なのだろうが、環境破壊の最先端企業が地球に優しいなどとのたまって売り出す商品をこぞって買い求めるのが今やメインストリームのエコ派ヒトだ。資本主義でヒト社会は発展してきたのだろうが、前々世紀の遺物にすがることにしか生きる術がないのならば、いずれ資本主義によって滅ぶ日が来ることだろう。それもまた一興。

南無西方浄土

■初夏

◇クジラ
くじら、特有の臭みが皆無で柔らかい。良いネタに巡り会えた。まぁ、イルカかもしれんけど。このところ良いスルメイカが手に入らないのは、クジラやイルカが増え過ぎたからだという話も聞こえる。特に他人に好かれたいとも思わないので、普通にクジラもイルカもフカヒレもおいしく頂いております。

シジミと焼魚用の鰆(サワラ)を購入。坂東太郎下流域産シジミは塩水で砂だし4時間以上、いまどき砂抜きしてあるだろうと持ち帰ってよく見たら“砂抜きしてね”ってシールの上に半額シールが被ってやんの。ということでそっちは後回し、忙しいから切断済みの焼魚でお茶を濁す。

スーパーに行くが何も欲しいものがない。仕方がないのでシコタマ酒を買い込む。できたばかりの頃はけっこうヴァラエティに富んだ貝類置いていたのにもうダメだな、こりゃ。鮮度も価格的なメリットも皆無に等しい。まぁ、この地が純粋にまともなものを食うという習慣の文化圏にないということなのだろう。

筍が何故か二本で百円。小さいけれどうちの鍋にはちょうど良い、おほほ。小煩い竿竹屋は一本五百円とか拡声しているが、あれは「20年前には一本500円だったという事実を述べているに過ぎない」らしい。閑な人たちがいるものだ。

◇活車えび
普段食べてみたい海老はまずないが、季節は夏ということで珍しく車えびがあったので所望。透き通った身肉と歯応えのあるぷりぷり感。さっぱりしたほのかな甘味が別の食い物のよう。アジも旬だね。

そうだ、池を造ろう。

池

◇鰯(いわし)
最近見かけない鰯、久々に札が。季節的には入梅間近でそろそろ最高のものが揚がる時期。鮮度も申し分なし。築地というところには本願寺以外行ったことがないが(そういや地下鉄サリンの日に警備出動の公務員を眺めながら、石屋のショールームで石見てたなぁ)マイワシ、高値で一匹1150円だそう。変わってるな。

◇桜海老・鳥貝
共に旬だから生。生桜海老は昔、腹を空かした餓鬼の頃、ざるですくって食った海老に感触が近い。海老はバックでぴょんぴょん泳ぐから後ろからすくうのだ。地物鳥貝も鮮度が良いから生で食える。透き通ったしこしこの旨味と黒のバランスが絶妙であった。

このところムール貝の白葡萄酒蒸しが食べたくて、閑を見つけて買いに行っているのだが、どうもタイミングが悪く未入荷、ないしは鮮度落ちすぎなのだな。そろそろおいしくなる頃だろう? ぐつぐつ煮るわけじゃないから口が開いたのはちょっとな。仕方がないのでイナダとホウボウを購入。イナダはブリの幼魚。関西ではハマチと称する。本来の旬は、まぁ、冬だろうが、この時期地場産がけっこうな頻度で店先に並ぶ。値段も高くないので大きさの割にお買い得。ホウボウはイナダの半分の大きさで値段は倍だがいつでも手に入るものじゃないから、まぁ、許す。

◇岩ガキ・赤貝
真鯛>サワラ>生シラス>岩ガキ>生白海老>ヒラメ>小柱>生桜海老>アンキモ>赤貝と調子に乗って食い過ぎた。天然ものだけで切り盛りしているのに、売上が上がらなくてとうとう年中無休になった地元の立ち食い鮨。ビールは値下げ、冷酒と焼酎も置いて、ネタケースの上には15cmほどのぶ厚い三陸岩ガキと、これまたぶくぶくに太った赤貝が山積み。もちろん共に注文してから剥く。一個から二貫しかできないが共に150円x2という破格。いやまいったな、こりゃいける。シャリも人肌で砂糖抜きで江戸前だ。計20貫+生ビールで2700円でした。訊いたことにもちゃんと答えてくれるし、自動ドアを開けてお見送りしてくれるくらい愛想も良くなりました。店名出して宣伝してあげたいくらいだが、情報としての確度が落ちるから敢えて出さない。はっきりいって私は妙な時間に行って原価割れしている撒き餌ネタばかり頼むありがたくない客だが、なくなったら困る。頑張っても時代の方向性としてはどう足掻いてもやがて消えていく運命にあるのだろうが、なるべく長生きして下さいな、通えるうちは。

■さっきまでそこにあった切り身

誤解がひとつ。う~ん、勉強になるね。
「三倍体」というのは普通の体躯より三倍大きいという意味ではないようで(笑。すいません、ド素人で)、

生殖は減数分裂で、互いに自らの染色体を半分にして合体する、と昔習った気がするが、もう少し正確に表現すると、脊椎動物の染色体は普通、二倍体(2n)で、オスの精子(n)とメスの卵(2n)が受精(3n)、すぐにメスのn(第二極体)が放出されて2nの形で成長するということらしい。
ここで、受精直後に温度や圧力を人為的に調整することによってnの放出を阻止したものを三倍体(3n)というらしい。一般的に、生殖機能がない(あるいは機能低下?)ため、通常の二倍体より大きくなるというのがメリットだそうあるよ。

ということらしい。

最も進んでいるのは植物(大豆、トウモロコシ、小麦などの穀物、製材用の桧から杉、いわゆる“種無し”という果物の類まで)のようですが、四倍体なんていうのもあるのだね。XYXXで雌雄同一体(いや、だから雄雌が同じじゃなくて一つの体に雄雌が同居しているの?)なのだろうか。生殖機能をなくして種の供給を特定の企業や国に集中させることが、将来的な食料安全保障と経済支配の根幹になるということは自明の理。がんばれー。
水産関係にも既にかなり広範に利用されているようで、サーモンとして売られているニジマスはもちろん、アユ、イワナ、ヤマメなど釣れる(ヒトがね)川魚、アジ、ブリ、カンパチ、ヒラメはもちろん、宮城、岡山、広島県では三倍体カキが実用化され、アワビ、トコブシの製品化が急がれているらしい。もちろん、染色体操作は染色体を構成する遺伝子そのものを操作しているわけではないので念のため。

青空と廃墟

個人的にはヒトの三倍体というものがどういうものなのか実に興味があるので、誰か造ってみる(え? めっ! ぷっ!)とわかり易くて楽しいよなぁ。取敢えずはスポーツ選手とか兵士にすれば効率良さそうじゃないか。全雌化三倍体軍団の破竹の快進撃なんかライブ中継すれば視聴率とれそうだし。

三倍体・全雌化あたりで一度ぐぐってみると面白い。海魚はもちろん岩魚から鮎、果てはBBSでもちょっと話題になったアメフラシまで、ありとあらゆる技術的展開が模索されているようだ。こりゃ、奥の深い世界だわ。自分の普段扱う問題が純粋にテクノロジーと経済の領域で完結するのがこれほどお気楽で幸運だと思えたことはない。“モタナイ”と“金がないからデキナイ”で済んじゃうもの(ヤレバデキルケド、オマエガ気に入らないからデキナイというのもあるか、笑)。

一応水産庁がまとめた「三倍体魚等の水産生物の利用要領」というガイドラインがあるようですが、“法律”は守らないけれど、良識はあるから“要領”なら守るのが企業というもの。多くの研究は食糧増産をテーマに謳っているが、少なくとも日本人はこの先50年で半減するわけだし、子供はスーパーカウが垂れ流した乳で作ったマヨネーズと“肉のようなものをパンのようなもので挟んだもの”で育って生まれつきの味覚障害になるわけだし、味覚障害の親が生んだ子供は輪をかけた味覚障害になるわけで、そうやって時は移ろうものだろう。

だから、あまり凝った魚を造り出しても需要がなさそうに思えるのだがどうだろう。少なくとも岩魚の刺身の需要が今後増えるとは思えない。むしろ、“岩魚の生スイーツ・ねっとりクリームバニラ風味”とか“ぷりぷり刺身岩魚のバーガー・レアBSE味に山葵コーラ・シェイク・セット”などを開発すべきではないのか? バイオやりたい! (神になりたい! でもいいや)という純粋な知的欲望はとてもよく理解できるし、何でも金に換算して具体的な定量的価値を示してやらないとすぐに“ただメシ食い”とか言い出す本質的に無価値な文系バカが社会を支配していることに問題があることはよくわかる。ほんと、社会の未来には興味の欠片もないからどうでもいいけどね(笑)。

ciel

でもって、このあたりの話は今回を最後にきれいさっぱり忘れようと思っている。突っ込まないで、出てきたものを食べているほうが滑らかな生涯が送れるだろうというのも真理だろうし、生物に対する基本的な素養に欠けているから、性急な結論追いになってしまって弊害のほうが多そうだもの。

そういや、とある板さんが語っていたが、もううちらも何握ってんのかぜんぜんわからんねぇ、最近は。だって。“~のようなもの”を語尾につけてちょ、だと。おいおい。そりゃないだろ、プロがそれではいかんけれど、私は門外漢だからね。ひゃひゃ。

2;サーバごっこ機 いまだPlamo Linux 2.0改-0.18GHz不眠不休号

特になし

3;スキャナ機 Plamo Linux 3.2 p5-0.166GHzまんせえ!号

何もなし。

4;Win機 NT5.0 sp4 セレロン300@450x2で枯木灘

reader_sl.exeという謎のファイルが勝手にスタートアップしているが、やっぱりAdobeか。昔のフォトショップとかイラレとか高価なアプリは非常にまともだが、タダのものには必ず何かを仕込んでくるのだなぁ。

Doom

「scythe2」25面で糞詰まりのまま一歩も進まず。忙しくて手が廻らない。


2006/05/31 作成