終りの始まり

CD輸入規制も微かに盛り上がっている(いた)ようですが、もう衆院可決成立したかな。施行令の詳細は不詳ですが、著作権法は親告罪だし実際は運用が始まってみないとわかりませんね。でも、避難場所になりそうなP2Pもあらかじめ潰しとこか、みたいな動きには高いレベルの意向を感じ取れるかな。当初は還流禁止とか云っておりましたが、やがてアジア以外も対象化され本丸はそこだ! と思わせておいて、実際は国内で流通するCD-DAを減らすことが主眼なのでしょう。J-POPのCCCDにおまけみたいなDVDがつきはじめたことも考えれば、次のステップはCCCD、DVD並売(但しDVDにはボーナス付)であり、ここは一気にDVD-AudioなりSACDへの移行を図るのだろうねぇ。ハードもソフトもDVDにかける意気込みはなかなからしいし、ライセンス料や特許料の面でもメーカーや宗主国に貢げるし、リージョンで販売地域をコントロールできるし、プロテクトを外してコピーすることは刑事訴追の対象だしと良いこと尽くめ。来年中には発売メディアがDVDのみ、CDは販売しておりません、とか云われてびっくりするのだろうなぁ。

企業側からみた現況は、ローカルでは特例なしの網羅的な人員整理と同時に不採算事業の撤廃と高収益部門への集中投資であり、世界的にはコンテンツ産業全体のピラミッド型再編が進む中で、どの位置を占めるかの椅子取りゲームに血眼になって参戦しているといったところか。そんな中で、日本盤に比べはるかに利の薄いCD-DA輸入盤販売(日本のレコード会社にとってはの意。外資小売は逆)を切り捨てたいのは当然だろうし、CD-DA自体が知的(痴的か)財産権の思想を数多下々まで普及させるメディアとしては既に機能的に不適切な過去の遺物なのだろう。CDドライブをすべてDVD(R付でもよいけど)に置換えることによる電機業界を含めた経済効果も魅力的だ。もちろん国策でもあるTVのディジタル化を目前に控えた、乗り遅れてはならない千載一遇のチャンスでもあるわけだ。

この程度の現状分析と展望はもう何年も前にロードマップ化されているのだろうし、断片的に表に現れる事実を繋ぎ合わせれば、きれいに目論見は浮かび上がったはずだ。先週末にはコンテンツ法も成立したようだし、コピーレフト・サイト管理人として、今更敢えてどうこう云うべきものでもない。既に客としては切り捨てられたものが騒いだところで犬の遠吠えにもならないし、流れを堰き止めるどころか、いつのまにか本流は流れていく方向が完全に違っていたのだろう。いずれは干上がる枯れ川の支流に乗ってしまった浮き草にどうやら未来はなさそうだ。敢えて教訓めいた言い方をするならば、知らないことが免罪符である時代はとっくに終わっているということか。いや、正確に云えば、知らないことは犯罪であると云うべきか。

Flowmotion

この国ほど消費性向が均一でない国外ではまだまだCD-DAは生き残っていきそうだし、入手も経験的には今までと同様に十分可能だろう。いずれ通関すら完璧にコントロールされる時代が来るのかもしれないが、そのころには銀色円盤の時代ではないし、一律に取り締まれるよう罪の構成要件を変えないといけないな。ただ、国内で入手が難しい、(多くの人にとっては)時代遅れのメディアをレビューすることに、自分自身いつまで意義を持てるかは甚だ疑問に思わざるを得ない。ただの古物コレクション開陳にしかならないものね。元々、トレンド追っかけでも、需要のあるウェブサイトでもないけれど、その存在意義を足元からすくわれるようなかたちで喪うのはなんだか寂しいものだなぁ。

そして、もう一つの深刻な問題。
CDやCD-Rが読めないDVDドライブなんて云うものが出回る前に、予備のドライブを余生をまっとうする分用意しておかなくちゃな。いずれDVDとCDの主従が逆転すれば(あるいは移行を加速するためには)、CDのためにレーザーを一個余分に積むようなことはなくなると覚悟しておくべきでしょう。まっとうなコストで5インチフロッピーやベータビデオを読む術がないようにね。Rものは長持ちしないけどDVD-Rにコピーして併用するのかなぁ。何台必要だろうとか計算するのがなんだかどうしようもなく空しい。


2004/05/19作成